最も長い歴史をもつ判例実務誌
大阪地方裁判所(小林茂雄・岡部崇明・井垣敏生・中田昭孝・松山恒昭・大森康弘)
大阪弁護士会(安若俊二・西岡芳樹・中井康之・菊元成典・久保井一匡・栗原良扶・木内道祥・井上英昭・中本和洋)
《解 説》
一 事案の概要は、次のようなものである。
今治市は、瀬戸内海に面した白砂の海浜である「織田が浜」を埋め立て、都市計画法に基づく都市計画公園である「東村海岸公園」を作ることを企画し、昭和六二年三月二日、公有水面埋立法に基づく埋立免許(以下「本件埋立免許」という。)を得て、同年五...
《解 説》
一 Xら二名は陸上自衛隊員であったが、ほか四名の自衛隊員とともに昭和四七年四月二七日、防衛庁正門前に制服を着て赴き、報道関係者ら不特定多数の者が集まっている中で、自衛隊の沖縄派兵及び立川移駐の中止等を訴える内容を有し、全員の官職、氏名を記載した要求書を読み上げ、これとともに同趣...
《解 説》
一 本件は、業務用ストレッチフィルム(いわゆるラップ)の製造・販売をする業界大手の会社(三井東圧株式会社以下八社)の役員又は社員が、平成二年七月及び一〇月の二回にわたり、各会社の業務に関し、右フィルムの販売価格を一本当たり一五〇円(第一回)又は二五〇円(第二回)協調して値上げす...
《解 説》
一 監獄の在監者に対する懲罰処分については、監獄法(以下「法」という。)五九条が「在監者紀律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ処ス」と定めており、これを受けて、法六〇条が「叱責」から「重屏禁」までの一二種類の懲罰を定めている。もっとも、このうち「重屏禁」は、昼夜暗くした罰室に屏居させ、しか...
《解 説》
一 思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や表現の自由を保障した憲法二一条の規定等との関係で、監獄在監者の文書閲読の自由に対する制限が許容される限界をどのように考えるべきかについては、種々の議論があるところである。この点については、よど号乗っ取り事件の新聞記事の抹消...
《解 説》
一 いわゆる志登茂川水害訴訟についての最高裁判決である。
昭和四九年七月二四日から翌二五日にかけての豪雨により三重県津市北部を流れる二級河川志登茂川が氾濫し、その周辺に居住する原告らの家屋に床上・床下浸水の被害が生じたが、原告らが河川管理の瑕疵を主張して、管理者である国と費用...
《解 説》
Y知事は、鴨川の改修に関して学識経験者等の意見を聞くために鴨川改修協議会を設置した。右協議会の会議は非公開とされ、会議終了後審議内容の概略が発表されることとなった。同協議会の第五回会議においてダム構想が成立し得るか否かの検討資料とするために本件「ダムサイト候補地点選定位置図」を...
《解 説》
一 本件は、業務上横領及び二件の虚偽有印公文書作成の罪で起訴され無罪判決を受けたXが、検察官の違法な公訴提起により損害を被ったとして、国家賠償法一条一項に基づきY(国)に慰謝料と刑事事件に要した弁護費用の賠償を求めた事案である。
二 Xは、昭和四一年一二月から昭和五三年一二月...
《解 説》
一 Xは、A協会(個人経営)の会員として、被告らがそれぞれ制作したテレビ番組等にエキストラとして出演していた。本件は、Xが、「A協会は有料職業紹介業の許可を得ているだけで、Xのエキストラ出演は、XとYらの間で暗黙に成立した各雇用契約によるものである」と主張し、Yらに対してそれぞ...
《解 説》
旧国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)は旧国鉄の分割・民営化に反対し、昭和六〇年一一月二八日から二九日にかけて第一波、同六一年二月一五日に第二波のストライキを打ち、これにより千葉方面の列車ダイヤが大幅に乱れた。旧国鉄当局は第一波ストについて解雇二〇名の、第二波ストについて解雇八名...
《解 説》
本件は、マンションの売買について、瑕疵担保責任に基づく解除が問題になった事案である。
原告は被告から、新築後まもないマンション及びその敷地、並びにそれに隣接する土地を一括して買い受けたが、右マンションは著しい雨漏りや水道管の破裂事故・浄化槽からの汚水漏れ等が発生する欠陥建物で...
《解 説》
一 事案の概要
原審の遺産分割の審判に対し、一当事者が即時抗告をした後、他の当事者が即時抗告をしたところ、原審は、最初の即時抗告の抗告理由の一部を容れて、右審判の主文の一部につき再度の考案による更正審判をした。その後、別の他の当事者が附帯抗告をした。右各抗告及び附帯抗告とも、...
《解 説》
Xは、鉄道運輸業など多角的な営業目的を有する会社にして、多種多様な事業を行う企業グループの中核でもあり、その商号の要部ないし略称たる「阪急」(原告表示)は、X及びその企業グループの営業を示す表示として日本国内で周知著名である。他方、Yは、昭和二六年九月一九日から「阪急電機株式会...
《解 説》
本件は、簡易裁判所が期間を徒過してなされた仮執行宣言付支払命令に対する異議申立を適法なものとして地方裁判所に事件記録を送付したのに対し、右異議申立はその申立期間を徒過し不適法であるとして、判決をもってこれを却下した事案である。
ところで、簡易裁判所が不適法な異議を適法として処...
《解 説》
本件は、同一人の所有する土地とその地上建物の双方に共同根抵当権が設定された後に、建物が取り壊され、当該所有者により建物が再築された上、新建物に共同根抵当権を設定しないまま、それが第三者に譲渡された場合に、当該土地の根抵当権の実行としての競売において、新建物のために法定地上権が成...
《解 説》
一 本件は、いわゆる明治大学替え玉入試事件としてマスコミに大きく取り上げられた事件の控訴審判決である。事案の内容は、明治大学の元職員や替え玉受験生らが共謀の上、同大学の入学選抜試験に際し、替え玉受験生らが志願者本人になりすまして受験し、答案を作成・提出したというものであり、この...
《解 説》
一 本件は、現職の大牟田市議会議員が、支援者の債務について連帯保証等をした結果、自己の議員報酬請求権を差し押さえられ、生活に窮するようになったため、共犯者を架空債権者に仕立て、その共犯者が受ける配当金を自己に回してもらうという方法により強制執行の免脱を企図した事案である。市議会...
《解 説》
一 本件は、タクシー会社に運転手として勤務していた被告人が、強引に退職させられたこと等に憤激し、同社の売上金を強取しようと企て、売上金を押送する同社営業課長の運転する自動車に同乗し、途中、売上金の入ったビニール袋をつかんで奪い取ろうとしたしたところ、逆に奪い返されたため、所携の...
《解 説》
本件は、一審における裁判所の措置に判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反があったとして、原判決を破棄し、一審に差し戻した控訴審判決である。
事件は暴力団組長による恐喝未遂事件であるが、弁護人が検察官提出の書証に全て同意したため、裁判所も直ちにこれを採用し、その後弁...