最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 京都市古都保存協力税条例は、同税の新設に関して地方税法に基づく自治大臣の許可がない段階では、行訴法3条2項の処分には当たらない。
2 地方税法669条以下の自治大臣の許可制度は、憲法92条、94条に違反しない。
3 同条例の事前施行差止めを求める訴えが、その施行によって原告ら社寺に信教の自由を侵されて回復し難い重大な損害を被るおそれがあるとはいえないことを理由に却下された事例
4 地方公共団体及びその長と期限付市町村法定外普通税の徴収義務者との間で、期限後は同種の税を新設又は延長しないと契約しても、同契約は、地方自治法113条、149条1号、223条、地方税法2条に違反し、法的効力がない。
5 公法の分野でも、行政側と私人との間に契約によって信頼契約が生じた場合には、信義則ないし禁反言の法理に照らし、行政主体が私人に対してこの信頼関係を維持すべき具体的作為・不作為の義務を負い、私人が訴訟によってその履行あるいは確認を求めることができる。
金融機関が記名式定期預金の預金者と誤認した者に対する貸付債権をもってした預金債権との相殺につき民法478条が類推適用されるために必要な注意義務を尽くしたか否かの判断の基準時
登記官が所有権の贈与を受けた者から申請された土地の所有権移転登記を過誤により登記簿に記入せず、所有名義の残った前主が右土地を売ってその旨の所有権移転登記をしたため、受贈者が右土地の所有権を失った場合、登記官の登記の遺漏と受贈者の右土地所有権の喪失の結果との間には相当因果関係を欠くとした事例
特定物売買の売主本人及びその無権代理人の両者を相続した者は、本人の相続人として無権代理行為の追認を拒絶するとともに、民法117条による無権代理人の履行義務をも拒絶することができるとされた事例
法人格は別々であるが両者とも代表者、社員が同じで、税務対策上法人格を使いわけているに過ぎず、実体は同じであるからといって一方の法人が他方の法人が所持している手形債権を以て相手方の請求債権と相殺することは許されない。法人格否認の法理は法人と取引した相手方や法人の不法行為によって損害を受けた者の利益保護のため認められるべきものであって、勝手な税金対策のため法人格を濫用し、法人格の混同を生じさせている者の側から法人格の否認の法理を主張することは許されないとされた事例
公立中学校の学級活動の授業時間中に級友の投げたプラスチック製の手製手裏剣が左眼にあたって中学生が負傷した事故につき、担任教諭に過失があるとして学校側の損害賠償責任が認められた事例
駅前付近路上に放置されていたとして持参された中古自転車について遺失物法所定の手続をとり民法所定の期間右自転車を警察に保管したことが違反とはいえないとされた事例
1 同一区画内にある賃借地の賃料増額訴訟において、一賃借地について算出した適正賃料を他の賃借地の適正賃料として認定した事例
2 適正賃料の算定につき、固定資産税と都市計画税の合算額と鑑定評価額との倍率を基礎に算出した事例
ゴルフクラブ入会契約に際して差入れられた入会金について、会則にいう天災地変その他不可抗力の事態が発生した場合に当らないとして、理事会の据置期間を延長する旨の決議を無効とし、会員からなされた返還請求が認容された事例
ゴルフ場内の落石除去作業中の土砂崩れによる死亡事故につき、雇主であるコース管理会社に安全配慮義務違反及び土地工作物の占有者の責任が肯定された事例
宅地開発業者の造成、分譲した宅地に地盤不等沈下が生じたことにより、右宅地の購入者が建築基礎補強工事費用の支出を余儀なくされた場合に、その費用増加分につき右宅地開発業者の不法行為責任を肯定した事例
土地区画整理中に仮換地を目的とする売買がされたが、清算交付金についてなんらの特約がされなかった場合、その後予定どおり換地がされたときは、清算交付金は売主に帰属するとし、売主から転買人に対する不当利得の返還請求が認められた事例
道路上の集水桝の甲蓋をはずして集水桝に入り、そこから地下に埋設されている排水管の中を通って団地内の貯水池に至り、誤って貯水池に転落水死した小学一年生の男児の死亡事故につき、右集水桝を設置管理する地方公共団体の損害賠償責任が認められた事例
甲から所有権留保特約付割賦により自動車を買い受けた乙から右自動車をさらに買い受けた丙が、その代金を完済して右自動車の引渡を受けたときは、丙はその所有権を取得し直接甲に所有権移転登録手続を請求することができるとされた事例
自称代理人から本人が署名し、その実印を押捺した金銭借用証書と印鑑登録証明書を提示され、且つ自称代理人が本人の実印を所持していたことから、相手方が代理権ありと信ずるにつき正当の理由ありとされた事例
権利能力なき社団の所有不動産の登記方法 数代前、権利能力なき社団の構成員全員の名義で所有権取得登記のなされていた区の所有山林、宅地につき、その子孫に対し時効取得を理由に区代表者個人が区民の受託者としてなした所有権(持分)移転登記請求が認容された事例
別件逮捕を違法として無罪の判決が確定した場合において警察官の逮捕・取調べ及び検察官の公訴の提起・維持に過失があるとして国家賠償請求が認められた事例
実質上等価交換契約に基づく義務としてされた町有地の売却は、随意契約の方法によったとしても違法とはいえないとされた事例
村長が、緊急の使途がないのに過大な借入れをして割引農林債券を購入したことが違法とし、村長に対し、右借入れに対する支払利息から右債券の運用益を控除した額が村の損害にあたるとして、右損害を村に賠償するよう命じた事例
職場の上司から思想の表明を強要されたとして慰藉料を請求したが、それは会社の強要とはいえないとして請求を棄却された事例
新規卒業者募集しようとする会社の求人票に記載してある初任給見込額は、採用内定者に対し、右額の賃金支給を保障したものとまでは認められないとされた事例
1 救済命令取消訴訟提起後における命令書の誤記訂正の可否(積極)
2 審問手続の全期日に使用者委員が出席しなかったことや、審問終結に当たり使用者委員の意見を聴取しなかったことが違法とはならないとされた事例
天然痘予防のため義務づけられた乳児に対する種痘の副作用による障害について、当時は副作用のない痘菌はなく種痘接種を一律に強制したことに違法性はないとして、国の責任が否定された事例