最も長い歴史をもつ判例実務誌
被告人の自白が違法な別件逮捕・勾留に基いて収集されたことを理由に、その証拠能力(証拠の許容性)を否定し無罪を言渡した事例
1 政治資金の寄附と会社の権利能力 2 会社の政党に対する政治資金の寄附の自由と憲法3章 3 商法254条ノ2の趣旨 4 取締役が会社を代表して政治資金を寄附する場合と取締役の忠実義務
1 債権の差押前から債務者に対して反対債権を有していた第三者債務者が右反対債権を自働債権とし被差押債権を受働債権としてする相殺の効力 2 相殺に関する合意の差押債権者に対する効力
1 借地条件変更の裁判において借地権の存否を判断することができるか 2 借地条件変更の裁判において借地権の存否を判断することと憲法32条・82条
1 手形の裏書欄の取立委任文言の抹消の効力 2 割引のための譲渡裏書にもかかわらず取立委任裏書の形式が採られた場合における当該裏書の効力
捜査機関に対する申述によって刑事訴追を受け無罪の確定判決を得た者の右の申述者に対する不法行為責任の追求が排斥された事例
1 民法上の組合脱退の意思表示は撤回できるか 2 民法上の組合解放請求の意思表示が一部の組合員にされなかった場合における解散請求の効力
1 芸術上の表現活動のための通貨模造行為の処罰と憲法21条 2 通貨及証券模造取締法1条の「紛ハシキ外観ヲ有スルモノ」との文言はあいまい不明確であるか
職務質問の限度を逸脱し、任意同行が実質上の逮捕に該当するとして、その後に行なわれた緊急逮捕が違法であることを理由に公務執行妨害、傷害を無罪とした一事例
失対事業運営管理規程の全面実施につき市側に誠意をもって団体交渉に応ずる態度がなかった場合、自労側が不退去であっても反社会性軽微で違法性がないとして無罪を言渡した一事例
給食センターの従業員が、争議行為として、第二組合所属の従業員の運転する配食用自動車等の通行を妨害した所為が、労働組合法1条2項本文にいう正当な行為にあたらないとされた事例
傷害事件について、犯行の現場に来合わせてはいたが、実行者とあらかじめ共謀したことも、現場共謀も認められないとして、無罪を言い渡した事例
1 証人の供述が、同人の検察官に対する供述調書の記載より、それほどの信用性があるとは認め難いとした事例 2 証人の供述と、同人の検察官に対する供述との間に、それほど重要な実質的差異があるとはいえないとした事例
自動車運送事業者が道路運送法15条5号に依り運送の引受を拒絶するについて正当な事由がある場合とは解せられないとした事例
訴訟遅延の目的のみでなされたことが明らかであるとはいえないとして、裁判官忌避申立に対する簡易却下決定が取消された事例
1 法廷内における看守の戒護権限と訴訟指揮権あるいは法廷警察権 2 法廷等の秩序維持に関する法律2条1項にいう不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し、かつ、裁判の威信を著しく害したものに該当するとされた事例
組関係者の抗争事件において6トン積み大型ダンプカーを路上にとめて、運転席に乗り込みエンジンをかけていつでも襲撃してくる相手方の乗用車に衝突させるべく待機している行為が刑法208条の2にいう「兇器を準備し」ている場合にあたるとされた事例
犯行時の年令19才10日余りの少年の業務上過失傷害事件につき、家裁に送致することなく行為後1年2カ月余を経過してなされた公訴の提起が、事案に照らして適法なものとされた事例
特定郵便局長が自局の支払準備資金の基準高に関する実績を作るため、貯金の支払高を増加させる手段として、郵便貯金に預入した自己振出名義の小切手が決済されないうちに、郵便貯金法の規定に違反して、右小切手金額に相当する現金を業務上保管中の公金から払出し、その払出した金員をもって自己振出小切手の決済資金にあてた事案につき、不法領得の意思を欠くものとして、業務上横領罪を構成しないとされた事例
1 各別に起訴された2個の罪を常習一罪と認定するに当り、後の起訴につき公訴棄却をし、前の起訴について訴因変更をすることの要否 2 立証趣旨の拘束力
被告人甲・乙がA・B両女を強姦しようと共謀し甲はAを乙はBを強姦した事案につき、甲に対しAに対する強姦、Bに対する強姦幇助罪の成立を、乙に対しBに対する強姦Aに対する強姦幇助罪の成立を認めた事例
先行者によって犯罪の実行が開始された後、中途から共同犯行の意思の連絡ないし共謀のもとにこれに介入した(承継的共同正犯)場合、後行者は介入後の行為についてのみ共同正犯としての責任があるとされた事例
労働争議に際して行なわれた被告人の所為は、傷害、暴行の構成要件に該当するけれども、実質的違法性を欠くという理由で無罪の言渡をした事例
1 札幌市公安条例のうち条件違反に対する罰則について、許可条件の具体的内容を公安委員会が定めることと憲法31条(白地刑罰法規) 2 同条例による許可処分の運用の実際と処分の適否
精神分裂病で入院加療している者を相手方とする親権者変更申立事件につき、職権で相手方に民訴法56条による特別代理人を選任したうえその旨の審判をした事例
1 親権者でない親は子との面接交渉権を親として当然有するばかりでなく、子との面接を通じて今後も保つことができる父親と子との愛情の交流は、未成年者の人格の円満な発達にとって必要なことと考えられ、家庭裁判所は家事審判法9条1項乙類4号による審判の対象とすることができる 2 申立人(父)と子との間には自然の愛情の交流が保たれているが、父母間に離婚以来の心理的わだかまりが尾を引いており、養育料の支払との関係でふたたびその間の感情が緊張することが予測できる等判示事情のもとにおいては、右面接交渉権を明確にしておくことが相当であるとして、その回数、時期、方法等を指定した事例
親権者である母から父に対し、2人の未成熟子のうち1人の親権者を相手方たる父に変更して引取り監護養育する旨の申立につき、相手方の生活態度、生活環境は子の監護をなすに適さず、子供自身父親に親和感を有してはおらず、申立人については、経済事情、子の養育状態等につき欠陥はあるが、まだ幼ない事件本人の生育には母親の愛情は不可欠である等判示事情のもとでは申立人が子の監護教育にあたることが適当であるとして親権者変更申立を却下した事例
裁判所は遺産分割にあたり、相続人の相続分を左右する権限まで有するものではなく、遺産に対する各人潜在的持分は相続分の形で定型化されているのであって、ある相続人が遺産の形成に対して一般的な寄与・貢献をしているとしても、そのことを根拠として、その相続人に相続分以上の遺産を取得させることができない
特別の高等教育を受けたことによる特別受益は、受益者の人格とともに消滅する一身専属的性格のものであるから、受益者が死亡したのちは、代襲相続人に対し受益の持戻義務を課することは相当でない
被相続人の相続が、被相続人と特別縁故関係にあった申立人の先代の生存中に開始した場合において、特別縁故者たる地位の相続はあり得ないが、被相続人と申立人との特別縁故関係の存否は申立人の先代と被相続人との特別縁故関係を附加総合して判断することができる
1(1) 家事審判法9条1項乙類に規定する審判事件は、紛争を強制的に解決するための手続であるから、調停の段階に止まらず審判に移行した限りは精神衛生法20条1項2号に規定する「訴訟」に含まれる (2) 右同条同項同号の趣旨は、被保護者と保護義務者とが利害の対立者として訴訟で争う間柄にあっては感情の離背を免れず、延いては被保護者の福祉の万全を期し難いとの配慮に基づくものと解されるから、保護義務者が被告となる場合も右同条に該当する 2 保護義務者に欠格事由が発生したときは、選任取消など格別の裁判をまつまでもなく、当然にその地位を失う