最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、いわゆる豊田商法国家賠償東京訴訟の第一審判決である。昭和五六年から昭和六〇年にかけて、豊田商事は、主に老人や主婦を対象として純金の売買をしその代金を取得すると同時に、売却した純金を賃借して運用すると称して、現物に代えて純金ファミリー契約証券なる証書を交付するいわゆる...
《解 説》
一 大審院判例は、民法一四五条にいう時効を援用し得る「当事者」につき、「時効により直接利益を受ける者及びその承継人」に限られると解し(大判明43・1・25民録一六輯二二頁、大判大8・6・19民録二五輯一〇五八頁)、具体的には、(1) 抵当不動産の第三取得者や物上保証人による被担...
《解 説》
一 本件の事案の概要はこうである。(一) 原告X銀行(甲事件)、X信用金庫(乙事件)は、A会社との間で銀行取引、信用保証委託取引をした。その際、A会社所有の本件建物(第一建物)に根抵当権を順次設定し、その旨の各登記をした。(二) 第一建物を買い受けたB会社は、その通路にベニア板...
《解 説》
一 X1とX2の二男A(昭和四八年六月生)は、昭和五八年九月三〇日、学校からの帰りに友人三人と高知県吾川郡所在の仁淀川付近の導流堤(以下「本件導流堤」という。)に遊びに行き、蟻地獄状の砂穴(以下「本件砂穴」という。)に砂を落すなどして遊んでいたところ、足を滑らせて本件砂穴に落ち...
《解 説》
一 本件は、大阪刑務所に服役していた原告が、同刑務所に服役中、違法な裸検身や図書の削除処分等を受けたとして、損害賠償を求めた事案である。
裸検身については、本件における検身の態様及びその合理性の有無が争われたが、本判決は、本件における裸検身は、①肛門部の検査のため、両脚を開か...
《解 説》
本件は、茨城県の住民であるXらが、茨城県道須賀北埠頭線改築工事等に関する道路法一八条一項に基づく道路区域変更決定が違法であるとして(違法事由は、右道路は不必要であること、右道路整備には都市計画上の優先性がないこと、右道路開設事業には事業効果がないこと、ルートの選定が妥当でないこ...
《解 説》
一 本件の事実関係は、次のようなものである。
Yは、アメリカの多国籍企業の金融部門の中心をなす銀行であって、日本国内の二か所で営業所を有している。A社は、Yと資本系列を同じくするアメリカ法人の全額出資により設立された日本の株式会社であって、当初は営業活動をしない休眠会社であっ...
《解 説》
一 Xら(原告らのうち一名については請求が全部棄却されているが、以下、この一名を除いて論ずる。)は、Y1会社(代表者Y3)に雇用されたミキサー車等の運転手であるが、Y1会社とY2会社(代表者Y4)との間の従業員派遣契約に基づいて、Y2会社で稼働してきた。ところが、Y2は、Y1に...
《解 説》
本件は、ゴルフ会員権に関し、支払催告のない除名の効力及び会員権の消滅時効が争点となった事案である。
ゴルフ会員権には、社団法人社員会員権、株主会員権、預託金会員権の三種類のものがあるが、わが国では預託金会員権が圧倒的に多い(大西武士・判例金融取引法(上)五四三頁以下、同(下)...
《解 説》
一 本件は、①母Zから出奔した父Y(公示送達)に対する不貞行為、悪意の遺棄を理由とする慰藉料請求権を原告ら子供二名X1X2が母から相続したとして、また、②養育看護を受けられなかったことによるX1X2固有の慰藉料をYに対して請求した事案である。本件訴えは、Yが相続した(X1X2も...
《解 説》
一 Xは、「荒城の月」などの作詞で著名な詩人、土井晩翠の孫であるが、昭和五八年に晩翠の所有地を公共目的のためY(仙台市)に売却したのに租税特別措置法所定の譲渡所得等の特別控除を受けられなかったのは、Yの職員の不法行為によるものであるとして、Yに対して、損害賠償を請求するとともに...
《解 説》
一 原告は、小学校の教員であるが、被告らから原告の父親がいわゆる同和地区の出身であることを明らかにすること(部落民宣言)を強要され、意思決定・意思表明の自由を侵害されたうえ、これを巡るその後の経過の中で、プライバシーを侵害され、名誉を毀損された旨主張し、被告らに対し損害賠償及び...
《解 説》
本件は、マンションで階上からの騒音に悩んだXが、階上の住人Yに対し、慰謝料の支払と共に、いわゆるフローリングを撤去して、畳敷又は絨毯敷に変更せよと求めた事案である。
Xの主張によれば、四人の子持ちであるYは平成二年七月の入居に先立ち、床を板張り(いわゆるフローリング)にしたた...
《解 説》
一 宝石の卸売・販売・修理・加工等を営むXは、客からダイヤの裸石一個の加工を依頼されてこれを預かり、Xの子会社であるAの工場に送ってダイヤリング加工をさせた。Aは、Y(宅配便業者)の代理店を通して、Yに右ダイヤ及びXから同様に修理加工用として預かっていたルビーの指環一個の運送を...
《解 説》
Xは、Aと婚姻したが、Aの先妻であるBが、弁護士Y7(Y1の会社の顧問弁護士)を代理人としてAの勤務先を第三債務者としてAの将来の退職金に対する仮差押えをした(①事件)。Xの勤務していたY1会社(代表取締役Y2)は、Xに対して、Y7を訴訟代理人として損害賠償請求訴訟を提起した(...
《解 説》
一 本件は、交通事故の被害者の自殺につき、事故加害者の責任が認められた事例である。
訴外Aは昭和五九年七月、乗用車で静岡県内を走行中に、センターラインオーバーの対抗車(運転者Y1、運行供用者Y2)に衝突され、頭部打撲、腹部打撲、頸部打撲等の傷害を負った。Aはその後一月半程入院...
《解 説》
一 事案の概要は以下の通りである。
原告Xは昭和五九年当時三〇才の婦人であるが、同年四月二一日、出産のため被告Yが開設する産婦人科病院に入院し、双子を出産した。ところがXはその後排便の際に激痛を感じるようになり、また便を漏らす事態も生じるようになった。昭和六二年に至ってXは別...
《解 説》
本件は、遺産分割の協議の申入れ又は調停の申立てを遺留分減殺の意思表示とみることができるかどうかをめぐる問題を扱ったケースである。
被相続人Aは、昭和五二年八月一日死亡し、相続人は、B(長女)、Xら(二、三女)、Y(長男)の四人である。
Aは、昭和二二年本件第一土地建物を購入...
《解 説》
本件は、小規模企業共済法による共済契約に基づきY(中小企業事業団)から契約者Aの死亡によりその配偶者に支払われるべき共済金六二〇万円余の帰属について、内縁の妻Xと法律上の妻Zの間で争われ、XとZがそれぞれYに共済金の支払を求めた事案である。
本判決は、法律婚以外に重婚的内縁関...
《解 説》
一 X市が市有地を駐車場用地として使用することを条件にY1に売却したところ、Y1が約定に反して暴力団組事務所を築造したため、Xは契約違反による解除を理由にY1及び転得者Y2(背信的悪意者)に対し、売却土地の所有権移転登記の抹消登記手続等を求めた。右訴訟に住民らが補助参加を申し立...
《解 説》
一 本件は、銀行預金債権の差押命令に対する執行抗告事件である。差し押さえられた銀行預金は、もっぱら厚生年金及び国家公務員共済年金の振込によって成立したものであった。これらの年金は、いずれも差押禁止債権とされている(厚生年金保険法四一条一項、国家公務員等共済組合法四九条)。そこで...
《解 説》
本件は、被害者が本件直前に既にSら男性二名から強姦されていたが、その後Sが呼び寄せた被告人らが、抗拒不能の状態にあった被害者をさらに強姦したという刑法一七八条の準強姦の事件である。
被害者が抗拒不能の状態にあったことは争いがなかった。しかし、被害者が強姦されていたことは共犯者...
《解 説》
一 本件は差戻し審の判決である。その経過からみるに、暴力団組長である被告人が、覚せい剤取締法違反(譲渡と譲受)で逮捕されたが、その容疑が固まり切らず、覚せい剤の自己使用の容疑に切り替えて再逮捕・起訴された。その後も警察署の留置場に留め置いて余罪捜査が続けられ、被告人が自己の組事...
《解 説》
一 本件は、競売物件の所有者がその占有を第三者に移転しようとしている場合に、売却のための保全処分として占有移転禁止等を命じ、かつ、それを公示するよう執行官に命じたものである。
本件申立の相手方は、競売土地建物の第三取得者で、かつ、土地について条件付地上権設定仮登記、建物につい...