最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
福島第二原発(福島県双葉郡富岡町及び楢葉町所在)の三号機が昭和六四年一月初旬、再循環ポンプの破損等の事故を起こし、運転を停止するに至ったが、その後修理され、平成二年一一月五日に調整運転、同年一二月二〇日に営業運転を再開したことは周知のとおりである。本件は、同原発を設置するT電力...
《解 説》
本件は、右翼団体に所属する被告人が、市役所正面玄関前において、長崎市長を銃撃した殺人未遂等の事案についての判決である。事案の概要は、被告人が、市議会本会議の席上における同市長の「天皇に戦争責任があると思う」旨の発言に憤慨し、更にその後の大葬の礼における天皇に対する発言や難民問題...
《解 説》
一、被告は土地区画整理法に基づいて設立された土地区画整理組合であり、原告は被告が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内に宅地を有している。被告が原告所有の宅地について換地処分を行ったが、その内容は従前の宅地三〇九三平方メートル(本件土地)のうち周辺部の三三三・七平方メートルが...
《解 説》
Xはタクシー運転手であるが、指定最高速度毎時四〇キロメートルの道路において毎時六一キロメートルの速度で通行したとして警察官から現場において運転免許証の提示や記録紙の確認を求められたが、免許証を警察官によく見せず、被疑事実を否認したので、午後七時一五分、現行犯として逮捕され、その...
《解 説》
X1は昭63・12・1前夫との間で子供ABの親権者はX1とする旨の調停離婚したが、その直後からX2と同居して事実上の夫婦として暮らしてきた。Xらは、平1・3・7婚姻届けをしたが民法七三三条により受理されず、X2らはABを養子とするため許可を申し立てたが家裁においてXらが将来婚姻...
《解 説》
一、Xは、窃盗(スリ)未遂罪で警察官に現行犯逮捕され、引続き勾留、起訴されたが、一審で無罪となり確定した。そこで、Xは国と県とに対し、右逮捕、勾留請求、勾留延長請求、起訴及び公訴追行が違法であり、これにより不法な拘禁を受けたとして、国家賠償法一条一項に基づき損害賠償(逸失利益と...
《解 説》
一、公立小学校教員であるXは、昭和五七年・五八年と学級担任を受け持たされず、学年所属もなく、授業時間数の少ない専門外の専科教員とされた。Xは、この担任外しは、同校校長による校内人事として行われたものであるところ、①校内人事の決定は教師集団により自治的にされるべきもので、校長の校...
《解 説》
一、XはY市において予定されている石炭火力発電所の建設に反対の立場をとる団体であるところ、電力会社の作成提出した環境影響評価準備書の問題点を検討する目的で学習会の開催を企図し、学習会及びその打ち合せ場所としてY市が設置するコミュニティセンターの使用許可を申請してその許可を得たが...
《解 説》
一、原告(控訴人)らは、被告(被控訴人)電力会社の社員であるが、同社が計画している原子力発電所の建設に反対し、就業時間外に職場外でビラを配布したところ、右会社は、右ビラ配布行為は同社の社会的信用を失墜させ、業務を妨害するものであるから、「会社の体面をけがした者」及び「故意または...
《解 説》
地方公務員の採用は、原則として六月間の条件付とされ、その間良好な成績で職務を遂行すれば当然に正式採用となる(地方公務員法二二条一項。なお、一般職の国家公務員についても同様である―国家公務員法五九条。)この条件付採用制度の趣旨は、本判決にも引用されている最三小判昭49・12・17...
《解 説》
一、事案の概要
出版物の長期月賦販売業及び販売代金集金代行業を営む原告会社が、被告に神戸本社から名古屋業務への配転を命じたところ、被告は家族との別居生活を強いられること、経済的負担が増大すること等を理由に右配転命令を拒否した。そして被告は、配転命令発令当時所属していた労働組合...
《解 説》
建物所有を目的とする土地賃貸借契約の更新が争われる場合、土地所有者から正当事由の補完事由として立退料の提供が申し出られることが多く、しかも、立退料の提供は、土地所有者の異議と同時に申し出られる場合だけでなく、土地所有者の借地人に対する土地明渡請求訴訟の提起時や、更には土地明渡訴...
《解 説》
一、A会社は、Yから本件各手形を融通手形として振出交付を受け、これをB銀行で割引いてもらっていたが、右各手形を決済しないまま倒産した。Xは、A会社のB銀行に対する債務について連帯保証していたが、A会社の倒産後にB銀行に対し連帯保証人として右債務を代位弁済してB銀行から本件各手形...
《解 説》
一、Xは、割賦購入あっせん取引業者であるが、昭和六三年一月、Yが訴外A会社から自動車を購入するとともに二五〇万円を立替払する契約を締結したうえ、A会社に対して有する二八〇万円の不当利得返還債権ないし損害賠償債権と相殺して立替金を支払った。
ところが、Yが、昭和六四年一月以降の...
《解 説》
一、事案の概要は以下の通りである。
まず当事者は多数にわたるが、X1は著名な華道家、X2社はその流派の雑誌・書籍の出版販売を目的とする会社で、代表者はX1の親族である。他方、Y1ないしY3は興信所とその所長、同所が発行する信用情報紙「東洋経済通信」の発行人兼編集者、Y4、Y6...
《解 説》
一、訴外Aは、昭和四九年一〇月三〇日、交通事故により大腿骨粉砕骨折等の傷害を受け、Y1の経営する病院で治療を受けたが、骨髄炎を併発し、これが慢性化して転医先で右大腿を切断することを余儀なくされた。
Xは、右交通事故を起こした加害車の運行供用者であるが、Aの骨髄炎の発症は、Y1...
《解 説》
一、訴外Aは、昭和六二年四月当時タクシー運転手として稼働していたが、同月一一日、普通乗用自動車を運転して兵庫県芦屋市内の道路を走行中、交差点でY1の運転する普通乗用車に衝突されて頸部捻挫、急性硬膜下血腫を受け、四月一七日死亡した。
そこで、Aの遺族であるXらは、加害車の運転者...
《解 説》
本件は、アスピリン喘息患者の薬剤ショック死につき、医師の責任が争われた事例である。
いわゆる新様式であるため、経過等には不明の点が多いが、Aは当時二七才の独身会社員で、アスピリン喘息(アスピリン等酸性解熱鎮痛剤によって発作が誘発される喘息)患者であったが、昭和六三年一月に発熱...
《解 説》
一、本件は、破産者であるX(控訴人、原告)が、自己を被保険者として、Y1の普通傷害保険、個人賠償責任保険、Y2の医療保険付定期保険(高度障害条項付)、Y3の所得補償保険(後遺障害特約付)、Y4の自家用自動車保険に加入していた(但しY4との契約者はXが代表者のA社)ところ、保険期...
《解 説》
特許・実用新案の権利範囲の確定に当たっては、請求の範囲の文言の、国語的字義に拘泥することなく、明細書の記載によって技術的事項、技術的思想としての解釈、認定によるべきであるとする解釈基準は、大判大11・12・4パナマ帽事件(民集一巻六九七頁)、最三小判昭39・8・4廻転式重油燃焼...
《解 説》
借地権者から堅固な建物所有を目的とする賃貸借への借地条件変更の申立てがなされた場合には、裁判所は、借地契約の残存期間を含めた一切の事情を考慮して裁判をすべきものとされている(借地法八条の二第四項)が、借地契約の残存期間が短く、地主側が期間満了の際に更新を拒絶する意向を示している...
《解 説》
本件は熊本県荒尾市にある孫文記念館の敷地について、中国革命の父孫文(一八六六~一九二五)を助けた宮嵜民蔵(昭和三年八月死亡)・虎蔵(滔天、大正一一年一二月死亡)兄弟の子孫の間で所有権の帰属が争われた事例である。本件土地は、来日した孫文が立ち寄ったことがある民蔵らの生家が負債のた...
《解 説》
一、XとYとは、藤沢簡裁昭和五七年(ハ)第五号土地明渡請求事件において、「XはYに対し、昭和六二年一月末日限り、Yから金二〇万円の支払を受けるのと引換に、本件土地上に存するX所有の建設物を収去して本件土地を明渡す。」旨の和解が成立したとして調書が作成されているが、Xとしては、X...
《解 説》
刑法一〇八条、一〇九条一項の放火罪が抽象的危険犯であるのに対し、建造物等以外放火罪(一一〇条)の場合は、具体的危険犯であり、具体的危険の発生が構成要件要素である。一般に、刑法一〇九条二項但書、一一〇条一項の「公共の危険」とは、本判決の判示にもあるとおり、刑法一〇八条の現住建造物...
《解 説》
本件は、印刷業者が、いわゆるホテトルの経営者の依頼を受けてピンクちらしをまとめた宣伝用小冊子を作成したことにつき、売春防止法六条一項(周旋)の罪の幇助の責任を問われた事件である。一審の東京地判63・4・18本誌六六三号二六九頁は、事実認定の問題として、故意の不存在をいう弁護人の...
《解 説》
本件は、日本語をほとんど理解できない外国人の被告人に対し翻訳文を付さないで起訴状謄本を送達したことが、刑訴法二七一条一項及び憲法三一条に違反するかどうかが争いになった事案である。この点につき、弁護人は、被告人に対する起訴状送達の趣旨は、被告人に起訴の内容を了知させ防禦の準備を尽...
《解 説》
本件は、公訴事実の要旨を「被告人が、駐車禁止の道路に軽四輪貨物自動車を約一〇分間駐車させた。」とする道路交通法違反事件である。弁護人は、被告人が駐車した時間は四分程度であると主張した上で、取締担当者によると駐車違反の検挙は駐車時間がで一〇分以上の場合になされていたから、本件起訴...