最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事件の概要
Yの経営する炭鉱において粉じん作業に従事していた労働者六三名は、じん肺に罹り、じん肺法により管理区分二ないし四の決定を受けた。右の者及びその相続人XらはYに対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償として一律かつ包括的に慰謝料三〇〇〇万円及び弁護士費用三〇〇万円の...
《解 説》
一 事故の概要等
平成二年四月一日から同年九月三〇日までの間、大阪市鶴見区緑地公園を会場として、国際花と緑の博覧会が開かれたが、同年四月二日、会場の中央ゲートとアミューズメントゾーンを結ぶウォーターライド施設(全長約二〇〇〇メートル)のボートが「街の駅」付近で衝突して数珠つな...
《解 説》
一 原告ら二名は、他の自衛官一名及び元自衛官一名とともに、昭和四七年四月二七日及び二八日、防衛庁正門付近及び芝公園で開催された沖縄返還協定粉砕等を掲げた政治的集会において、制服を着用した上で、判文にも掲げられたような過激な表現で、自衛隊の沖縄配備及び立川基地移駐に反対し、かつ自...
《解 説》
一 議渡担保権者から弁済期後に譲渡担保の目的建物の贈与を受けたXが、所有権に基づいてその建物を占有しているY1、Y2に対しその明渡しを請求した事件であって、譲渡担保権者による弁済期後の目的物の処分と受戻権の関係が争点となった。事案の概要は、次のとおり。本件建物は、Y1がその妻Y...
《解 説》
一 事実の概要と裁判
Yは、Xから本件土地を賃借していたAからその二分の一を転借し(Xは黙示的に転貸を承諾)、地上に建物を所有していた。Aが賃料の支払を怠ったので、Xは、Aに対し延滞賃料支払の催告をした上で、賃貸借契約を解除し、Yに対して、所有権に基づいて建物収去土地明渡を請...
《解 説》
一 信用金庫の支店長代理Bに預金の入金名下に小切手を詐取されたX1、X2が、Bの使用者であるYに損害賠償を請求した事件であり、X1(本人兼X2の代理人)の「重大な過失」の有無が争点となった事件である。
金融ブローカーであるAらのグループの者は、大阪の金融業者であるX1らに、Y...
《解 説》
一 本判決は、給付訴訟において、給付請求権は認められるが、右請求権につき強制執行をしない旨の合意(不執行の合意)があった旨の主張がされ、それが認められた場合、裁判所は、右請求権について強制執行をすることができないことを判決主文において明らかにすべきであるとした最高裁判決である。...
《解 説》
一 本件は、動産売買先取特権を有する者が物上代位権に基づく債権差押えの申立てをした場合に、右申立てに他の差押事件への配当要求の効果があるかどうかが問題になった事案である。動産売買の先取特権を有する者は、物上代位の対象となる右動産の転売代金債権につき仮差押えの執行をしているだけで...
8 複数人が共同して防衛行為としての暴行に及び侵害終了後になおも一部の者が暴行を続けた場合において侵害終了後に暴行を加えていない者について正当防衛が成立するとされた事例
(最高裁第3小法廷平6・12・6判決)
《解 説》
本件は、会社の代表者がその会社の業務に関し虚偽の事実に基づいて建設業法三条一項の許可を会社名義で受けたという建設業法違反の事件であり、代表者である被告人を処罰するのは、いわゆる本条である建設業法(昭和六二年法律第六九号による改正前のもの、以下「建設業法」という。)四五条一項三号...
《解 説》
一 都市計画法三四条は、市街化調整区域における開発行為の許可基準を定めているが、本件ではその内の四号の「市街化調整区域内において生産される農産物、林産物若しくは水産物の処理、貯蔵若しくは加工に必要な建築物」に該当するかが争われた事例である。
二 Xは、X一人が従事する個人経営...
《解 説》
一 本件は、渋谷区円山町のいわゆるラブホテル街に新たにホテルを設置しようとする原告が旅館業法(以下「法」という。)三条に定める経営許可の申請をしたところ、被告が、右ホテルの設置場所から約四〇メートルほどの場所に同条三項三号及び東京都旅館業法施行条例二条一項四号に規定する施設とし...
《解 説》
一 本件の事案は、都市計画法に基づく開発許可及び森林法(平成三年法律第三八号による改正前)一〇条の二に基づく開発許可等について、開発区域の周辺に居住する原告が取消し又は無効確認を求めたものであるが、各許可に係るゴルフ場開発工事が完了したため、訴えの利益の有無が主たる争点となった...
《解 説》
一 本件は、千葉県立高校の相撲部員であったX(原告・被控訴人)らの子Aが、相撲部の練習中に熱中症に罹患して死亡したため、Xらが、相撲部の顧問教諭に指導上の過失があったなどと主張し、Y千葉県(被告・控訴人)に対して、国家賠償法一条に基づき損害賠償を請求した事案である。
一審は、...
《解 説》
一 本件は、転根抵当権の実行により、一括競売に付された土地、建物を競落した原告が、被告(国)に対し、真実は右建物が右土地とは異なる土地上に存在しているのに、建物登記簿、現況調査報告書等の誤った記載から、右建物が右土地上に存在すると信じ、競売により敷地利用権がない右建物を買い受け...
《解 説》
Aは、昭和二四年三月以降、粉塵の発生する職場で労働し、同五五年六月にじん肺管理区分二との決定を受け、同五六年四月には、じん肺診査医から管理区分三イとの診断を受け、疾病補償年金が支給されるようになった。Aは、同五七年に入院し、同年五月に肺がんが発見され、同年一一月死亡した。Aの遺...
《解 説》
一 YはXに対し、Xの役員その他の幹部職員のずさん経理等を告発するチラシを配付する旨及び顧問弁護士との話合いは断る旨の通知をしてきた。Xは、顧問弁護士を通じて、そのような行為は信用棄損及び業務妨害に当たる旨指摘した書面をYに送付したが、Yは、その受領を拒否した。しかし、X自身が...
《解 説》
一 マンション分譲業者Yは、Xらに本件マンションを販売する際、マンション各室からの眺望をセールスポイントとし、その眺望を阻害する建物が建築されるおそれはないと説明したため、Xらはこれを信頼して購入した。他方、Yは、本件マンションの南側隣接地をすべて取得し、Xらの右信頼を確実に保...
《解 説》
一 X1は出生時から口唇裂及び口蓋裂の先天性障害があり、体重が六キログラムを超えるのを待って手術することになり、生後六か月でY病院の形成外科において手術を受け、術後管理のためY病院の小児科に入院していたが、入院の五日後に、うつ伏せで顔の左下半分を下にした状態で呼吸停止に陥ってい...
《解 説》
被相続人Aは、先妻Bと婚姻し、X1、X2、Y1をもうけたが、Bが死亡したので、昭和二〇年に後妻Y2と婚姻した。AとY2は、Y3をもうけた。X1、X2は、Y1ないしY3を相手方として、A所有の祭祀用財産承継者をX1に指定するよう求めて本件審判を申し立てた。その理由とするところは、...
《解 説》
一 事実の概要
Xらは亡Aの長男、長女及び三男であり、Yは二男である。Aの遺言書として、その財産全部をYに相続させるなどと記載されている遺言公正証書が存在していることから、Xらは、① 本件遺言当時、Aは遺言能力を欠いていた、② 本件遺言書は、民法九六九条二号ないし四号所定の方...
《解 説》
一 本件は、Y(国)を相手に慰謝料の支払を求める訴え(以下「前訴」という。)を提起して敗訴したXらが、Yに対し、前訴においてXらが予納した郵便切手についてのYの措置等に違法があったとして、慰謝料の支払等を求めた事案である。
前訴第一番においては、担当書記官が、判決正本をXらに...
《解 説》
一 本件は、いずれも親族間の殺人事件につき、急迫不正の侵害の不存在を理由に過剰防衛の成立を否定した第一審判決を事実誤認として破棄し、その成立を認めた東京高裁の判決二件である。
まず、①事件は、被告人が酒に酔った次男から顔面を手拳で殴打されるなどの暴行を受け、揉み合いの末同人を...
《解 説》
一 本件は、被告人が多数の偽造文書を作成し、これを法務局に提出して不動産登記簿に不実の記載等をさせた事案と、他人の自動車内に二連式箱型銃二丁を所持した事案である。
被告人は、銃の所持について、捜査段階では犯行を認めたものの、公判廷においては、自白の任意性を争ったほか、銃は、そ...
《解 説》
商標権の存続期間の更新登録の出願手続における特許庁の審決が長期間にされなかったことに伴う国家賠償請求事案である。本判決は、原審の大阪地裁判決が特許庁審判官の作為義務違反を肯定し損害賠償請求を認容したのを支持した。
Xは昭和四九年に登録された商標権を有し、昭和五九年に存続期間の...
《解 説》
一 本件訴訟提起に至る経緯
原告は、昭和五九年一二月一〇日、福岡地方検察庁小倉支部に対し、警察官三名について、氏名不詳のまま、特別公務員職権濫用罪(刑法一九四条)及び強要未遂罪(同法二二三条二項、一項)で告訴状を提出した。次に、原告は、同月二七日、福岡地方裁判所小倉支部に対し...