最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一、予防接種は地域の免疫水準を高めて疾病の蔓延を防止するという公共の目的の故に強制され、あるいは勧奨されるものである。その結果、被接種者の一部の者に重篤な副反応が生じ、後遺障害を残した場合の救済について、現在、東京、大阪、名古屋、福岡の各高等裁判所には、公共の利益のために国民の...
《解 説》
一、Yは、崖上の借地に建物を所有していたが、昭和五五年、これをXに借地権付きで売却した。Xは、建物を取得するとともに賃貸人(敷地所有者)の承諾を得て賃借権を承継し、この建物に居住した。ところが、崖の擁壁に水抜穴がなかったために翌年の秋の台風の大雨で擁壁に傾斜、亀裂が発生し、本件...
《解 説》
一、事案の概要
事案は、夫の不貞を原因とする妻からの離婚請求。一審では原告勝訴。記録中の判決言渡期日調書の次に綴られた判決原本には、裁判官の署名・捺印がある。控訴期間から一二日後れて被告から控訴。被告へ送達された判決正本には裁判官の氏名の記載がなかったという。二審は、控訴期間...
《解 説》
一、行政事件訴訟法上の訴訟参加の制度として、同法二二条の第三者の訴訟参加と同法二三条の行政庁の訴訟参加の規定がある。
そして、行政庁が、行政事件訴訟法による参加以外に民事訴訟法六四条による補助参加ができるかどうかについては争いがある。
行政事件訴訟法による訴訟参加の場合、第...
《解 説》
本件はY(日本道路公団)の高速自動車道用地として収用されたX所有土地の補償金額が低すぎるとして、XがYに対し、第一次的には正当と信じる額と補償金額との差額の給付を求め、第二次的には収用委員会の収用裁決中、損失補償金額に関する部分の変更を求めた事案である。補償金額算定に関する本件...
《解 説》
本件は、成田空港の建設計画に対する反対運動を行う権利能力なき社団であるXが、警察による昭和五三年二月六日から二月七日にかけての第一次鉄塔差押え、昭和五三年三月二七日から三月二八日にかけての第二次鉄塔差押え及び昭和五三年四月七日から四月八日にかけての要塞差押え等がいずれも違法であ...
《解 説》
一、X(中学一年)は、同じ都営住宅に住む友人Aと釣りに行くために、A宅前の廊下でAを待っていた際、AがA宅の隣室で窃盗未遂事件を起こしたため、一一〇番通報で駆けつけた警察官に共犯者と疑われた。Xは、同所で職務質問を受けたうえ警察署に連行され事情聴取を受けたが、共犯であるという確...
《解 説》
一、申告納税制度の信用を維持し、その基礎を擁護するために、隠ぺいまたは仮装したところにもとづく過少申告または無申告による納税義務違反の発生を防止する制度として重加算税の制度がある。国税通則法六八条に重加算税の課税要件として「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」と規定されて...
《解 説》
本件は、個人で印刷業を経営しているXに対する青色申告承認の取消処分の適否が問題とされた事案である。
税務署長Yの主張によれば、調査官がX宅に数回臨場し、帳簿書類の備付け状況及び所得金額を確認しようとしたところ、帳簿書類はダンボール箱に収納されていたが、その場にいた任意団体員ら...
《解 説》
一、本件事案は、次の通りである。
X(原告、控訴人)は、昭和四九年四月二二日、兵庫県衛生研究所に採用され、細菌部に配属されて、試験管の洗浄業務、培地作り、データー整理の業務に従事していたが、昭和五二年一月二四日付で総務部の図書室に配置換えとなり、同所において図書の整理等の業務...
《解 説》
一、事案の概要は以下のとおりである。
Yは出版事業等を行い、出版社等の会員四二八社を有している社団法人であり、Xらは従業員であるが、Yにおいて就業規則や組織規定も有していなかった。Yにおける平日の勤務時間は、もともとは午前九時から午後五時までであったが、従業員らが始業時刻を守...
《解 説》
一、本件事案の概要は次のとおりである。Xは、昭和五〇年五月から運送会社の従業員として雇用され、山口・広島間における大型貨物自動車の定期便運転手として稼働していたが、昭和六〇年七月一二日午後八時ころ、右定期便の運行中、脳内出血を発症し、十分な運転操作をすることができず、停車中の貨...
《解 説》
本件は、子供のスイミング教室での事故につき、教室経営者及び加害児の親権者の責任が認められた事例である。
昭和五八年六月、被告Y1が経営するスイミング教室の授業中に、当時五歳の子Aがプールサイド近くで、七歳児Xの水中メガネを引っ張って離すということがあり、そのため右メガネがXの...
《解 説》
Xらは、海難事故(A漁船とB油送船との衝突)により死亡したA漁船船員三人の遺族であるが、弁護士Yに対して、B油送船船主に対する損害賠償請求等を委任した。Xらに対しては、A漁船の所有者であり船員の雇主であるCから、死亡船員一人当たり二〇〇〇万円の損害死亡補償金(船員法九三条の遺族...
《解 説》
Xは社団法人であり、Aが代表者理事であるが、前理事であるBがAの理事選任決議無効確認訴訟を提起している。XはY銀行に普通預金・自動継続定期預金があり、これら各預金契約を解約する旨の意思表示をした。ところが、右紛争のせいでBはAに定期預金証書・銀行届出印を渡さないため、Xは払戻請...
《解 説》
本件は、証券会社と顧客との間の注文を巡る紛争で、証券会社の受託義務が争われた事例である。
Xは、証券会社であるYとの間でかねて有価証券信用取引契約を締結していたが、そのYに対して、A社の株式三万株につき、昭和五八年七月五日に信用売建、同年八月二六日に決済のための買戻しの注文を...
《解 説》
一、事案の概要は以下のとおりである。
XはYから本件土地・建物を代金一一億三五〇〇万円で買い受ける旨の契約を締結した。右契約には、目的物件引渡までに本件土地に一部侵入している隣地所有者Aの建物の解体を承諾する旨の隣地所有者の承諾書をXに交付すること、本件売買契約に債務不履行が...
《解 説》
塵芥収集車のテールゲートが降下して作業員二人が死亡する事故が発生し、その使用者であったXが業務上過失致死事件被疑者として立件・書類送検されたので、これを警察が報道連絡簿に記載して報道機関に閲覧させたところ、新聞社三社は翌日の新聞紙上に送検事実をXの実名・呼び捨てで報道した。そこ...
《解 説》
一、XはY市の市会議員であるが、A週刊誌上にXが取締役をしているB社がいわゆるジャパゆきさんの斡旋をしていたとの記事を掲載された。このため、Y市議会は紛糾し、けじめをつけるとの趣旨で、Xに対する辞職勧告決議を採択した。右決議は前記週刊誌に言及し、さらに「公序良俗の気風に徹する議...
《解 説》
Xは不動産会社の社長であり、昭和五八年に京都市議会で議決され、話題となった古都税の反対運動に関わっていた者であるが、Xに関して書かれた月刊誌「現代」の記事により名誉を毀損されたとして、発行社のY1、編集人のY2、取材記者のY3に対し、謝罪広告の掲載及び慰謝料の支払いを求めた。
...
《解 説》
本件は、昭和五八年に京都市で採択され、話題となった古都税に対する反対運動に関わった不動産会社社長Xに関する週刊誌「アサヒ芸能」の記事内容の真実性、又は真実と信ずるについての相当性の有無が争点となった事案である。
Xが問題とした記事は、(1)見出中にX社長の「サル知恵」などと書...
《解 説》
自賠法三条但書は免責事由として、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったことを挙げている。しかし、実際の事案においては、その事故の原因、態様が果たしてどのようなものであったのかについて認定が困難であり判断に迷う...
《解 説》
本件は、大阪地判平1・11・30本誌七二五号六五頁の控訴審判決である。
事案の詳細は右一審判決を、問題の所在については右本誌コメント参照されたいが、要するにトラック運転手Aが外傷性腹膜炎で死亡した事案につき、Aの相続人であるXらが、右死亡はAが被疑者として派出所内で警察官の暴...
《解 説》
一、事案の概要は以下の通りである。
昭和五九年三月二二日、当時生後約九か月であったAは感冒気味で甲医院で診察を受けたところ、喘息性気管支炎と診断され、Y1が運営する小児病院での受診を勧められたので、同日夜、Y1病院を訪ねた。同病院では夜間当直医のY2医師がAを入院させ、投薬、...
《解 説》
一、本件事案の概要及び決定の要旨等は、次のとおりである。
(1)本件不動産競売の申立債権者は、抵当証券を提出して民事執行法一八一条二項に基づき、競売の申立てをした。
(2)①事件の抵当証券には、元本の弁済期として確定期限のみ記載されていた。
②事件の抵当証券には、確定期限...
《解 説》
本件は、殺人事件について過剰防衛に当たるとして刑を免除した事例として、注目を浴びた判決である。
本件の事案は、大学生である被告人が高校を中退した弟に「表に出ろ。勝負したる。」などと挑発されたうえ、仰向けに押し倒され、上から乗りかかられて両手で首を強く絞められたため、防衛の意思...
《解 説》
本件は、冠婚葬祭の挙式等を目的とする会社甲及びその代表者等が、右挙式に伴う旅客の運送を無免許の運送業者乙及びその下請業者丙に行わせたことに関し、道路運送法上の無免許一般自動車運送事業経営の罪(現行法では九六①、四Ⅰ)で起訴された事案であり、被告会社甲の右運送事業に対する事業主性...