最も長い歴史をもつ判例実務誌
東京高判平9・ 5・28判タ982号166頁、東京地判平9・10・31金法1515号49頁、仙台高判平9・2・28金判1021号20頁
《解 説》
通行地役権と承役地所有権との対抗関係に関しては、最二小判平10・2・13民集五二巻一号六五頁、本誌九六九号一一九頁が、承役地の譲受人に対して通行地役権者が設定登記なくして同権利を対抗し得る場合を相当広く認めるべきことを判示していたが、本判決は、通行地役権者が承役地の譲受人に対し...
《解 説》
一 本件は、動産の買主がこれを用いて施工した請負工事の代金につき動産の売主が動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否が争われた事件であり、先般の民訴法改正で新設された許可抗告の制度(民訴法三三七条)に基づいて、債権差押命令及び転付命令に対する抗告棄却決定をした高...
《解 説》
一 本件判決は、いわゆる資生堂東京販売事件の最高裁判決であり、本号九八頁に掲載された花王化粧品販売事件の最高裁判決と同日に、第三小法廷によって言い渡されたものである。
本件の事案は次のとおりである。本件の原告は化粧品の小売業者、被告は資生堂化粧品の卸売販売を行っている会社であ...
《解 説》
一 本判決は、いわゆる花王化粧品販売事件の最高裁判決であり、本号九四頁に掲載された資生堂東京販売事件とほぼ同一の論点について争われ、同判決と同日に、第三小法廷によって言い渡されたものである。
本件の事案は次のとおりである。本件の原告は化粧品の小売業者、被告は花王化粧品の卸売販...
《解 説》
本件は、日本人父とフィリピン人母との間の子として出生し、出生後に父から認知されたX(出生によりフィリピン国籍を有している。)が、「子は、出生の時に父又は母が日本国民であるときは日本国民とする」と定める国籍法二条一号の適用があるとして、国に対し、日本国籍の確認と国が国籍を認めない...
《解 説》
株式会社Aは、大型の公衆浴場(浴室、二四〇人分のロッカーを備える脱衣室、タンニングルーム、遠赤サウナ、打たせ湯、エステ浴、塩サウナ、気泡風呂、寝湯、ハーブ風呂、ホットベンチ、全身浴兼低周波浴、ボディーシャワー等を備える)の建築を計画し、Y建築主事から建築確認を得た。Xら二名は、...
《解 説》
一 本件は、県知事を被告として宅地開発許可処分の取消を求める抗告訴訟を提起した原告が、一審で、県知事ではなく、土木事務所長を被告とすべきであったとして、訴え却下の判決を受けたため、控訴審において、被告を県知事から土木事務所長に変更することの許可を申し立て、その許可を前提に、原判...
《解 説》
一 本件は、愛知県が、平成四年から平成七年まで、国家褒章を受章した議員や退任した県議会議長、副議長に対し、記念品料を「報償費」の名目で支出したことに関し、愛知県の住民である原告らが、愛知県知事、支出負担行為及び支出命令の専決権者並びに支出の専決権者に対し地方自治法二四二条の二第...
《解 説》
XらはそれぞれYから一〇階建マンションの五、六階を賃借していたが、平成七年一月一七日に発生した兵庫県南部地震により被災し、同年三月一〇日各室を明け渡した。Xらは明渡しの前にYの要求により室内を補修し、清掃することになり、業者にこれを委託した。XらはYに支払った賃料のうち震災後の...
《解 説》
家電機器の販売業者であるXは平成三年四月、大手証券会社Yの従業員Aの電話によりワラントの購入を勧誘され、その場で保有していた株式を売却し、額面金額五〇〇〇ドルのワラントを七〇九万円余で購入することを決めた。Xは後から送付された説明書によりワラントには権利行使期間があり、これを過...
《解 説》
Xは貸金業者Y(個人)から二回にわたり合計二二〇万円を借り受けたが、その際、年金証書、銀行通帳、銀行印、キャッシュカード等を手渡しており、Xの銀行口座に振り込まれた年金をYが返済に当てていた。Xは、Yの貸付が貸金業の規制等に関する法律に適合していないとして利息制限法の規定により...
《解 説》
一 スポーツ競技、特に球技の試合や練習中における負傷事故につき損害賠償を請求する事案は判例上もしばしば見られるところである。
事例としては、ゴルフ(東京地判平1・3・20本誌七一三号二〇八頁[プレイヤーの過失を肯定]、東京高判平6・8・8本誌八七七号二二五頁[プレイヤーの過失...
《解 説》
Xは旅行関連事業の調査等を主な営業とする会社であるが、Y1又はY3(代表者はいずれもY2)の発行する旅行関連雑誌においてXにつき調査方法がずさんかつ客観性に欠けるなどと和文で掲載され、Xが抗議した後も英文で同様の記事を掲載されたと主張し、Y1及びY3に対し和文及び英文による謝罪...
《解 説》
一 事案の概要
被告Y1の乗車した車両が、原告の経営する駐車場に無断駐車し、同人が車両に車止めを掛けようとしたことから、両者間で口論となった上、もみ合いとなり、車止めで頭部を負傷した同被告が、原告を車両に押し付け、身体の自由を拘束した上、現場に来た蒲田署警察官に対し、無断駐車...
《解 説》
一 本件は、原告らが、その居住していた建物(以下「本件建物」という。)の火災(以下「本件火災」という。)により、原告らの長女が死亡し、かつ、原告らが居住していた建物及び同建物内の什器備品等が消失したことにつき、右火災の原因は被告の製造したテレビ(以下「本件テレビ」という。)から...
《解 説》
一 本件は、新聞に掲載された被告の寄稿(本件手記)及び公開シンポジウム参加者に配付された被告作成の文書(本件文書)に、大学教授であった原告が自分の研究室の私設秘書等にセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)をした事実があったと受け取れる記載があったことについて、原告が、私設秘...
《解 説》
一 訴外A(大正一四年生)は、平成五年九月五日、下腹部及び腰部の不快感と下痢及び嘔吐の症状が続くため、Yの管理運営する「東京厚生年金病院」(以下「被告病院」という。)において診察を受けたところ、急性腸炎と診断されたため、被告病院に入院して点滴による栄養補給、抗生物質の授与等の処...
《解 説》
一 訴外A(昭和四年三月生れ)は、昭和五九年当時、袋井市立袋井東小学校の教員であったが、同年六月と七月、袋井市立袋井市民病院で精密検査を受けたところ、早期胃癌と診断されたので、同病院に入院し、同年八月一五日、同病院で、胃癌の手術を受けた。
しかし、右手術後、Aの腹腔内に挿入さ...
《解 説》
一 平成七年一月一七日、いわゆる阪神大震災が発生したが、その約二~三時間後にX所有の本件建物内で火災が発生し、本件建物と本件建物内の家財を焼失した。
そこで、Xは、本件建物と本件建物内の家財について住宅総合保険契約を締結していたY1(保険会社)とY2(保険会社)に対し、総額一...
《解 説》
パチンコ店を経営するX社は、保険会社Yとの間で平成三年一二月二二日から一年間を保険期間、パチンコ機械等を保険の目的とし、保険金額を三億三五〇〇万円とする火災保険契約を締結し、その期間満了とともに契約を更新して、平成四年一二月二二日から一年間についても付保された(第一次契約)。X...
《解 説》
一 本件訴訟に至る経緯は、次のとおりである。XとY1とは、当初、日露戦争後、右戦争に絡んで欧州大陸を中心として発生した詐欺事件の真相を解明するため、共同研究を行っていた。XとY1とは、最終的には、右共同研究の成果を共同執筆して、出版物を刊行する予定であった。原告著作物(原告第一...
《解 説》
一 Xは、漫画家であるところ、「先生、僕ですよ」という題名の短編漫画(以下「本件著作物」という。)を創作し、これは、雑誌に掲載されたほか、単行本にも収録された(本件著作物の詳細については、本判決別紙1参照)。
Y1は、Y2と共に、「地獄のタクシー」という題名のテレビドラマ(以...
《解 説》
一 X1は、「ELLE」の商標(原告商標)を商品等表示として使用し、X2、X3はバッグ等について、それぞれX1から原告商標ないしはこれを要部とする標章の使用許諾を受け、これを付した商品を製造販売している。Y1は、いずれも「ELLECLUB」を登録商標(被告登録商標)とし、指定商...
《解 説》
本決定は、特許権侵害訴訟において、文書提出命令によって提出された文書の閲覧、謄写等の方法を、裁判所の訴訟指揮権に基づいて定めたものである。
基本事件の概要は以下のとおりである。すなわち、特許権を有していたXは、Yらがこれを侵害したとして、損害賠償を請求し、損害の計算に必要な書...
《解 説》
一 本訴は、原告及び被告らを債権者とする配当手続事件において、動産売買先取特権に基づく物上代位による優先弁済権を有すると主張する原告が、右配当手続事件の執行裁判所に対し、動産売買先取特権に基づく物上代位権の行使として債権差押命令並びに転付命令を申し立て、右申立事件において右先取...
《解 説》
一 本判決は、どぶろく「役人ごろし」事件に対する控訴審判決である。
第一審判決は、①無免許で雑酒合計約三リットルを不特定の客二名に業として販売して酒類の無免許販売業をし、②無免許で雑酒合計約六七・一五リットルを無免許で製造して酒類の無免許製造をしたと認定し、被告人を懲役四月(...
《解 説》
強制採尿は、捜索差押状又は捜索差押許可状によって行われるので、その執行又は実施にあたっては夜間執行の制限があり、令状に夜間執行許可の記載がなければ原則として「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることはできない」(捜索差押状については刑訴法一一六条、一一七条、...
《解 説》
本件は、いわゆる訴因変更の時期的限界が問題となった事例である(事実認定上の争点もあるが、この点の紹介は省略する。)。
判決の認定によれば、本件訴因変更に至る経緯は、大要次のようなものである。
H6・11・19 強盗傷人罪で通常逮捕
H6・11・21 強盗殺人未遂罪で勾留
...
《解 説》
一 本件は、越谷市に居住するXと選定者Aが、越谷市長(以下「原処分庁」という。)が決定し、平成八年度固定資産税課税台帳に登録された本件土地の価格等について不服があるとして審査請求したところ、Y(越谷市固定資産評価審査委員会)がこれを棄却したので、Xが選定当事者として、(一)右決...
《解 説》
一 本件事案の概要及び訴訟経過の概略は、次のとおりである。Yは、父Aの生存中、無断で銀行貸金庫からA所有の株券、預金証書を秘かに持ち出し、その売却代金及び払戻金を着服した。AとXら兄弟は、昭和五〇年七月一六日に右事実を知り、Yに財産の返還を求めたが拒否された。Aはまもなく死亡し...