最も長い歴史をもつ判例実務誌
[目次]
第1部 基調報告「民事裁判のより良い運用に向けて―民事裁判に関する運用改善提言を踏まえて―」
1 運用改善提言の作成経緯等
2 本提言の方向
3 本提言初公表後の実務・提言等
第2部 パネルディスカッション
Ⅰ 訴状・答弁書の充実
1 訴状の補正の在り方・答弁書と第1回口頭弁論期日
Ⅱ 争点整理の充実
2 争点整理の到達点
3 暫定的心証開示とその意義
4 ノンコミットメントルールの適用について
Ⅲ 争点確認の実質化
5 争点整理の記録化等
Ⅳ 証拠収集方法の活用
6 早期の証拠方法の提出のための工夫
Ⅴ 集中証拠調べの充実
Ⅵ 和解の活用
7 和解の意義と成立までの工夫
Ⅶ 判決
8 双方当事者の納得の得られる判決
Ⅷ IT化
9 IT化の下での訴訟の在り方
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合において,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか
担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合における,当該債務者の相続人の民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」該当性
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)3条の指定を受けている暴力団の構成員が,共犯者らとともに行ったいわゆる振り込め詐欺について,暴対法31条の2本文に規定する威力利用資金獲得行為を行うについてされたものと認められた事例
アルツハイマー型認知症に罹患していた97歳女性Aが夫の相続に係る自己の相続分を長女Y1に無償で譲渡した契約がAの意思能力の欠如により無効であるとして,Aの他の相続人による遺産確認請求が認容された事例
遺言者が一切の財産を抗告人(長男)に相続させ,その相続の負担として,原審申立人(二男)の生活を援助するものと定めた遺言について,原審申立人が,遺言者の死亡後,「原審申立人の生活を援助する」義務を負ったのにこれを履行していないとして,遺言の取消しを求めた事案において,原審はこれを認め,本件遺言を取り消したが,抗告審においては,抗告人に「原審申立人の生活を援助すること」,すなわち,少なくとも月額3万円を援助する義務があることを認めた一方で,遺言の文言が抽象的であり,その解釈が容易でないこと,抗告人は今後も一切義務の履行を拒絶しているものではなく,義務の内容が定まれば履行する意思があることなどを考慮すると,抗告人の責めに帰することができないやむを得ない事情があり,本件遺言を取り消すことが遺言者の意思にかなうものともいえないとして,原審を取り消し,本件申立てを却下した事例
親権者である養父及び実母から暴行等の虐待を受け,一時保護の措置がとられている子について,親権者らによる親権の行使が不適当であり,そのことにより子の利益を害することは明らかであるとして,親権者らの子に対する親権をいずれも2年間停止した事例
原審段階で認知症と診断された被告人の原審及び控訴審における訴訟能力が争われた事案において,控訴審での精神鑑定の結果,被告人は認知症ではなく,記憶障害などを発症するウェルニッケ・コルサコフ脳症であったと診断されたことを前提に,被告人に記憶障害はあり,詐欺,詐欺未遂の本件各犯行に係る具体的な事実関係を自ら想起できず,誤った記憶を想起して述べてしまう可能性もあるが,記憶以外の知的機能について大きな問題はなく,弁護人が作成した書面を読解する能力もあり,弁護人は,記憶障害発症前に被告人が取り調べられた際の録音録画DVDを検討するなどして適切な応訴方針を策定することや,弁護人の応訴方針を被告人に説明して理解させ,それに対する意向を確認することができたと考えられることなどから,被告人の訴訟能力は著しく制限されてはいるが,弁護人からの適切な援助を受けることによりなお訴訟能力を保持しているといえるとして,原審及び控訴審における訴訟能力を肯定した事例
被告人が,自動車を運転中に,進路適正保持義務に違反し,反対車線に停止中の自動車と衝突する人身事故を起こした過失運転致傷の事案において,原審裁判長が,検察官に対し,被告人が故意に事故を起こしたとの認定に至った場合に備えた対応の検討を求め,訴因変更を促す釈明権を行使したことについて,刑訴法312条2項の予定する範囲を超え,同法の定める当事者主義の原則に反する違法があるとされた事例
1 二酸化炭素の排出に起因する地球温暖化によって健康等に係る被害を受けると主張する者は,電気事業法46条の17第2項の規定に基づく通知の取消訴訟の原告適格を有するか(消極)
2 経済産業大臣がした電気事業法46条の17第2項の規定に基づく通知が違法であるとはいえないとされた事例
1 大阪市が,認可保育所を運営する社会福祉法人に対し,委託した保育に要する費用として支弁した運営費・委託費のうち支弁の要件に欠ける部分の不当利得返還請求をした事案において,同法人が悪意の受益者であると判断された事例
2 上記運営費の不当利得返還請求権及び大阪市補助金等交付規則・各補助金交付要綱に基づき交付した保育所の人件費等に係る各補助金の返還を求める不当利得返還請求権は,私法上の金銭債権であり,消滅時効期間は10年である(平成29年法律第44号による改正前の民法167条1項)
1 ツイッター上で他人になりすまして俗悪なユーザー名等を使用するなどした行為が,社会生活上受忍の限度を超える肖像権侵害に当たると認められた事例
2 発信者情報としてショートメッセージサービスが用いられる通信方式による電子メールに係る電子メールアドレスの開示が認められた事例
受刑者の一人が遵守事項に反して他の受刑者に暴行をし始めたのをその場に居合わせた刑務官2名が制止しなかったことは,権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くもので,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
父である申立人が,離婚した母である相手方に対し,当事者間の子である未成年者らとの面会交流を求め,その時期,方法などについて審判を求めた事案において,申立人に対して恐怖心を抱いている未成年者らの心情を考慮して,直接の交流の実施を開始するのは相当でなく,まずは,従前からできていた電話や手紙による間接交流の実施を重ね,未成年者らの不安や葛藤を低減していくのが相当であるとした事例
申立人夫(日本国籍)と申立人妻(フィリピン国籍)が,申立人妻と申立外男性との間の非嫡出子である未成年者(フィリピン国籍)との養子縁組の許可を求めた事案において,申立てを認めた事例