最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、平成七年七月二三日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙(以下「本件選挙」という。)について、千葉県選挙区の選挙人が千葉県選挙管理委員会を被告として、公職選挙法の議員定数配分規定が憲法一四条一項等に違反するものであり、これに基づく選挙も無効であると主張して、公職選挙...
《解 説》
一 抵当権の物上代位の目的となる債権が譲渡され対抗要件が具備された後においても、抵当権者が物上代位権を行使することができるのかどうかは、古くからの法律学上の論点であり、大審院判例はこれを否定していた(大決昭5・9・23民集九巻九一八頁、大判昭17・3・23法学一一巻一二号一〇〇...
《解 説》
一 事案の概要
原告は、昭和三八年からエホバの証人の信者である。エホバの証人は、聖書の中で「血を避けなさい」という言葉が何度も出てくることから、エホバ神が人間に対し血を避けることを指示していると考え、従って、ひとたび体の外に出た血を体内に取り入れることはできないとの信念を有し...
《解 説》
一 民法五〇一条五号には、保証人と物上保証人の間における代位の割合は「頭数」によるべきであると規定されているが、本件の主たる争点は、単独所有であった物件に担保権が設定された後、これが弁済までの間に共同相続により共有となった場合に、この「頭数」について、相続人をそれぞれ一名として...
《解 説》
一 本件は、預託金会員制ゴルフクラブにおいて、クラブ入会契約に際して会員が預託した預託金につき、その相続人が、当該会員が死亡して会則に定める資格喪失事由が生じたとして、預託金の返還を請求した事案である。本件の争点は、ゴルフクラブの会則上、預託金返還の始期が到来したと解することが...
《解 説》
一 本件は、破産管財人が破産者のした代物弁済行為を否認して、その相手方に対して目的物の価額の償還を求めた事件である。
1 Aは、Yから本件物件(紳士服)を仕入れ、これをBに転売した直後に手形不渡りを出して支払を停止した。
2 Aは、Yから本件物件の返還を求められたため、Bと...
《解 説》
本判決が引用している最三小判平9・11・28は、本誌九六一号一二三頁において紹介したとおりであるが、その判示事項、判決要旨は、本件において「破産者の財産に対する滞納処分手続」とされているところが、「破産者所有の不動産に対する競売手続」とされていた。すなわち、右最三小判は、破産者...
《解 説》
本件は、岡山県赤磐郡山陽町の町長が同町広報誌に掲載した記事中に選挙での支持を訴えるなど違法な部分があることを理由として、同町住民が同町に代位して町長に対し広報誌発行費用一〇〇万円の損害賠償請求をした住民訴訟である。
原判決(岡山地判平8・4・10)は、同記事中に違法部分があり...
《解 説》
一 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(法)は、風俗営業の営業所が良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める規準に従い都道府県の条例で定める地域(制限地域)内にある場合には営業許可を与えてはならないとし(四条二項二号)、東京都...
《解 説》
M県にある某池(直径約一キロメートルの火山湖)のほとりでX1は貸しボート業及び遊覧船業、X2とX3は食堂及び土産物販売店を営んでいるものであるが、平成五年六月から九月にかけての集中豪雨の結果池が氾濫し、建物に浸水するなどの被害を受けた。Xらは、池から取水する用水路及びその水門の...
《解 説》
一 本件は、更生会社であるXが課税通達に従って申告納付した法人税について、その後右通達で示された法解釈に誤りがあるとして減額更正がされ、これにより生じた過納金について国税通則法五八条に基づきこれに加算して還付される還付加算金の起算日が争われた事例である。
国税通則法五八条一項...
《解 説》
一 第二審で当事者となった者らとの関係に限って述べると、本件は、京都市の住民であるXらが、京都市民生局及び住宅局の職員で専決権者であったYらにより、他府県等の同和担当者等との懇談会等の会合に要したとの名目で支出された本件公金につき、右懇談会等の会合が実際に行われていないので違法...
《解 説》
Y県知事夫妻、県議会議員一一名及び随行職員八名は、公費でタイ王国とシンガポール共和国に五日間の視察旅行をしたが、Yは右視察に際して議員らにそれぞれ三万円宛の餞別を公費から支出した。Xら県の住民一一名は、右餞別は執行機関からこれを監視すべき役割を負う議員に対し交付されたものであり...
《解 説》
一 本件は、大手外資系コンピューター会社乙に一〇年間勤務していたXが、Yからヘッド・ハンティングされて採用内定(本件採用内定)に至り、乙に退職届を提出してYへの入社準備をしていたところ、Yが経営危機に陥り、XY間の話し合いも不調に終わり、YがXに対して内定取消(本件内定取消)を...
《解 説》
Xは、Yの従業員であるが、昭和五二年九月二八日頚肩腕障害、右手腱鞘炎等の診断を受け、同月三〇日から病気休業し、同五三年三月には労基署長から業務に起因する疾病と認められ、労災保険法による保険給付が支給された。Yと労働組合との間においては、従業員である組合員が業務に関連し、または業...
《解 説》
一 被告は、昭和五三年一二月から翌五四年一月にかけて、いわゆる「郵政マル生反対闘争」を全国的に展開し、郵政省は被告の闘争指令に従って職場闘争に参加した組合員のうち原告ら四名を含む五八名を懲戒免職処分にした。被告は、右懲戒処分の撤回闘争(いわゆる「反処分闘争」)を組合活動として強...
《解 説》
一 運送業を営むXは、コンピューターによる営業管理システムを導入するため、Yとの間でソフト開発委託契約を締結し、Yはその開発をZに再委託した。しかし、右ソフトが納入された後も営業管理システムが正常に稼働しなかったことから、Xは、コンピュータープログラムに瑕疵があったことがその原...
《解 説》
一 事案の概要
本件は被告の営業員であった訴外甲野一郎(以下「甲野」という。)が原告らに対し、同人の勧める債券を購入すると、三週間ないし一ヶ月で購入資金の一割の利益を上げることができるとの虚偽の事実を申し向けて、これを信じた原告らから証券購入代金名下に合計六六七万円を騙取し、...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、オウム真理教(以下「オウム」)の信徒が出家に際し、夫の財産を持ち出し教団に布施として交付した点につき、教団代表者である被告Cの勧誘行為の違法性が肯定され、また、右出家の際、信徒が夫との共同親権に服する子をその福祉に著しく反する養育環境の下に拘束し、夫の...
《解 説》
一 Xは、精神科、神経科等を診療科目とする複数の病院を運営する医療法人(当時)であり、Y(弁護士)は精神医療の改革、精神障害者の人権擁護を目的とするAセンターなる任意団体の代表者である。
Xは、YがAセンター代表名義で、Xの運営する病院の勤務医、同病院に研修医を派遣していた大...
《解 説》
一 本件は、大手消費者金融会社の顧客情報が漏えいされた事件について、金融業者である原告会社X1とその代表者X2が、この大手金融会社の従業員の引き抜きや顧客リストの横流し等に首謀者として関与していること及びこれは右大手金融会社の商権荒らしと消費者金融業界の秩序破壊を企図したもので...
《解 説》
一 XとAが自動二輪車の二人乗りをしていたところ、用水路に転落し、Aが死亡し、Xが負傷した。Xは、本件事故は本件自動二輪車を運転していたAの過失によるものであるとして、Aの相続人であるYらに対して損害賠償請求をした。本件の主たる争点は、事故当時の本件二輪車の運転手がXとAのどち...
《解 説》
一 事案は、Y1所有の機船を大阪港から出港させるため、X所有の曳船が曳船作業中、両船が接触し、曳船が沈没した事故に関し、約款中に記載された損害てん補条項(以下「本件条項」という。)に基づきXがYらに対して曳船の沈没による損害賠償を求めたというものである。主たる争点は、本件条項の...
《解 説》
一 事案の概要は以下の通りである。
甲(当時四五歳)は、アルコール性肝障害や糖尿病で被告Y1(日本赤十字社)が運営する日赤医療センターに通院中であったが、深酒状態が続いていた平成五年二月六日、胸痛、腹痛症状を呈し、救急車で同センターに搬送された。しかし、甲の応対ぶりに不穏、不...
《解 説》
一 X株式会社は、S保険会社との間で、被保険者をXの代表取締役A、保険契約者及び保険金受取人をX(但し、保険金受取人の指定変更権留保)とする生命保険契約を締結し、後記のように、後に保険契約者及び保険金受取人変更の手続が行われるまで、保険料を支払っていた。
その後、Aが末期ガン...
《解 説》
一 Xは、呉服製造販売等を目的とする会社A及びBが保険会社Y1ないしY4との間で締結した被保険者をC(A及びBの名義上の取締役)、保険金受取人をA及びB、死亡保険金を五〇〇〇万円ないし一億円とする各生命保険契約(事業者保険)について、Cが契約締結後一年経過して七五歳で自殺して保...
《解 説》
一 A農業協同組合の組合員であるXらは、同組合の支店長の地位にあったBが、貸付けを装って同組合の金員を横領したこと及びその他不当な貸付けを行ったことに関し、同組合の理事の地位にあったYらに対し、組合の貸付けの検証・管理を行って右のような横領行為等がされないように注意する義務があ...
《解 説》
一 民事訴訟法による担保が金銭を供託する方法によりされた場合、その供託金取戻請求権の差押転付命令を得た者も、その担保の取消の申立をできるとするのが判例であり(大決昭5・7・4評論一九巻民訴四〇九頁、大決昭7・11・18民集一一巻二一九七頁)、実務もこれに従っている。
二 本件...
《解 説》
一 本件土地はもとAの所有であったが、Aの死亡によりX1、X2、X3(以下「Xら」という。)及びY2がこれを共同相続し、Xら及びY2の共有に属している。本件土地の北側はY1(国)所有の道路敷に、南側はY1所有の河川敷にそれぞれ隣接しており、Xらは、本件土地につき、Y2相手方とし...
《解 説》
本件は、遊漁船の船長である被告人が、総トン数約二・一トンの遊漁船に釣り客四名を乗船させて帰港するに際し、岩礁や浅瀬に挟まれた狭い海域を航行中、船尾方向から高さ約五メートルの高波を受けて遊漁船を転覆させ、釣り客三名を溺死するに至らせたという事案である。
本件では、船尾方向からの...
《解 説》
一 本件は、被告人が、白昼、覆面姿でナイフを手にして被告人の居室に侵入してきた被害者を包丁で刺殺した事案で、主として盗犯等の防止及び処分に関する法律(以下「盗犯等防止法」という。)一条一項の正当防衛の成否及びそれに関連して刑法三六条二項の過剰防衛の成否が問題となった事案である。...
《解 説》
一 本件は、現職の茨城県つくば市長が、支持者と共謀の上、次期市長選挙で再選されるために一七名に各五万円を供与し、三名に各五万円を供与しようとし、併せて事前運動をしたという事案である。
第一審では、被告人は全面的に事実を争ったが、第一審判決(本誌九五五号二八二頁)は、事実を認め...