最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一、本件は、錯乱状態に陥っている被疑者に対する強制採尿の適法性が争われた事件の上告審決定である(第一審判決は、本誌七四三号二三九頁に登載されている。)。
本件採尿手続の経過については、参考として添付した原審判決中に摘示されている。これによると、深夜精神錯乱者として警察に保護(...
《解 説》
Xは宅建業者であるが、宅建業法六九条一項の聴聞手続を経たうえ、Y知事からXの違法行為は「反復継続、その他諸般の事情に照らし、情状が特に重い」との理由により、宅建免許を取り消された。聴聞手続の過程において、Xは関係書類の閲覧・謄写を求めたところ、Y(都市部建築指導課宅建指導班担当...
《解 説》
Xら三六名は浅草橋襲撃事件で全国各地の刑務所に服役中の者とその養親(一八組)であるが、各刑務所長Yらを相手に、面会及び私信の発受信を妨げてはならないとする無名抗告訴訟及びこれに関連して国を相手に国家賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。Xらは、同裁判所は右国家賠償訴訟について...
《解 説》
一、本件は、登記官の不動産登記簿原簿の閲覧監視義務の懈怠の有無が問題となった事例であり、これを肯定した横浜地判平2・2・14本誌七二一号一九九頁の控訴審判決である。
Yらは、他人名義の土地登記簿を偽造して第三者から金員を騙取することを共謀し、登記簿の閲覧を申請し、他人名義の本...
《解 説》
本件は、都立公園設置の遊具につき、造営物の設置、管理に関する瑕疵が争われた事例である。
昭和六三年四月、当時小学校四年生であったXは都立小金井公園内の「ターザン・ロープ」(上方に張られたロープに滑車つきの紐を吊り下げ、この紐につかまって滑空するもの)の出発台で順番待ちをしてい...
《解 説》
XはA県B郡C町に住所を有し、同県D市(政令指定都市)E区に事務所を置いて不動産鑑定士及び税理士業を営んでいる者であるが、E区長YがXに昭和六二年度市民税均等割額二五〇〇円及び県民税均等割額七〇〇円の賦課決定をしたのを不服としてその取消しを求めた。Xの不服の理由は、地方税法二四...
《解 説》
Xら三名はK市民であるが、K市の「新交通六甲アイランド線建設事業」が住吉川河川軸景観等を破壊し、倚松庵(旧谷崎潤一郎邸)を変容させるのは違法であるなどと主張して監査手続を経、K市長Yに対し公金支出差止めを求める住民訴訟(前訴)を提起した。その審理中、右公金が支出されたことを知ら...
《解 説》
本件は、東京都衛生研究所の職員である原告が、被告に対し、同研究所に換気系統が他の室とまったく異なる完全分煙化された喫煙室を設置するよう勧告することなどを要求したところ、被告が、要求の一部を認めることができないとし、一部を取り上げることができないと判定した事案に関する取消訴訟であ...
《解 説》
本件は、被告の従業員であったが、被告を任意退職した原告ら(なお、原告の一部は従業員の相続人であるが、以下右従業員を「原告ら」という。)が、被告会社に対して、退職金を請求した事件である。被告の就業規則によると、基本給月額に勤続年数に応じた月数を乗じた額の退職金を支払うものとされて...
《解 説》
一、事案の概要は以下のとおりである。
昭和五八年、X1国鉄労働組合(国労)及びX2国鉄労働組合東京地方本部(国労東京地本)は当時の公共企業体等労働委員会(公労委)に対し、東京駅における国鉄の不当労働行為を主張して救済のための命令を申し立てた。しかし公労委は昭和六〇年一二月にこ...
《解 説》
本判決が認定した事実は、次のとおりである。
本件土地を所有していたA(武夫)には長女B(紀子)、三女C(和子)、養女でBの実子であるD(弥生)の三名の相続人がいた。本件建物は、Cの一家が病身のAと同居してAの看病に当たれるように本件土地に昭和五八年に建築されたもので、Cの夫Y...
《解 説》
一、本件事案の概要は次のとおりである。甲部落住民に総有的に帰属する共有の性質を有する入会権について、入会権を有する部落住民の組織である甲入会組合の臨時総会において、入会権を消滅させ、入会地を組合員の共有に移行させる決議がされた。この決議を前提に部落共有地を各権利者の単独所有にす...
《解 説》
一、本件は、事案の概要にも説明されている通り、不動産の移転登記手続きの委任を受けた司法書士の責任の範囲が争われた事例である。
Xは昭和六三年八月二七日に、訴外Aから千葉市内の宅地建物を三億五八〇〇万円余で買い受け、司法書士Yに所有権移転等の登記手続きを委任して、同年九月二六日...
《解 説》
一、Xは、昭和四五年生まれの高校生であるが、昭和六三年二月二〇日午後、Yの経営管理するレクリエーション施設内のプール(以下「本件プール」という。)で水泳中、反対側から泳いできた男性に衝突され、外傷性頸部症候群の傷害を負って入通院治療を余儀なくされた。
そこで、Xは、Yは、入場...
《解 説》
一、訴外Aは、昭和六二年九月当時、東京都立本所高校二年に在籍していた者であるが、同月二七日午後、東京都葛飾区東水天所在のコーポにおいて、退学した元同級生Bらの暴力グループに集団暴行を加えられ、同日、外傷性ショックにより死亡した。
そこで、Aの父親X1と母親X2は、学校は在学す...
《解 説》
X会社はY銀行に預金したところ無断で拘束性預金とされてしまい、そのため資金繰りに困り他から借入れをしてしのいだが、負担しなくてもよいはずの利息を支払うことを余儀なくされたと主張して、Yに対して、契約責任又は不法行為責任に基づく損害賠償の内金一〇〇〇万円を請求したのが本件である。...
《解 説》
本件は、政治団体であるXが、政党機関紙に掲載された記事により名誉を毀損されたとして政党Y1及び同機関紙編集長Y2に対して、謝罪広告掲載及び一億円の損害賠償請求をしたケースである。Xが問題とするのは、アメリカ合衆国に亡命した元KGB機関員レフチェンコが合衆国議会下院情報特別委員会...
《解 説》
一、本件は、降雨のため時速八〇キロメートルの速度制限が実施されている高速道路上を、時速約一〇〇キロメートルで走行していたB車が、蛇行しているA車を前方約一五〇メートルの地点に認めたものの、減速等することなく、あいている追越車線に進路変更してA車を避けようとしたところ、予期に反し...
《解 説》
本件は新生児核黄疸について医師の責任が認められた事例である。
X1は昭和五一年五月七日に埼玉県内のA産婦人科医院で出生したが、母子間血液型不適合による新生児黄疸を発症したので、三日後にA医師はX1をYが運営する小児病院に転送した。しかしX1には脳性麻痺による重篤な後遺症が残り...
《解 説》
X1(昭46・11・11生まれ、男子、気管支喘息の持病あり)は、昭59・11・15医師Yの執刀により虫垂炎の手術を受けることになり、YはX1に対してネオペルカミンSを用いて腰椎麻酔をしたところショック状態となり、高度の血圧低下によって心停止に近い状態に陥ったことに起因する低酸素...
《解 説》
一、本件は出産に起因する新生児の脳性麻痺について、医師の処置の当否が争われた事例である。
原告X2は、昭和五九年秋に被告Yが運営する国立大阪病院で妊娠と診断され、同病院で悪阻や逆児の治療を受けていたが、昭和六〇年一〇月に破水で入院し、一一月六日には陣痛室、翌七日には分娩室に移...
《解 説》
一、本件の事案
Xは、自己がY1社の唯一の株主でありかつ代表取締役であったところXの内縁の妻Y2が不法な本件各株主総会決議を行って自己をY1社の取締役、代表取締役から排除したと主張して、Y2~Y11(Y3以下は、X、Y2間の子ら等)ら現在のY1社の登記簿上の各員の職務執行停止...
《解 説》
一、Yらは家庭教師派遣を目的とするA社の取締役(Y1が代表取締役)であったが、A社は平成元年五月一八日頃に事実上倒産して事業を停止した。Xらは中高生の子を持つ父兄で、A社に入会金、契約金を支払ってその契約者となり、数十回分の家庭教師料を前払いしていたのであるが、A社の倒産によっ...
《解 説》
Xの主張によれば、XはZ保険代理店を介しY保険会社との間で、X所有の本件自動車について従前から自動車保険契約を結んでおり、二回更新をしていたところ、Xの長女Aが本件自動車を運転中原付自転車等と衝突する本件交通事故を起こしたため、右原付自転車の運転者等に対し合計約四〇〇〇万円の損...
《解 説》
本件は、京都府北桑田郡・船井郡にあるマンガン鉱の鉱業権者であるXが、その鉱区内にY(電力会社)が設置した鉄塔により鉱業権が侵害されている(鉱業法六四条により鉄塔から五〇メートルの範囲内の地下が利用できない)、鉱床がYの建設したダムの貯水により浸水したと主張して、鉱業権に基づく妨...
《解 説》
一、(事実の概要と争点)
本件は、信販会社Y1が提起した二つの金員請求訴訟において敗訴の欠席判決(確定)を受けたXが、書記官がした二つの訴状送達はその要件が存在しないにもかかわらず付郵便送達に付した違法があるなどとして、Y1及びY2国を被告として提起した損害賠償請求事件である...
《解 説》
一、本判決及び参考のため末尾に併載した原判決によると、本件の事実関係はおおよそ次のとおりである。
①職人等を雇って左官業を営んでいる被告人(X)は、いやいやながらも同郷の暴力団組員Aと交際していた(Xはいわゆる堅気の一般人である)。XはAの依頼によりAの義弟Cを左官見習いとし...
《解 説》
本判決は、強盗殺人罪による無期懲役刑の仮出獄中、再び若い女性に対して強盗殺人等を犯した被告人に対して死刑を選択した事案である。被告人は、昭和三三年に二一歳の女性に対する強盗殺人未遂罪で懲役五年以上八年以下に処せられ、昭和四四年には二四歳の女性に対する強盗殺人罪で無期懲役刑に処せ...
《解 説》
一、本件はニュージーランド国籍を有する外国人で日本語に通じていない被疑者が窃盗被疑事件により逮捕・勾留された際における勾留質問手続の適法性が争われた事案である。勾留担当裁判官は、勾留質問手続に際し、英語の通訳人を介して、被疑者に黙秘権を告知し、被疑事実を告げ、また、勾留質問は裁...
《解 説》
一、Xは、昭和四二年四月、名古屋地裁判事補になり、鹿児島、東京、京都の各地方裁判所判事補を歴任したが、いわゆる宮本身分帳閲覧事件などを起こしたため、昭和五二年三月、裁判官弾劾裁判所の判決により、法曹資格を喪失した。しかし、Xは、昭和六〇年五月、裁判官弾劾裁判所の決定により、法曹...