《解 説》
本件被告人は、夏の早朝、大阪市内のマンション二階の一人暮らしの女性(当時一九歳)の居室に不法侵入して、同女を強姦したとして起訴された。本件では、被害の事実自体は明白であり、争点は被告人と犯人との同一性である。この点に関しては、客観的証拠は皆無であり、被害者の犯人識別供述と被告人...
《解 説》
元本額八〇〇万円の根抵当権の対象となっている不動産を譲渡担保により取得したYは、根抵当権者Xが申し立てた競売について、落札価額二七四八万円(最低売却価格は二七〇八万円)による売却許可決定が言い渡された日の三日後に根抵当権の極度額相当を供託し、民法三九八条の二二に基づく根抵当権消...
《解 説》
一 所得税法は、資産の譲渡による所得を譲渡所得と定めている(三三条一項)が、たな卸資産の譲渡による所得は譲渡所得から除外され(同条二項一号)、事業所得になるものと解されている。本件は、不動産業者であるXが自己所得の本件土地の譲渡による所得は分離譲渡所得であるとして申告をしたのに...
《解 説》
一 Xは、不動産取引を業とする会社であるが、平成元年一〇月、Yらから、Yらの共有にかかる兵庫県三田市の山林を、代金一億八七一八万円で買受け、手付金二〇〇〇万円を支払い、国土利用計画法に基づく届出をして、「不勧告通知書」を受領したので、Yらに対し、右山林について所有権移転登記手続...
《解 説》
XはYとの間で、昭53年7月協議離婚をした際、三人の子供の養育費について「①Xが三人の子の親権者となり、成人に達する日まで養育する。②YはXに対し、三人の子の大学進学についての教育費全額(授業料を含む)を負担し、かつ、この養育費として月額五〇万円を払う。③物価の変動に伴い、Xが...
《解 説》
一 本件は、Y(債務者)が、宮城県伊具郡丸森町の標高約二二〇ないし二五〇メートルの高台に、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、陶磁器くず及び建設廃材(いわゆる安定五品目)を埋立て処分する産業廃棄物最終処分場(以下「本件処分場」という。)を設置し、使用操業を予定して...
《解 説》
一 本判決は、信用取引の顧客であるインド国籍の投資家Xが、Y証券会社の従業員の無断売買によって生じた差損等に相当する金員をXの信用取引口座から引き落とし処理されたとして、Yに対して右引き落とし処理にかかる金員と同額の損害賠償を請求する事案につき、証券会社の従業員が顧客の信用取引...
《解 説》
一 事案の概要等
1 本件は、競売建物の所有者が執行妨害を目的として、競売建物に内外装工事をしたうえ、これを第三者に賃貸して入居させようとしたことが、競売不動産の価値を著しく減少するおそれのある行為に該当するとして、まず、工事禁止及び占有移転禁止の保全処分(①事件)が、次い...
《解 説》
Xら四三名は、仏教徒、クリスチャン、あるいは無信仰者であるが、昭和六〇年八月一五日、靖国神社に当時の中曽根内閣総理大臣らが公式参拝したことによって信教の自由、宗教的人格権、宗教的プライバシー権、平和的生存権を侵害されたと主張し、国家賠償法一条に基づき、Y(国)に対し、それぞれ慰...
《解 説》
一 本件は、被告人(女性)がデパートで数十分の間にブラウス等を次々と万引きした事実について、被告人が本件各犯行当時てんかんに基づく心神耗弱状態にあったか否かが争点となり、未だその程度にまでは達していない旨の鑑定結果が得られたが、裁判所は、被告人を継続的に診察していた主治医の証言...
《解 説》
地方公共団体と民間企業とが共同出資をして新たに会社を設立し、この会社によって地域開発等の公益性のある事業を推進する、いわゆる第三セクター方式による事業運営は、今日、全国的に広く普及しているところである。この場合、地方公共団体が第三セクターに対して、とくにその設立の初期の段階にお...
《解 説》
一 事案の概要は以下の通りである。
原告Xは、昭和六〇年当時三九歳であったが、四月から頭痛、眼痛に襲われ、被告Yが運営する病院の脳神経外科を受診した。その後、同科で検査と治療を受け、またXは自分で同じY病院内の眼科、耳鼻咽喉科でも受診していたが好転せず、同年六月には突然左眼の...
《解 説》
本判決は、地方公共団体が公の営造物の「事実上の管理」を理由に国家賠償法二条一項の責任を負う場合であるのか否かが問題となった事案につき、最高裁が、判決要旨のとおりの判断を示して、地方公共団体の責任を否定した原審の判断を是認したものである。
事件は、溜池で死亡した幼児の両親のXら...
《解 説》
本件は、水産業協同組合法に基づき設立された水産業加工業者を組合員とするY組合において、組合員のために買い付けた冷凍サンマ等の価格が暴落し、事前に購入を希望していた組合員が引き取らない事態を招き、値下げをして組合員に売り捌いたが、結局、一億円以上の損失を生ずる見込みとなったため、...
《解 説》
本件は、昭和五四年九月又は一〇月ころ、町の公金の亡失があったとされる件について約七年以上後の同六二年六月、収入役であったYに対し損害賠償の請求をする措置を講ずるよう求める監査請求をXらが行い、その後、損害賠償代位請求の住民訴訟を提起した事案である。本件の本案前の争点として、当該...