1 西淀川大気汚染公害訴訟(第二~四次)第一審判決
一 工場排煙と自動車排出ガス等による都市型複合大気汚染下における健康被害について、それらの排出する大気汚染物質が相加的に健康に悪影響を及ぼしていたとして、自動車排出ガスに含まれる二酸化窒素の病因性を認めた事例
二 汚染物質が入り交じって患者の健康を侵害している場合には、各排出源が主要汚染源でなくても共同不法行為規定を類推通するのが相当であるが、各排出源の間に強い共同関係がない場合は、その責任は自己の排出の寄与割合に限定されるとして、道路管理者に対し、沿道住民の健康被害につき、寄与割合に相当する部分に限定した損害賠償を認めた事例
三 道路沿道住民について、抽象的差止請求の可能性を認め、当事者適格を肯定したうえで、現状の大気汚染の程度や道路の公共性から差止の必要性を否定した事例
(大阪地裁平7・7・5判決)
《解 説》
一 非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一と定めた民法九〇〇条四号ただし書前段の規定(以下「本件規定」という。)が法の下の平等を定めた憲法一四条一項に違反するか否かについては、最近になって学説上大きく争われるようになった。
かつては、憲法は婚姻を尊重しているから本件規定は...
《解 説》
一 原告ら二名は、他の自衛官一名及び元自衛官一名とともに、昭和四七年四月二七日及び二八日、防衛庁正門付近及び芝公園で開催された沖縄返還協定粉砕等を掲げた政治的集会において、制服を着用した上で、判文にも掲げられたような過激な表現で、自衛隊の沖縄配備及び立川基地移駐に反対し、かつ自...
《解 説》
一 本件の事実関係及び本案前の争点は、本判決の理由一に簡潔にまとめられているとおりである。要するに、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)による保険給付に関する決定のように、行政処分に対する不服について審査請求、再審査請求という二段階の不服審査手続が定められ(同法三...
国道43号線訴訟上告審判決 (1)事件 1 一般国道等の道路の周辺住民が受けた自動車騒音の屋外騒音レベルの認定に違法はないとされた事例 2 一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害が社会生活上受忍すべき限度を超えるとして右道路の設置又は管理に瑕疵があるとされた事例 3 自動車騒音によるいわゆる生活妨害を被害の中心として多数の被害者から一律の額の慰謝料が請求された場合についての受忍限度を超える被害を受けた者とそうでない者とを識別するための基準の設定に違法はないとされた事例 (2)事件 一般国道等の道路の周辺住民からその供用に伴う自動車騒音等により被害を受けているとして右道路の供用の差止めが請求された場合につき右請求を認容すべき違法性があるとはいえないとされた事例
《解 説》
一 はじめに
いわゆる国道四三号線訴訟事件の上告審判決である。国と阪神高速道路公団による上告事件が①事件、住民による上告事件が②事件である。最高裁判決としては二つに分かれているが、ここに併せて紹介する。本判決は、道路公害についての初めての最高裁判決であり、道路行政に多大の影響...
《解 説》
Xは、Aに妻Bの殺害を依頼してその目的を遂げたとの事実により公訴を提起され、第一審東京地判平6・3・31本誌八四九号一六五頁は、Aを殺人の点につき無罪としたが、Xについては有罪判決を言い渡した。Yは新聞社であるが、Xが右殺人事件で逮捕された二日後に、「ロス銃撃」、「Aへ約束は二...
《解 説》
被審人は、一定地域の貸切バス事業者を会員とする事業者団体である。
貸切バスの運賃等(運賃及び料金)の決定、変更は運輸大臣の認可に係らせられており(道路運送法九条一項)、認可によらない運賃等を収受した場合は処罰の対象となり(同法九九条一号)、会員の運賃等も一定の金額の幅の中で認...
《解 説》
一 訴外Aは、平成三年一一月当時、宮崎県立妻高等学校の三学年に在籍していたものであり、同月二五日、保健体育の自習授業として行われたソフトボールの試合において投手をしていたところ、打者の打った打球が左腹部に当たって意識不明の状態になり、同年一二月九日、虚血性全脳障害により死亡した...
《解 説》
一 Xは、横須賀市内でカフェバーを経営していた女性であるが、新聞社であるY(①事件)及びZ(②事件)の発行する各日刊紙上においてXが北朝鮮の工作員と接触し、その指示を受けて各種の情報収集活動をしていた等の記事が繰り返し掲載されたため、これを名誉毀損及びプライバシー侵害に当たると...
《解 説》
本件は、国営八郎潟干拓事業によって造成された八郎潟中央干拓地に関し、入植者に営農に関する契約違反があったとして国が入植地の買収を求めると共に、これに関し、国が入植者に代って支払った金員等の返還を求めた事件である。
判決は、国による売買予約完結権が二名の入植者に対し、昭和五七年...
《解 説》
一 Xは、平成四年二月当時、旭川市近文町所在の木造二階建居宅を賃借して、長男と二人で居住していたが、同月一五日夜、右建物から出火し、右建物内にあるXの家財等が焼損するなどの火災事故が発生した。
Xは、平成三年五月、Y1保険会社との間で、また、平成四年一月、Y2保険会社との間で...
《解 説》
一 本件は、Y(被告・被控訴人)の勝馬投票券発売所に勤務しているX(原告・控訴人)が、年次有給休暇の行使として勤務を休んだところ、Yから、Xの雇用形態が年次有給休暇行使の法律上の要件である労働基準法三九条一項の「一年間継続勤務」(但し平成五年改正前)には該当しないとして、欠勤と...
《解 説》
一 Xは、愛知県豊橋市でパチンコ店を経営する会社であるが、平成元年八月、名古屋国税局の査察調査を受け、関連企業と合わせて、約二〇億円を脱税していることが判明したため、善後策に苦慮していたところ、Yらから税額を五億円以下にし、法人税法違反で起訴されないようにしてやるといわれたため...
《解 説》
一 事案の概要 八二歳の老人Xが、暴力団組長の妻Yから(実質的には同組長Aから)二五〇〇万円の融資を受け、その際、Yのために、自己所有の山林等四筆につき売買を原因とする所有権移転登記(買戻特約の付記登記あり)を経由し、ミカン畑一筆につき売買を原因とする条件付所有権移転請求権仮登...