最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一、本件はスモン訴訟の最新判決であり、また唯一の高裁判断である。
周知の通り、スモン病(亜急性脊髄視神経症)とは、キノホルムに起因すると考えられる中毒性神経障害であって、昭和三〇年代後半から、キノホルムの使用が禁止される昭和四五年まで多数の患者が発生し、キノホルムを製造・販売...
《解 説》
一、Xらの訴えによると、X1は、新東京国際空港の建設に反対する運動をしている権利能力なき社団であり、本件係争土地内に二棟のプレハブ造建物を所有して右土地を占有していた者であり、またX2及びX3は、その内の一棟の管理を委ねられ、X1と共同して本件土地を直接占有していた者と主張され...
《解 説》
一、被告が信用保証協会の保証の下に金融機関から借入をし、右保証協会の被告に対する求償債権を担保するために原告は所有不動産二六筆に極度額を三六〇〇万円とする根抵当権を設定した。信用保証協会から右根抵当権実行の実行が申し立てられ、五筆の不動産について売却許可決定がされたが、手続費用...
《解 説》
一、被告会社(被上告人)は採石等を目的とする株式会社であり(発行済株式総数は昭和五五年七月二四日当時三万株)、原告(上告人)は右時点において少なくとも被告の株式一万株を有する株主であったところ(原告は二万株を有する旨主張するが、右時点において原告が一万株を有していたことは争いが...
《解 説》
選挙の規定に違反があり、選挙の結果に影響を及ぼすときは選挙が無効となる(公職選挙法二〇五条一項)が、「選挙の規定に違反する」とは、選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続きに関する明文の規定に違反するときばかりでなく、明文の規定はなくとも、選挙の自由公正の原則が著しく阻害さ...
《解 説》
本件は、被告が、農業振興地域の整備に関する法律(以下、「農振法」という。)一三条一項に基づいて、農業振興地域に指定されていなかった原告所有地を農業振興地域に変更決定したことに対し、原告が、右決定は行訴法三条にいう取消訴訟の対象たる行政処分にあたり、右処分は、法の定める縦覧を経て...
《解 説》
一、本件は、警察官の職務質問やいわゆる「任意同行」の適法性が争われた事例である。
原告の主張によれば、労働組合団体の役員であるXは、昭和六〇年一一月一六日の午後二時頃、東京練馬区内の道路を歩いているうちに練馬署の警察官数名から、氏名や所持品に関する職務質問をされ(これは練馬区...
《解 説》
XはY市の福祉事務所に勤務する任期一年の家庭奉仕員であって、毎年再任されてきたが、再任の時期にY市から受けたXを再任しないとの通告の効力を争い、家庭奉仕員の地位の確認、未払給与の支払を求め、予備的にXが前記通告により家庭奉仕員の地位を失ったものとすれば、右通告はY市の市長のXに...
《解 説》
X(原告・被控訴人)の所有地とYら(被告・控訴人)の所有地は、いずれも傾斜地にあって、X所有地の上方にY所有地があり、Y所有地のX所有地との境界側に高さ三・二七メートル、延長二六・二メートル、平均斜度七三・九度の石垣の擁壁があり、その上に高さ一・八五メートル、延長二一・三メート...
《解 説》
一、Xは店舗として使用されていた本件マンションの一階の専有部分(以下「本件専有部分」という。)を買い受けたが、専有部分は旧規約で飲食店等に使用することができない旨定められていた。本件専有部分はもともと本件マンション居住者向けの駐車場として使用されていたが、その後店舗に改造された...
《解 説》
Xは、その所有する建物をYらに賃貸していたが、前回の賃料増額から約四年間を経過し、賃料が不相当に低額となったとして、Yらに対して賃料増額請求をした。これに対してYらは、賃借建物はいずれも戦前に築造された老朽建物で、修繕が必要な箇所が多数あるのに、Xが修繕を行わなかったので、自己...
《解 説》
本件は、貸金の請求であり、原告は、被告の利息の支払について、貸金業の規制等に関する法律四三条のいわゆるみなし弁済規定の適用を主張し、利息制限法の制限利率を超過した分も、元本に充当せず、これを適法に取得することができるものとして、貸金残額を計算して請求している。
貸金業法四三条...
《解 説》
YはXの仲介により、Yの経営する病院の営業をAに代金一三億円で譲渡する契約を締結し、Xに仲介報酬として五〇〇〇万円を支払う旨約した。本件は、右支払約束に基づく報酬の残金四二〇八万円が請求された事案である。これに対するYの抗弁は、Aには右譲渡代金の支払能力がなかったところ、Xは仲...
《解 説》
Xら五名は、倒産したA社に対する債権の担保として同社の代表者Y1から極度額八〇〇〇万円の根抵当権の設定を受けていたが、債務整理の過程において右根抵当権設定登記が抹消され、Y2信用金庫に極度額九〇〇〇万円の根抵当権設定登記が経由されたので、Y1に対しては右抹消登記の回復登記手続き...
《解 説》
一、本件は、ある店舗における「業務委託契約」の性質が争われた事例である。
Xの主張によれば、Xが他から賃借している店舗で、「天むす」(エビのてんぷらを入れたおにぎり)を販売する業務をY1に委託し、Y2は右委託契約から生じるY1の債務を連帯保証していたが、昭和六二年以降、販売代...
《解 説》
Xは中学教師であるが、生徒Aに体罰(暴行)を加えたとの事実で水戸簡裁に略式起訴され、罰金五万円の略式命令を受けたが、正式裁判を請求し、同簡裁で罰金三万円の有罪判決を受けた。Xの控訴により、東京高判昭56・4・1(判時一〇〇七号一三三頁、本誌四四二号一六三頁)は、Xの行為は正当な...
《解 説》
一、訴外A(一七歳)は、昭和六二年一〇月、清水市内に住む友人B(一八歳)が運転する自動二輪車(以下「本件車両」という。)の後部座席に同乗して清水市内を走行中、Bの信号無視により訴外C運転の乗用車と衝突し、頚椎骨折により死亡した。
そこで、Aの父母であるX1とX2は、Bに対して...
《解 説》
一、Xは、昭和六一年三月、自転車に乗って愛知県半田市内の横断歩道を通行中、反対方向から左折してきたY2運転の普通貨物自動車に衝突され転倒、負傷し、入院して治療を受けたが、Y2とその使用者Y1との間で、既払金四六三万八三七五円と自賠責保険金一三八三万円のほかに金六〇〇万円の支払い...
《解 説》
一、Xは訴外A振出しの約束手形を所持していたが、いずれも不渡りになったので、Aの実質的支配者であるY3、Y4、それにY3、Y4が実質的に支配しているY1、Y2会社それぞれに対して法人格否認の法理(法人格の形骸化及び濫用)により手形金の支払いを請求した。
二、本判決は、①法人格...
《解 説》
Xは司法書士であり、Y保険会社との間で司法書士賠償責任保険契約を締結していた。本件は、XがY社に対し、右保険契約に基づき、A社に損害賠償として支払った和解金一五〇〇万円の支払いを求めた事案であり、そのいきさつ及び争点等はおよそ次のとおりである。
Xの補助者Bは土地の所有者を名...
《解 説》
一、本件事案は、次の通りである。Y神社(第一審被告)は、寛仁年間(西暦一〇二〇年頃)に創建された神社であって、古くからA村の氏神として崇敬を受け、A村の氏子によって維持、管理され、存続してきたが、昭和二六年四月三日に公布された宗教法人法により、昭和二七年七月一日に宗教法人となっ...
《解 説》
本件は、農業協同組合の理事会で起立議決の方法で組合長を選任したが、それに先だって総会に代わる総代会で、理事会における組合長選任は無記名投票の方法によるとの動議が可決されており、農業協同組合法四一条(民法五三条後段準用)で理事は総会の決議に従わなければならず、右決議に拘束されるも...
《解 説》
Xは某郵便局に合計三〇〇万円の定額郵便貯金を預けていたが、不和となった妻AがXに無断で証書の再交付を受け、後に払戻まで受けてしまった。本件は、XからY(国)に対し、右貯金の払渡しの正当性を争い、あらためて払戻を求めた事案である。
本判決は、右払渡しの際、同局員が証書の氏名と印...
《解 説》
本件は、書証の成立の認定判断に関するものである。
本件では、Y1・Y2・Y3(被告・被控訴人・上告人)とX(原告・控訴人・被上告人)の前主の訴外会社との間でB農地の売買がされたかどうかが争われたが、YらがA・B両農地を右訴外会社に売り渡す旨の売買契約書がXから甲第三号証として...
《解 説》
本件は、被告人が大型貨物自動車を運転し、通り慣れた道路を進行してきて本件の信号機により交通整理の行われている十字路交差点(約一五×約一八メートル、黄三秒、全赤二秒)にさしかかった際、対面信号は赤であったが、いつも進入する前に青に変わることから、今回も青になるであろうと考え、交差...
《解 説》
本件においては、被告人が強盗致傷罪の共同正犯か幇助犯かが争われ、第一審判決は幇助犯を認めるのが相当であるとして、被告人を懲役三年、執行猶予四年に処したが、これに対し、検察官が事実誤認を理由に控訴したところ、本判決は幇助犯ではなく(実行)共同正犯の成立を認めるべきであるとし、第一...