最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 第二次世界大戦中、日本の軍人又は軍属として動員され死傷した台湾住民及びその遺族が、日本人である軍人軍属の戦死傷者及びその遺族に対しては恩給法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法により補償がされているところ、両法とも対象者を日本国籍を有する者に限定しているのは違憲であることなどを主...
《解 説》
本判決は、いわゆる「沖縄ゼネスト警察官死亡事件国家賠償請求訴訟」の差戻後の控訴審判決である。
一 重複をいとわずに同事件の内容と訴訟経過の概要を示すと、以下のとおりである(詳しくは、後記各審級における判決文を参照)。
1 昭和四六年一一月一〇日、那覇市内で「沖縄返還協定批...
《解 説》
一 本件は、集中豪雨によって静岡市内の賤機山が崩れて住民が死亡し家屋が倒壊などした災害について、被災者が、右災害が観光用リフト施設の欠陥と斜面を危険区域に指定しなかったことに原因するとし、リフト経営の静岡鉄道と静岡県を相手どり、総額約二億五〇〇〇万円の損害賠償を求めた事案である...
《解 説》
一 本件は、いわゆるベトナム難民を偽装して日本に入国した中国人女性の原告が、その際受けた出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)による退去強制手続の適法性を争った事案である。
なお、原告は、いわゆる天安門事件に発展した中国の民主化運動に参加し、中国政府の追及を逃れる...
《解 説》
一 判示事項一について
本件処分の期間(一年間とされていた)の終期は昭和六二年三月三一日であった。そこで、Yは期間の経過により本件処分取消の訴えの利益が失われたと主張した。本判決は、行政事件訴訟法九条にいう法律上の利益とは、処分によって違法に権利又は法律上保護された利益の侵害...
《解 説》
Xは強盗殺人等の罪により第一審で死刑判決の言渡しを受け、上告中の者であるが、Xが購読していた新聞及び差入れを受けた週刊誌に掲載された記事中の別の被疑者Aの顔写真について拘置所長が閲読を不許可とし、墨塗りする抹消措置を施したことを違法であると主張して、Y(国)に対し慰謝料の支払を...
《解 説》
一 Xらは、昭和六〇年六月一六日、東京都中央区内の自動車駐車場の塀に、都議会議員選挙立候補予定者の演説会告知ポスターを貼り終えた後、自転車に乗って越前堀公園付近に至ったところ、警視庁中央警察署警備課の警察官らに停止を命じられて質問されたうえ、中央署に車で連行され、同署においても...
《解 説》
本件は、一四歳で入社し、一六歳からタール職場に配属され、肺がんに罹患するまで約一九年六か月間、タール様物質に間接ばく露を受けた労働者(被災者)が、四二歳のとき肺がんと診断され、約二年後に肺がん(原発性)で死亡したので、遺族が、労災保険法に基づく遺族補償給付、葬祭料及び休業補償給...
《解 説》
一 本件は、エア・ホステス(いわゆるスチュワーデス)から地上職への配転命令の効力が争われた事案であり、原告は、①雇用契約上、原告の職種を女子客室乗務員の業務に限定する職種限定の合意があったこと、②本件配転命令が権利の濫用として無効であることを理由として、本件配転命令の無効を主張...
《解 説》
Yは、国内電気通信業を営み、全国各地に多数の支社や電報電話局を有する大会社である。Xら三名は、昭和四二年から昭和四六年にかけて当時の電電公社に雇用され、内一名(X2)は当初から木更津局勤務、他の二名(X1、X3)は昭和四四年から昭和四八年にかけて館山局又は市川局から配置転換によ...
《解 説》
本件は、自動車会社の新入社員として五日間の合宿訓練を受けたXが、その合宿訓練により神経症になったと主張して、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付と障害補償給付を請求したが、労働基準監督署長(Y)から各給付を支給しない旨の決定を受けたため、その決定の取消を求めた事案であり、X...
《解 説》
本件は、犬に対する獣医の措置の相当性が争われた事例である。獣医側からの債務不存在確認等請求として提起された事件であるので、普通の医療事故事件とは原被告関係が逆になっている。
Xは動物病院の経営者であり、Yはシェパードの飼主であったが、平成二年八月、YはXに対し、その犬に関する...
《解 説》
Y女は、昭和三八年五月、Xら夫婦の子A男と結婚し、Xが所有する本件建物でXらと同居したが、Aはその後他の女性と親しくなり、同五九年九月に家を出て行き、Yと離婚するに至った。その際、AからYに別の不動産が財産分与され、また、Yは引き続きX方に居住するが、Xらと折合いを欠くに至った...
《解 説》
一 本件は、X(原告・控訴人)が、身元保証等の引受を業とし保証証券を発行する(受託協会)会社Y1・右保証証券を販売する(保証協会)会社Y2・両会社の代表者Y3(以上、いずれも被告・被控訴人)を相手方として、会社と総代理店契約を結んだが、その契約がマルチ商法等で違法なものであると...
《解 説》
一 本件は、建設工事による粉塵被害が問題となった事例である。
「事案の概要」欄記載の通り、原告X社は貸ビルの一、二階で婦人服を販売しているが、昭和六二年五月、同じビル内の二階で被告Y1が別の店舗を開設するため、造作の工事をY3に請け負わせたところ、大量の粉塵が発生して隣室及び...
《解 説》
一 本件は、会社の運営に必要な資金以外の資金(いわゆる余資)が、その運用を担当していた者によって多種銘柄の株式売買に利用され、昭和六二年一〇月一九日の株価の大暴落によって会社に損失が生じた場合に、右の者の不法行為に基づく損害賠償責任いかんが争われた事例である。
本判決は詳細に...
《解 説》
Xは刑事被告人であるが、Y発行の①昭63・10・24付夕刊に「Aさん銃撃 X、保険金担保に借金 一億円、会社負債穴埋め」、②10・25付夕刊に「白いバン 借用書は廃棄寸前周辺人物 会社の場所記憶」、③平1・3・11付朝刊に「Xの会社、決算を粉飾 ロス疑惑 融手振り出し何度も 警...
《解 説》
一 事案の概要は、以下の通りである。
昭和六三年五月一一日夜、当時四三才であったAは、吐血のためYが開設、運営する外科病院で診療を受け、翌一二日朝には吐血及び下血のため同病院に入院したが、その後Aの状態は急激に悪化して、入院から一七時間後の一三日未明に死亡した。Yは、その死因...
《解 説》
一 原告は、前に、「縁組を継続し難い重大な事由」があると主張して離縁を請求したが棄却され、その判決が確定した。しかし、再び同種の事由を主張して離縁を請求した。被告は、本件訴えは前訴の既判力に抵触し不適法であり、そうでないとしても、事態は前訴当時と変化していないと主張した。
二...
《解 説》
一 本件は、X1が、Y経営のスーパー屋上のペットショップから手乗りインコの雛二羽を購入して飼育していたところ、右インコがオウム病菌を保有していたため、X1の家族全員がオウム病性肺炎に罹患し、一人が死亡し、他が高熱、悪寒等のため入通院したので、民法四一五条、七〇九条、七一八条、商...
《解 説》
一 Xは、前橋市内でアパート経営と金融業を営んでいたものであるが、昭和六三年七月、海外旅行に赴いたグアム島のホテルの室内において、やしの実を切断中包丁により左手拇指を切断したと主張し、保険会社八社Y1~Y8に対し、総額約六五〇〇万円の傷害保険金を請求した。
これに対し、Yらは...
《解 説》
本件は、売買代金請求訴訟を提起され、訴状等が書留郵便に付して送達され、欠席判決を受けたYが、送達が違法であるとして控訴したケースである。
本判決は要旨次のとおり判示して、原判決を取消し、原審に差し戻した。すなわち、本判決は、①本件では、平成二年一〇月四日に訴訟が提起された後、...
《解 説》
一 本件は、Yら三名(被告・被控訴人)が融資斡旋の話にかこつけてX(原告・控訴人)から金員を詐取しようとして共謀し、融資の担保となる不動産の鑑定書を作る費用に必要であると欺いて右費用名下にXから一〇〇〇万円を詐取したとして、XがYらに損害賠償を求めた事案であり、原判決はXの請求...
《解 説》
本件は、原判決の訴訟手続進行時にオーストラリアに移住していた再審原告が公示送達により欠席のまま確定判決を受けたとして民訴法四二〇条一項三号(訴訟手続における代理権の欠缺)、同五号(詐欺等による攻撃防御方法の提出)等を主張し、右確定判決に対する再審の訴えを提起した事案である。
...
《解 説》
一 事案の概要等
1 本件競売事件は、平成三年三月一日競売開始決定がなされ、同年八月二九日、一回目の売却実施命令(期間入札、最低売却価額約一〇億六千万円)が発せられたが、適当な入札がなかった。そこで、補充評価のうえ、平成四年一月九日、再度売却実施命令が発せられた(期間入札、最...
《解 説》
被告人は、内縁関係にあった女性のクレジットカードを使用して加盟店から商品を購入したとして詐欺罪で起訴されたが、起訴事実における欺罔行為としては、被告人がクレジットカードを使用する正当な権限がなく、かつ支払いの意思及び能力がないのにこれらがあるように装ったということが挙げられてい...
《解 説》
一 本件は、横浜港に入港したコロンビア船籍の貨物船内から史上最高量の約三三キロのコカインが発見押収され、同船船員の甲(コロンビア人)が現行犯逮捕された事案で、コロンビアの麻薬組織が、アメリカの厳しい取締りにあって、コカイン密売の標的を日本に向けるようになったことがその背景にある...
《解 説》
本件は、違法収集証拠の証拠能力に関する裁判例であるが、外国人である被告人が、捜査官の英語による説明によって、任意提出に関する手続の意味を真実理解した上で所持品を警察官に任意に提出したものかどうかが問題になった事案であるという点に特徴がある。すなわち、本件では、被告人と犯人の同一...