最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、仙台市立支倉保育所(本件保育所)に通う一三〇名の児童のうちの三九名(Xら)が、本件保育所の南側に隣接して建築中のワンルームマンション(本件建物、塔屋を除く建物本体の高さ二〇・二〇メートル、地上七階・地下一階建て)につき、本件建物の建築主(Y1)と建築会社(Y2)に対...
《解 説》
ガス事業法は導管によりガスを供給する事業として、一般ガス事業と簡易ガス事業(簡易なガス発生設備においてガスを発生させ、一の団地におけるガスの供給地点が七〇以上のもの)の二種のものを定めている(同法二条。なお、ガスの供給地点が七〇未満のものについては、同法の規制をうけない)。Xら...
《解 説》
本件は、法人税を滞納している株式会社を管轄する豊島税務署長が、同社所有として登記されている土地建物について滞納処分としての差押登記をしたところ、右物件の真実の所有者であるとする原告から、これを抹消せよとの請求を受けた事案である。その所有者であるとする原告からは、右物件について、...
《解 説》
Yは昭和六三年七月二九日付でXに対し、一般旅券の返納命令処分をした。本件は返納命令処分の執行停止申立事件の却下決定に対する抗告審決定である。本件決定は、原審決定を引用して、Xが具体的な海外渡航計画及びその目的ないし必要性について何ら主張、疎明していないから、回復困難な損害を避け...
《解 説》
本件は、出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)に基づき難民の認定を申請したが却下された者が、その却下処分を争う訴えを提起し、訴訟進行中、退去強制令書の執行を受けて、国外に退去させられた場合において、その者の右訴えの利益が失われるとしたもので、初めての判断である。法は、難...
《解 説》
Y町ではA小学校甲分校を平成四年三月三一日(その後の条例により平成五年三月三一日に変更)に廃止し、A小学校に統合する旨の条例が制定され、公布された。甲分校が所在する地区に住むXらは、①Y町に対し条例の制定の取消し、②Y町長に対し公布の取消し、③Y町長、Y町及びY町教育委員会に対...
《解 説》
一 Xは、A市の住民で、A市が進めている土地区画整理事業の地権者であるが、A市公文書公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき、A市長Yに対し、①土地区画整理審議会の議事録、②同審議会の意見の内容、③仮換地前後の測量図面、④右審議会委員の名簿について、その公開を請求した。Yは...
《解 説》
Y会社では、定年前に退職する社員に対する早期退職制度(以下「本件制度」という。)が制定されていた。この制度は、割増退職金を支給するものであり、「満四八歳以上五八歳未満の社員でこの制度による退職を希望し、会社が認めた者に適用する」こととなっていた。本件は、雇用契約を解約告知してY...
《解 説》
一 原告は、被告の引っ越し作業責任者として稼働する従業員であったところ、顧客から被告の営業所に、原告外三名が担当した引っ越し作業中に財布がなくなったので至急探してほしい旨の依頼があり、この依頼を受けて、営業所長は、右作業から戻った原告ら従業員を守衛室に呼び、原告から右顧客宅にお...
《解 説》
一 賃貸土地の所有者がその所有権と共にする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否について、通説は、賃貸人の地位は債務を含むものであることからすれば、その譲渡は本来債務引受の方法によることを要し、賃貸人と譲受人との間の契約のみではできないというべきであるが、賃貸人の債務は実際上...
《解 説》
一 事案の概要
原告は、昭和六二年九月に訴外Mとの間で信用組合取引を開始し、被告は、同六三年二月、原告との間でMを主債務者とする保証期間・保証限度額の定めのない包括根保証契約を締結した。被告とMは、昭和五七年に協議離婚したもと夫婦で、離婚後は没交渉であったが、Mが同六二年三月...
《解 説》
一 Xは、平成元年一〇月五日夜、Y1の運転する自動二輪車の後部座席に同乗して、名古屋市内を走行中、Y1の運転ミスにより道路上に転倒し、頭蓋骨骨折等の重傷を負った。
そこで、Xは、加害運転者Y1と加害車両の保有者Y2に対し、介護費、逸失利益、慰謝料等合計約一億一五〇〇万円の損害...
《解 説》
一 本件は、精神疾患で入院治療中の者が自殺したことにつき、病院の責任が争われた事例である。
訴外A(判文に年齢は現われていないが、認定事実中に「若い子」という表現がある。)は昭和五二年以降幾つかの精神病院に入院したことがあり、昭和五六年一二月以降は被告・被控訴人Yが運営する病...
《解 説》
一 本件で原告Xは七名いるが、請求の原因の骨子はいずれもほぼ同じで、Xらは医学的には何ら問題はないか、又は軽い治療で済む程度の疾患であったのに、昭和五三年から五五年にかけて、産婦人科の開業医であるY医師はでたらめな病名を付けてXらを入院させ、妊娠中絶、子宮摘出、卵巣摘出等の手術...
《解 説》
一 X1は、昭和五九年九月当時、福岡大学附属大濠高校の二年生であったが、同月一六日、同校で行われた体育祭の色別対抗の棒倒し競技に参加し、守備陣の先頭に立って相手方の攻撃の防止に努めていたところ、相手方に腹部を蹴られて転倒したうえ、腹部を数回踏みつけられたため、脾臓破裂等の傷害を...
《解 説》
一1 本件は、農家の遺産をめぐる共同相続人四人(二男・二女)間の遺産分割・寄与分をめぐる紛争であり、抗告審の認定によると、原審判は、農家の跡取りとして相続財産である農地等の維持管理に努めるとともに被相続人である父の療養看護に当っていた長男(相手方)について寄与分を七割と評価し、...
《解 説》
一 株主が代表訴訟を提起するにあたっては、まず、会社に対し書面で取締役の責任を追及する訴えを提起するよう請求しなければならない(商二六七条一項)が、その請求を受けるについては監査役が会社を代表する(同法二七五条ノ四後段。もっとも、商特法上の小会社では代表取締役が会社を代表する(...
《解 説》
一 本件のうち甲事件は、訴外宮崎県知事から本件共同漁業権(あゆ漁業等を内容とする内共第四号第五種共同漁業権)の共有請求の認可を受けたX組合が、既に宮崎県知事から本件共同漁業権の免許を受けているY1、Y2、Y3の各組合に対して、本件共同漁業権の共有確認及び本件共同漁業権の行使に関...
《解 説》
一 本件は、原告(開発業者)が、合計戸数一〇〇〇戸を超えるマンションを建設する計画に基づき、被告(町)に対して給水の申込みをしたところ、被告が「開発行為又は建設で二〇戸(二〇世帯)を超えるものには給水しない。」と被告制定の水道事業給水規則三条の二第一項(以下「本件給水規則」)と...
《解 説》
本件は、Xがアメリカ合衆国ネヴァダ連邦地方裁判所の言い渡した判決に基づき執行判決を請求したケースである。ネヴァダ連邦地方裁判所の判決が確定していること、Yは呼出状の送達を受けたこと(請求原因事実)及びYの一部弁済(抗弁事実)については、当事者間に争いがなく、相互保証(民訴法二〇...
《解 説》
一 本件は、横浜市の住民約数百名(以下単に申立人という)が、横浜市(以下単に市という)を相手方として、市が西区所在の掃部山公園内に建築を予定している能楽堂の建築について、同公園の自然環境を悪化し、子供達の遊び場を奪い、保護者等の権利を侵害する違法な行為であるから、環境権及び人格...
《解 説》
申立人は、約二年前、相手方との間で抵当権設定契約を結んだ後、抵当権設定の本登記や仮登記を取得しないままでいたところ、相手方が登記手続に応じない状態になったとして、不動産登記法三三条の仮登記仮処分を求めた。
裁判所は、一般論として仮登記仮処分の手続における申立人の疎明責任につい...
《解 説》
一 競売の目的土地の一部について、抵当権設定前からの賃借人が、賃借地上に建物(競売の対象外)を所有していたが、その建物と賃借権を土地所有者に売る契約をした。しかし、売買代金の一部が未払いのままである。賃借人は、代金の支払を受けない限り、建物から退去しないと主張している。そこで、...
《解 説》
本件は、発行会社が株券の発行を遅延している株式について、その差押えが求められた事件である。
株券が未発行である場合としては、次の場合がある。
ア 単に会社が発行を遅延している場合
イ 株主が株券不所持の申し出をして、会社が株券を発行しない措置をとった場合(商二二六条ノ二、...
《解 説》
一 本件は、不動産競売申立事件において、所有者以外の第三者が、差押後に、建物退去を命じる売却のための保全処分に違反して、執行妨害目的で競売建物を占有していることが、競売建物の価格を著しく減少する行為に該当するとして、執行官保管の売却のための保全処分が認められた事例である。
本...
《解 説》
一 本件の概要は、次のとおりである。
被控訴人は、控訴人(金融業者)との間で、控訴人発行のキャッシュカードを利用して限度額まで繰り返し金員の借入れができる契約(以下「本件契約」という。)を締結し、その際、右契約書の連帯保証人欄に妻の名前を記載して捺印した。その後、控訴人は、被...
《解 説》
本件は、被告人(英国人)が弟と共謀の上、早朝にコンビニエンスストアで模造けん銃を突き付けるなどして現金一七万円を強取したという起訴事実について、被告人には弟との共謀が認められないとして無罪が言い渡された事案である。
本件では、弟が単独で右事実どおりの強盗の実行行為をしたことと...
《解 説》
本件は、ピクニックセンター内のボート店で飲酒休憩していた被告人に道案内を頼んできた女性(当時五六歳)と同園付近を散策中、同女を失神させて姦淫しようと所携の丸太杭でその頭部付近を強打したが、失神せず、犯行露見防止と強姦を遂げるため、殺意をもって更に頭部を強打し、同女を死亡させて殺...
《解 説》
有罪判決には、理由として「罪となるべき事実」を示さなければならないが(刑訴三三五条一項)、傷害等の罪においては、傷害の部位、程度を明らかにしなければならず、かつ傷害の程度を表すためには、加療期間を判示するのが例であるとされている(司法研修所・六訂刑事判決書起案の手引一三〇頁)。...
《解 説》
一 本件は、公判期日において、弁護人が、勾留中の被告人に対し弁護人が持参しているメモ用紙及び筆記用具の使用を認めること及び被告人が公判廷で作成したメモを直接弁護人に交付することを求めたのに対し、原審裁判官がこれを許さず、前者については拘置所の方で用意しているメモ用紙及び筆記用具...