最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、状況証拠のみにより殺人罪を認定した一審判決が、控訴審において破棄され、無罪が言い渡された事例である。
まず、本件公訴事実は、被告人は、第一 かねてから妻(美智子)に不信感を抱いていたところ、愛人と結婚の約束をするに及んで妻に対するうとましさが昂じ、同女を殺害しよう...
《解 説》
一 本件は、いわゆる榎井村事件再審無罪判決確定後の刑事補償請求事件の上告審決定である。本件は、再審により、確定判決で有罪とされた罪の一部が無罪となり、その余の罪について言い渡された執行猶予付き本刑に裁定算入及び法定通算された未決勾留日数が刑事補償の対象となるか否かが問題となった...
《解 説》
一 本件の原告Xは、朝鮮籍を有する父Aと日本国籍を有する母Bとの間で昭和六二年に生れた子(本件当時五歳)である。しかし、AとBは平成四年三月に調停離婚し、その際、Xの親権者をA、監護権者をBと定められたため、XはBのもとで監護養育されることになった。Xは、出生により日本国籍と朝...
2 登記薄謄本交付手数料訴訟第一審判決
登記手数料令2条1項は、憲法31条・41条・84条、不動産登記法21条3項に違反しない
(富山地裁平6・6・29判決)
《解 説》
本件は、広島市が施行した土地区画整理事業における換地処分について、土地区画整理法(以下、法という)八九条に定める照応の原則に反するかどうかが問題となった行政事件訴訟の控訴審判決である。
Xは、本件換地処分が照応の原則に反すると主張し、その理由として、まず、本件換地処分では地積...
《解 説》
一 起業者であるY2市は、新住宅市街地開発事業(以下「本件事業」という。)に係る用地取得のため、Xらの所有地について土地収用裁決の申請をし、Y1収用委員会は、これを認める権利取得裁決及び明渡裁決をした。これに対し、Xらは、(1)土地買収過程においてY2による信義則違反の行為等が...
《解 説》
一 本判決は、宇都宮地決平2・11・2行集四一巻一一=一二号一八一一頁、判時一三七七号五四頁の執行停止決定の本案事件である。原告は私立大学を設置する学校法人であり、宇都宮市内に建設予定であった同大学理工学部の施設整備費補助金の交付申請に際して栃木県に文書を提出していたところ、参...
《解 説》
Xは、Y市内に賃貸用マンションを新築するためY市を経由して府の建築主事宛に建築確認申請書を提出したが、その際、Y市の都市計画課より同市の開発指導要綱による公共・公益施設負担金として合計五五〇万円を納付するよう求められ、これに応じた。本件はXがYに対し、右寄附金の強要は、違法な公...
《解 説》
一 卸売市場に通ずる敷地内通路を管理するY1(東京都)は、Y2(警備会社)に右通路を含む本件市場の警備を委託していた。Y2の被用者であるBは、本件事故当時、港湾道路側道の転回路車道から本件市場敷地内への車両等の進入を防止するため、本件市場敷地内通路のうちの車両専用の通行部分(以...
《解 説》
一 本件は、原告がその農業に関する事業所得についてされた所得税の更正処分の取消しを求めたものである。原告は、推計の必要性及び合理性を争うとともに、いわゆる実額反証を試みたが、いずれも容れられなかった。このような事案に対する結論のみを見る限りでは、それほど珍しいものではないが、本...
《解 説》
一 本件は、甲市立保育園に勤務する保母であるXに発症した「頚肩腕症候群・背腰痛症候群」が、地方公務員法二六条にいう「公務上の疾病」に該当するかが争われた事例である。原審である大阪地判平3・3・28本誌七九七号二〇七頁は、公務上の災害とは認められないとして、Xからの公務外認定処分...
《解 説》
一 Yは、パン、洋菓子の製造・販売を営む株式会社であり、Xらは、Yとの間で本件外交員契約を締結してYの商品であるパン類を訪問販売していたものである。Yの外交員契約及び慰労金規定によれば、YはXらに対し、販売数量によって計算した実績点数を基に算出した歩合手数料及び退職慰労金を支払...
《解 説》
本件土地建物について一〇〇分の三五の共有持分を有するXは、同一〇〇分の六五の共有持分を有するYに対して共有物分割の訴えを提起し、現物分割が困難であることから競売による売得金の分割を求めた。これに対しYは、X・Y間には、平成二年七月六日に裁判上の和解により本件土地を任意に売却し、...
《解 説》
一 本件の主要な争点は、同一所有者に属する土地・旧建物に共同抵当権が設定された後旧建物が取り壊されて所有者又は所有者と同視し得る者以外の第三者が新建物を再築した場合、土地又は新建物の抵当権の実行により新建物のために法定地上権が成立するか否かという点にある。
二 事案の概要は以...
《解 説》
一 本件は、不動産仲介業者であるXが、Xの仲介により居住用土地建物を買ったYに対し、仲介手数料の支払を求めたのに対し、Yが、売買代金は金融機関の融資金によって賄う予定であったため、融資が受けられないときは売買契約を解除できる旨のいわゆる「ローン条項」を右売買契約に付していたが、...
《解 説》
Xは本件土地上に存するA所有の甲建物の抵当権者であり、Yらは本件土地の所有者である。本件土地を目的として賃貸借契約がなされていたが、借地人がAであるかAが代表者をしていたB株式会社(破産した)であるかが争いとなり、YらはAに対して建物収去土地明渡請求訴訟を提起し、XはAに補助参...
《解 説》
Xはノンバンクであり、Y1は大手証券会社であるところ、Xの松山支店長Aは、Y1の松山支店事務次長Bとの間で証券購入資金についての提携を口頭で合意した。Xの同支店は右合意に基づき、顧客一八名に株式購入資金を融資し、顧客から買い付けた株式を譲渡担保にとっていた(担保差入証、株券保護...
《解 説》
一 XはAと婚姻中に、Yの妻Bと同棲していたが、Aは、Bに対しAX間の婚姻関係を破壊したとして損害賠償請求事件を、Yに対しては、YはBの右不法行為を積極的に容認したとして損害賠償請求事件を各提起したところ、Yは、Xが、Yと別居中であったBに対し暴力を使って同棲生活を強要してYB...
《解 説》
1 本件は、心筋梗塞患者に対する治療の不首尾が争われた事例である。
患者Aはかねて心筋梗塞の罹病歴があり、ある医大に通院していた者であるが、昭和六〇年九月、ろれつが回らない等の症状を呈してその医大の脳神経外科で検査を受けた。担当医のY1は、Aには脳内出血、脳室拡大があり、ドレ...
《解 説》
一 X1はY県立のS高校の体育コース第三学年に在籍する生徒であるが、同校においては体育大会の行事として八段のピラミッドを実施することとなり、体育の授業においてその練習を行った。X1はピラミッド練習のリーダー格であり第一段(最下段)の中央に位置したが、六段目が上がりかけたところで...
《解 説》
Xは京都に本店を有し、建築設計を業とする会社であるが、仙台市に本店を有するバス会社Yからホテルの建築企画・設計を依頼され、企画設計案を二回にわたり作成して提出したところ、採用されなかったので、主位的には設計委任契約に基づき、二次的には商法五一二条に基づき、三〇〇〇万円の報酬支払...
《解 説》
一 Xは、昭和六二年七月、ルノアール作の絵画を約二億二五〇〇万円で購入し、その所有権を取得したので、Y保険会社との間で、右絵画を目的として、保険金額を二億七〇〇〇万円とする動産総合保険契約を締結した。
ところで、Xは、右絵画の輸入及び通関手続を依頼した業者Aに右絵画を預けてい...
《解 説》
1 事実関係の概略は、ポパイの漫画ないし「POPEYE」の文字を含む別紙標章目録記載の被告標章を使用していたYに対し、ポパイ漫画の著作権者の米国法人X1が著作権に基づき、ポパイキャラクター商品のライセンス事業を営んでいる米国法人X2及び日本法人X3が、改正前不正競争防止法一条...
《解 説》
一 本件は、原告が、被告である茨城税務署長の原告に対する三か年度分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分の取消しを求めている行政訴訟(以下「本案訴訟」という。)において、原告がした文書提出命令の申立てに対する、本案裁判所の却下決定(①事件)及び右原決定に対する抗...
《解 説》
一 Xは、Yの不動産につき仮差押命令の発令を受け、その執行として強制管理の申立てをした。執行裁判所は、右申立てに基づき強制管理開始決定をするとともに弁護士であるAを管理人に選任し、その後、Aに支給すべき報酬を初回の平成五年一一月は月額八万円、同年一二月以降は月額五万円とするとの...
《解 説》
本件は、質権設定者であるYの申立てにより、原審がXの電話加入権に対してした差押え及び換価命令について、XがYとの間で質権設定契約を締結したことはないことを理由として執行抗告の方法で原命令の取消しを求めたのに対して、この様な場合の不服申立ては執行異議の方法によるべきであるとして右...
《解 説》
XはAに対し、額面金額一〇〇〇万円の約束手形金債権(裏書による)を有するところ、これにつき年三割の割合による遅延損害金を付した昭和五六年一一月一〇日付債務弁済公正証書を作成するとともに、年六分の法定利息を付した同月二六日言渡しの手形判決を得た。Xは、右手形判決正本によりAの預金...
《解 説》
一 本件は、過去に巨額の資金を使ったバカラ賭博の経験(但し、賭博による負債と今回の破産とは直接関係しない。)を有するXが、破産事件の審問において、その事実を秘匿し、その代わりに虚偽の飲酒遊興の事実を申告したうえ、破産宣告(同時廃止)の決定を受けたものの、破産裁判所から免責が困難...
《解 説》
一 本件は、スナックを経営する被告人が店内にビデオカラオケ装置を設置して、著作権者に無断で、レーザーディスクカラオケ(カラオケ伴奏を流すとともに曲のイメージに合った影像と歌詞をモニター画面上に映し出すビデオソフトウェアー)を再生し、客にそのカラオケ伴奏により歌唱させた行為が著作...
《解 説》
本件は、香港在住の被告人(A)他二名(B、C)が失業中で金銭に窮していたなどのため、Cが以前働いていたことのある被害者宅に強盗に入ることを企てて香港から来日し、それぞれ刺身包丁一丁を携帯して被害者宅に入り家人を脅したり紐で縛るなどして金員を強取しようとしたが、家人に騒がれて金員...