最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本判決の判示事項
① 製品の製造者は、製品を設計、製造し流通に置く過程で製品の安全性を確保すべき高度の注意義務(安全性確保義務)を負う。
② 製造者が安全性に欠ける製品を流通に置き、これによって製品の利用者が損害を被った場合、製造者は利用者に対しその損害を賠償すべき責任...
《解 説》
本件は信販会社であるXから立替払契約及びカードローン契約により与信を受けていた主婦Yに対する訴訟四件(元本合計八三万円余)が併合審理された事案である(多重債務の毎月の状況は、本判決添付の別表1で明らかである)。Yの訴訟代理人は、XのYに対する与信は、割賦販売法四二条の三(支払能...
《解 説》
一 本件は、輸出取引による収益を、輸出業者が、取引銀行において荷為替手形を買い取ってもらった時点で計上する会計処理基準(以下「為替取組日基準」という。)が、法人税法二二条四項所定の一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合するかどうかが争われた法人税の更正処分等の取消訴訟で...
《解 説》
一 原告は、自動車部品の製造等を業とする株式会社であるが、電力会社が使用電力量の計量装置の設定を誤ったため、使用電力が二倍に算出されるところとなり、一二年余の期間、電気料金等を過大に支払い続けたが、その間、原告はもとより、電力会社もこの事実に気付かないままであった。昭和五九年に...
《解 説》
一 キャッシュカードを用いて銀行の現金自動支払機(キャッシュディスペンサー=CD)から支払を受けるシステムは、通帳と印鑑による支払システムに代わるものとして、現代社会に定着したといえる。本件は、このキャッシュカード取引規定(約款)中の「支払機によりカードを確認し、支払機操作の際...
《解 説》
日本税理士政治連盟(日税政)は、昭和五四年九月の衆議院の解散の際、衆議院議員立候補者多数に対し多額の政治献金をしたが、Y(大阪合同税理士会。現・近畿税理士会)は、その三か月前である同年六月、その定期総会において、「(1)会費を三〇〇〇円に増額する、(2)日本税理士会連合会(日税...
《解 説》
判示事項は予備的請求に関し、錯誤についての判断に一事例を加えるものである。
被相続人は、昭和五八年二月一日付け自筆証書による遺言をしたが、遺言書には、遺産の一部である本件土地(一筆の土地であり、農地のようである。)について北一五〇坪を三男(原告)の所有、南一八六坪を長男(被告...
《解 説》
判旨は、いずれも、商法二六〇条二項一号にいう「重要な財産の処分」に関する。
商法二六〇条は、昭和五六年商法改正により現行の規定になった。右改正の目的は、代表取締役等一部の取締役の不適切な業務執行のチェックのため、取締役会の形骸化を防止して、取締役会の権限の明確化、強化を図ると...
《解 説》
一 本件事案の概要
タクシー事業及び貸切バス事業等を営むY会社は、現在の取締役会を支持する株主とこれに反対する株主の対立が続いていたところ、Y会社の取締役会は、昭和五九年八月二三日、割当てを受ける者をA(Yの関連会社)とする新株三万株の発行を決議した。当時のY会社の発行する株...
《解 説》
一 Aは、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。)第三章の適用を受ける小規模株式会社であるY会社の代表取締役であり、その全株式二万株を保有していたが、定款所定の取締役会の承認を得ることなく、このうち一万二〇〇〇株をX1に、三〇〇〇株をX2に譲...
《解 説》
一 本件は、交通事故により死亡した被害者の遺族(Xら)が、加害者の加入していた任意保険の保険会社Yに対し、保険金の支払を請求した事件である。自動車保険契約(対人賠償保険)の任意保険の約款には、「保険契約者、記名被保険者等の故意によって生じた損害を填補しない」旨の条項(以下「保険...
《解 説》
一 Aは、X1所有の土地とX2所有の地上建物につき売買を原因とする所有権移転登記を了して抵当権を設定した上、これをY1に売却したが、その後、登記簿上の名義人であるY1を所有者として、右抵当権の実行による競売手続が進められ、Y2がこれを買い受けて代金を納付し、所有権移転登記を了し...
《解 説》
一 問題の所在
本件は、家庭裁判所が先に少年法一七条一項二号の観護の措置(少年を少年鑑別所に送致する観護措置)が採られていた事件の差戻しを受けた場合に、改めて同号の観護の措置を採ることができるかどうかが問題となったものである。
少年法一七条三項、六項によると、少年鑑別所に送...
《解 説》
一 本件は、被告会社の観光バス運転手である原告が昭和六〇年七月及び一一月の二回にわたり同社のバスガイドであるA女と情交関係を結んだことが、就業規則上の懲戒解雇事由である「著しく風紀を乱す行為をしたとき」に該当するとして、原告を普通解雇した事案である(被告会社就業規則には懲戒解雇...
《解 説》
XはAの長男、Yは次男で、A死亡後、Xは、XY両名名義で相続税の申告をし、納付した。また、Xは、相続によりYとの共有となったもとA所有の土地建物の固定資産税及び都市計画税を納付し、同建物を管理して(これに要した)水道料金を支払った。そこでXはYに対し、Xが納付又は支払った右相続...
《解 説》
一 本件は、被告が、その発行するスポーツ新聞紙上に、原告がその妻(被害者)を殴打して殺害しようとしたがその目的を遂げなかったという容疑(殴打事件)に関して、「(原告)、(被害者)に偽装工作を指示」という大見出しを付した原告に関する記事(本件記事)を掲載したところ、原告が、本件記...
《解 説》
本件は、著名な映画俳優が、麻薬事件で公判中に依然として暴力団と交際しており、その誕生日に、関西から暴力団関係者が大挙して上京し、盛大な誕生パーティーを開いたという内容の夕刊紙の記事について提起した、名誉毀損による損害賠償請求訴訟である。
本件で問題となった主要な点は、①本件記...
《解 説》
一 事案の概要
Aは、昭和四二年三月六日付で、土地建物その他債権のすべてをY(妻)に遺贈するという内容の自筆遺言証書を作成していたが、平成元年一〇月一九日死亡するまでの二〇年余りの間に、遺贈の対象となる土地の一部を売却したり、建物の一部を取り壊すなどした。
AとYの間には子...
《解 説》
一 判示事項一について 本件は、夫である原告X(禁治産者の後見人)が、心身喪失の常況にある妻(禁治産者)Aの後見監督人である妻の実母Yを被告として離婚訴訟を提起したという事案である。後見監督人を被告とすべき点は、既に最高裁判所の判例があるが(最判昭33・7・25民集一二巻一二号...
《解 説》
一 借地法は、建物と共に土地の賃借権を第三者に譲渡したいが賃貸人の承諾を得られない賃借人のために、借地非訟手続により、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求め得ることを規定している(借地法九条ノ二)。この規定は、一昨年の八月から施行された借地借家法にもそのまま引き継がれている(借地...
《解 説》
一 本件は、Y寺(宗教法人である。)の檀信徒であるXらが、同寺に対し、宗教法人が、宗教法人法二五条二項において財産目録等の備付けを義務づけられていること及び同法二三条重要な財産の処分について信者等に公告することを義務づけられていること等を理由に会計帳簿等の閲覧・謄写を請求し、同...
《解 説》
一 Y1は、Xから二億五〇〇〇万円を借り受けて、Y1所有の本件土地とその地上建物に抵当権を設定したが、その返済を怠り、分割返済の期限の利益を喪失した。その後、Y1はXに無断で右建物を取り壊した。その約一〇日後、本件土地上にプレハブ建物が建築され、取り壊された建物の滅失登記とプレ...
《解 説》
一 本件は、抵当権実行により競落された不動産の占有者に対し、不動産引渡命令が発令された事案である。執行実務上、競売物件を占有し、不当な利益を得ようとする執行妨害が問題となっており、占有者が占有権原として、本件の相手方のようにいわゆる短期賃借権ないし転借権、留置権を主張する場合が...
《解 説》
一 本件は、平成二年六月四日に大阪地方裁判所において付審判決定のあった特別公務員暴行陵虐致傷事件の第一審判決である。その事案の概要は、昭和六〇年度のプロ野球日本シリーズにおいて二一年振りに優勝した阪神タイガースのファン多数が大阪市内でお祭り騒ぎを繰り返し、不法事犯も続発したため...
《解 説》
本件は、被告人が急性覚せい剤中毒に陥って救急車で病院に搬入され、病院からの通報により来院した警察官が被告人から事情聴取をして尿の任意提出を受け、これを鑑定に付したところ覚せい剤が検出されたことから、被告人を覚せい剤使用容疑で逮捕し、被告人が、当初、「パチンコ店で声をかけてきた見...
《解 説》
本件は、被告人が、以前より交際していた女性であるA子と、A子の友人であるB子に覚せい剤を注射したとして起訴された事案である。
本件の事案の概略は、被告人、A子、B子が被告人宅にいたところ、かねてより被告人に対する覚せい剤取締法違反容疑で捜査を続けていた警察署員らが、令状の発布...
《解 説》
組換DNA技術、あるいは遺伝子工学技術、広くはバイオテクノロジー関連特許に関する日本での初めての侵害訴訟の高裁判決である。バイオ産業を手掛ける日本の大企業がアメリカの会社から訴えられ、一審判決で差止めが命じられたことから、当時大きく報じられたが、本判決も、その控訴審判決として、...
《解 説》
本件は、有印私文書偽造等の被疑事実により逮捕・勾留され、公正証書原本不実記載・同行使の罪で罰金刑の略式命令を受けたものの、その他の被疑事実については不起訴処分となった原告が、その間に北朝鮮スパイとして新聞報道され名誉を毀損されたとして、右記事を報道機関に配信した通信社である被告...
《解 説》
一 本件は、当時高校教諭であった被告人甲とその妻乙が共謀の上、家庭内暴力を振るうようになった当時二三歳の長男を、思い余ってその就寝中に剌殺したという事案である。本件は、甲が、東大出のインテリであるというだけでなく、卒業生や生徒の評判の極めてよい良心的な教師であったことなどから、...