最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事案の概要
本件は、重度の聴覚障害及び言語を習得しなかったことによる二次的精神遅滞により精神的能力及び意思疎通能力に重い障害を負っている被告人について、刑訴法三一四条一項にいう「心神喪失の状態」にあったかどうか、すなわち、訴訟能力の有無が争われた事件である。
一審は、訴...
《解 説》
一 事案の概要
Xは、大学在学中に、出生時の股関節脱臼の治療として股関節形成手術を受け、右発症当時、約三センチメートルの脚長差、股関節可動域に制限があった上、腰椎前弯も増強していた(基礎疾患の存在)。Xは、平成元年四月から、本件養護学校に教諭として勤務し、他の教諭と共に軽度か...
《解 説》
一 本件の事案は次のとおりである。Yの住民であるXが、監査事務局が平成六年一一月二九日に開催した会議につき、平成七年三月八日、監査委員に対して右会議に関する起案文書等の公文書につき開示請求をしたところ、監査委員は、同年五月八日、右請求にかかる公文書を開示しない旨の決定をした。そ...
《解 説》
一 事案の概要
1 秋田県の住民である控訴人(第一審原告。以下「X」という。)は、平成元年六月、秋田県公文書公開条例(昭和六二年秋田県条例第三号。以下「本件条例」という。)に基づき、A産業廃棄物処理センター(以下「A産業センター」という。)が平成元年五月秋田県知事(Y)に提出...
《解 説》
一 Xは、昭和二〇年一〇月、播磨造船所に入社し、昭和四〇年から昭和六一年までの間、主としてテレックス業務に従事していたが、昭和六一年にいわゆる頚肩腕症候群に罹患したため、Yに対し、労災保険法に基づき療養補償給付を請求したところ、業務外の疾病であるとして不支給決定処分がなされたた...
《解 説》
一 労働組合X1の下部組織であるX2は、YからXらが組合事務所として本件事務所を使用することの許諾(便宜供与)を受け、Xらは組合事務所として使用していたが、その後、Yに無断で本件事務所に隣接する建物部分も組合事務所として使用するようになった。YはX2に対し、X2とYとの約定(本...
《解 説》
一 A(地方公務員)は、昭和六一年三月一九日Y2の運転する軽四貨物自動車(B所有)に衝突・転倒して、傷害を負った。X(地方公務員災害補償基金)は、Aに補償し、AがY2及びY1(BはY1保険会社との間で対人賠償保険契約を締結)に対して有する損害賠償請求権を取得した。そこで、Xは、...
《解 説》
一 原告が相続により取得した定期預金の払戻ないし名義書換の請求に対して被告が他の相続人の同意書等を求めて直ちに応じなかったことを理由に、第一次的には不法行為、第二次的には債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。
被告は、(1)同意書の徴求は、①債権譲渡の対抗要件の具備、...
《解 説》
本判決が認定した事実を要約すれば、以下のとおりである。
Xらの被相続人Aが代表取締役であった株式会社Bは、平成二年八月三一日Y銀行から五〇〇〇万円の手形貸付を受け、Aはこれを連帯保証した。Aは、同七年四月二八日、Yに一〇八五万円余を満期六か月、以後自動継続の約束で定期預金とし...
《解 説》
一 本件は、ワラント取引により損失を被ったXが、証券会社Yに対し、Yの従業員が違法な勧誘をおこなったとして使用者責任に基づく損害賠償を求めたのに対し、一審(山口地判平8・3・26)がYの責任を認め七割の過失相殺を行ったのに対し、控訴審が説明義務の範囲を拡張するとともに、過失相殺...
《解 説》
一 分譲マンションの六階に居住するYと七階に居住するXとは、上下の居住関係にあるが、Yは、平成元年ころからゴロゴロという騒音が階上から聞こえる旨訴えるようになった。Yは、右騒音はXのゴルフのパター練習音によるものではないかと考え、深夜X方を訪れて問いただしたが、Xが、その場で実...
《解 説》
一 事案の概要
原告は労働者派遣を業とする被告との間で、業務内容を「ファイリング、給与計算、社会保険手続」として労働者派遣基本契約を締結し、派遣社員Kの派遣を受けた。Kは派遣先である原告で社会保険手続の一環として高額医療費一部負担還元金、家族療養付加金等の各種給付金の受け入れ...
《解 説》
一 本件は、原告が被告病院脳神経外科を受診したところ、原告にはストレスに起因する神経症の様相があり、臨床症状及び脳波検査においても明確な所見がなかったにもかかわらず安易にてんかんと診断され、原告は長期間にわたり通院治療を余儀なくされるとともに、更に利益配当金付終身保険契約に加入...
《解 説》
一 訴外Aは、平成元年九月、Yの開設する病院における頭部CT検査の結果、右側頭部に腫瘤が認められたため、右腫瘤の検査と手術のため同病院に入院し、右腫瘍について血管造影検査を受けたところ、その直後に頭痛と吐き気を催し、めまいや苦痛を訴え、急激に血圧が上昇し、心停止・呼吸停止の状態...
《解 説》
一 A、Bは、昭和三七年五月一日帰化し、日本国籍を取得した在日韓国人夫婦であったが、二人の間に実子はいない。Aは、昭和三八年七月一九日Yを認知し、A、Bは、同年九月一七日Yと養子縁組をした。Xは、韓国において、一九八七年五月一四日Cと婚姻し、同月一五日、A、Bと養子縁組の届出で...
《解 説》
一 本件は、大和銀行ニューヨーク支店の勤務行員の無断取引によって生じた巨額損失事件に関して、右銀行の株主Xら二名が、右銀行の昭和六〇年一〇月二三日から平成八年五月八日までの現旧の取締役又は監査役Yらに対して、右銀行がアメリカ政府から刑事訴追を受け、司法取引に応じて支払った罰金と...
《解 説》
一 本件は、株券の公示催告手続において除権判決の申立てを却下した決定に対し即時抗告がなされ、抗告棄却決定に対しさらに再抗告が申し立てられた事案である。
本件において、Xは、株券を喪失したとして公示催告手続を求めたところ、A銀行から略式質権の届出と株券の提出がなされた。そこで、...
《解 説》
一 Xは、秋田県山本郡山本町において養鶏等を業とする会社であるが、平成七年一月一七日から同月一九日にかけての降雪により、その所有の鶏舎、倉庫等の屋根が落下し、倒壊したので、店舗総合保険契約を締結していたY(保険会社)に対し、保険約款上の「雪災」によって損害を受けたとし、一二〇八...
《解 説》
一 Y1(日本放送協会)は、実在の人物である川上貞奴を重要な主役の一人とする大河ドラマ「春の波濤」を製作し、昭和六〇年一月から一二月まで放送した。また、Y2(日本放送出版協会)は、同年一月に、右ドラマを紹介した書籍を出版した。
他方、Xは、川上貞奴の伝記的物語である「女優貞奴...
《解 説》
一 ①、②事件はいずれも民事調停法(以下「法」という。)に基づく、調停事件を終了させる措置を不服として、調停申立人が抗告をしたのに対する抗告審の決定である。
二 ①事件は、調停委員会のした、法一三条により事件を終了させるとの措置は、調停申立てを却下する裁判の性質を有しないから...
《解 説》
Xの所有する甲地の北側にこれと隣接してYの所有する乙地及びAの所有する丙土地が存在するところ、XY間において甲乙両地間の境界線につき紛争が発生した。Xはその境界線を別紙図面のイ′ロ線であると主張し、Yはイ′A線であると主張した。その根拠として双方とも自己の土地取得時に境界線をそ...
《解 説》
Yは、暴力団A会の会長であるが、上部団体から絶縁処分を受け、銃砲、火炎瓶、爆発物を用いた暴力団同士の抗争事件が全国で多発した。Xら五九名は、右暴力団事務所の建物(鉄骨造陸屋根二階建)所在地の周辺に住む住民であるが、人格権(平穏に生活を営む権利)に基づき、右建物の暴力団事務所とし...
《解 説》
Aは、弟B及び同人が経営するC社の連帯保証人であったが、C社が平成八年二月五日及び六日に手形不渡りを出して銀行取引を停止されたのに伴い、密かに住所を移転したうえ、その後自己破産を申し立てて、同年五月三〇日に破産宣告を受け、Xが破産管財人に選任された。これより先、Aの所有する本件...
《解 説》
一 本件は、オウム真理教教団の信者であった被告人が、教団幹部の指示に基づいて、共犯者らとともに、ロシア製自動小銃を模倣した自動小銃を大量に製造しようとしたという事案であるが、弁護人は、被告人が本件犯行時教団によるいわゆるマインド・コントロール下にあったことを前提に、(一)被告人...
《解 説》
一 薬物の営利目的所持の事案において、被告人から営利目的を争われることはよくある。本件は、①駐車中の自動車内における覚せい剤約七・六八六グラム、乾燥大麻約九七・〇七七グラムの営利目的所持、②ホテルの一室における覚せい剤約二〇・五五二グラムの営利目的所持等が起訴された事案であると...