最も長い歴史をもつ判例実務誌
①大阪高裁平成元年3月23日判決(判時1321号158頁)
②福岡高裁宮崎支部平成元年3月24日判決(高刑集42巻2号103頁,判タ718号226頁)
《解 説》
一 原告は、酒類の売買等を目的とする株式会社であるが、酒税法九条一項の規定に基づき、酒類販売業の免許を申請した。これに対し、被告は、原告が酒税法一〇条一〇号に規定する「経営の基礎が薄弱であると認められる場合」に該当することを理由として、免許の拒否処分をした。原告が、この免許拒否...
《解 説》
一 労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)施行以前に、発がん性を有する化学物質であるベンジンの製造業務に従事し、同法施行後にぼうこうがん等を発病した労働者(以下「本件被災者ら」という。)本人及びその遺族が、本件被災者らは、ベンジンの製造業務に従事したことに起因して右...
《解 説》
本件は、遺産分割審判において、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一と定めた民法九〇〇条四号但書前段の規定(本件規定)が憲法一四条一項(平等条項)に反するか否かが争われた事案における抗告審の決定である。
非相続人亡Aには相続人として、妻Y1、嫡出男子亡B(その相続人として...
《解 説》
本件は、アメリカ合衆国カリフォルニア州上位裁判所の民事判決中、懲罰的損害賠償(punitive damages)として日本法人Y2に対し、一一二万五〇〇〇ドルをオレゴン州法人Xに支払うよう命じた部分について執行を許可しなかった東京地判平3・2・18本誌七六〇号二五〇頁の控訴審で...
《解 説》
Xら二名は、日興証券株式会社の株主であるが、同社が一部の顧客に対して行った損失補填等の行為が違法であると主張し、同社の取締役Yら一六名に対し、商法二六七条に基づき、同社に四七〇億七五〇〇万円を連帯して支払うよう求める株主の代表訴訟を提起した。Xらは、株主の代表訴訟における訴え提...
《解 説》
一 原告(上告人)は、平成三年四月二一日施行の愛知県蒲郡市議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)に立候補し、当選(最下位当選)した者である。原告の当選の効力については、蒲郡市選挙管理委員会に対して異議の申出がされ、同委員会は、これを棄却する決定をしたが、更に被告(愛知県選...
《解 説》
一 一筆の土地を敷地として建築基準法五二条の容積率の規制に適合するものとして建築確認を得た後に、建物の存在しない方の土地を分筆し、今度は右分筆土地を敷地として容積率の規制に適合するものとして建築確認が得られると、実質的に容積率の規制を潜脱することができる。これが敷地の二重使用と...
《解 説》
東京都が企画し推進しているいわゆる臨海副都心建設計画については、バブル景気の崩壊に伴い、その実現性に疑問が投げかけられるようになっており、住民側において、これに反対する運動も活発に繰り広げられているようである。本件は、東京電力株式会社が、将来臨海副都心へ電力を供給することを主た...
《解 説》
Y市立中学校二年生Aはハンドボール部に所属し、他の部員らと学校の周囲において持久走をしていたところ、下を向いて走っていたため、立ち話中のX女(七六歳)に気付かずに衝突した。このためXは負傷し、入院して人工骨頭置換術を受けるなどの傷害を負った。Xは、部の指導教諭Bにおいて生徒に対...
《解 説》
一 Xは、昭和六〇年七月当時、広島県立三次高校の生徒であって、同月二二日行われた同校野球部の試合に参加し、三塁手の控えの選手として三塁コーチス・ボックス付近にいたものであるが、試合開始前のノックの際、同部の監督が、レフトノックのための球を打ち損じたため、ライナー性の打球が左側に...
《解 説》
Xは、昭和五八年二月ころ、Yが(旧)地域改善対策特別措置法に基づき実施した小集落地区改良事業の対象となることに同意し、Yとの間で土地売買及び建物除却契約を結び、Yから合計三八七五万円余を受領した。
しかし、Xは、Yの職員の説明により、租税特別措置法三三条の四により三〇〇〇万円...
《解 説》
一 地方税法七三条の一三第一項、七三条五号は不動産取得税の課税標準を適正な時価としているが、同法七三条の二一第一項本文は固定資産課税台帳に価格が登録されている不動産の不動産取得税の課税標準を登録価格とする旨を定めている。そして、同項ただし書は「増築、改築、損かい、地目の変換その...
《解 説》
一 本件は、法人がその資産を時価相当額より低廉な対価で譲渡するいわゆる低額譲渡がされた場合について、法人税法二二条二項により課税の対象となる収益の額はいくらであると解すべきか、この点について時価相当額と譲渡価額との差額が法人の収益であると解した場合に、役員賞与に当たるとして源泉...
《解 説》
Xらは、某町の住民であるが、町議会議員Y3らが東南アジアに研修旅行に出掛けたのはいわゆる買春行為を目的としたもので違法であると主張し、町議Y3ら及び支出命令をした町長Y1、支出行為をした収入役Y2に対し、旅費の返還ないし賠償を求める住民訴訟を提起した。第一審の徳島地判平3・9・...
《解 説》
A学校法人はY1市内に高校と短大を設置していたが、Y1市及び周辺自治体の要望を受けて同市内に大学を設置することとなった。Y1市はAに対し、二回にわたり合計一〇筆の土地を贈与し、さらに四年度にわたり合計一一億八一八六万円余を補助金として交付することを約束し、平成四年度においてはA...
《解 説》
一 X会社とZ組合は、Z組合員の出向の是非を巡って対立状態にあったが、X会社は、右対立がとけないままZ組合員三九名に対し出向命令を発した。
Z組合はこれに反発し、組合員二九名を動員して、早朝に出向先Aの正門前で出勤してくるAの従業員にビラを配布し、約三〇分間にわたってスピーカ...
《解 説》
本件は、マンション管理組合(建物の区分所有等に関する法律〔建物区分所有法と略称する〕三条に基づき設立された団体)の理事長(管理者)XからYらに対して、Yらが占有使用しているマンション駐車場の明渡しと賃料相当損害金を請求した事案である。このマンションの敷地は元来Yら一族の所有であ...
《解 説》
本件は、九階のビル所有者Xらからその一、二階を賃借するY会社(中華料理店)に対して提起された建物明渡請求事件(付帯請求は損害金請求)である。Xらは、Yには、無断の室外機設置、油脂を飛散させているのに排風機とダクトの改修をしない、建物のカーテンウォールの腐食などの賃貸借契約の約定...
《解 説》
室内装飾等を目的とする会社Xは、Yを雇用したが、四日間で音を上げたので、一月間の研修期間を与えたところ、Yはその間に転職してしまった。そのため、Xは、業務遂行ができず損害を被ったので、Yと折衝の上二〇〇万円の損害賠償を支払うことを約束させた。本件は、Xが、Yに対して、この約定に...
《解 説》
一 Xは、昭和六〇年八月二五日、山中湖のテニスコートにおいて、Yが製造・出荷したテニスシューズを履いてテニスをしていたが、休憩時間に近くの遊動円木に乗って遊び、地面に飛び下りたところ、靴底が突然剥がれて足が滑ったため、右踵骨を骨折するという事故にあった。
そこで、Xは、テニス...
《解 説》
一 本件の概要
1 X1・X2は開業歯科医であり、Y1・Y2・Y5の一族が営んでいた歯科材料等販売会社(以下「訴外会社」という。)と取引をしていたところ、訴外会社(現実には本件で問題となる空リースがなされた時点ではY3・Y5が経営の実権を握っていた。)は、その資金繰りのために...
《解 説》
一 Xは、神奈川県横須賀市で店舗の設計・施工業を営んでいる者であるが、昭和六〇年一二月二六日、同市秋谷の交差点において、横断のため自転車から降りて待機していた際、Yの従業員の運転する普通乗用車に接触され、頸椎捻挫、腰部挫傷等の傷害を負った。
そこで、Xは、その後長期間入通院し...
《解 説》
一 Xは、昭和五八年七月当時左官業を営んでいた者であるが、同月二〇日、軽貨物自動車を運転して山口県宇部市内を走行し、宇部線恩田踏切前に停車して電車の通過待ちをしていたところ、Y運転の普通乗用車に追突され、外傷性頭部・頸部症候群に加えて股関節部挫傷の傷害を負い、その結果、両側変形...
《解 説》
一 訴外Aは、平成元年五月八日午前八時頃、自家用貨物自動車を運転して愛知県江南市内を進行中、路上に停車中の自家用貨物自動車に自車を接触させ、荷下し作業中の者に傷害を負わせるという交通事故(以下「本件事故」という。)を起こしたが、同日午後六時頃、脳内出血により死亡するに至った。
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《解 説》
本訴は、商品取引員Y1の外務員Y2が顧客Xに対し、「元本を保証する。取引は一任してくれ」と述べて商品先物取引の勧誘をしたことが違法もしくは公序良俗違反、錯誤、詐欺に該当するとして、主位的に不法行為に基づく損害賠償を、予備的に不当利得に基づく預託金の返還請求をしたという事案で、反...
《解 説》
債権者会社Xは、第三者所有の土地建物(本件不動産)を購入するにあたり、売買代金を債務者Yから借り入れ、その担保の目的で本件不動産の所有名義をY名義としていたところ、Yが名義の返還に応じないとして、本件不動産の所有権に基づく移転登記請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分を得た。...
《解 説》
一 Yは、Xが後に吸収合併した訴外会社Aに対し、三億円を貸し付け、同社の代表者Bを連帯保証人としていたところ、主債務者であるAにつき和議手続が開始され、右貸付金の元本全額の分割弁済を受けることになったが、右分割弁済の履行中にBに対し破産宣告がなされたので、右保証債権(残元利金)...
《解 説》
一 ここに紹介するのは、未遂の主張が排斥されて、いずれも窃盗の既遂罪の成立が認められた二つの高裁判例である。
まず、①事案においては、被告人は、スーパーマーケット店内で、買物かごに商品三五点を入れた後、レジを通ることなく、その脇のパン棚の脇から買物かごをレジの外側に持ち出し、...
《解 説》
一 ここに紹介する二つの判決は、覚せい剤取締法違反等被告事件につき、採尿に至る捜査手続に違法があるとしたが、尿の鑑定書等の証拠能力は肯定できるとしたものである。
二 採尿手続に先行する手続に違法があった場合の尿鑑定書の証拠能力に関し、最二小判昭61・4・25刑集四〇巻三号二一...
《解 説》
本件は、佐川急便事件として世上の注目を浴びた事件である。
本件の経緯は本判決に詳しく示されているが、要約すると、佐川急便の傘下にある東京佐川急便の援助のもとに事業資金を得て、株式の取引、ゴルフ場の開発などを行っていた暴力団幹部が、株式取引が破綻状態になり、ゴルフ場の開発も思う...