最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 いわゆる戸塚ヨットスクール事件は、家庭内暴力等の情緒障害児に対する更生に関する問題として、社会的耳目を集めたものであるが、戸塚ヨットスクールをめぐる一連の刑事事件は、関係者一五名が傷害致死、監禁致死、傷害等の罪に問われ、全員について有罪判決(名古屋地判昭60・2・18本誌五...
《解 説》
一 Xは、我が国に不法入国した韓国人夫妻の子として我が国で出生した韓国人であって、法務大臣から出入国管理令五〇条に基づき特別在留許可を受け、同令四条一項一六号、特定の在留資格及びその在留期間を定める省令二条三号に基づく在留資格を取得し、その後、出入国管理及び難民認定法(以下「入...
《解 説》
一 遺産分割等の前提問題である特別受益の有無(及び額)の存否の確認訴訟の適否についての最高裁のはじめての判決である。事案は、X及びYらはいずれもAの相続人。Aの遺産分割の調停において、相続人のXは、一部の相続人が特定の不動産を生計の資本として贈与されているから、その価額を持ち戻...
《解 説》
一 土地及び地上の建物が同一の共有者の共有に属する場合に、一人の共有者の土地の持分のみ競売され第三者に帰属するに至ったときに、民事執行法八一条の規定による法定地上権の成立を否定した最高裁の判例である。
事案は次のようなものである。被告(甲)は、土地とその上の建物を姉(乙)と共...
《解 説》
一 刑法二四七条(平成七年法律第九一号による改正前のもの)にいう「財産上ノ損害」について、通説は、被害者の全体財産の価値が減少することをいい、一方で損害があっても、他方で被害者にこれに対応する反対給付があるときは、「財産上ノ損害」があるとはいえないとしている(木村亀二・刑法各論...
《解 説》
一 本件は、漁業等を営む日本法人のウタリ共同株式会社の代表取締役である被告人が、同会社の業務に関し、動力漁船第二新博丸船長の大友勝らと共謀の上、北海道知事の許可を受けないで、平成元年一〇月二〇日ころから同年一一月五日ころまでの間、色丹島から一二海里内及び一二海里を超え二〇〇海里...
《解 説》
一 原告所有地に史跡指定処分がされたとの官報公告がされているが、本判決は史跡指定処分につき権限を有する文化財保護委員会の決定はされていないと判断した。その理由は判決理由一を参照されたい。公告がありながら、それが権限のある機関の決定に基づかないと認定された例は少ないように思われる...
《解 説》
千葉県の「宅地開発事業等の基準に関する条例」によれば、ゴルフ場の開発事業を行おうとする者は、当該事業計画について県知事と協議し、知事の同意を得なければならないものとされ、同条例施行規則によれば、協議申出書は、開発地域の所在する市町村長及びその区域を管轄する支庁の長を経由して行わ...
《解 説》
一 Xは、その所有土地を訴外A、Bに対して事業として賃貸していたが、右土地上にマンションを建築して賃貸する計画を立て、昭和五四年三月、Aの借地権を九〇〇万円で、また、Bの借地権とB所有の土地及び建物を九三〇〇万円でそれぞれ買い受けた。そして、Xは、昭和五四年四月、マンション建築...
《解 説》
一 本件は不法行為に基づく国、酒販組合及び酒類製造会社四社に対する損害賠償請求(事実整理では国に対する関係でも不法行為となっているが、Xは国との関係では、国税滞納に伴う差押、公売及び酒類製造免許取消の違法を主張しているから、この関係では国家賠償と思われる)であるが、ここで紹介し...
《解 説》
一 本件は、東京都日の出町(以下「町」という。)らと町自治会との間で締結された公害防止協定に基づいて訴外町民が廃棄物広域処分場の地下水の水質測定データ等の閲覧謄写請求権保全仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という。)を得たところ、被告町長が右開示義務の履行を拒否したため町に対す...
《解 説》
XはY通信社の記者であるが、昭和五五年六月末、同年八月二〇日から九月二〇日までとする年次有給休暇(二四日)の時季指定をした。これに対しYは、同年九月六日から同月二〇日までの間の休日を除く一〇日間について事業の正常な運営を妨げることを理由に時季変更権を行使した。Xは、予定どおり休...
《解 説》
本件は、曹洞宗の寺院であるX寺(代表役員A)が、檀家であったYらに対し、Yらの墳墓が建立されている墓地について、墓地使用契約が民法上の使用貸借契約であることを前提に、Yらが離檀し、他宗派の典礼で葬儀を行ったことを理由にその墳墓の収去と墓地明渡を求め(主位的請求)、あるいは、Yら...
《解 説》
一 Xは、愛知県豊田市大畑町の地域に居住する一定の資格を有する者によって構成されている入会団体であるが、入会地である本件土地について共有権を有すると主張しているYらに対し、本件土地がXの構成員全員の総有に属することの確認等を求めた。
一審名古屋地判平1・3・24(昭和五三年(...
《解 説》
Xは弁護士であるが、A社を原告、Yを被告とする建物の明け渡し等の訴訟事件をYから受任した。同事件はYが希望した立退料を上回る四〇〇〇万円をYが受け取るとの和解が成立して終了した。右和解には明け渡し義務の怠りに対する違約金の定めがあつたので、XはYに早期の明渡しを説得し、Yは立退...
《解 説》
一 本件は、XとY会社との間でXがテレビ番組を制作し、Y会社がこれに対する報酬を支払う旨の契約を締結していたところ、Y会社が報酬金の一部を支払っただけで、残金を支払えなくなったので、X・Y会社間で契約を合意解約し、既払報酬金については右テレビ番組の放映の際に得られるコマーシャル...
《解 説》
一 本件は、確定判決に基づき、加害車両の保有者から損害賠償金各一一四〇万円余(被害者の過失が六割と認定された)を受領したXら(被害者の相続人)が、自賠法一六条一項に基づき、加害車両の自賠責保険会社Yに対し、自賠責保険金限度額(死亡による保険金三〇〇〇万円)と右受領金との差額金の...
《解 説》
一 訴外Aは、昭和六二年一二月、胃に不快感を覚えたので、Yの開設する病院で内視鏡検査を受けたところ、胃癌が発見されたため、幽門側胃切除の手術を受けた。
そして、Aは、昭和六三年一月、同病院を退院し、その後週に一回の割合で通院して経過観察を受けていたが、平成二年八月、内視鏡検査...
《解 説》
一 原告(X)は、漫画家であり、Y2が編集し、Y1が発行するコミック誌に掲載する原画合計二四枚を作成し、Y2に引き渡した。右原画の登場人物は皇族を思わせるものであり、セリフ等にも皇室に対し使われることの多い敬語が使用されていたため、Y2の編集長は右原画の絵柄、セリフ、書文字の合...
《解 説》
本件は、再審原告(X)に対して交通事故に基づく損害賠償を命ずる確定判決について、Xが、第一審の当事者本人尋問において相手方当事者(再審被告・Y)が宣誓のうえ行った陳述に虚偽があり、その虚偽の陳述が判決の証拠になったとして、同判決に民事訴訟法四二〇条一項七号、同条二項後段に該当す...
《解 説》
Xはゴルフ場の経営等を目的とする会社であり、行政区Y1に隣接する土地にゴルフ場の建設を計画していたところ、平成元年一二月に開発許可申請上必要とされるY1の同意書を得た。その後、Xのゴルフ場に対する反対運動が持ち上がり、Y1が水害により被害を受けたことを契機として、Y1は同三年一...
《解 説》
一 X1は女優、X2はX1と専属出演契約を締結している会社である。Y1は写真集の企画制作会社、Y2は写真集の出版社である。Yらは、X1の写真(ヘアヌードを含む。)を使用した写真集を出版しようとしていた。Xらは、右写真集の出版は、写真集に使用する写真はXらの事前の承認(フィルムチ...
《解 説》
一 Xは、Yに対し、給料債権を内容とする債務名義に基づいて、不動産の強制競売を申立て、その際の予納金四〇万円について、訴訟上の救助を申立てたところ、本決定によれば、原決定は、競売対象である不動産は建物の六分の一の共有持分であるが、建物の共有持分の市場性は極めて低く、買受人が出現...
《解 説》
Yは、ホテル業等を営む資本金四〇〇〇万円の株式会社A(元代表者X)に対する債権を譲り受けた後、裁判所にAが支払不能又は債務超過の状態にあることを理由に破産申立てを行い、その決定を得た。Xは利害関係人として即時抗告を申し立て、Aは資産評価の高い優良なホテルを有していて、正常に営業...
《解 説》
勾留状の発せられた甲事実と勾留状の発せられていない乙事実とを併合して審理し、それぞれの罪につき別の刑を言い渡す場合、未決勾留日数を乙事実に算入すること自体は禁止されていないと解される(最判昭30・12・26刑集九巻一四号二九九六頁)。最判昭39・1・23刑集一八巻一号一五頁は、...
《解 説》
一 本件は、同一の日時場所における同一の被害者に対する傷害と窃盗の二つの訴因により起訴された事件について(判決添付の別紙の本件公訴事実(訴因変更前のもの)参照)、裁判所が、起訴状の朗読後、被告人の意見陳述の前に、検察官に対し、本件公訴事実のうち傷害について動機が記載されていない...
《解 説》
一 本件は、沖縄軍用地土地・物件調書代理署名職務執行命令訴訟におけるいわゆる反戦地主らの補助参加の申出を却下した決定に対する特別抗告事件であり、職務執行命令訴訟における補助参加の許否という、これまでに議論がされたことのなかった論点について、初めて最高裁の判断が示されたものである...
《解 説》
Xら二八名は自動車部品製造会社Yに二か月の雇用契約により採用され、更新を続けた女子臨時社員であるが(最古参者は昭和四三年一月採用)、労働内容が正社員と同様であるのに、賃金の額において違法に差別を受けたと主張し、不法行為に基づき、平成二年一〇月以降の差額賃金相当の損害金、慰謝料及...