最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
本判決は、意見ないし論評の表明による名誉棄損の不法行為責任に関するいわゆる「公正な論評」の法理の解釈適用をめぐり、従来未解明とされていた点についての考え方を明らかにしたものである。
一 本件の事案の概要は、次のとおりである。本件の原告Xについては、昭和五六年中に実行行為が行わ...
《解 説》
一 本件は、広島市内の市立中学校の一年生であったX1が、課外クラブ活動としての柔道部の練習中に、同部の二年生である柔道初段のAから大外刈りの技をかけられて転倒し、右急性硬膜下血腫の傷害を負ったとして、国家賠償法一条一項(予備的に債務不履行)に基づき、右中学校の設置者である広島市...
《解 説》
一 いわゆる旧債振替禁止条項の意義と本件事案の概要は、本判決の冒頭に要約されているところを参照されたい。金融機関と信用保証協会との間で交わされる約定は、一般に、全国信用保証協会連合会作成の約定書例に準拠したものであり、これには旧債振替禁止条項(三条)とこれに違反した場合の免責条...
《解 説》
一 本判決は、不法行為(車両衝突事故)による被害者(X)の加害者(Y)に対する損害賠償額を定めるに当たり、被害者と恋愛関係にある者(A)の右事故における過失を「被害者側」の過失として斟酌して過失相殺し、損害賠償額を減額できるか、という論点を扱ったものである。
二 本件の事案は...
《解 説》
本判決は、死亡した者に相続人はないが相続財産全部につき包括受遺者がある場合に、右が民法九五一条にいう「相続人のあることが明かでないとき」に当たり同条以下に定める配当清算手続等を経ることが必要か否かについて、最高裁として初めての判断を示したものである。
一 本件の事実関係は、次...
《解 説》
本件は、定款上株式の譲渡には取締役会の承認を要することとされている会社の内部における経営上の主導権をめぐる紛争を背景に有するものであり、本判決は、取締役の株主総会開催における職務上の義務の内容に関し、従来の判例の前提とされていた法理又はその論理的帰結というべき法理等を明らかにし...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、決定文に掲げられているとおり、競売手続の妨害目的で自己の経営する会社の従業員を交替で泊まり込ませていた自己の所有する家屋について放火を実行する前に、右従業員らを旅行に連れ出していたが、同家屋には日常生活上必要な設備、備品等があり、従業員らが犯行前の約一...
《解 説》
一 本件は、関税法一〇九条一項の禁制品輸入罪の既遂が成立するか否かが問題になった事案である。本決定が前提とする原判決の認定によれば、被告人らは、フィリピン共和国から大麻を隠匿した航空貨物を被告人が経営する東京都内の居酒屋あてに発送したものであり、右貨物が新東京国際空港に到着した...
《解 説》
一 本件は、医師資格を有しない者によるコンタクトレンズ処方のための検眼等の行為が医師法一七条の無免許医業に該当するとして、右の者と共謀した医師である被告人の罪責が問われた事案である。有罪の一審判決を維持した原判決(東京高判平6・11・15高刑四七巻三号二九九頁、判時一五三一号一...
《解 説》
一 本件は、東京地判平8・5・29本誌九一六号七八頁の控訴審判決である。したがって、事案の概要、問題点等は右地裁判決の本誌コメントを参照されたい。
この控訴審判決のコメントは、控訴審判決の意義等に簡単に触れるにとどめることにする。
二 本件事案の概要は、不法残留中の外国人(...
《解 説》
一 Xは、平成五年一一月当時、下関市立江浦小学校一年に在学中であったが、同月一九日、同校内の「なかよし広場」で鬼ごっこをして遊んでいた際、同広場内に設置している回転シーソー(以下「本件回転シーソー」という。)の握り棒が頭部に落下し、頭蓋骨陥凹骨折等の傷害を負った。
そこで、X...
《解 説》
一 甲(原告)は、市議会議員選挙に立候補し、当選した者であるが、その後、選挙法違反の容疑により逮捕勾留されたため、議員辞職願を市議会議長乙(被告)に提出した。折から議会が閉会中であったため、乙は、地方自治法一二六条ただし書に基づき議員辞職許可処分をし、市選挙管理委員会に対し、公...
《解 説》
一 Xは、建設機械の製造販売を業とするものであるが、平成七年九月六日までに、全油圧式パワーショベルHD五一二型(以下「本件物件一」という。)を、同月七日までに同パワーショベルHD五一〇型(以下「本件物件二」という。)を、それぞれ製作してその所有権を取得したうえ、所有権留保の特約...
《解 説》
一 Xは、訴外A社に対しコンピュータのリース料債権を有していたが、A社について任意整理が行われたため、A社との間で、右債権の約三割について中間配当を受けるとともに、残債権については、A社が第三者に対して提起した別件訴訟の帰趨に従って配当を受け、右配当を受けたとき又は配当原資が存...
《解 説》
Xは、大手証券会社Yとの間で株式の信用取引委託等の取引があったが、Yの社員Aらの勧誘が不法行為に当たると主張し、Yに対し総額三一四〇万円余の損害賠償を求める訴えを提起した。
本件判決は、その控訴審のものであり、原判決を引用しているため、判決理由の詳細は不明であるが、一部につい...
《解 説》
一 訴外Aは、ガス配管設備工事等を業とする訴外B会社の代表取締役であって、平成五年六月、B会社が請負った山形県米沢市所在の三階建ビルの下水設備改修工事を行っていたところ、右ビル内でガス爆発事故が発生し、全身に火傷を負って死亡した。
そこで、Aの遺族であるXらは、右事故の発生原...
《解 説》
Y1寺はY2の被包括宗教法人であり、Xらは、Y1の信徒としてその墓地について永代使用契約を締結していた者又はその祭祀継承者であるところ、Xらは、Y1において、墓地の経営につき墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)一〇条に基づく許可を得ておらず、Y1は契約者らを騙して墓地使用権の設定...
《解 説》
一 本件の原告は私立大学の助教授であり、被告らは同大学の教授及び助教授である。原告及び被告らは、被告の教授が中心となってディーゼルエンジンに関する研究を行ってきたグループのメンバーであり、多数の論文等を発表していた。
同大学では、大学院の研究科設置につき文部省の認可を得るため...
《解 説》
一 事案の概要は次のとおりである。
訴外亡A(昭和三四年生、女性)は、昭和五六年八月一六日、頭痛を訴え、翌々一八日から、Y1(個人医院)による診察を受けたが、二二日午前八時ころ、軽度の運動障害が認められたため、脳脊髄炎の疑いが生じ、同日、Y2病院(脳神経外科のない総合病院)に...
《解 説》
一 X有限会社は、平成五年四月、訴外Aが経営する株式会社B不動産に対し、六〇〇〇万円を弁済期を定めずに融資したが、その際、Aが代表取締役をしている訴外C会社が振り出し、Aが無限責任をしているY合資会社の引受けのある本件為替手形をその担保として受け取ったので、Y会社に対し、右為替...
《解 説》
一 Xは、平成元年七月当時、熊本県宇土市の市会議員であったが、同月二七日の深夜、その所有の店舗、居宅等が火災により焼損したため、Y1ないしY3(保険会社、共済組合等)に対し、総額三〇〇〇万円の火災保険金等を請求した。
これに対し、Yらは、(一)出火原因が不審であること、(二)...
《解 説》
一 本件は、スペインの著名な画家サルバドール・ダリの作品の著作権の譲渡を受けたと主張する原告が、ダリ作品の展覧会を行うに際して展示作品を複製、掲載したカタログを制作した展覧会の主催者である被告A及び展覧会場を提供しカタログを販売した被告Bに対し、著作権侵害を理由に、右カタログの...
《解 説》
本件は、M県I市に本店を有するX「万屋食品株式会社」が同市に本店を有するY「株式会社万屋薬品」に対し、主位的には不正競争防止法(平成五年法律第四七号による改正前のもの)一条一項二号、予備的には商法一九条ないし二一条に基づき、Yの商号の使用の差止め及び商号登記の抹消を求めた事案で...
《解 説》
一 中華人民共和国には、養子縁組届出等の法的手続をとらない収養関係をも、養親子関係として法的に保護する「事実上の収養」(事実養子)という制度があるが(陳明侠著「中国の家族法」敬文堂二〇〇頁等参照)、中国の法制度の不備、日本語文献の稀少性から、その該当性の判断は困難である。本件は...
《解 説》
一 本件は、賃貸人Yと賃借人Xとの間でされた建物賃貸借に係る起訴前の和解に対する請求異議請求訴訟である。
Xは異議事由として、この賃貸借は一時使用ではないのに、一時使用目的とされている旨主張したほか、本件和解調書は、「民事上ノ争」がないのに作成された無効のものであると主張した...
《解 説》
一 本件は、現職の茨城県つくば市長である被告人が、次期市長選で再選を果たすため、支持者と共謀の上、自己のために投票すること及び自己のための投票のとりまとめなどの選挙運動をすることの報酬として、選挙人ら二〇名に対し各五万円合計一〇〇万円を供与ないし供与しようとしたことについて、公...
《解 説》
一 平成四年一二月から平成六年五月までの間に、東京地裁に第一次から第四次までのワラント取引集団訴訟が提起された。原告総数は一一六人、被告とされた証券会社は一九社である。本件は、そのうちの第一次訴訟の一原告に関する判決である。
二 本件判決が認定した事実関係とその判断の要旨は次...