最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 新型コロナウイルス感染症については,日本国内での発生・感染拡大を踏まえ,政府が,令和2年4月7日,新型インフルエンザ等対策特別措置法32条1項に基づく緊急事態宣言を行った(同年5月25日,同条5項に基づく緊急事態解除宣言をした。)ほか,令和3年1月7日には2回目の緊急事態宣言を行った(その後延長)ところである。政府は,地方公共団体と共に種々の対策を講じているが,世界中で感染が拡大しており,国内においても変異株が各地で確認されるなど,なお予断を許さない状況が続いている。このような状況下において,令和2年6月期の定時株主総会については,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止が社会的に強く要請され,必ずしも十分な準備期間がない中で,前例のない事態への対処が求められたことから,各社とも難しい対応を強いられたものと考えられる。感染拡大防止の観点から,株主総会の開催そのものを延期した会社があった一方で,法務省・経産省等が公表した見解等も踏まえ,株主の会場への入場の制限,ハイブリッド型バーチャル株主総会1)の実施等,従来と異なる態様による開催をした会社も相当数あった2)。また,基準日を事業年度の末日とすることを維持するために継続会方式を採用した会社も複数あったようである。...
【問題1】
1 問題の所在
2 平時の議論
3 新型コロナウイルス感染症の流行下における考え方
【問題2】
1 問題の所在
2 平時の議論
3 新型コロナウイルス感染症の流行下における考え方
【問題3】
1 問題の所在
2 平時の議論
3 新型コロナウイルス感染症の流行下における考え方
【問題】
1 問題の所在
2 ハイブリッド出席型バーチャル株主総会とその取扱いについて
(1)実施ガイドの見解の骨子
(2)実施ガイドの見解の法的論拠
3 小問(1)(通信障害等が発生した場合の審議等への参加の制限)について
(1)一部株主の議決権行使の制限とリアル株主総会の決議の瑕疵
(2)通信障害によるバーチャル出席株主の議決権行使の制限と決議の瑕疵
4 小問(2)(バーチャル出席株主の動議提案を制限することの可否)について
(1)議案提案権の行使とリアル株主総会の決議の瑕疵
(2)バーチャル出席株主の動議提案の制限について
(3)小括
5 小問(3)(バーチャル出席株主の動議の採決における取扱い)について
(1)書面等による議決権行使と動議の採決における取扱い
(2)バーチャル出席株主の動議の採決における議決権行使の可否
(3)小括
【問題】
1 問題の所在
2 少数株主の株主総会招集請求権(会社法297条)と定時株主総会に関する平時の議論
(1)少数株主の株主総会招集請求権の意義と要件について
(2)少数株主の定時株主総会の招集請求の可否
(3)少数株主の株主総会招集許可申立てと権利濫用
3 新型コロナウイルス感染症の流行と定時株主総会の開催等
4 計算書類の承認を議題とする株主総会の招集許可申立てについて
(1)要件②との関係
(2)要件③との関係
(3)権利濫用との関係
5 剰余金の配当を議題とする株主総会の招集許可申立てについて
【問題】
1 問題の所在
2 継続会に関する平時の議論
3 新型コロナウイルス感染症の流行下における法務省等の解釈
4 少数株主が執り得る法的手続の検討
(1)継続会の招集請求
(2)継続会と同一議題を目的とする臨時株主総会の招集請求
(3)代表取締役(議長)に対する継続会の日時・場所の決定の義務付け請求
(4)まとめ
[目次]
1 問題の所在
2 刑訴法上,訴訟の同一性(公訴事実の同一性)を判断基準に採用している制度
3 訴訟の同一性の判断
4 訴因事実の法的評価の変更,訴因の訂正・補正の問題と訴因変更の関係
5 結語
同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合における借主による充当の指定のない一部弁済と債務の承認(平成29年法律第44号による改正前の民法147条3号)による消滅時効の中断
特許権の通常実施権者が,特許権者を被告として,特許権者の第三者に対する特許権侵害を理由とする損害賠償請求権が存在しないことの確認を求める訴えにつき,確認の利益を欠くとされた事例
事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合における先行の選挙の取消しを求める訴えの利益
ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの)2条1項1号にいう「住居等の付近において見張り」をする行為の意義
非監護親が,監護親に対して非監護親と子とを面会交流させることを命ずる決定に基づき,間接強制の申立てをした事案について,同決定に基づく監護親の給付債務は債務者(監護親)の意思のみによって履行することのできない債務になっているとして,申立てを却下した原決定の結論を維持した事例
夫である相手方が,別居中の妻である抗告人に対し,未成年者らの監護者を相手方と指定するとともに,現在,抗告人の下で養育されている二女及び三女を相手方に引き渡すことを求める一方で,抗告人が,相手方に対し,未成年者らの監護者を抗告人と指定するとともに,現在,相手方の下で養育されている長女を抗告人に引き渡すことを求めた事案において,原審は,未成年者らの監護者をいずれも相手方と指定し,二女及び三女を相手方に引き渡すよう命じたところ,抗告審は,姉妹分離の点については,監護者指定に当たっての一考慮要素にすぎないとした上で,二女及び三女との関係では,従前ないし現在の監護環境を維持することが最も子の福祉に合致するとして,長女の監護者を相手方と,二女及び三女の監護者を抗告人とそれぞれ定め,抗告人及び相手方のその余の申立てはいずれも却下した事例
夫である相手方(原審申立人)が,妻である抗告人(原審相手方)に対し,前件調停で合意された婚姻費用の分担額の減額を求めた事案において,相手方の収入の減少は具体的に予見されていたものとはいえず,改めて婚姻費用の額を算定するのが相当であるとした上で,その算定の基礎とすべき相手方の収入は,退職月の翌月から離婚又は別居解消に至るまでの期間については,相手方が65歳で年金受給を開始していたとすれば受給できた年金収入を給与収入に換算した額及び配当収入を給与収入に換算した額を合算した額とするのが相当であるとして,原審判を一部変更した事例
1 いわゆるデビットカードについて,その会員規約(判文参照)によれば,同カードを利用した取引は,即時的に支払の決済がなされる取引であって,クレジットカードによる取引のように与信が伴う性質の取引ではなく,このような即時的な支払決済に用いられるデビットカードの会員番号等の情報は,平成28年法律第99号による改正前の割賦販売法35条の16第1項に規定された「クレジットカード番号等」に当たらないとして,その提供について同法49条の2の罪の成立を否定した事例
2 上記デビットカードのカード種別,会員番号,セキュリティーコード,有効期限,名義人の氏名の情報は,デビットカードの会員と利用者との同一性を識別するための情報であって,デビットカードの利用料金の引き落とし口座である預金口座の特定や当該口座の名義金と利用者との同一性を識別するための情報ではなく,同カード情報を用いて当該口座内の資金を直接移動させるといったこともできず,犯罪による収益の移転防止に関する法律28条にいう「預貯金の引出し又は振込みに必要な情報」に当たらないとされた事例
1 外国為替及び外国貿易法48条1項に基づき経済産業大臣の許可を要する貨物として定められた重合体繊維から他の繊維を製造する装置の「部分品若しくは附属品」は,当該「装置」の部分品ないし附属品としての用途以外の用途に用いられるものに該当しないこと(専用性)を要する
2 当該貨物である不融化炉及び炭化炉の各炉殻が,前記装置の部分品として用いられることを前提に特に設計・製作され,これが他の用途に転用される可能性が具体的,現実的なものとはいえないなどの本件事実関係(判文参照)の下では,当該貨物は前記装置の「部分品」に該当し,これらを経済産業大臣の許可を受けないで輸出した行為につき平成29年法律第38号による改正前の外国為替及び外国貿易法69条の6第2項2号の罪が成立する
「出て行け」などと記載した文書と人糞を封筒に入れて外国公館に郵送し,関係職員に開封させて内容物を認識させた行為が刑法234条にいう「威力を用い」た場合に当たるとされた事例
同性の犯罪被害者と交際し共同生活を営む関係にあった者が,犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号にいう「婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に当たらないとされた事例
1 県議会議員選挙の選挙長は,立候補の届出を受理するに当たり,公職選挙法上の住所要件を充足するか否かにつき実質的審査を行う義務を負うものではないと判断された事例
2 県議会議員選挙に立候補をした者につき,当該県内の同一市町村内に3か月以上住所を有し又は有していた事実が認められない場合には,公職選挙法上の住所要件を満たさないとして,県が供託金を徴収・没収したことにつき法律上の原因があると判断された事例
法人格を有しないケイマン諸島の特例有限責任パートナーシップの持分を対象資産として行われた,内国法人からその海外子会社への現物出資の適格現物出資該当性を認めた事例
1 競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法35条1項にいう雑所得に当たるとされた事例
2 競馬の外れ馬券の購入代金が雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として所得税法37条1項にいう必要経費に当たるとされた事例
租税特別措置法42条の12の4第1項(平成27年法律第9号による改正前のもの)の規定により法人税額から控除される金額は,法人の確定申告書等に添付された書類に記載された当該法人の雇用者給与等支給額から,同条を適用する基準となる事業年度における雇用者給与等支給額を控除した金額を基礎として計算した金額に限られるとされた事例
労契法18条1項に基づき無期転換した後の労働条件に関し,無期転換後の労働者に適用される就業規則が別途定められている場合において,当初から無期労働契約を締結している労働者に適用される就業規則が適用されないと判断された事例
道路から路外の駐車場に向けて後退した控訴人の運転する車両と,同車両の後退開始前にその後方の道路上で停止していた被控訴人の運転する車両とが接触した交通事故について,双方の過失割合を控訴人8割,被控訴人側2割などとしたが,不利益変更禁止の原則に基づき,控訴を棄却した事例