最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 Xは、平成三(一九九一)年一月、長野県小諸市内の病院で出生したが、その母は行方不明となった。母は、入院時にセシリア・ロゼテと名乗り、生年月日は一九六五年一一月二一日とされていたが、国籍については不明であり、フィリピン人と見られた。Xの父は不明であった。Xについては、当初、国...
《解 説》
一 昭和五六年法律第八一号により、米穀小売販売業はそれまでの登録制から許可制に変更になった。米穀小売販売業の許可に関する裁判例としては、無効確認の趣旨で米穀小売販売業許可処分を取り消したことの適否が争われた札幌地判昭62・7・27判時一二五三号五五頁、その控訴審である札幌高判平...
《解 説》
一 本件は、被告会社四社の各従業員らが、各会社の業務に関し、社会保険庁が発注したいわゆる目隠しのシールの入札において、落札業者及び落札価格等を予め談合し、独禁法三条所定の不当な取引制限をしたとして、右四社が、同法九五条一項、八九条一項一号所定の両罰規定により、起訴された事案であ...
《解 説》
一 神戸市は、神戸空港設置の計画を有しているが、空港を設置するにはまず国の空港整備五か年計画に組み入れてもらう必要があり、また、神戸空港は関西新空港や大阪国際空港と近接しているため、空港整備五か年計画に組み入れてもらうには空域調査を行う必要があった。ところが、昭和五九年当時は、...
《解 説》
一 Xは弁護士であるが、勾留中でかつ接見禁止決定を受けている被疑者の弁護人となるべく、勾留場所である県警本部留置場に赴き接見を申し入れた。被疑者については一般的指定書が送付されていたので、留置係の警察官は具体的指示を受けるために名古屋地方検察庁に電話連絡をしたが、担当検事が不在...
《解 説》
都立高校の教諭であったXは、家庭訪問の途中転倒して負傷し、その四日後に脳出血と診断された。Xは「左前腕・左肩打撲及び脳出血」について公務災害認定の請求をしたところ、Y地方公務員災害補償基金支部長は、「左前腕・左肩打撲」については公務上の災害、「脳出血」については公務外の災害と認...
《解 説》
本件は、学校法人であるX学園が、生徒の成績評価の誤りを理由に高等学校家庭科の教諭であるYを職務の適格性を欠くとして通常解雇し、Yに対し雇用関係の不存在の確認を求めたのに対し、Yが、職務の適格性を欠くような成績評価の誤りはなく解雇理由がない、解雇権の濫用である、不当労働行為である...
《解 説》
一 本件事実関係の概要は、Xは、Yに対して建物所有目的、期間二〇年として本件土地を賃貸していたところ、平成四年の更新の際、Yに対し、更新料として金一四一〇万円の支払を請求したが、Yがこれを拒絶したため、次回の更新時には更新料を支払う旨の合意があったこと及び東京都区内では、建物所...
《解 説》
本件は、Yの開発していたゴルフ場の会員権を購入したXが、当該ゴルフ場のオープン遅延を理由にYとの会員権購入契約の解除の意思表示を行った上、Yに対し、預託金等の返還を求めて提訴したものである。
具体的な事実の経過は次のとおりである。
(1) Yは、本件ゴルフ場のオープンを平成...
《解 説》
Xは、Yから期間を五年と定めて本件店舗を借り受けるに際して保証金を預託したが、XY間の契約書には右保証金の償却について、五年で二〇パーセントを償却し、償却分は五年目にうめるが、途中解約の際にも二〇パーセントの償却をする旨の規定が存した。その後、Xは一年未満の期間で、本件賃貸借契...
《解 説》
一 本件は、Xら四名(うち二名は弁護士)がXのうち一名を原告とし、弁護士である二名を原告訴訟代理人とする別件の民事訴訟での訴訟活動について、被告の訴訟代理人であった弁護士Yが、有印私文書変造・同行使及び詐欺未遂等の罪名でXらを告発し、これに対して弁護士であるXがYを懲戒請求した...
《解 説》
一 本件三事件は、新聞社Y1が取材・編集し、発行する新聞紙上に掲載した新聞記事が、信徒多数を有する宗教法人であるXの名誉を毀損したとして、Xが、不法行為に基づく損害賠償等を求めた事案である。
このうち、①事件は、「Xが農地法等に違反して、農地にプレハブ棟を建設している疑いがあ...
《解 説》
一 本件は、Y社の出版にかかる月刊誌「月刊TIMES」昭和六四年一月号(発行部数約二〇〇〇部)に掲載された記事(以下「本件記事」という。)についてXが、名誉棄損及び(Xの少年時代の有罪判決の引用について)プライバシーの侵害を理由に損害賠償を請求した事案である。
これに対しY社...
《解 説》
一 Xは、昭和六三年九月当時、三田市にある「千刈カントリークラブ」においてキャディとして稼働していたものであるが、同月二六日キャディとして稼働し、七番ホールティーグランドにおいて先行パーティーの進行状況を確認しようとしていた際、ティーグランドで素振りしていたYのゴルフクラブのヘ...
《解 説》
本件の事案の概要は、次のとおりである。
原告は、自己所有地にワンルームマンションを建設して土地と共にこれを売却すること(いわゆる専有卸)を計画し、売先を探していたが、被告との間で交渉がまとまり、原・被告間で協定書が作成された。協定書の骨子は、①売買代金は専有坪単価四〇五万円とす...
《解 説》
本件は、七八歳であった老人Aが遠縁の者Yに不動産多数を含む全財産を包括遺贈する旨の公正証書遺言をした際、意思能力を有していたか否かが争われた事案である。甲・乙両事件から成っており、甲事件は、法定相続人X(Aの亡兄の娘)からYに対し、遺贈を原因とする所有権移転登記がされた二八物件...
《解 説》
一 Yは、ZがXから手形貸付を受ける際、Zが振り出した約束手形(以下「本件手形」という。)に保証の趣旨で裏書をした。ところが、本件手形は振出日及び受取人欄白地の手形であり、白地手形のまま支払呈示期間内に呈示されたため、XはYに対する遡求権を保全できず、本件手形金請求をすることが...
《解 説》
一 原告X(Aの両親)は、被告Y(生命保険相互会社)を保険者、Aを被保険者、Xを保険金受取人とする生命保険契約を締結していたが、Aが高速道路上でトラックにはねられ死亡したため、Yに対し、保険金の残金(支払済みの①主たる保険契約に基づく保険金五〇〇万円及び②定期保険契約に基づく特...
《解 説》
一 原告Xらは、訴外Aを通じ、所有する株券を米国法人である被告Yに寄託していたところ、YがXらからの株券返還請求に応じないでいるうちにYが米国裁判所の差押命令によって右株券の所持を失い、Xらへの返還が不可能になったため、Xらが右株券の表章する株式の価格に相当する損害を受けたとし...
《解 説》
本事案は宗教法人たる債務者の代表役員が責任役員らを一方的に解任したのに対して、責任役員らが債務者に対し地位保全を求めたものである。本決定の論点のうち、民法六五一条の適用の有無、規則に解任についての定めがない場合の解任権の帰属や手続きの二点に関してはすでに多くの裁判例がある。前者...
《解 説》
Yは、Xに対する金一五万円余の貸金債権及び遅延損害金債権を有するとして、貸金請求訴訟を提起し、Yの請求を認容する旨の仮執行宣言付判決を受けた。その後、Xの自己破産申立に対し、破産宣告及び同時破産廃止決定がなされ、右決定は確定した。そして、Xは、免責の申立をするとともに、前記貸金...
《解 説》
A会社は、主として搬送機械器具の製造販売及び賃貸を業とする会社であるが、昭和六一年八月一五日二回目の手形不渡りを出し、同年九月二四日破産宣告を申し立て、同年一〇月三日破産宣告を受けた。Y1及びY2は従前からA会社と取引をしていた信託銀行であり、Y3はA会社が支援を求めた事業家で...
《解 説》
一 本件の被告人両名X・Yは、いずれも台湾人であるが、日本人Iが二度にわたって日本国内に覚せい剤を密輸入するに当たり、台湾国内において、X・Yが共謀の上、調達した覚せい剤を手渡し(第一の犯行)、Xが調達した覚せい剤を手渡す等(第二の犯行)、Iの営利目的の覚せい剤輸入罪及び禁制品...
《解 説》
一 被告人は、(1)午前一一時一六分ころパチンコ店で模造コイン一〇〇二枚をコイン計算用のジェットカウンター内に不正に投入して景品引換券一枚を窃取し、(2)右窃取に成功したことからさらに同様の方法で景品引換券を窃取しようと考え、一旦店を出て駐車場に停めてあった自分の自動車に戻り、...
《解 説》
本件は、道路上にはみ出して駐車中のフォークリフト前部の鋼鉄製フォークに、その存在に気づかずに走行してきたバイクの運転手が激突し、死亡したという事故について、フォークリフトの運転手が業務上過失致死罪に問われた事件である。
被告人は、材木問屋の従業員であったが、フォークリフトのフ...
《解 説》
一 本件訴因は、被告人らが行使の目的で、使用済テレホンカード一七枚の磁気情報部分の二か所に、それぞれ通話可能度数五四〇度等の電磁的記録を印磁して改ざんし、有価証券を変造したというものである。本判決は、①一般論として、テレホンカードの有価証券性及び磁気情報部分に記録された通話可能...
《解 説》
一 本件は、夫を交通事故で失ったのち、内因性うつ病に罹患し、希死念慮に支配されていた被告人(当時三四歳)が、親子心中を図って、長女(九歳)を絞殺し、次いで長男(一二歳)を包丁で刺殺した上、自らも自殺を図ったという、いわゆる「拡大自殺」の事案である。
二 本件においては、事実関...
《解 説》
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下、「麻薬特例法」という)二条三項及び一四条一項一号は、薬物犯罪の犯罪行為により得た財産又は当該行為の報酬として得た財産を不法収益としてこれにつき必要的没収を規定し、また...
《解 説》
一 本件のうち判示事項に関係する部分(罪となるべき事実の第二)の事実関係は、被告人ら(衣料品の製造を目的とする会社の従業員とその販売を目的とする会社の代表取締役)が共謀のうえ、アメリカ合衆国法人が被服などを指定商品として登録を受けている、同国のプロバスケットボールチームのシンボ...
《解 説》
一 本件は、強盗罪で服役していた元警察官である被告人が、仮釈放の五日後に、金員強取に用いる凶器を得るため、京都市内で警察官をおびき出し、これを殺害して実砲入りのけん銃を強取した上、更に、その約三時間後、大阪市内で金融業者の店舗に押し入り、従業員を右強取に係るけん銃で射殺して現金...
《解 説》
一 被告人は、青果業者を組合員とする協同組合の経理事務員であったが、組合の取引銀行の当座預金から、自己の用途に費消する目的で、組合振出名義の小切手を用いて十六回にわたり現金六〇〇〇万円余の払出しを受けたとして、業務上横領罪で在宅のまま起訴された。差戻し前一審では起訴事実を認め、...
《解 説》
一 本件は、覚せい剤の所持と使用の事案である。検察官は本件の証拠として、前者については証拠物として押収した覚せい剤とその鑑定書を、後者については被告人が提出した尿についての鑑定書をそれぞれ証拠請求したが、裁判所は、判決に先立つ決定において、「本件捜査は全体として著しく違法性を帯...
《解 説》
本件判決は、「全国紙の名誉毀損の時効 原告に立証責任」などの見出しで新聞報道されたものであり(平成五年一一月三〇日朝日新聞夕刊等)、事案の内容は、殺人等の罪名により起訴され、公判中の被告人が、右殺人事件等の報道に関し、自己の名誉を毀損されたとして損害賠償を求めたものである。
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