最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、平成二年二月一八日に施行された第三九回衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)に関して提起されたいわゆる定数訴訟についての最高裁大法廷判決である。
本件選挙に関しては、八都府県二四選挙区の選挙人らがそれぞれ各所轄の都府県選挙管理委員会を被告として、衆議院議員の...
《解 説》
本件は、いわゆる多摩川水害訴訟の差戻後の控訴審判決である。事件の経過の概要はおよそ次のとおりである。
昭和四九年八月三〇日から降り続いた豪雨により一級河川である多摩川左岸の狛江市緒方地区地先宿河原堰を越えた流水が同堰左岸取付部護岸に作用し、護岸及びこれと一体構造となっていた小...
《解 説》
一 火薬類取締法二一条は火薬類の所持を一般的に禁止した上でいくつかの除外事由を定めているが、本件は、そのうちの八号の解釈が問題となった事案である。なお、その背後には、同法二一条違反の罪(不法所持罪)と二二条違反の罪(残火薬類措置義務違反罪)の両罪の関係をどのようにとらえるかの問...
《解 説》
建築基準法四二条一項四号は、道路法等による新設又は変更の事業計画のある道路で、二年以内にその事業が執行される予定のあるものとして特定行政庁が指定したものを建築基準法上の「道路」の一つとしている。Xらは同条によりされた本件道路指定には、①二年以内に事業が執行されることが客観的に不...
《解 説》
一 本件は、運転免許取消処分をするに当たり、その処分理由となった違反行為を行った時に責任能力があることが必要なのか否かが問題となった事案である。
事実関係は、次のとおりである。すなわち、山口警察署所属の警察官Aは、交差点で直前に停止していたX運転車両が、尾灯を破損している上に...
《解 説》
Xらは、社会科の教育にY(文部大臣)検定に係る本件教科書を使用している中学校に通学する中学生とその親である。本件教科書には南京虐殺事件を実在の事実とする記述があるところ、Xらは、同事件は事実無根であって、かかる虚偽の事実を記載した右教科書は、義務教育諸学校教科用図書検定基準に規...
《解 説》
Xら一二名は、かつて地目を池沼又は原野として登記簿に記載され、満潮時に海面下に没し、干潮時に海面上に一部が現れる土地(干潟)の共有持分登記を有した者又はその相続人であるが、そのうち三名が海没を登記原因とする土地滅失登記処分を、その他の九名は滅失登記抹消登記申請却下処分をそれぞれ...
《解 説》
Xは一般国道沿いの所有地に店舗を設け、主として自動車の乗員を対象に土産品等の販売を行っていた。Yは同所付近の交通渋滞を緩和するため同所付近の国道の一部を高架道路とする工事を行い、これに伴ってX所有地の一部を収用した。Xは①一部収容された土地の単価が低額である、②高架道路の供用開...
《解 説》
一 Xは、長野市内においてスナックを経営している女性であるが、昭和六三年二月二日午前一時頃、右スナックから帰宅するに際し、無免許で普通乗用自動車を運転して走行中、無免許の現行犯で逮捕され、長野南警察署に引致された。そして、Xは、無免許運転の被疑事実を認めたが、同署の留置場へ連行...
《解 説》
一 本件は、東京拘置所に在監中であるXが、東京拘置所長により、(1)外国語図書の閲読制限、(2)信書発信方法の制限、(3)性表現図書の閲読制限の各処分を受けたことにより精神的苦痛を受けたとして、Yに対し、国家賠償法に基づき合計六七万五五二〇円の損害賠償を求めた事件である。
な...
《解 説》
本件事案の概要は本判決の「事案の概要」欄に記載のとおりであるが、ここでは、労基法三九条五項所定の計画年休協定の効力について判断を示したものとして紹介したい。
労基法三九条五項は、同法の昭和六二年法律第九九号による改正の際に追加されたものであり(昭和六三年四月一日から施行)、使...
《解 説》
一 Y2は昭和四二年に設立されたソース製造を目的とする株式会社である。XはY2会社の株主で従業員でもあった。Y1は昭和六二年にY2会社の従業員株主により設立された社員持株会であって権利能力なき社団である。Y1の規約(本件規約)では、①会員は全株式を理事長に管理信託し、理事長はY...
《解 説》
本件は、売買契約の意思表示の時点において売主が意思無能力であったか否かが争点となったケースである。すなわち、Xは、Yとの間で、Y所有の建物及びその敷地の借地権を目的物として売買契約を締結したことを理由として、その引渡しと建物について移転登記手続を請求したのに対して、Yが、契約締...
《解 説》
一 Xは、千葉県から許可を受けて産業廃棄物の収集、運搬を業としている会社であり、千葉県内で産業廃棄物最終処分場を設置する計画を進め、千葉県知事から許可を受けるため、周辺の地権者Y2~Y5の処分場設置についての「承諾書」を提出したものであるが、その後Y2~Y5が、右承諾書が偽造さ...
《解 説》
一 日本で就労する意図のもとに短期在留資格で来日したXは、製本会社Y1に雇用され、約一年四ヶ月後右手の人差指の先を切断するという労災事故に遭った。そこで、Y1及びその代表者Y2を相手取って、Y1の安全配慮義務違反とY2の不法行為を理由に損害賠償請求をした事案である。
二 不法...
《解 説》
Xは亡夫からゴルフ会員権を相続したが、右ゴルフ会員権はA↓Y↓B↓Cと無断で転売されてしまったため、Xは、Cらを相手どって別件訴訟を提起し、右訴訟においてBから和解金の支払を受けて右ゴルフ会員権をC名義とする旨の和解をした。Yは別件訴訟においてXから訴訟告知を受けたが、右訴訟な...
《解 説》
貸金業を営む会社であるX2のオーナーであるX1は、写真週刊誌「フライデー」(平元・10・13号)に「金満ニッポンに蠢く『怪人物』列伝」シリーズに「『闇金融の帝王』が動かす資金一兆円の『甘い汁』」という見出しの記事と写真を掲載された。そこで、Xらは、この記事はX1を「闇金融の帝王...
《解 説》
一 本判決は、東京地判平4・3・26本誌七九九号二二五頁の控訴審判決であるが、原判決を変更した。
事案は、昭和六三年一月建設関係でビル型枠工事を業務とする工務店勤務の四二歳の工員が同僚の運転する自動車に同乗中、トラックと衝突して脳挫傷、頭蓋骨骨折等の傷害を負い、平成元年六月下...
《解 説》
一 Xらの母親Aは、発熱、腹痛等を訴えてY医院を受診したところ、細菌性の急性大腸炎と診断されたが、大腸炎の細菌による腎盂炎の合併症が疑われ、脱水もみられたため、Y医院において抗生物質ルニアマイシン、抗コリン剤セスデン、ビタミン剤等を含む輸液を受けた。ところが、輸液開始後約一時間...
《解 説》
XはYとの間で自家用自動車保険契約を締結した後、車両の入替をしたが、その通知をYに対してしないうちにスリップ事故を起こし、物損の賠償として五三万円余を支払い、Yに保険金を請求した。
自家用自動車保険普通保険約款六章一般条項六条には、被保険自動車が廃車、譲渡又は返還された後、そ...
《解 説》
本件は、両親が子の親権者を父と定めて協議離婚の届出をなした直後、監護権を有しない母親が親権者たる父親の意に反して子を連れ去ったので、父親が人身保護法に基づき子の引渡を求めたものである。
本件においては、親権者を父と定める合意の存在自体も争点となったが、本判決は、右合意が存在し...
《解 説》
元本額八〇〇万円の根抵当権の対象となっている不動産を譲渡担保により取得したYは、根抵当権者Xが申し立てた競売について、落札価額二七四八万円(最低売却価格は二七〇八万円)による売却許可決定が言い渡された日の三日後に根抵当権の極度額相当を供託し、民法三九八条の二二に基づく根抵当権消...
《解 説》
一 本件①ないし③の事件は、平成四年の一年間に、破産者の免責許可の申立てに関する抗告審における仙台高裁の決定例である(同高裁では平成四年の一年間にこの分野について、他には実質判断を示した決定例はない。)が、いずれも免責不許可決定に対する抗告審の決定であり、しかも、抗告棄却の結論...
《解 説》
本件事故は、タクシーの助手席に乗車した客が、シートベルトの吊り下げられているセンターピラーと後部座席の自動式ドアとの間に薬指を挾まれ、加療約六週間の負傷をしたというものである。第一審は、タクシーの運転手である被告人は、後部座席のドアを閉める際、助手席の乗客の動静を確認すべき注意...
《解 説》
本件は、富士銀行行員誘拐事件であり、被告人らは、同銀行の代表取締役頭取らからみのしろ金を取得しようと企て、帰宅途中の同銀行行員を拉致し、マンションの一室に監禁した上、頭取に対し、電話でみのしろ金三億円を要求したなどとして起訴された。事実関係には争いがなかったようであるが、弁護人...
《解 説》
一 本件は、いわゆる明治大学替え玉入試事件としてマスコミに大きく取り上げられた事件である。本判決で認定された犯罪事実は、明治大学の元職員や替え玉受験生らが共謀の上、同大学の入学選抜試験に際し、替え玉受験生らが志願者本人になりすまして受験し、答案を作成・提出したというものであり、...
《解 説》
一 本件は、「他人の住居に侵入して家人二人(甲の妻及び長男)をビニール紐で順次絞殺して現金一四万円在中の手提げ金庫を強取した上、犯跡を隠ぺいするため、室内に灯油をまくなどして台所に放火し、家屋の一部を焼いた」という住居侵入、強盗殺人、現住建造物放火の事実につき、被告人両名と犯人...