最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
第一 事案の概要
一 新天皇の即位に伴う儀式として、平成二年一一月に皇居で大嘗祭が執り行われたが、これに先立つ同年一〇月一〇日に大分県玖珠郡玖珠町で大嘗祭の関連儀式である主基斎田抜穂の儀(以下「抜穂の儀」という。)が挙行された。
抜穂の儀には、大分県知事、副知事及び農政部長(...
《解 説》
一 本件は、大学卒業後、健全な社会人としてまじめに生活をしてきた被告人が、約二年間に及ぶ長男の家庭内暴力に苦しんだ挙げ句、その苦しみから逃れるため、当時一四歳になる中学三年生の長男を金属バットで殴打するなどして殺害した、という事案である。
二 本件は、事件発生当初からマスコミ...
《解 説》
一 土地区画整理法(以下「法」という。)九六条は、換地計画において換地にも公共施設用地にもしない土地を作り出すことを認めており、これを保留地と呼んでいる。保留地を作る目的は、事業の施行者により同一ではなく、市施行の場合は、施行費用に充てるために限られ、事業後の宅地の総額が事業前...
《解 説》
一 Xは、宮崎県内に住所を有する者であるが、宮崎県情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき、宮崎県が資本金の四分の一を出資するフェニックスリゾート株式会社(以下「本件法人」という。)が株主総会において宮崎県に配布した計算書類等の文書の開示を請求した。これに対し、Y(県知...
《解 説》
一 Xは、奈良県の住民であるが、奈良県情報公開条例に基づき「平成八年度文書学事課のコピー機の契約に関する一切の文書」の開示を請求したところ、実施機関である同県知事(Y)が、①料金(金額)が記されている部分及び②契約者である法人の代表者の印影部分を除いて右公文書の一部を開示する旨...
《解 説》
日本三景の一つとして知られる「安芸の宮島(厳島)」は瀬戸内海に浮かぶ小島であり、ここに「多々良潟」と呼ばれる浅瀬がある。ここでは地元の漁協の組合員があさり貝やかき貝の養殖を行っている。かつて、多々良潟には陸と海とを隔てる位置に、ほぼ直線状に、石垣様の護岸が築かれていたが、昭和二...
《解 説》
一 本件は、公立中学校の生徒指導主事の地位にあった男性教諭Aが、帰宅後就寝中に急性心筋梗塞を発症し死亡したところ、その妻Xが、被告Y(地方公務員災害補償基金愛知県支部長)に対し、公務上災害認定の申請をしたが、公務外認定処分を受け、これを不服として取消訴訟を提起する際、誤って遺族...
《解 説》
建物の賃貸人Xは、本件建物をYに賃貸していたが、同賃貸借契約は平成四年九月一六日には期間を二年、賃料月額一三万円と定めて合意更新された。Yは、右期間が満了するころ、Xに賃料を月額九万円に減額して更新することを申し入れ、以後、右金額を供託している。Xは、本件賃貸借契約の賃料が月額...
《解 説》
X1は、父A及び母Bの長男、X2が二男、Yが長女、X3が三男であり、順次相続により本件土地三筆と建物一棟を共有しているところ(但し、持分については争いがある)、Xら三名はYに対し、競売による代金の分割を求めて提訴した。裁判所は、Yの尋問を終えた後、当事者双方に本件土地につき、X...
《解 説》
本件は、控訴人(原告・大手の水産物加工業者)が、第三者A(小規模な水産物加工業者)の名義で倉庫業者に寄託していた控訴人所有の冷凍蛸約二〇〇トン(本件蛸)について、Aから寄託名義の変更を受け、指図による占有移転の方法で占有を取得したと主張する被控訴人(被告)に対して、本件蛸の所有...
《解 説》
一 Xは、平成五年一一月四日、Y会社との間で、Y会社が福島県に建設中のゴルフ場のゴルフクラブ会員契約を締結し、入会金六〇万円及び消費税一万八〇〇〇円と会員資格保証金九〇万円の合計一五一万八〇〇〇円を支払った。ゴルフ場の開場予定は平成六年六月であった(もっとも、XとYとの間で、開...
《解 説》
Xはテレホンクラブを開業するためにYから平成七年八月七日にホストコンピューター等を購入し(第一契約)、同月一〇日にマルチサービスシステムソフトOS/2一式等を借り受け(第二契約)、同年九月七日、プリンター等を買い受け(第三契約)、同月一八日からテレホンクラブの営業を始めたが、同...
《解 説》
Xは被相続人Aと先妻との間の息子であり、YはAの配偶者(後妻)である。Aがその遺産全てをYに相続させる旨の遺言を残して死亡したため、Xは遺留分減殺請求をし、別件訴訟を提起した。他方、Aの生前から、XとA及びYとの間に感情のもつれがあり、XからAを絶縁したと述べる状況になっていた...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、証券会社と法人との間で平成三年改正証券取引法施行前に締結されたいわゆる「飛ばし」約束の効力が問題となった事案である。証券会社Yは顧客Aとの間で「営業特金」とよばれる金員預託を受け一任勘定による株式運用を行っていたが、運用結果が思わしくなく株価下落により...
《解 説》
本件は、甲教団の教祖Aの刑事事件の私選弁護人に選任されていたXについてY1発行の写真週刊誌が、Aに復讐を始めた再解任Xの大嘘、そのXがAへの復讐に転じている、最後の金稼ぎをしようと、取り調べの状況やAとの接見内容などを一部マスコミに流し始めた等の記事及び見出しを掲載したことが名...
《解 説》
一 本件は、六名の原告が、いわゆるマインド・コントロールによる違法な勧誘、教化行為により被告に入教して約一年ないし六年間にわたり貴重な青春を奪われ、霊感商法や偽装募金などの違法行為への従事、無償の労働、献金、物品購入などの出捐をそれぞれ強制されたとして、棄教した後、被告に対し、...
《解 説》
一 XYらの母Aは、平成元年一二月本件自筆証書遺言をして約一箇月後に七六歳で死亡した。「Aは遺言当時、これをするだけの意思能力がなかった」とする被相続人Xら四名が、有効と主張する被相続人Yら二名を被告として、遺言無効確認請求をしたのが、本件である。Xらは、知能低下が高度異常の段...
《解 説》
一 Xは、ビデオレンタル等を業とする会社であり、岡山県和気町でビデオレンタル店を経営していたが、平成五年二月一日深夜、右店舗から出火し、その中に在置していた設備・什器・商品等を焼失した。
そこで、Xは、平成四年一〇月に店舗総合保険契約を締結していたY(保険会社)に対し、右火災...
《解 説》
本件は、Yらの使用する標章(Y標章、対象商標は三つ)が、Xの周知、著名な登録商標(本件登録商標、「ELLE」の下に「エル」を横書きしたもの)又は商品表示(X商標、「ELLE」)に類似するとして、XがYらに対し、Yらの行為は、①主位的に、Xの商標権(本件商標権)を侵害するものであ...
《解 説》
一 本件は、XがYらに対し、Yらのパチスロ機(Y商品)の販売がXの商標権の侵害行為に該当するとして、損害賠償を求めた事案である。Xの商標権に係る商標(本件商標)の指定商品区分である平成三年改正前の商標法施行令別表第九類(旧第九類)には、「産業機械器具、動力機械器具(電動機を除く...
《解 説》
一 接触濾材の発明(本件発明)について、その特許を受ける権利を有していたXは、Yとの間で実施料保証額の定めがある特許実施許諾契約(本件契約)を締結した。Yは、本件発明に係る接触濾材を使用した小型合併浄化槽(本件浄化槽)の製造を試みたが、浄化槽法一三条所定の型式認定を受けることも...
《解 説》
商標の類否の判断に関し、従来は、地名を含む標章において、地名部分は産地販売地表示であるから自他識別機能がなく、地名以外の部分が要部であると、一種のドグマのように言われてきた。裁判例も、そのような見解によると考えられるものが多く、東京高判昭27・5・30行集三巻四号七八四頁(「牛...
《解 説》
一 事案の概要 Xは、Aに対する貸金債権を被担保債権としてA所有の本件土地に抵当権を設定し、抵当権設定登記を経由し、右登記の登記済証を保持していた。AはXに対し、Xから借りた金員を返還するために銀行との間で融資の交渉をするのに、本件土地の右登記済証を示す必要があるのでこれを貸し...
《解 説》
Xは、平成四年四月、Yに対して七五〇万円を貸し渡し、その担保として二三筆の土地について極度額を一二〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結した。しかし、Yは設定登記に必要な委任状をXのもとに持参せず、その後の催告にもかかわらず、委任状を提出しなかった。Yは、平成七年ころから返済を遅...
《解 説》
X所有の区分所有建物(登記簿上二戸)について平成八年四月競売開始決定がされ、同年六月、本件建物は一六一〇万円と一七三九万円の合計三三四九万円と評価され、同年一二月、最低売却価額を右金額と決定して売却実施命令が出された。Xは、本件建物は、隔壁を一部取り除いて内部改装を施し、当初か...
《解 説》
株式会社であるX2につき代表取締役X1から会社整理の申立てがされ、第一審裁判所は、保全処分としてYの申立てにかかる不動産競売手続の期限付中止決定を告知した。これに対しYは、整理開始命令前に保全処分として競売手続を中止することは法の認めるところではないこと、そうでないとしても、競...
《解 説》
一 本件事案は、いわゆるオウム真理教(以下「教団」という。)の信者によって引き起こされた新宿駅青酸ガス事件と呼ばれるものである。被告人両名は、正犯である教団幹部らが共謀の上、新宿駅東口公衆便所内に、シアン化水素ガス発生装置を仕掛け、公衆便所内の利用者等を無差別に殺害しようとした...
《解 説》
一 事案の概要
被告人は、二個のスーツケースに隠匿された大麻を日本に密輸入しようと企て、シンガポールから東京国際空港に到着し、小型の紺色スーツケースを携帯して上陸審査場で審査を受けた。被告人は、そこで審査官から入国許可の条件に適合していない旨の通知を受け、法務大臣に対する不服...
《解 説》
本件は、犯行時九五歳(一審判決時、控訴審判決時は九六歳)という高齢の被告人が、特別養護老人ホームで生活する重度の知的障害を持つ四男(犯行時六三歳)の行く末を日頃から心配し、一人思い悩みつつ世話を焼いてきたところ、年末年始の帰省で被告人の同居先である長男方に戻ってきていた四男と布...