最も長い歴史をもつ判例実務誌
<司会>井上正三
<報告>中田昭孝・滝井繁男・松尾真一・高橋宏志
<ディスカッサント>小田耕治・西口元・中本和洋・山本克己・太田朝陽・村上正敏・池田辰夫
《解 説》
一 本件は、不在者投票の管理執行の違法等が選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるかどうかが争われた珠洲市長選挙の無効訴訟であり、最高裁が厳正な選挙の管理執行を求めたものとして社会的耳目を集めた事案である。
本件選挙においては、投票者一万七五一二人の約一割に当たる一七一三人もの選...
《解 説》
労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく遺族補償給付等の請求を不支給とする処分につき、労働者災害補償保険審査官による審査請求が棄却され、被告に対して再審査請求がなされていたところ、原告は、右手続中、一件記録の閲覧申請をしたが、被告がこれを拒否したため、右拒否が違法な処分である...
《解 説》
一 本件は、地方公務員等共済組合法上の退職共済年金受給権者の内縁の妻であった原告が、法律上の妻の存在を理由に遺族共済年金の不支給裁定を受け、その取消しを求めて出訴した事案である。
二 地方公務員等共済組合法九九条一項柱書及び同項四号は、退職共済年金の受給権者が死亡したときは、...
《解 説》
Yの公務員である地方法務局登記官Aは、平成二年六月一三日、Bの所有する本件土地及びCの所有する本件建物について地方裁判所からDの有する抵当権設定仮登記及び条件付賃借権設定仮登記の各抹消予告登記の嘱託を受けたにもかかわらず、いずれも登記目的を「仮登記抹消」と記載し、右各仮登記欄に...
《解 説》
一 X1は、東京都新宿区高田馬場に軽量鉄骨・コンクリートブロック造の三階建の建物を所有し、妻X2、長男X3、次女X4とともに居室していたが、平成四年二月六日午後九時ころ、右建物は、三階の夫婦寝室付近より出火して火災となり、消防署職員の消火活動により同日午後一一時ころ鎮火したもの...
《解 説》
1 K市は、市役所内に記者室を設け、そこに机、電話を設置し、市政記者クラブ所属の記者(市政記者)にその利用を認め、記者室の電話代を負担してきた。また、市長をはじめとする市職員と市政記者との懇談会を開催し、その費用もK市において負担してきた。
本件は、K市における右電話代及び懇...
《解 説》
一 Xは、平成元年四月、Yの媒介により、本件土地とその地上建物を、代金二億八〇〇〇万円で買い受けたうえ、地上建物を取り壊わし、平成二年七月、本件土地を宗教法人に対し、代金六億一〇三三万円で転売したが、本件土地が埋蔵文化財包蔵地に該当することが判明し、寺院建設ができなくなったため...
《解 説》
一 木工機械の輸入販売業を営むXは、精密自動多軸かんな盤を機械販売業者であるAに所有権留保特約付きで販売し、Aはこれを木製品の加工販売等を営むYに売却した(実際にはXとAの間にはAの親会社である戊が介在しているが事案を単純化するため捨象する。)。YはXからAに対する売買に先だっ...
《解 説》
一 専業主婦であったXは、自宅兼貸店舗建物の一階のテナント募集のため、入居募集ビラをコンビニエンスストアのフランチャイザーであるYに送付したところ、その従業員から、立地条件が悪いので他のテナントは絶対入らない、Xが自分でコンビニエンスストアを経営すれば初年度から売上は一〇〇〇万...
《解 説》
一 Xは、昭和六二年七月、ゴルフ場を開場し運営するY会社との間で、「オリムピック・スタッフ・カントリークラブ」への入会契約を締結し、入会申込金と預託金として一四〇〇万円を支払ったが、①開業が当初の予定から約五年遅延した、②当初の予定に反しプラクティスレンジを設置しなかった、③土...
《解 説》
一 Xは、昭和六三年八月、Yの企画、実施した「河西回廊・天山北路とカシュガルの旅」ツアーに参加したが、Yの配付した旅行日程表には「8/12(金)カシュガル 全日、パミールの麓、ガイズ村への小旅行」と記載されていたのに、実際はパミール高原のまったく見えない、ガイズ村より手前の地点...
《解 説》
本件は、広告代理業を営む原告が、オートバイ及びオートバイ用品の販売輸入を業とする被告に対し、その委託によって雑誌に広告を掲載したが、その代金を支払わないとして、これを請求するものである。広告を掲載し、その代金債権が発生したことについては争いがない。被告がその支払を拒絶した理由は...
《解 説》
Xは昭和五九年四月以降、都内の繁華街にあるビル七階の貸室をYに物産会社の事務所として賃貸したところ、Yはこれを暴力団組事務所として使用を継続した。平成六年一一月には本件貸室のドアに銃弾が三発打ち込まれ、ドア板に貫通した穴が開く事件が発生した。Xは、近所から苦情を受けたので、右の...
《解 説》
一 本件は、美術商が我が国の公立博物館に納入する目的で、ヨーロッパから高価な仏像一体を輸入するにあたり、右美術商(Y1)とその輸入等を紹介した美術学者(Y2)、さらにY1に対して仏像買付のための銀行借入金の返済資金一億四四〇〇万円を融資した者(X)との間でそれぞれ取り交わされた...
《解 説》
一 Xは、横浜国立大学を卒業後、日本電信電話株式会社に勤務していた者であるが、平成三年一一月、投資のため、Yから、ハワイのホテルのワンルームを一八三〇万円で買い受けたうえ、これをYに賃貸していたところ、平成六年八月に至って、Yに対して右ワンルームの売却方を依頼したが、他に売却す...
《解 説》
一 Xは大学を卒業して証券会社に勤務した後、宅地建物取引主任の資格を取って不動産コンサルタント会社に勤務する女性であり、Yは大学卒業後、商社に勤務する男性である。XとYは、結婚情報サービス会社の会員となり、交際相手の情報を得ていたが、YはXに対し、右情報に基づいて交際の申込みを...
《解 説》
X(明治四一年一月一〇日生)は、都内に多数の不動産を所有する資産家であるところ、平成二年三月ころ脳血塞で倒れ、長男AがXの財産を管理していた。Xは、平成三年二月、銀行から三億六八〇〇万円を借受けて、Y保険会社との間で、Aらを被保険者とする二口の変額保険契約を締結し、保険料として...
《解 説》
一 本件は、週刊新潮一二月八日号に掲載された「特集・東京都税金Gメンが逆に怒鳴られた『二千三百億』滞納者」という記事の見出し、同誌宣伝のための新聞広告の見出し、原告の顔写真が、原告の名誉を毀損し、肖像権を侵害したとして、慰謝料一〇〇〇万円と謝罪広告の掲載とを求めた事案である。
...
《解 説》
一 平成元年四月当時、訴外A女とY2男は、ともにY1の設置する「××高校」の事務職員であり、四月一〇日夜、同校事務室内で残業に従事していたものであるが、Aに思慕の情を抱いていたY2は、帰宅の際、Aから軽蔑されたものと思い込んで殺意を抱くに至り、ドライバーでAの心臓部を突き刺すな...
《解 説》
1 事案の概要
本件は、原告が、同業者で何度か取引をしたことのある人物から不動産取引の資金の融通を依頼されてこれに応じ、右依頼主に代わって手付金を売主に支払うため、依頼主の指示に従って被告銀行箕谷支店の売主名義の普通預金口座に現金を振込んだところ、実は、当該口座が本人確認がさ...
《解 説》
Xらは宗教法人幸福の科学の信者であるが、Y1の発行する日刊紙、週刊誌及び月刊誌に同法人及びその主宰者Aに対する中傷記事が繰り返し登載されたため、Xら自身の宗教上の人格権が侵害されたと主張し、Y1、編集者、執筆者らを相手に損害賠償を求める訴訟を提起した(全国各地で提訴があったが、...
《解 説》
Xは妻の死亡により保険金を得、預金と併せて約二〇〇〇万円の資金ができたので、Y証券会社の社員Aに投資先を相談したところ、AはXにワラントの購入を勧めた。Xはこれに応じ、一九〇六万円余でワラントを購入したが、右ワラントは権利行使期間が経過したことにより無価値となり、Xは損害を被っ...
《解 説》
一 本件は、判文中にも「事案の骨子」として記載されている通り、Xが他でレントゲン検査を受けるに先立ってY医院で妊娠の有無の判定を求め、Yから妊娠していないと診断されたので右検査を受けたのであるが、実は当時妊娠していたことが後日判明したため、レントゲン照射の胎児への悪影響を恐れて...
《解 説》
一 訴外A(昭和三八年三月生)は、平成二年一一月、ウイルス性脳炎の疑いでYの開設する「赤穂市民病院」に入院したが、Aが錯乱状態にあったことから、担当医師は、鎮痛剤と筋弛緩剤を投与してAの自発呼吸を抑制したうえ、気管切開術を行い、切開部に挿入したカフ付き「カニョーレ」を人工呼吸器...
《解 説》
一 訴外Aは、平成五年一月、Y銀行の池袋支店に定期預金として三〇〇万円を預け入れていたところ、同年八月死亡したので、その法定相続人であるX1、X2、X3は、遺産分割において、X1が五〇万円、X2が一五〇万円、X3が一〇〇万円をそれぞれ取得する旨の合意をしたうえ、Yに対し、それぞ...
《解 説》
一 本件は、土地区画整理組合Yの組合員とされたX1及びX2が、Y組合の設立は無効であり、XらはYの組合員としての地位にないと主張して、Y組合員としての地位の不存在確認を求めた事案である。
Xらは、Y組合設立の無効原因として、XらはYの土地区画整理事業の予定施行地区の境界(施行...
《解 説》
一 本件は、Yらが建築したマンションの高さが、建築基準法(以下「法」という)五六条一項の斜線制限には適合しないものの、同条四項の委任を受けた同法施行令(以下「施行令」という)一三二条によって緩和された斜線制限には適合することから、近隣住民のXらが、施行令一三二条の違憲性を理由に...
《解 説》
一 Xは、銀行店舗において、女子行員Aに紙コップ入りのホットコーヒーを投げつけ火傷を負わせるなどのトラブルを起こしたが、その際のAのXに対する態度を不満として、Aに対する慰謝料請求訴訟を提起した。右訴訟においては、Xの請求を棄却する判決が確定した。Xは、さらに、A及びその上司の...
《解 説》
被相続人Aは、その子であるXらに対し、Aの所有する土地(本件土地)の持分二分の一ずつを、Aの死亡を始期として死因贈与(本件死因贈与)し、その旨の始期付所有権移転仮登記(本件仮登記)を経由していた。Aが死亡し、相続が開始し、本件仮登記に基づく本登記手続がされた後、Xらは、Aの相続...
《解 説》
一 Xは、昭和五九年八月から、不動産の賃貸、売買、仲介等を業とするY会社との間で銀行取引を開始し、Yのいわゆるメインバンクとして貸出等の取引を継続してきたが、平成二年ころの株式相場の暴落及びその後の不動産価格の低迷によりYの業績は急激に悪化し、平成三年七月には、金融機関からの借...