最も長い歴史をもつ判例実務誌
米軍弾薬輸送阻止斗争につき、線路上の蛇行進・座り込みのみで、ゲバ棒・火炎びん・石等が用いられず、しかも実際生じた被害が10分の貨物列車の遅延に過ぎなかった場合は、動機が正当で行為が表現の自由を多少逸脱したとしても、社会通念上なお相当と認められるが故に実質的違法性が微弱であるとして、威力業務妨害を否定した事例
医師のむち打症患者に対する治療費につき、診療行為の医学的必要性ないし合理性に多大の疑問があるうえ、これが社会的水準に照らして極端に高額であるとして、その一部を事故と相当因果関係にある損害とは認められないとした事例
1 仮換地につき買受部分を特定してなされた売買契約において売主としての登記を移転すべき義務の履行方法 2 売主の担保責任を加重する特約の効力
未登記建物の所有者がその建物につき家屋台帳上他人の所有名義で登録されていることを承認した場合と民法94条2項の類推適用
手形金債務の支払につき手形外の保証契約が締結されている場合と裏書によって手形債権を取得した者の保証人に対する履行請求
1 役員選任の持主総会決議取消の訴の係属中に当該役員が退任した場合と訴の利益の有無 2 前項の場合において決議取消の訴がその利益を失わないとされる特別事情
1 相続人の一人が相続に関する遺言書を隠匿し相続人の欠格事由に該当すると認められた事例 2 民法884条にいう「相続権を侵害された事実を知った時」に該当しないと認められた事例
1 特定の相続財産を特定の共同相続人に相続(取得)させる旨の遺言の趣旨 2 遺産分割前の相続財産に属する建物の全部を共同相続人中の一人が相続開始前より引き続き使用収益してる場合と他の相続人に対する不法行為の成否
法律行為が「3年余の期間内のある日」に行なわれたとする認定が事実の特定として妨げないとされた事例 判決理由における事実特定の限度
1 旧軍人の遺族扶助料の支給裁定の取消処分が有効であり且つ遡及効を有するとされた事例 2 誤払いされた遺族扶助料を善意で生活費、学費等に費消した場合と現存利益の有無
1 抗弁説に立脚し、雇用運転手の友人が無断運転をしたとしても、車の所有者には運行供用者責任があると判断した事例 2 幼女の将来の家事労働に関し、労働能力一部喪失による損害賠償請求権を認めた事例 3 中間利息控除にライプニッツ方式を採用した事例
1 自賠法3条の他人と親族運転車の同乗者 2 後遺症と自賠責任保険金の給付 3 親族間の不法行為における慰藉料請求権
1 電々公社就業規則で禁止された政治活動の意義を明らかにした事例 2 無許可ビラ配布が懲戒の対象とならないとされた事例 3 懲戒戒告無効確認の訴えが適法とされた例
他の労組と異なり使用者から組合事務所の供与を受けられない労組に対し、労組法7条1号を根拠にして供与請求権を認めその占有使用を命じた事例
公職選挙法に違反して甲から乙に供与した金員の一部が後にさらに乙から甲に供与され、甲がこれを費消したことが認められるが、乙から甲への右供与の事実は起訴されていない場合、甲からその価額を追徴することの適否
1 業務上過失致死につき、自動車運転手たる被告人は無免許の助手の惹起した事故の身代り犯人の疑いが強いとして無罪にした事例 2 右の場合に同乗する自動車運転手が業務上過失致死傷の罪責を負うための条件
1 いわゆる闘争手段としてのビラ貼りの行為が刑法260条の建造物損壊および同法261条の器物損壊に該当するとされた事例 2 右ビラ貼りの行為が労働組合法1条2項本文にいわゆる正当な組合活動にあたるとしてその罪責をいずれも否定すべきものとされた事例
1 労働基準法60条3項の規範内容 2 右条項の定める変則措置を採る場合にあたるか否かを決する基準 3 右条項違反の各罪相互の関係 4 労働基準法32条1項にいう「労働させ」るの意義
1 逮捕状による逮捕の実施を徒過遷延させた場合と逮捕の違法性(消極) 2 勾留被告人を遠隔地に移監して余罪捜査をした場合と実質的な逮捕の存否(消極) 3 刑訴法208条1項の勾留期間の算定について判示した事例
1 毀損することなくとりはずしが可能なガラスドアの損壊と建造物損壊罪の成否 2 市議会議事堂への乱入と建造物侵入罪の成否
土地・家屋が同一人の所有であるとき、土地について所有権移転の仮登記がされ、ついで家屋について抵当権設定登記がされ、ついで土地について右仮登記の本登記が経由された場合、家屋の競落人は法定地上権の取得を土地所有者に対抗できるか(消極)
上空に高圧線がある場合のハウス組立工事現場において、作業員を指揮監督しあるいは注文者として指図する者の負うべき注意義務
高校の同級生が運転する自動車に無償で同乗中相手方自動車との衝突事故により傷害を負った同乗者と相手方との間の損害賠償請求事件において、右同乗者の慰藉料を算定するにあたり、右同級生の運転上の過失を斟酌した事例
1 共同不法行為者間の負担割合確認訴訟の弁論と右共同不法行為者に対する損害賠償請求訴訟の弁論とを併合しなかった事例 2 中古車の価格算定例
1 路上の駐車は自賠法3条の運行の概念に含まれると判断した事例 2 夜間暗闇の中に駐車している車に追突死亡した者の過失を70%と認定した事例
1 対向車線上で追突され、自車前方に飛んできた被害者と衝突するに至った車の運行供用者に免責を認めた事例 2 右の場合の追突車と被害者(二輪自転車運転)の過失割合を5対5とした事例
1 交通事故による脊髄損傷等の傷害のため下半身が完全に麻痺した被害者に対し、家屋改造費・将来の車椅子代・定期検診費・付添看護費を認めた事例 2 右被害者の妻に慰藉料請求権を認めた事例
1 交通事故のため膝関節に屈曲障害の後遺症を負った被害者(男・高校2年生)につき、事故後就いた職(洋服仕立職)が、右後遺症によって収入減をもたらすようなものではなく、かつ、右職業による収入は男子労働者の平均給与所得額程度はあることを理由に労働能力喪失による得べかりし利益損失を否定した事例 2 被害者自身にも過失のあることを認めつつ、過失相殺の抗弁を斥けた事例
附近の土地利用状況の変化等を理由に建物の構造に関する借地条件を変更し、付随処分として、更地価格の約10%にあたる金銭の支払いを命じた事例
1 新株割当期日までに親株の名義書替手続が失念された場合における新株引受権の帰属者 2 失念株につき新株の引渡請求ないしはその代償請求の成否 3 失念株についての配当金の処理に関する商慣習
「差圧計量装置」に関する特許出願について、拒絶理由とされた引例とはシールの締着構造に差異があり、設計上の微差にすぎないとはいえないとして拒絶相当との審決を取り消した事例
石鹸を指定商品とする「カミロン」という登録商標につき引用の登録商標「ミカロン」と称呼を共通にし、その登録を無効とするのを相当とした事例
「耐火レンガの製造法」に関する特許出願について、引用例に開示された技術と実質的な差異なく拒絶相当との判断を示した事例
比重計に関する意匠登録出願につき、出願前周知のものとほとんど同一と認められる程度に類似するから、登録を拒絶するのを相当とした事例
「高速角度自由切断機」に関する特許出願につき、拒絶理由とされた引用例をもってしては本願発明の目的とする作用効果を奏し得ないとし、拒絶相当とした審決を取消した事例
「石膏の製造法」に関する特許出願について拒絶理由である引用例とは、その種晶の成因を異にし、その結果、種晶添加量と生成物の品質において著しい相違があるとし、拒絶相当とした審決を取消した事例
「洗浄剤組成物に関する改良とその製法に関する特許出願について、拒絶理由とされた引用例の方法による生成物とは形態を異にし、形状又は構造の点でも実質的差異ありとし拒絶相当とした審決を取消した事例
意匠登録無効審判請求と「法律上の利益」 「電話機」に関する登録意匠について、貿易業者が輸出計画に妨げがあるときは、その登録無効の審判を請求する法律上の利益がある
1 「折畳機構の改良」に関する特許出願について、特許庁から示された拒絶理由に一見矛盾するような変遷があっても、拒絶相当とする審決を違法ならしめる理由にはならない 2 右出願について明細書および当業者が理解しうる記載がないことを拒絶理由とするのを相当とした事例
1 簾の緯条に関する意匠登録の無効審判を請求する法律上の利益が肯認された事例 2 右意匠の登録を無効とする理由として実用新案公報を挙げても違法ではない
自動車後退に際し、被害者の不存在を確認し安全運転のための注意義務を尽したとの主張を排斥し唯漫然と見たに過ぎないと認定し右注意義務を尽していないと認定した事例
貨物自動車を運転して対向車道上を右折横断しようとした際、対向進行してきた単車と接触した事案にき、右貨物自動車の運転者に過失があるとされた事例
交通整理の行なわれていない交差点における貨物自動車と原動機付自転車との衝突事故につき、被害者とされた後者の運転者における一方的過失に基づくものとして、被告人である前者の運転者に過失の罪責がないとされた事例
救護義務違反が否定された事例 交通事故の結果人が負傷しても、その程度が軽微で社会通念上運転者らの助けをかりなくても負傷者が自ら受傷後の措置を十分にとりうると認められるような場合には、救護義務は発生しない。
1 婚外子の氏を父の氏に変更することを許すか否かを決定するに際しては、婚外子と父との親子関係の存否のみならず、相対立する関係当事者間の利害の調整についても考慮する必要があり、氏の変更により正当婚姻家庭の存在を全然否定し去るような結果を招くに至るような場合には、許可を与えることができない。 2 本妻の側に特にとがめられるべき事情も認められないのに、申立人の母と深い関係を結び、以来同人およびその間に儲けた申立人等とのみ生活を共にし、本妻およびその間の嫡出子は長期間にわたり悲惨な生活に耐えてきた等判示事情のもとにおいては、右子の氏変更を許可することは相当でない。
1 非嫡出子の父の氏への変更については、非嫡出子の保護という面のみでなく、その改氏により非嫡出子の受ける利益と父の正妻および嫡出子の蒙むるべき不利益とを比較検討のうえ、その許否を決すべきものである。 2 申立人の父とその妻が10年余にわたり別居生活を継続しているのであるから、申立人の改氏があっても、父とその妻の関係がこれ以上悪化するおそれがないなど判示事情のもとでは、申立人の父の妻が本件申立に反対しているからといって、直ちに申立を却下するのは失当であるとして、原審判を取消した事例
親権及び後見制度の趣旨に照せば、親権を後見に優先させて然るべきであるから、非嫡出子の母が死亡した後、父の認知により父が新たに親権者たるべき地位をもつに至ったときは、父を親権者として指定することができる。
1 離婚により親権者となった実母が第三者と婚姻し、その配偶者となった第三者が子と養子縁組した場合には、子は実母とその配偶者である養父との共同親権に服する。 2 民法819条6項による親権者変更が許されるのは、子が親権者と定められた父母の一方の単独親権に服している場合に限られ、子が実親の一方と養親の共同親権に服している場合にはこれを許す規定がないから親権者変更を求めることはできない。
申立書の記載は孫からの祖父母に対する扶養料等を請求するとあるけれども、その趣旨は遺児を抱えた未亡人が亡夫の両親に経済的援助を求めるものと解するのが相当であるとして、家事審判法24条にもとづく審判をした事例
相手方の行為が民法892条に規定する著しい非行にあたる場合においても、右非行に至った主たる原因が、申立人において低知能者である相手方に対し、その能力に合った適切な指導を行なわなかったこと等判示事由にあるときは、相手方を相続人の地位より廃除する理由はない。
遺産分割事件において、分割の前提として遺留分減殺請求権行使の事実およびその効果を主張することは、遺産の範囲を明らかにし、これを明認したうえでその分割手続を進めることが必要である以上当然に許される。
1 東京都職員の退職手当に関する条例にもとづく死亡退職金及び東京都職員の公務災害補償に関する条例にもとづく公務災害補償金はいずれも職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた者に支給されるものであり、遺族たる受給権者が固有の権利として取得し、遺産には属しない。 2 東京消防庁職員共助規約にもとづく慰霊金及び同庁職員互助規約にもとづく退職記念品代はいずれもいわゆる香奠として、被相続人の葬儀に関連する出費に充当することを主たる目的として相手方になされた贈与とみるべきであって、遺産には属しない。
申立人の父母の夫婦関係が長期間全く断絶し、民法772条の嫡出推定を受けない場合にあたる親子関係不存在確認事件につき、相手方は出頭しないが、調査の結果によると申立人が自分の子でないことについて争わず、主文同旨の審判がなされることについて異存がないことが窺われるとして、家事審判法23条、24条に基づいて審判をした事例
1 未成年者の監護その他福祉に関する問題については、未成年者の住所地の裁判所に裁判管轄権ありとするのが国際私法の原則であり、これに反する当事者間の管轄合意は拘束力がない 2 わが国の裁判所における渉外的子の監護者決定は、もっぱらわが国の国際私法たる法例によるべきところ、渉外的身分関係の安定と子の福祉の増進という公益性の強い親子間の法律関係については、私的自治の原則を認める余地がなく、法例に反する当事者間の準拠法に関する合意は拘束力がない 3 メキシコの裁判所においてなされた共同監護の決定を、コロラド州法の適用によって、単独監護に決定した事例
日本に居住し、中国本土に帰る気持も中共政府を支持する考えも持たず、また中華民国に渡る考えもなく、日本に帰化したいと希望する中国人については、本国法決定の基準となる国籍をいずれともきめかねるから、無国籍者に準じて処理すべきである