最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事案の概要
本件は、いわゆる家永教科書裁判第三次訴訟の上告審判決である。
1 Xは、日本史の研究者で、東京教育大学教授、中央大学教授などの職にあった者であり、昭和二七年以降高等学校日本史用教科書「新日本史」(以下「本件教科書」という。)を執筆し、右教科書は出版社である...
《解 説》
一 外国裁判所の判決を我が国において執行するには、執行判決を得なければならないが(民事執行法二四条、二二条六号)、本件は、アメリカ合衆国のカリフォルニア州裁判所においてY1社及びY2(Y1の代表取締役であった者)に対しX(オレゴン州のパートナーシップ。我が国の民法上の組合、合名会...
《解 説》
一 国民健康保険法七六条、地方税法五条六項五号、七〇三条の四は、国民健康保険を行う市町村は、同保険の被保険者である世帯主に対し、国民健康保険税を課することができるものとしており、これを受けて大東市では、同法三条一項に基づき、条例により、国民健康保険の被保険者である世帯主は、国民...
《解 説》
一 本件は、抵当不動産である建物の共有持分を取得したXが、当該持分についてした滌除(民法三七八条)によりYの本件根抵当権が消滅したと主張し、Yに対し、根抵当権設定登記の抹消登記手続を求めた事案である。
事実関係を本判決の理解に必要な範囲で簡略化して紹介すると、(1) 本件建物...
《解 説》
一 債権譲渡における債務者の異議なき承諾による抗弁喪失の制度について、最二小判昭42・10・27民集二一巻八号二一六一頁、本誌二一四号一五〇頁は「民法四六八条一項本文が指名債権の譲渡につき債務者の異議をとどめない承諾に抗弁喪失の効果を認めているのは、債権譲受人の利益を保護し一般...
《解 説》
一 XらとYは、平成三年一一月一五日に死亡した父Aの子である。Aは、遺産の大半をYに取得させる甲遺言をした後、乙遺言をもって甲遺言を撤回し、更に『乙遺言を無効とし甲遺言を有効とする』旨の丙遺言をした。Yは、甲遺言に基づいて、本件不動産について所有権移転登記手続を行った。
Xら...
《解 説》
一 自動車保険約款における保険料分割払特約第五条は「当会社は、保険契約者が第二回目以降の分割保険料について、当該分割保険料を払込むべき払込期日後一か月を経過した後もその払込みを怠ったときは、その払込期日後に生じた事故については、保険金を支払いません。」と定める(自動車保険約款の...
《解 説》
一 Xは、自己の所有する自動車を被共済自動車とする自動車共済契約をYとの間で締結した。本件の自動車共済は、共済事業として行われているという点で保険会社の自動車保険と異なるが、いわゆる任意保険の約款にも本件約款と同内容の規定が設けられている。Xは、この自動車を売り渡す契約を締結し...
《解 説》
(本件は、いわゆる旧民事訴訟法の適用による判決であり、記載された民事訴訟法の条文は、いずれも旧法のものである。)
一 本件は、XからYに対する三〇〇万円の損害賠償請求訴訟であるが、一審は一五〇万円の限度で、双方控訴による控訴審は二〇〇万円の限度で、請求を一部認容した。そこで、...
《解 説》
一 本件は、家庭の主婦である被告人が、実父から相続した土地を夫のAに依頼して売却した上、この売買に係る収入に関し長期譲渡所得(分離課税)の確定申告をすることについても(税理士に委任することを含め)Aに委託したところ、Aが、被告人の所得税をほ脱する意図で、右譲渡収入の一部を除外し...
《解 説》
Xは、平成三年六月三日付でY町長に対し、浄化槽法三五条に基づき、浄化槽清掃業の許可申請をしたが、Yは、同五年七月一三日付で不許可処分とした。また、Xは、同五年七月一二日付でYに対し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という)七条に基づき、一般廃棄物処理業の許...
《解 説》
一 X1は、昭和六三年九月当時、広島市立早稲田小学校の六学年に在籍していた者であるが、同月九日、学校のプールで実施された水泳練習に参加し、逆飛び込みを行った際、プールの水底に頭部を衝突させて、頚髄損傷の傷害を負い、不全四肢麻痺等の後遺障害が残った。
そこで、X1とその父X2、...
《解 説》
本件は、納税者Xの雑所得となるA社に対する貸付金の利息及び保証料の帰属年分が争われた事案である。Xは、右利息等につき、二、三の間違いはあったが、継続して支払日基準で記帳していたとして、所得税基本通達三六―八(7)を援用した。これに対し、Y税務署長は、右利息等について弁済期の定め...
《解 説》
Xら一二九名は税関に勤務する職員で組織する労働組合のK支部及びこれに所属する者(一部、死亡による訴訟承継がある)であるが、昭和三八年四月から同四九年三月までの間、税関長からK支部の組合員であることを理由として、昇任、昇格、昇給につき不当な差別を受け、これにより経済的、精神的損害...
《解 説》
Xは、平成三年一一月、Y3、Y4ほか一名から三DKの本件マンション(五三・四七平方メートル)を代金二七五〇万円で買い受けた。その際、仲介業者として買主側にY1、売主側にY2が立ち会った。本件マンションのうち洋室五・五畳は、ルーフバルコニーを利用して木造により増築されたものであり...
《解 説》
一 本件は、会社の工場内での交通事故による治療後、復職したものの、約二か月後に急性心不全により死亡した従業員の相続人(被控訴人)が、会社(控訴人)に対し、交通事故による傷害の損害賠償請求及び安全配慮義務違反による死亡事故の損害賠償請求をなした事案である。判示事項として取り上げる...
《解 説》
一 Xは、平成三年一月、ゴルフ会員権販売を業とするY1会社から、株式会社広栄観光が開設する「飯塚国際ゴルフ倶楽部」の会員権(以下「本件会員権」という。)を代金五五〇万円で購入し、入会金、預託金等として四三二万五六三二円を支払ったが、同年五月には広栄観光は倒産状態になり、右ゴルフ...
《解 説》
一 本訴は、原告が被告との間で、引渡検査日の確定期限を定めて被告にカラオケ施設の建築工事を請け負わせるとともに、被告からカラオケ機器を買い入れる契約を結んでいたところ、被告の下請業者A社が建築確認申請を遅延し、申請内容にも不備があったことから、確定期限までに建築工事を完成させる...
《解 説》
一 訴外AとYは、平成六年一二月二五日、狩猟グループの友人八名とともに、兵庫県出石郡但東町の山林に狩猟に出かけ、「河本集落」で打合せをした後、それぞれ山道を登り、定められた「待ち場」に到着して、猟犬に追い立てられて出てくる獲物を待ち受けていた。
Yは、約三〇分前、「待ち場」に...
《解 説》
本件は、物損交通事故の加害者Xが、被害者Yに対し、事前の交渉により賠償額につき合意できなかったとして、損害賠償債務の不存在確認訴訟を提起したところ、Yが、本案前の抗弁として、右訴えは訴えの濫用であり、確認の利益ないしは必要性がないとして、訴え却下を求めたため、確認の利益の有無に...
《解 説》
本件は、交通事故により死亡した被害者Aの相続人であるXらが、加害車両の保有者であるYに対して、自賠法三条に基づく損害賠償請求をした事案であるが、Xらが、Aが本件交通事故により死亡したことにより相続税額が増加したとして、右増加分の賠償を求めた点に特色がある。
建物の相続税評価額...
《解 説》
一 原告X(受傷当時四一歳)は、昭和六二年一二月に交通事故に遭って、全身に受傷した。そのうち目の部分については翌年春まで訴外A病院及びB病院で治療を受けたが、右眼球陥没、複視等の障害が残った。同年(昭和六三年)八月以降は被告Y1が運営する病院を受診して、同年一二月から平成三年三...
《解 説》
一 Xは、ボウリング場の経営その他観光事業を営む株式会社であるところ、同会社の代表取締役Aが、Yファイナンス会社から、昭和六三年一一月に二〇億円、平成元年五月に九億円を借り受けた際、X所有の不動産について抵当権を設定してその旨の登記を経由したことに関し、右抵当権設定は、商法二六...
《解 説》
一 XYは、木造住宅、物置、家財を保険の目的として、地震保険契約(地震つき住宅総合保険)を締結した。阪神淡路大震災により、Xの木造住宅、物置は、全壊・損傷したので、Xが保険金支払請求をしたところ、木造住宅の保険金(一〇〇〇万円)は支払われたが、物置の保険金(一二五万円)の支払い...
《解 説》
X1(ザリッツホテルリミテッド)はパリのリッツホテルを経営する英国法人、X2(ダブリュービージョンソンプロパティーズインコーポレーテッド)は、X1から「RITZ」の表示を「RITZ―CARLTON」の形態で使用することを条件にライセンスを受け、子会社を通じ、オーストラリア、香港...
《解 説》
一 事案の概要
Yは産業廃棄物処理を目的とする有限会社であり、XらはYが計画している産業廃棄物最終処分場の近隣に居住する住民である。Yは右最終処分場を計画するに際し、三重県産業廃棄物処理指導要綱に基づいて、計画地の付近住民であるXらから処理施設設置に対する同意書を得たが、その...
《解 説》
一 事案の概要
警察官であった被告人が、かねてから情報提供をするなどして被告人の犯人検挙に協力していた民間人Aから、覚せい剤を第三者に持たせて覚せい剤所持事犯を捏造することを持ちかけられ、捏造に用いるための覚せい剤をAから無償で譲り受け(本件第一の事実)、その一部を使って覚せ...
《解 説》
一 本件は、地下送水管新設工事現場でメタンガスが爆発して坑内作業員が死傷した事故について、作業員の安全管理等の業務に従事していた被告人三名が、十分な安全管理を行わないまま作業を進めた業務上の過失があったとして業務上過失致死・同傷害罪に問われた事件である。
二 事案の概要は次の...
《解 説》
一 本件は、いわゆる違法収集証拠の主張が弁護人から出た覚せい剤取締法違反(自己使用)事件について、その主張を認め、被告人の尿についての鑑定書等の証拠能力を否定して、被告人に無罪を言い渡した事案である。
二 本件においては、警察官が、何らの令状の発付を受けていなかったことや、た...