《解 説》
一 損害保険の被保険利益は法律的な権利そのものではない(商法六三〇条。西島梅治・保険法〔第二版〕一七〇頁参照)。しかし、被保険利益の存することが、損害保険契約の本質的内容となっており、被保険利益は損保契約の目的となっている。すなわち、損害保険契約を締結できるのは、被保険利益を有...
《解 説》
一 公職選挙法九条一項は、「日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。」として、国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている。本件は、イギリス国籍を有する外国人である原告が、永住者として我が国に居住しているのに、平成元年七月二三日施行の参議...
《解 説》
本件事案の概要は、本件判決の事案の概要欄冒頭に記載された事案の要旨のとおりで、特に付加すべき点はなく、父が知れないこと明らかな日本で出生した子について、出産後母が行方不明となり、その身元が必ずしもはっきりしない場合、その子は、国籍法二条三号により、日本国民となるか否かの一点のみ...
《解 説》
一 本件は、国鉄の分割民営化により発足したJR東日本において、会社側が職員の意識改革、人員の調整を目的として実施しようとした一般企業並みの出向制度を巡る労使紛争に関して発令された団体交渉を命ずる救済命令の取消訴訟である。
二 国鉄時代出向は事実上本人の同意を要件とする運用が行...
《解 説》
一 本件は、中小企業等協同組合法の規定に基づき設立された事業協同組合であるY組合の組合員のXが、組合員総会(甲総会及び乙総会)における役員選任決議(甲決議及び乙決議)につき、甲総会が開催されたという当時、Y組合の総会の招集権者である代表理事のAが任期満了により退任し、後任の代表...
《解 説》
一 本件の事案は、次のとおりである。
気象庁職員で組織されている全気象労働組合の東北支部仙台分会は、給与の改善等を目的として、昭和四六年七月一五日午前八時五分ころから同四八分ころまで、約四〇名の組合員ら(そのうち、当日午前八時三〇分から勤務することを要する者は二一名)を集めて...
《解 説》
一 本件は、タクシー業界も自由競争の働く場であり、タクシー運賃もすべてのタクシー業者が同じ基準で統一されなければならないものではないとの判示部分が、行政庁が指導方針としている同一地域同一運賃の原則を批判したものとして、大きく取り上げられ、新聞紙上等に報道されたものである。
大...
《解 説》
本件は、厚生年金保険法(以下「法」という。)に基づく厚生年金保険の被保険者であった者が、いわゆる重婚的内縁関係を維持したまま死亡した場合において、その者の戸籍上の配偶者に遺族厚生年金の受給権があるかどうかが争われた事案である。
法上被保険者死亡のときに遺族厚生年金を支給される...
《解 説》
本件は、東京貯金事務センターに勤務していた国家公務員が、遅刻と組合事務所入室による欠務を理由に賃金減額及び訓告を受けたのに対し、遅刻は通勤電車の遅延によるもので特別休暇又は年次有給休暇として処理されるべきものであったなどとして、減額分賃金と附加金の支払及び違法な訓告による慰藉料...
《解 説》
一 本件は、債務者所有の農地に対する仮差押について、債務者から農地を買い受けたが未だ農地法の許可を受けていない第三者が、第三者異議訴訟を提起した事案である。
第三者(原告)の有する権利は、売主(債務者)に対し農地の所有権を移転するよう求める債権的請求権を有するにとどまるが、こ...
《解 説》
一 Xは、昭和六二年一二月当時、宇都宮市立緑が丘小学校二年に在籍していたが、同月二三日の第三時限の図工の授業としての紙版画の製作を行っていた際、同級生Aの持っていたハサミが左眼に当たり、左眼角膜裂傷、左上眼瞼裂傷の障害を負った。
そこで、Xは、図工の授業の指導にあたっていたB...
《解 説》
一 本件は、Yがその所有する土地上に三階建のアパート(Y建物)を建築したところ、右土地に隣接する土地上にそれぞれ居宅(X1建物及びX2建物)を所有するX1及びX2が、民法二三五条又は建築前の合意に基づいて、Yに対し、Xらの居宅に面する右アパートの窓全部及び二、三階のベランダの手...
《解 説》
一 申立人五代目山口組は、相手方兵庫県公安委員会から「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(以下「暴対法」という。)三条に基づいて暴力団として指定された(以下「本件処分」という。)。そこで、申立人は、審査請求を経た後、本件処分が憲法一四条一項(法の下の平等)、二一条一...
《解 説》
一 本件は、第二次世界大戦後、シベリア等の旧ソ連邦領土内に抑留され、劣悪な環境のもとで過酷な強制労働を課せられた日本人捕虜Xらによる国Yに対する損失補償・損害賠償請求訴訟の事案である。原審の東京地判平1・4・18本誌七〇三号六三頁は、Xら六二名の請求を棄却した。右判決に控訴した...