話題の事例をより深く。歴史ある判例実務誌
振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合における受取人による当該振込みに係る預金の払戻請求が権利の濫用に当たらないとされた事例
保険代理店の立場を利用して団体傷害保険の被保険者資格を有しないにもかかわらず同保険に加入して行った保険金請求が権利の濫用に当たり,クリーンハンドの原則に照らして許されないとされた事例
1 権利能力なき社団の代表者の構成員に対する行為が「職務を行うについて」(平成18 年法律第50 号改正前民法44 条1 項)した行為に該当しないとされた事例 2 権利能力なき社団の被用者の構成員に対する行為が「事業の執行について」(民法715条1項)した行為に該当しないとされた事例
不動産の形式上の共有名義人から根抵当権設定登記を得た者が民法94 条2 項の類推適用を主張したが,当該不動産の不動産登記簿には抹消予告登記がされており,民法94 条2 項類推適用の前提となる虚偽の外観が存在しないと判断された事例
1 不動産売買契約が,売主の意思無能力を理由として無効とされた事例 2 売主の意思無能力を理由として無効とされた不動産売買契約の買主との間で抵当権設定契約を締結した抵当権者につき,民法94 条2項を類推適用すべきではなく,売主は抵当権者に対して当該不動産の所有権が買主に移転していないことを主張することができるとされた事例
1 貸金業者が,借主に対し,期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与したとした原審の判断に違法があるとされた事例(①事件) 2 貸金業者において,特約に基づき借主が期限の利益を喪失した旨主張することが,信義則に反し許されないとされた事例(②事件) 3 貸金業者において,特約に基づき借主が期限の利益を喪失した旨主張することが,信義則に反し許されないとした原審の判断に違法があるとされた事例(③事件)
1 土地賃借人と賃貸借土地所有権の取得時効の援用の可否 2 土地及び賃借権の取得時効完成後に当該賃貸借土地を強制競売により取得して所有権移転登記を了した者が,土地賃借人に対する関係で背信的悪意者に当たるとされた事例
国有財産特別措置法5 条1 項5 号に基づき,土地の一括譲与を受けた地方公共団体が時効完成後の譲受人として,登記の欠缺を主張することが信義誠実の原則に反するとして制限された事例
被相続人が実質所有していた借用名義株について,その相続人の一人が民法163 条に基づき株主権を時効取得することが認められた事例
1 再生債務者は民法177 条「第三者」に当たるか 2 再生手続開始前に登記を経なかった根抵当権者による,(1)再生債務者に対する根抵当権設定登記手続,(2)監督委員に対するその登記手続への同意の各請求がいずれも棄却された事例
神社が宗教法人法に基づく法人格を取得した場合と法人格を取得する以前に国から無償で貸与を受けて境内地として占有していた土地に対する占有の性質の変更
併合審理された占有回収の訴えと本権の訴えにおいて,侵奪者の悪意の承継人であると認めて占有権に基づく占有回復請求権としての明渡請求を認容し(占有回収の訴え),留置権の抗弁を認めて所有権に基づく明渡請求(本権の訴え)を棄却した事例
借地人が借地上に建てた建物とその借地の隣接地上にある建物がその障壁を除去する等の工事により一棟の建物となった場合には,民法244 条の類推適用により,工事前にあった二棟の建物は附合し,各建物の所有者が共有する建物となった場合において,借地人が,当該工事を認識し認容していたことをもって,隣接地上にある建物の所有者に対し,借地権の一部を譲渡し,又は当該借地の一部を転貸したものといえ,民法612 条による土地賃貸借契約の解除が認められた事例
入会集団の一部の構成員が訴えの提起に同調しない構成員を被告に加えて,構成員全員が訴訟当事者として第三者に対する入会権確認の訴えを提起することの許否(積極)
マンションの区分所有者が管理費及び修繕積立金を滞納し続けた行為が,建物の区分所有等に関する法律6 条1 項の定める共同利益背反行為に当たり,かつ,他の方法によっては当該行為による区分所有者の共同生活上の著しい障害を除去してその共同生活の維持を図ることが困難な場合であるとして,同法59 条1 項に基づく競売請求が認められた事例
1 会社更生法88 条1 項の「支払の停止」に弁済期未到来の債務を支払うことができない旨の表示行為が含まれるか 2 同項の「支払の停止」のうち黙示的な支払停止の存否の判断基準 3 権利変動の対抗要件の否認における支払不能の要否とその立証責任の所在 4 2の黙示的な支払停止があると認められた事例 5 3の支払不能の不存在が認められなかった事例
クラブ(飲食店)を経営する会社の代表取締役が退任した際,会社との委任契約に基づく業務引継義務違反があったなどとして,債務不履行及び民法651 条2 項に基づく損害賠償請求がされた事案において,実質的には,いわゆる雇われママにすぎず,委任契約が適用されるべき代表取締役であったとは認められないとして責任が否定された事例
相続人のうちの1 人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否
エンドユーザーが商品の売買契約を締結するに際して,直接の契約関係には立たない当該商品のメーカーが,信義則上,説明(情報提供)義務を負わねばならない場合について判示した事例
弁護士が,法人から管理を依頼されて保管していた金員を,法人の代表者の親族によって私的に流用されることを知りながら,法人に返還した行為について,委任契約上の債務不履行に当たるとされた事例
たこ焼き店のフランチャイズ契約の締結に際して,フランチャイザーが,自営業を営んだことのない主婦のフランチャイジー候補者(加盟候補者)に対し,その自己資金だけでは開業することが困難となるであろうことを告げず,初期投資総額の見込額等を記載した文書を交付せずに,加入金等を入金させた後にその不返還を定めた契約書に署名押印させるなどしたことが,加盟候補者に対し同契約を締結してフランチャイジーになるか否かにつき自由に意思決定をするに足りる必要かつ十分な情報を適時かつ正確に提供・開示すべき信義則上の義務を尽くしたとはいえないと判断するなど,フランチャイズ契約で問題となる多数の争点につき判断した事例
自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により複数の車台番号を有することが判明したとして,錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,売主が移転登録手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例
建築請負工事の請負人が特定建設業の許可を受けていなかったことや契約締結交渉中の一時期に一般建設業の許可を失効させていたこと等による注文者からの信義則違反を理由とする無催告解除を否定し,民法641 条に基づく注文者の損害賠償責任を認めたが,請負人に生じた損害の2 割を過失相殺により減額するのが相当であるとされた事例
コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンの運営会社はその加盟店に対し加盟店に代わって注文し支払った商品仕入代金の具体的内容等について報告義務を負うとされた事例
1 金融機関の預金者に対する預金口座の取引経過開示義務の有無(積極) 2 共同相続人の一人が被相続人名義の預金口座の取引経過開示請求権を単独で行使することの可否(積極)
1 商業ビルの1 フロアの建物賃貸借契約における賃料増額請求について,賃貸借契約が締結された当時から,借地借家法32 条1 項所定の経済的事情等は,賃料増額の要因となる方向に変動していないが,賃貸借契約締結当時に,賃貸人が賃借人の事情に配慮して賃料を低額にし,賃借人もそのような賃貸人の配慮を認識することができたという現行賃料額決定の経緯等を考慮して,同項に基づく賃料増額請求権を認めた事例 2 相当賃料額の算定にあたり,当事者双方から提出された私的鑑定,裁判所による鑑定の各内容の合理性を検討し,裁判所による鑑定の一部を修正して相当賃料額を算定した事例
携帯電話の無線基地局用の電波塔設置を内容とするマンションの屋上の賃貸借について,建物区分所有法17 条1 項及び管理規約にいう「共用部分の変更」には当たらず,管理組合が契約を有効に締結するためには総会で普通決議の要件を満たしていれば足りるとされた事例
1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払返還請求権の消滅時効の起算点(①,②,③事件) 2 過払金返還請求権の消滅時効が継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から進行する場合と当該過払金に対する民法704 条所定の利息の発生時期(④事件)
公立小学校の教員が,女子数人を蹴るなどの悪ふざけをした2 年生の男子を追い掛けて捕まえ,胸元をつかんで壁に押し当て大声で叱った行為が,国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
弁護士会の設置する人権擁護委員会所属の弁護士が受刑者からの人権救済の申立てを受けた調査のため申し入れた他の受刑者との接見を拒否した刑務所長の措置につき,国賠法1 条1 項にいう違法がないとした事例
1 国立大学法人の職員による職務行為は,国家賠償法1 条1 項の「公務員」による「公権力の行使」に当たるとされた事例 2 国立大学法人が国家賠償法1 条1 項の責任を負う場合,職員個人は責任を負わないとされた事例
1 警察署長が振り込め詐欺に使用されている疑いがあるとして,金融機関に対し,その管理する口座の取引停止(凍結)を依頼するに際して被害者と想定している者本人から事情を聴取するなどして,説明の真偽を確認すべき義務があるとされた事例 2 警察署長から振り込め詐欺に使用されている疑いがあるとして,その管理する口座の取引停止(凍結)を依頼された金融機関において,更に振り込め詐欺の疑いについて調査する義務はないとされた事例
1 国家賠償法3 条2 項の「内部関係でその損害を賠償する責任ある者」 2 県費負担教職員の違法行為により発生した賠償債務を支払った県が,学校の設置者である市に対して,国家賠償法3 条2 項に基づき求償権を行使した事案において,市が「内部関係でその損害を賠償する責任ある者」に該当するとされた事例
第三者の土地上に存在しその土地所有権の行使を妨害している動産について,当該動産の購入代金を立替払した者が,立替払債務の担保として当該動産の所有権を留保し,買主との契約上,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は当該動産を占有,使用する権限を有せず,その経過後は買主から当該動産の引渡しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当できるとしているときは,当該所有権留保権者は,立替払債権の上記弁済期が到来するまでは,特段の事情がない限り,当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,上記弁済期が経過した後は,留保された所有権が担保権の性質を有するからといって,撤去義務や不法行為責任を免れることはできないとされた事例
パチンコ等遊技場に連れて来られた女児がその親の遊戯中に店外に出て交通事故で死亡した事故とパチンコ等遊技場の安全配慮義務
展覧会のために無償で貸し出された美術品について,「ドア・トゥー・ドアの過程において生ずる全ての事柄は美術館が保証」する旨の保証条項のある「貸し出しに関する要項・同意書」が作成されているときであっても,貸出前に発生していた損傷又は経時劣化による損傷若しくは修理の必要のない損傷に対しては,借主は責任を負わないとされた事例
第三者の不法行為によって生じた事故を原因として被害者に支給された労災保険の休業給付及び障害一時金を,第三者の被害者に対する損害賠償債務についての遅延損害金に充当することの可否
全身麻酔と局所麻酔の併用による手術中に生じた麻酔による心停止が原因で患者が死亡した場合において,麻酔医に各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,同過失と死亡との間に相当因果関係があるとされた事例
建物の設計者,施工者又は工事監理者が,建築された建物の瑕疵により生命,身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合
共用サーバホスティングサービスの利用者にプログラムの作成管理を委託していた者等が,同ホスティングサービス事業会社に対し,サーバの故障によってプログラム及びデータが消失したことにつき,不法行為による損害賠償を求め,これが棄却された事例
土地の売買による所有権移転登記手続を受任した司法書士が,買主に対し,売主についての誤った本人確認情報を提供したことにつき,不法行為責任が認められた事例
交通事故の加害者が被害者に賠償すべき人的損害の額の算定に当たり,被害者の父が締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づき被害者が支払を受けた保険金の額を控除した原審の判断に違法があるとされた事例
飲酒運転中の交通事故について,運転者と共に長時間飲酒した非同乗者について民法719 条2 項に基づく責任を肯定する一方,同乗も飲酒も共にしていなかった運転者の妻についてはその責任を否定した事例
被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため,被害者の相続人がその事実を知り得ないまま20 年以上が経過した後の損害賠償請求につき,民法724 条後段の除斥期間の適用はないとされた事例
外務省機密漏えい事件についての謝罪文交付・慰謝料請求訴訟控訴審判決 1 時効停止の規定を手掛かりとして民法724 条後段の効果を制限するための要件 2 有罪判決を受けた者からの検察官の再審請求権不行使の違法を理由とする国家賠償請求の可否(消極)
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3 条1 項3 号の要件について,未成年の子が婚姻したことにより成年擬制が及ぶため「現に未成年の子がいない」場合に該当するとして申し立てられた男から女への性別の取扱いの変更申立てが,法の趣旨に反し,申立権の濫用にあたるとして却下された事例
別居中の妻が夫に対して婚姻費用の分担を申し立てた場合において妻と同居している未成年者の子に対する実質的な監護費用に相当する部分を除いた妻自身の生活費に相当する部分の申立てが権利の濫用として許されないとされた事例
渉外子の監護に関する処分事件について,日本に国際裁判管轄を認めることができないとして申立てを却下した原審判が是認された事例
別居から3 年3 か月の夫婦について,婚姻関係が改善することが期待でき,いまだに破綻しているとまではいえないとして,夫の離婚請求を認容した原判決を取り消し,請求を棄却した事例
親子関係不存在確認請求控訴事件判決「藁の上からの養子」に対する親子関係不存在確認請求が著しく不当な結果をもたらすとまではいえず,権利の濫用にあたらないとして,請求が認容された事例
いわゆる代理出産により出生した養子となる者と卵子及び精子を提供した申立人ら(養親)との特別養子縁組の成立を認めた事例
1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことが違法ではないとされた事例
共同相続人が相続し,準共有状態にある株式に関する権利行使者の指定及び株主総会での議決権行使が権利の濫用であって,許されないとされた事例
被相続人のいとこの子及びその配偶者である被相続人の成年後見人が特別縁故者に当たるとして相続財産の一部分与をした原審判を変更し,分与額を増額した事例
遺産分割調停調書に,相続人が遺産取得の代償としてその所有する建物を他の相続人に譲渡する旨の条項がある場合において,上記調書を添付してされた上記建物の所有権移転登記申請につき,登記原因証明情報の提供を欠くことを理由に却下した処分が違法とされた事例
税理士が,相続税の期限後納付後に依頼を受けた更正の請求を怠り,依頼者に対して還付を受けられなかった税額に相当する額を損害賠償として支払った場合における,税理士職業賠償責任保険の契約約款に規定する免責条項(平成16 年7 月の改訂後のもの)の適用の有無
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき上記損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合における同条項にいう「他の保険契約」の意義
1 生命保険の指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において,その者又はその相続人は,商法676 条2 項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」に当たるか(①事件) 2 死亡給付金の指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合における死亡給付金受取人の確定方法についての年金共済約款の解釈(②事件)
証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は,同法による発行者等に限定されないとした例
株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じた時は持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例
役員退職慰労金内規に各役位別在任年数に役位別定額を乗じ,その合計(基本的退職金部分)をもって役員退職慰労金とし,功労加算ができる旨の定めがあり,減額や不支給の定めがない場合において,退任取締役に対する役員退職慰労金の支給に関し,会社内規に従い,金額,時期,方法については取締役会に一任する旨の株主総会決議があったときは,会社は,取締役会の決議を経ずとも,基本的退職金部分について役員退職慰労金の支払義務を負うとされた事例
株式会社の代表取締役がした重要業務執行について取締役会決議を欠くことを理由とする無効主張は,会社以外の者は原則としてできない
株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれるか
会計帳簿等の閲覧謄写請求に関する最高裁決定 株主から会社に対する会計帳簿等の閲覧謄写請求に対し,会社がこれを拒絶するための要件としては,当該株主が会社と競業をなすものであるなどという客観的事実のみで足り,主観的要件までは不要とされた事例
株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しないとされた事例
地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合における同申立てを却下する旨の判断と地方裁判所の裁量
マンション管理組合を原告とする訴訟について,当該管理組合の内部の部会の代表者には当該管理組合の代表権がないとして,補正を命じることなく訴えを却下した事例
1 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220 条4 号ハ所定の文書に該当しないとされた事例 2 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析,評価等に関する情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4 号ハ所定の文書に該当しないとされた事例 3 事実審である抗告審が民訴法223 条6 項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ,これを閲読した上でした文書の記載内容の認定を法律審である許可抗告審において争うことの許否
情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を検証の目的として被告にその開示を命じることの可否
宗教法人から擯斥処分を受けた住職に対して,宗教法人の所有する寺院土地の明渡しを求める訴えが,法律上の争訟に当たらず,不適法とされた事例
1 執行官の仮差押えの執行処分に対する執行異議の申立てを却下する裁判に対して,執行抗告をすることは許されない 2 追徴保全命令に基づく仮差押えの執行において,国の差押禁止動産の範囲変更を求める申立てが理由がないとされた事例
1 金銭債権の債務名義について民事執行法23 条3 項を類推適用することの可否(消極) 2 権利能力なき社団の資産である不動産を目的とする強制執行のための執行文付与の方法
債権差押命令の申立て前に債務者が持参した執行停止文書を裁判所が受理した場合と当該裁判所にその後に債権者がした債権差押命令の申立てに及ぼす影響
無剰余を理由として強制競売の手続を取り消した決定に対する執行抗告において,優先債権者の同意を得たことが抗告審で証明されたことから,強制競売の手続を取り消す必要がないとして,原決定が取り消された事例
債権配当において,配当期日までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えて計算された金額の配当を受けることができるとされた事例
執行官が茶葉に対して行った動産執行が違法であり,これにより差押債務者に損害を生じさせたが,その額を立証することが極めて困難であるとして民事訴訟法248 条に基づき相当な損害額が認定された事例
銀行の特定の普通預金口座に係る普通預金債権及び既発生利息債権を差し押さえるべき債権であるとしつつ,その時的範囲として,「命令送達の時から3 営業日以内に上記口座にかかる普通預金債権となる部分(本命令送達の時に存在する預金及び同日を含む3 営業日が経過するまでに受入れた金員によって構成される部分)」とした債権差押命令の申立てが,差押債権の特定を欠くとされた事例
間接強制金の不当利得返還請求事件 保全すべき権利が発令時から存在しなかったものと本案訴訟の判決で判断され,仮処分命令が事情の変更により取り消された場合において,当該仮処分命令の保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,不当利得返還請求をすることの可否
動産売買先取特権の物上代位による建物工事請負代金債権差押えの申立てにつき,請求債権の実体は請負契約に基づく債権であり,差押債権についても転売代金債権と同視しうる特段の事情が認められないとしてこれを却下した原決定を維持した事例
債務者につき破産手続開始決定がされた後,破産管財人が抗告人の債務者に対する債権差押命令の執行手続の取消しを上申したことを受けて,執行裁判所が同債権差押命令を取り消した原決定を是認した事例
集合債権譲渡担保権に対する担保権実行手続中止命令(民事再生法31 条)の類推適用の可否及び可とする場合における「不当な損害を及ぼすおそれ」の判断基準
債務名義を有する債権者が債務者所有の不動産に対して強制競売の申立てをしたが,無剰余を理由に強制競売の手続が取り消された場合について,権利保護の必要性があるとしてこの不動産につき仮差押命令を申し立てることができるとされた事例
1 契約上の不作為請求権に基づき会員に対する年会費徴収行為が差し止められた事例 2 仮処分命令の中で間接強制額20 億円の支払が認容された事例
暴力団組事務所として使用されている建物について,その周辺住民が建物の使用の差止め等を求めた仮処分が一部認容された事例
いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース方式のファイナンス・リース契約においてユーザーに民事再生手続開始の申立があったことを解除事由とする特約の効力
再生手続中に再生債務者である賃借人が不動産賃貸借契約の中途解約を申し入れた後,再生手続が廃止されて破産手続が開始された場合において,中途解約に伴う違約金債権は破産債権に該当するが,解約後の不動産占有を理由とする不当利得返還請求権は財団債権に該当するとされた事例
土地付き戸建分譲を主たる事業とする再生債務者所有の販売用土地が,担保権消滅請求における「当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことができないもの」との要件を充たすとされた事例
パシーフカプセル30mg 事件 「有効成分」及び「効能・効果」を同じくする別の医薬品につき薬事法所定の承認が先行して存在することを理由として特許権の延長登録出願を拒絶した審決につき,誤りがあるとしてこれを取り消した事例
生海苔異物除去機再審事件 特許無効確定に基づく特許権侵害差止認容確定判決に対する再審請求において,再審該当性が問題となった事例
つつみのおひなっこや 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きし,土人形等を指定商品とする商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字からなる引用商標が類似しないとされた事例
コンマー/ CONMER 商標事件 剽窃的出願による商標の商標法4条1項7号「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」該当性
ELLEGARDEN 事件 「ELLE」の文字からなる著名な原告商標とロックバンド名である「ELLEGARDEN」の文字からなる被告標章との類否につき,取引の実情を考慮して類似性を否定した事例
黒烏龍茶事件 1 原告の商品表示の周知性を肯定しつつ,その著名性を否定した事例 2 原告の商品表示と被告らの二種類の商品表示との類否について,一方については類似性を肯定し,他方については類似性を否定した事例 3 原告の商品と被告らの商品とを比較する広告が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するものであるとされた事例 4 登録商標の使用が商標としての使用に当たらないとされた事例 5 商品のデザインの著作物性が否定された事例 6 製造業者と販売業者の関係にある被告らの関連共同性が肯定された事例
土地宝典事件 1 土地宝典について著作物性を認めた事例 2 国が,本訴請求に係る各土地宝典を各法務局に備え置いて利用者に貸し出すとともに,各法務局内に設置されたコインコピー機を用いた利用者による無断複製行為を放置していたことは,不特定多数の第三者による本件土地宝典の複製権侵害行為を幇助したものであって,国は,共同不法行為者とみなされるから,不法行為による使用料相当額の損害を賠償すべき責任を負うとされた事例 3 国は,民法703 条所定の利益を受けたとは認められないとして,不法行為の消滅時効が完成した期間に係る不当利得返還請求が認められなかった事例
黒澤映画DVD事件 旧著作権法の下で製作・公表された映画について,その著作者である映画監督の実名を表示して興行された著作物であり,同法6 条にいう団体名義の著作物には当たらないとして,著作権の存続期間の満了が否定された事例
ロクラクⅡ事件第1審判決 インターネットを介したテレビ番組の録画・視聴サービスの提供者が,複製行為の主体とされた事例
船舶が最初に到達した地を管轄する裁判所に提起された外国船籍の船舶間の公海上での衝突事故に基づく外国法人間の損害賠償の訴えにつき,民訴法5 条10 号の裁判管轄が認められず,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があるとして,我が国の国際裁判管轄が否定された事例
我が国に普通裁判籍を有さない外国会社の取締役の責任を追及する訴えについて,我が国の裁判所の国際裁判管轄が否定された事例
アルゼンチンで発生した日本人運転者の交通事故により日本人同乗者が死亡した交通事故についてアルゼンチン法を準拠法とした上で,アルゼンチン民法を適用して損害賠償額を算定することは公序に反するとして,その適用を排除した事例
宗教法人が死亡したペットの飼い主から依頼を受けて葬儀等を行う事業が法人税法2 条13 号所定の収益事業に当たるとされた事例
PHS 事業者が事業の用に供したエントランス回線利用権につき,1 回線に係る権利が,それぞれ一つの減価償却資産であり,法人税法施行令(平成16 年政令第101 号による改正前のもの)133条所定の少額減価償却資産に当たるとされた事例
法人税の確定申告において配当等に係る所得税額控除の計算を誤って控除金額を過少に記載したことを理由とする更正の請求が認められた事例
建物譲渡による損失について損益通算を廃止した租税特別措置法を公布日前の譲渡に遡及適用することが憲法84 条の趣旨に反しないとされた事例
1 租税特別措置法(平14 法79 号改正前)40 条の4 第1 項は,日星租税協定7 条1 項に違反しないとされた事例 2 租税特別措置法40 条の4 第3 項が規定する適用除外要件のうち,非持株会社等基準を充足しないから同条1 項に基づく課税処分が適法とされた事例
市議会の会派に交付する政務調査費の使途を「会派が行う」調査研究活動と定める函館市議会政務調査費の交付に関する条例施行規則(平成13 年函館市規則第4 号)の下で,会派の代表者の承認を得て政務調査費が会派から所属議員に支出された場合において,議員が行う調査研究活動は所属会派の代表者の承認があるだけでは「会派が行う」ものとはいえないとし,上記の支出は上記の定めに適合しないとした原審の判断に違法があるとされた事例
1 同一の行政処分について取消訴訟と無効確認訴訟が併合提起された場合における無効確認訴訟の訴えの利益の有無(原則消極) 2 地方自治法126 条ただし書に基づいて地方議会議長がした地方議会議員の辞職許可処分が取り消された事例
市が発注した工事に関し談合したとされる業者らに対して市長が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しないことが違法な怠る事実に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
住民訴訟弁護士報酬請求訴訟最高裁判決 1 地方自治法(平成14 年法律第4 号による改正前のもの)242 条の2 第7 項にいう「相当と認められる額」の意義及び算定基準 2 地方自治法(平成14 年法律第4 号による改正前のもの)242 条の2 第7 項にいう「相当と認められる額」についての原審の認定判断に違法があるとされた事例
浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者に対してされた浄化槽清掃業不許可処分を違法とした原審の判断に違法があるとして差し戻された事例
建築基準法第3 章の規定が適用されるに至った際,幅員4m 未満の道のうち一方の端から特定の地点までの部分には現に建築物が立ち並んでいたが,同地点から他方の端までの部分には建築物が存在しなかった場合において,後者の部分が同法42 条2 項にいう現に建築物が立ち並んでいる道に当たらないとされた事例
生活保護下のバンコク渡航事件 生活保護を受け始めて間もない時期に外国への渡航費用を支出した者に対する,同渡航費用の金額を超えない金額を生活扶助の金額から減じて差し引く旨の保護変更決定が,適法であるとされた事例
旧軍人として戦病死した亡夫が無断でした協議離婚の届出により亡夫の戸籍から除籍されていた妻の旧恩給法72 条1 項の「遺族」としての恩給(公務扶助料)の受給権は,離婚無効の判決が確定して戸籍の訂正がされるまでの間,その権利の行使について法律上の障害があり,時効消滅しないとされた事例
1 学校設置条例(昭和39 年大阪市条例第57 号)の一部を改正する条例(平成20 年大阪市条例第86 号)の制定によって養護学校が廃止されたことが,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとされた事例 2 相手方がした養護学校の廃止が,その裁量権の範囲を超え,又はこれを濫用したものということはできず,違法であるとはいえないとして,行政事件訴訟法25 条4 項の「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとされた事例
産業廃棄物処理業を営む原告に公共下水道を使用させる義務があるとして,被告に対し,公共下水道を使用させることを命じた事例
自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり,一般運転者として扱われ,優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が,当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するとされた事例
平成19 年度全国学力・学習状況調査(本件調査)における各中学校別平均点の情報(本件情報)公開請求につき,枚方市情報公開条例(本件条例)6 条4 号の「市が国,他の地方公共団体又はこれらに準ずる団体(国等)と協力して行う事務事業又は国等から依頼,協議等を受けて行う事務事業に関して作成し,又は取得した情報であって,公開することにより,市と国等との協力関係を著しく損なうと認められるもの」(国等協力関係情報)に該当するとした非公開決定が適法とされた事例
開示請求権者の子の死亡に係る死体見分調書中の飛降現場断面図及び現場見取図並びに「死体の状況」及び「見分官の判断」のうち,犯罪捜査に係る着眼点,捜査手法及び関心事項に関する情報並びに写真撮影報告書中の写真及び写真撮影の状況に関する情報が,いずれも愛知県個人情報保護条例(平成16 年愛知県条例第66 号。平成19 年愛知県条例第47 号による改正前のもの)17条6 号所定の非開示事由に該当しないとされた事例
1 会社を退職した従業員の会社に対する競業避止義務が認められるとされた事例 2 競業避止義務に基づき退職した従業員が本判決確定から2 年間上記会社が施工ないしフランチャイズ事業化している技術と同一内容の技術を用いた事業を行うことの差止請求等が認容された事例
三菱長崎造船所じん肺事件第2 審判決 造船所やその下請会社などで稼働していた労働者がじん肺に罹患したことにつき,造船所経営会社の安全配慮義務違反が認められた事例
ホテル従業員の石綿ばく露労災損害賠償訴訟控訴審判決 昭和39 年ころからホテルの設備係として勤務してきた者が悪性胸膜中皮腫に罹患して死亡したことにつき,同疾患の原因が多量の石綿(アスベスト)を吸引する可能性の高い作業に従事したことによるものであり,使用者であるホテルの経営会社に安全配慮義務違反があったとして,遺族の損害賠償請求が認容された事例
1 配転命令が不当労働行為に該当して無効であり,不法行為にも該当するとして,労働者及び組合の損害賠償請求を認めた事例 2 使用者の取引先による組合からの脱退勧奨と評価される事実が認められないとして,労働者及び組合につき,団結権侵害による損害賠償を認めなかった事例
公立学校教員が,再雇用・再任用職員の採用選考において,卒業式の国歌斉唱の際に起立斉唱するよう命じる校長の職務命令に違反したことにより戒告処分を受けたことを理由に不合格とされたことについて,教育委員会に裁量権の逸脱・濫用があるとして,国家賠償請求が認容された事例
外資系金融企業の従業員が懲戒解雇され,解雇無効を主張して地位確認訴訟(前訴)を提起して敗訴した後,追加退職金の支払を求める訴訟(後訴)を提起し,追加退職金規定上の不支給事由に該当する事由があるか否かが争点となった事案において,追加退職金は労基法上の「賃金」にあたらず,追加退職金を不支給とするためには勤続の功労を抹消するほどの背信性がある場合に限られないが,後訴を提起することが信義則上許されないとはいえないとされた事例
日本美術刀剣保存協会事件 1 ほぼ60 歳で退職した後,有期の嘱託で雇用され,雇止め時点で年金受給可能な年齢に達していた場合,若年労働者ほどには雇用継続の必要性も強いとはいえず,解雇権濫用法理を類推すべきものとはならないとされた事例 2 雇止めについて,①期間の定めのある契約と実質的に異ならない状態になっておらず,②雇用継続の期待が不十分で解雇権濫用法理の類推適用がなされない場合でも,恣意的な理由による雇止めは許されず,契約の終了には合理的な事由が必要であるとされた事例 3 定年を間近に控えた原告らにつき,特に終期を定めず,地位を確認し,賃金等の請求を認容した事例
個人業務委託契約を締結しているカスタマーエンジニアは,会社の事業組織の中に組み入れられており,その労働力の処分につき会社から支配監督を受け,これに対して対価を受けていると評価できるから,労組法上の労働者にあたるとされた例
1 単位労働組合の下部組織である組合支部についても,当該支部限りの交渉事項に当たるものについては,組合本部の統制に服するものの独自に団体交渉を行う権限があり,当該支部による団体交渉申入れの交渉議題は,当該支部限りの交渉事項であり,組合本部が当該支部の団体交渉権限に制約を加えていない場合には,当該支部と使用者との間の義務的団体交渉事項であるとされた事例 2 使用者には,組合支部限りの団体交渉事項について,当該支部との間で個別の団体交渉に応じる義務があり,当該支部が組合本部及び組合各支部が提示した団体交渉の議題を一括して取り上げる方式(連名方式)による団体交渉を拒否しているのに,使用者が前記方式による団体交渉に固執して実質的な交渉に入れなかった場合には,使用者が当該支部との間の団体交渉を実質的に拒否したものと評価できるとされた事例