最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事案の概要
本件は、三重県住民が、水資源開発公団が建設した長良川河口堰の建設負担金について三重県が一般会計から工業用水道事業会計(特別会計)に支出するのは違法であるとして、被告三重県知事及び被告三重県出納長にその支出命令及び支出の差し止めを求め、既に支出した部分については...
《解 説》
一 小学生であったA(昭和六二年五月三〇日生。事故当時九歳)は、交差点において、信号機の青色表示に従って横断歩道上を自転車に乗って横断していたところ、強引に左折してきた大型コンクリートミキサー車に轢過されて死亡した。そこで、Aの両親であるXらは、加害車両の運転者であるY1及び右...
《解 説》
第一 紛争の社会的背景
一 大気汚染は、今も昔も、主に化石燃料の燃焼に由来する物質が大気中に排出されることによって都市部で発生するのであるが、昭和三〇~四〇年代においては、わが国の重工業が硫黄分の多い中東原油に依存していたとの事情から、わが国の代表的な工業都市では、かなり広い範...
《解 説》
一 本件は、エホバの証人の信者である患者Aが、医師に対して輸血を拒否する意思を明確に表示していたにもかかわらず、肝臓の腫瘍を摘出する手術を受けた際に輸血され、これによって精神的損害を被ったとして、右医師の勤務する病院を設置、運営しているY1(国)及び手術に携わった医師らを被告と...
《解 説》
一 昭和五七年度の国家公務員の給与引上げ等を内容とする人事院勧告につき、政府は財政状態のひっ迫等を理由に同年九月に右勧告の不実施(凍結)を決定した。本件は、右凍結を不服とする全農林労働組合が人事院勧告の完全実施等の要求を掲げて大規模な時限ストを行ったところ、全農林の中央執行委員...
《解 説》
一 本件の本案事件は、検定申請した高校公民科「現代社会」教科用図書の執筆者の一人であるXが、通知された検定意見が違憲、違法であるなどとして、国Yに対し慰謝料の支払を求めるものであるが、Xは、原審において、当事者間で争いのある検定意見の内容を特定するとの趣旨で、検定手続の各段階で...
《解 説》
一 Xは、中小企業団体の組織に関する法律(中団法)に基づき、出資金一〇〇〇万円で設立された協業組合であり、水道施設工事業及び管工事業を営むものである。Y(公取委)は、平成八年四月二三日、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)四八条四項に基づき、Xほか八名に対し、...
《解 説》
本件は、一審原告が公害紛争処理法に基づく公害調停の申請をしたところ、一審被告審査会が同調停事件の相手方である県公安委員会に関する部分を却下する旨通知をしたので、同原告がその取消を求めた事案である。
本件の主な争点は、同却下決定が許される法的根拠の有無、却下できるとすれば如何な...
《解 説》
一 Xは、Yの経営する将棋クラブの常連客であったが、ある時に、Yが株式取引をして利益を上げていることを知り、利益の上がりそうな株を教えてもらい、その株の売買で利益が発生したときには、その一割をYに支払うという合意をした。その後、Xは、Yから株売買の指南を受けて株式取引を行ってき...
《解 説》
一 金融業者であるYから金銭を借受けたXは、Yの従業員から夜間自宅に訪問を受けて外に連れ出され、初対面の酒店店主に対し返済資金の借入れ申込みを強要され、暴行・暴言を加えられる等の違法な取立てを受けたとしてYに対し使用者責任に基づき慰謝料及び弁護士費用の支払を求めた。
これに対...
《解 説》
一 有限会社Aは、保険会社Yとの間で、A会社所有の本件建物を保険の目的とする火災保険契約を締結していた。BはA会社の代表取締役である。XはA会社の債権者であり、火災保険金請求権に質権の設定を受けていた。A会社は平成五年七月破産宣告を受け、破産管財人が選任されて破産手続中であった...
《解 説》
一 Xは、平成四年に東京都内に所有する土地を分筆したうえ、二度にわたり第三者に譲渡したので、訴外A税理士に対して税務申告を依頼した。
そこで、Aは、Xを代理してXの平成四年分及び平成五年分の所得税の確定申告手続及び修正申告手続を行ったが、その際、長期譲渡所得の課税の特例(以下...
《解 説》
一 本件は、新規物の生産方法の推定規定(特許法一〇四条)に基づく損害賠償請求事件であり、その概要は以下のとおりである。X(原告)は、新規物質トラニラストの生産方法の発明(本件発明)について特許権を有していたところ、トラニラストを製造、販売したY1(被告原末メーカー)らの行為が右...
《解 説》
一 本件判決は、Yが執筆し、Zが発行及び販売した書籍がXの著作権、著作者人格権、人格権等を侵害するなどとして、XがY及びZに対し、右書籍の発売等の禁止、廃棄、謝罪広告及び損害賠償を求めたのに対し、これを棄却した事例判例である。本件の争点は多岐にわたるが、ここでは、判示事項の著作...
《解 説》
本件は、電路支持材の形態につき、不正競争防止法二条一項一号の商品等表示該当性、周知性等が争われた事案である。
Xは、電路支持材であるパイラックを昭和30年代から製造販売し、昭和50年代には、同種電路支持材につき全国で90%近いシェアを占めていたところ、Yが、電路支持材の製造販...
《解 説》
一 本件は、旧住宅金融専門会社の大手であったA社が、バブル経済の高揚に伴い急速に業績を伸ばしていた不動産会社のB社に対して行った不正融資に関し、関係者が商法上の特別背任罪に問われた事件のうち、B社側の被告人両名の同罪の成否が争われた事件である。
本件の外形的事実に争いはないも...
《解 説》
一 Xは、東京弁護士会に所属する弁護士であり、傷害事件を起こした訴外Aの弁護人であるが、同事件を捜査した北海道警察警部兼警視庁警部の訴外Bは、Xの所属団体、所属政党などを調査して、これを本件捜査報告書に記載し、これを東京地検の訴外C検事に提出して報告し、東京区検の訴外D副検事は...