最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、いわゆる予防接種禍集団訴訟のうちの東京訴訟であって、原審で敗訴した一家族(被害児X1とその両親X2、X3)が上告した事件であり、上告審における争点は、民法七二四条後段の適用の有無である。事案の概要は、次のとおりである。
X1は、生後五月時に予防接種法に基づき痘そう...
《解 説》
一 Yは、大規模な宅地開発を計画し、土地買収等の業務をXに委託した。XとYは、右業務委託の報酬に関し、報酬の一部として、買収した土地をYが宅地造成して販売する際にその一割をXに販売又は斡旋させる旨の合意(本件合意)をした。
しかし、Yは、その後宅地開発を断念したため、Xとの間...
《解 説》
一 本件は、X株式会社が、その固定資産である土地建物を退職した代表取締役Aに対する退職慰労金の一部として帳簿価額(土地の価額はその取得価額である二五〇〇万円)で現物支給し、当該事業年度の法人税の申告において、役員退職給与のうち右土地(本件土地)の現物支給に係る部分については帳簿...
《解 説》
一 本件は、Y市の住民であるXらが、市議会議員や市職員の接待や私的飲食の代金を公金から支出したことが違法であると主張して、複数の弁護士に委任して、右市議会議員、市長や市の幹部職員らを被告とし、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、損害賠償を求める住民訴訟(二件)を提起したと...
《解 説》
一 本件の事実関係の概要は次のとおりである。(1) Xは、貴金属の販売、加工等を目的とする会社であるところ、Xからダイヤモンド等の枠加工を請け負ったAは、加工を終えたダイヤモンド等(本件宝石)をYの宅配便を利用してXのもとに送付するために、本件宝石を入れて荷造りした箱(本件荷物...
《解 説》
本件は、いわゆる富山、長野連続女性誘拐殺人事件の上告審判決である。
昭和五五年二月下旬から三月上旬にかけて、富山市内で帰宅途中の女子高校生が身の代金目的で誘拐され、殺害されて死体を山中に遺棄された事件(富山事件)と、長野市内で帰宅途中のOLが同様に誘拐、殺害、死体を遺棄され、...
《解 説》
一 弁護士である被告人は、不動産所有者らと共謀の上、裁判所が不動産競売の開始決定をした土地建物について、その売却の公正な実施を阻止しようと企て、裁判所に対し、賃貸借契約が存在しないのにあるように装って、土地建物は既に他に賃貸されているので取調べを要求する旨の上申書とともに、競売...
《解 説》
一 本件は、原告が、既に審決取消訴訟を経て確定した審決の審判等につき、特許庁審判官のなした審判の違法、裁判官のなした審決取消訴訟の違法などを主張し、国に対して損害賠償を請求し、請求棄却とされた事案である。
二 本件においては、審決取消訴訟の違法が問題とされたところ、裁判官のな...
《解 説》
Y県立T高校において平成二年七月六日、登校しようとした女子生徒を教諭が校門を閉鎖したために圧死させた事故のあったことは記憶に新しい。T高校においては、同月二〇日、全体保護者会を開催し、保護者以外には非公開として会議の模様をテープに録音し、議事録を職員会議で配布した。生徒の保護者...
《解 説》
本件は、小学校の学校行事として行われていた校内持久走大会を見学していた小学一年の児童が、見学中に、校庭内に設置してあった日時計によじ登ろうとして日時計に体重をかけたために日時計が転倒し、児童がその下敷きになって死亡したという事故につき、当該児童の両親に対し保険給付をした原告が、...
《解 説》
一 本件は、工場抵当法に基づく抵当権の実行としての競売手続(以下「本件競売」という。)により工場の敷地及び工場建物を取得した原告が、被告である国に対し、工場抵当法三条の供用物件目録に記載された物件のうちの一つであるセメントサイロ一基(以下「本件サイロ」という。)が第三者の所有で...
《解 説》
一 本件は、XがYに対して、県職員のいわゆる空出張の有無等を調査する目的で、県の情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき、県監査委員事務局の平成六年度の出勤簿(以下「本件出勤簿」という。)の開示を請求したところ、Yがその全部について非開示とする旨の決定(以下「本件決定」...
《解 説》
一 本件は、市民病院を管理するY(市長)が特定の業者に市民病院の床頭台(病室のベッド脇に置かれている小型の机様のもの。)、電源等の部分の使用を許可(地方自治法二三八条の四第四項の目的外使用許可である。)する処分(以下「本件処分」という。業者は、使用許可を受けた床頭台にプリペイド...
《解 説》
Y2町は平成二年一〇月四日付で本件土地をAから代金八〇〇万円で購入し、これを同三年七月二九日付で町総務課長の地位にあったY1に代金八一〇万円で転売した(右売買は、国道拡幅工事のためY1の自宅土地建物が買収され、その代替地とするために行われた。なお、代金額は当初、八〇〇万円であっ...
《解 説》
一 X(JR東海)は、昭和六二年四月一日、日本国有鉄道改革法等により、国鉄の鉄道事業の一部を引き継いだ。国鉄は、長年にわたる赤字の累積のため経済的再建を迫られていたが、他方で、ヤミ慣行、現場協議における管理者の吊し上げ等の存在が指摘されており、職場規律の確立が求められていた。そ...
《解 説》
X信用保証協会は、金融機関(A銀行等)から保証委託を受け、昭和五六年から五九年にかけ、A銀行等のBに対する合計三件の貸金債務について連帯保証をしたが、Bは遅くとも同六〇年二月までに分割弁済の利益を失ったため、Xは同年九月までにA銀行等に代位弁済した。Bは既に同五九年八月破産宣告...
《解 説》
Xは亡父Aとともに本件建物を共有していたところ、Aの死亡により本件建物の完全な所有権者となった。本件建物にはAの内妻Y(Xは内縁関係を否定するが、本判決は内縁関係を認定した)が居住していたので、Xは所有権に基づき明渡し及び賃料相当の損害金の支払を求めて提訴した。Yは、Aとの間で...
《解 説》
一 本件は、入会部落の住民(戸主)全員が二手に分かれて当事者となり、共有の性質を有する入会権に基づく使用収益権を有することの確認を求める訴訟である。
滝沢部落住民(戸主)五二名は、明治一三年に結約証を作成して、本件各土地について村中持地として、その自由な処分を禁じ、部落全体で...
《解 説》
Xは、平成二年八月一〇日、Aに五〇〇〇万円を貸し付け、Aの所有する本件土地に極度額を七五〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、Aの指名した司法書士Yに右登記手続を委任した。本件土地は登記簿上の地目が宅地とされているが、現況は道路であり、YはXが貸し付けた際、本件土地が固定資産...
《解 説》
一 不動産業界で「サブリース」といわれる業態がある。デベロッパーと呼ばれる転貸事業目的の不動産業者が土地所有者から建築工事を請け負ってビルを作らせ、ビルのオーナーとなった土地所有者からそのビルを一括して賃借(長期年数の賃貸借契約で賃料自働増額・最低賃料保証特約付きが多い)し、テ...
《解 説》
一 Xらは、いずれも平成四年四月に死亡した亡Aの相続人であるが、同年九月、税理士であるYとの間で、亡Aの遺産を相続したことによって負担することになった相続税の申告に関する事務処理一切をYに依頼する旨の契約を締結した。
そして、X1は、Yの指示に基づいて右相続税の申告に必要な資...
《解 説》
一 本件は、預託金会員制ゴルフクラブと入会契約を締結した原告らが、当該ゴルフ場の開場遅延を理由として、契約時に支払済の入会金及び会員資格預り保証金(預託金)について、ゴルフ場入会契約の解除に基づく原状回復請求をした事案である。本件の争点は、多岐にわたるが、主要な争点は、①ゴルフ...
《解 説》
X(当時五三歳)は、不動産業者Aの仲介により、平成七年一月二八日、Yとの間で土地建物(本件不動産)を代金一億二〇〇〇万円、代金支払日同年四月一〇日、代金の一部に充てるための銀行融資がXの責めに帰すべからざる事由により否認された場合、Xは同年二月一七日までであれば、本件売買契約を...
《解 説》
X1は、日本国有鉄道(国鉄)の債務の償還等を行うことを目的として、昭和六二年四月一日国鉄から移行した特殊法人であり、X2は、国鉄の事業の継続等を目的とした株式会社である。Yは、昭和五二年までに国鉄から秋葉原駅構内の三筆の土地につき、一年間の使用承認を受け、同土地上に二棟の建物を...
《解 説》
破産会社Aは昭和五四年一月に設立され、主として、業務用の食器洗浄器等を製造・販売していた株式会社であるが、バブル経済崩壊後の消費の冷込みの影響を受け、平成四年以降、大幅に売上が減少し、同七年に入ってから各月の平均月商が損益分岐点となる月商六五〇〇万円を大幅に下回り、同年一〇月に...
《解 説》
移動通信網株式会社Xは、Aの代理人を名乗るY1との間で計五回線の携帯電話契約を締結し、さらにAの代理人を各乗るY2(Aの実父)との間で計二回にわたり計一一回線の携帯電話契約を締結したが、Aはその後通話料金を一切支払わなかった。XがAと接触して調査したところ、AはYらに電話契約締...
《解 説》
本件は、Xの監禁傷害による逮捕等を報道した新聞記事がXの名誉を毀損するものであったと主張し、Xが新聞社Y1及びその報道部長Y2を相手に慰藉料六〇〇万円の支払を求めた事案であるところ、本判決は、Y1に慰謝料三〇万円の支払を命じ、Y1に対するその余の請求及びY2に対する請求を棄却し...
《解 説》
一 訴外Aは、昭和五八年一月出生したが、乳児期に肺炎に罹患したため、風邪を引きやすくなり、昭和六三年一〇月から同年一二月までと平成元年五月から同年一二月まで、Y2の設置する病院において、急性気管支炎等により治療を受け、また、平成元年一二月と平成二年一月には、右病院において、カタ...
《解 説》
一 訴外A(明治四〇年一月生)は、平成三年一月、腹壁瘢痕ヘルニア及び腸閉塞のため、浅草病院に入院し、その手術を受けた後、脳梗塞の症状が現われたため、同病院に引き続き入院していたが、同年五月九日、浅草公証役場において公正証書による遺言をし、その所有する財産一切を包括して長男である...
《解 説》
一 訴外A(明治三七年五月生)は、平成五年七月一六日死亡したが、その生前の同年一月五日、その所有する財産等に関し、「Aはその所有に係る家屋と借地権を自由に裁量処分することを相続人Y1(妻)に委任する。」(以下「本件委任条項」という。)、「AがY2(三女)に貸付けてある貸付金は相...
《解 説》
Aは平成四年七月一七日、公正証書遺言をし、同六年一〇月一三日死亡したが、相続人は姉のBしかおらず、Bは同七年三月二九日死亡し、Xら三名がBを相続した。Aには総額九億二五〇〇万円の遺産があり、Aは前記公正証書遺言においてYら三名を受遺者に指定して特定の不動産及び金銭を遺贈し、Xら...
《解 説》
一 X1は、平成七年六月、Y会社の取締役に選任され、X2は、平成八年六月、Y会社の取締役に選任され、平成八年七月から、X1には月額二七〇万円、X2には月額一一三万円の取締役報酬が支給されることになったが、同年八月の定例取締役会において、非常勤の取締役とされ、同年九月からの取締役...
《解 説》
本件は、Xが有する自走式立体駐車場の特許権に基づき、イ号ないしヘ号物件(自走式立体駐車場)についてこれを発注し、完成後使用している者(イ号につきY1、ロ号につきY10、ハ号につきY5、ホ号につきY6、ヘ号につきY7)、建築業者(イ号につきY4、ハ号につきY8)、設計監理者(イ号...
《解 説》
本件マンションには専有部分として立体駐車場があり、同マンションの分譲業者であったY1が持分二九分の二四を、敷地の一部を所有していたY3が持分二九分の五をそれぞれ有していた。Y3の同共有持分は平成元年五月、Y2に売却された。本件駐車場の駐車料は一か月四万円であった。本件駐車場の出...
《解 説》
一 最近倒産事件が急増し、ノンバンクの処理には会社整理手続が多く利用されるようになった。ノンバンクは不動産などの資産を有していないので、資金の融通を受けるに際し、担保としてその有する債権を譲渡担保に提供し、債権譲渡通知の代理権を債権者に与えておくことが多く行われている。
二 ...
《解 説》
一 本件は、被告人が、①氏名不詳者と共謀の上、二一歳の女性Aに対し、クレジットカード会社従業員を装い、ハンバーガーショップ内で対面して、クレジットカードを預からせて欲しいなど嘘の事実を告げて、クレジットカードを騙取したという詐欺と②同種手口による詐欺未遂各一件の事案であるところ...
《解 説》
一 本件は、宗教法人の系列寺院の僧侶が住職らと共謀し、霊能力による病気治癒等を標榜した宣伝チラシを見て寺院を訪れた相談者から、加持祈祷の供養をすれば病気が治ると称して合計一〇〇万円をだまし取ったとされた事例である。被告人は、自己が霊能力を持つ僧侶で加持祈祷をし仏の啓示を受ける能...
《解 説》
一 本件事案は、被告人が、①朝日放送が開設した天気情報提供ホームページのサーバコンピュータ内に記憶・蔵置されていた天気予報画像のデータファイルを消去し、②わいせつな画像のデータファイルを送信するなどしてハードディスク内に記憶・蔵置させ、サーバコンピュータが利用者に対し天気予報画...
《解 説》
一 本件は、被告人がAに覚せい剤の共同買入を誘い、買入代金の半額の三万円ずつを出し合うことで合意し、待ち合わせの場所で落ち合い、A運転の自動車内で三万円を受け取り、行き先を指示して運転させ、車中などにAを待たせてカラオケボックス等数ヶ所に立ち寄り、その間に氏名不詳の者から覚せい...
《解 説》
一 本件は、山口組系中野会S会の若頭の地位にあった被告人の居室に対する別件の捜索過程(被告人はこれに立ち会っていなかった。)で、けん銃一丁及び適合実包一二発(以下「本件けん銃等」という。)が発見されたことから、被告人が本件けん銃等の保管(銃砲刀剣類所持等取締法違反)の罪により起...
《解 説》
一 X1とX2は、凶器準備集合、公務執行妨害、傷害被告事件の被告人として、平成二年一一月から平成四年六月まで、千葉刑務所に勾留されていた者であるが、X1は、平成三年二月二〇日から二一日までの間、同刑務所の職員に抗議したなどの理由により、革手錠及び金属手錠を両手後ろの状態にかけら...