最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 食用油の製造工程においてPCBを主成分とする熱媒体(カネクロール)が混入した食用油を摂取したことにより生じた被害につき、油製造業者の代表取締役、熱媒体製造業者および国に対し、いずれも不法行為責任が認められた事例
2 有機的組織体としての企業自体が不法行為責任を負う場合に、その代表取締役に代理監督者責任を認めた事例
3 農林省係官の厚生省等への通報懈怠及び鑑定上の過誤が違法であるとして、国に対し全被害の3割につき国家賠償法上の責任が認められた事例
1 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律3条にいう「排出」及び「事業活動に伴って」の意義
2 工場から塩素ガスが流出し、地域住民ら公衆の身体に危険を生じさせ、傷害を負わせた事故について同工場の製造課長らが過失により右ガスを排出したとして、同法3条2項違反の罪が成立するとされた事例
1 否認権行使の相手方が否認された行為のあったのちに総破産債権が不存在となったと主張して否認権行使の効果を否定することの可否
2 総破産債権者につき詐害行為取消権の消滅時効が完成した場合と破産法72条1号所定の否認権の消長
体罰事件を議題とする市教育委員会定例委員会に委員として出席した弁護士の行為が、弁護士法25条4号の「公務員として職務上取り扱った事件」に該当しないとされた事例
正当事由に基づく店舗賃貸借解約申入れが効力を生じた後に賃貸人が右店舗における営業を妨害したことを理由として、賃借人から賃貸人に対する得べかりし営業利益の損害賠償請求が一部認容された事例
1 信販会社東北地区本部の管理課長が支配人として選任・登記されている場合、その者がした訴訟代理行為は適法か(消極)
2 右の者がした訴訟代理行為は追完追認により有効になるか(消極)
私立大学のワンダーフォーゲル部員が冬山登山中、氷結した急斜面から滑落して死亡した事故について、文部省の私立大学に対する行政上の監督義務の懈怠も国定公園の管理の瑕疵もないとされた事例
立退料の支払を条件とする賃借建物明渡の給付判決を得た建物賃貸人が、建物占有以外の方法でその敷地を占有する建物賃借人に対し、敷地所有権によりその明渡を求めるには、右判決による立退料の支払を要しないとされた事例
不動産の売却仲介依頼者と買入れ仲介依頼者との間に、買主兼売主として第三者を介在させた宅地建物取引業者の買入れ仲介依頼者に対する報酬請求が、信義則違反、権利の濫用にあたり許されないとされた事例
販売店の手違いないし内部事情によりクレジット契約が成立したと誤信してクレジット会社が立替払いをして損害を被ったとしても、消費者は右会社に対し損害賠償責任を負わないとされた事例
ゴルフ場1番ホール右側に設置されているアプローチ練習場で練習のために打ったボールが1番ホールからOBボールを探しに来た者の後頭部に当り負傷させた事故につき右練習者およびゴルフ場経営者の責任が肯定された事例
会社の新入社員研修旅行の宿泊ホテルで催された宴会の後に行われた二次会に参加した新入社員がビールの追加注文のことで喧嘩をし、ホテル専属の楽団演奏者を負傷させた事故について、会社側の使用者責任及びホテル側の安全配慮義務違反の責任が認められなかった事例
「海外旅行」をエサにした英会話のテープや書籍の販売契約及び信販会社との立替払契約について消費者の要素の錯誤による無効を認め、信販会社の立替金請求を棄却した事例
建物賃貸借契約において、一定期間暫定的に賃料の減額を取り決めたが、その期間経過後9年余りにわたってその賃料で推移した場合にも、当初の約定賃料が黙示的に減額改訂されたものとはいえないとされた事例
クレジット契約により婚礼家具を購入したが家具店の倒産により家具の引渡を受けられなくなった場合、買主は、クレジット会社に対し売買契約の解除を主張して立替金支払債務の消滅を主張することができるとされた事例
自己所有の不動産につき、自らの意思により他人所有名義の登記をした者は、民法94条2項の類推適用により、租税徴収のため右不動産を登記名義人の所有として差し押えた行政庁に対し、真実の所有関係を対抗することができないとされた事例
農業委員会等に関する法律(昭和51年法律第65号による改正前)2条1項に基づき農業委員会の委員及び職員に要する経費について国が負担すべき割合並びに国に対する具体的負担金請求権の発生要件
市が土地再開発事業区域内の住民を移転させるための代替地を買収した見返りとしてした市有地の払下げによって、市に損害が発生しないとして、損害の賠償を市に代位して請求する住民訴訟が棄却された事例
建築主事が、モーテル類似建築物を新築するため提出された建築確認申請を受理しながら、地元町長の行政指導を理由にその許否を遷延したことが違法であるとされた事例
1 地方自治法242条の2の規定は、財産区について準用がある
2 財産区に関する住民訴訟について、財産区外の住民にはその原告適格がない
3 地方自治法242条の2第1項4号所定の地方公共団体に代位して行なう当該行為に係る相手方に対する法律関係不存在確認の請求で、地方公共団体と相手方との間に確認の利益があると認められた事例
非公開とされている審議会における法令上作成を義務づけられていない内部的な記録である議事録は、民訴法312条3号後段のいわゆる法律関係文書にあたらないとされた事例
使用者が従業員に対し積載違反行為を命じたことは道路交通法103条2項3号にあたらないとし、使用者に対してした運転免許の効力停止処分が取り消された事例
町長が広島から東京へ出張するにあたり夜行寝台特急を利用しながらグリーン料金の支給を受けたとしても違法ではないとして、町長に対する不当利得の返還を求める住民訴訟が棄却された事例
仕入価格を下回る価格で商品を販売するという放漫経営を行って倒産し、手形金の支払不能となった時計類の販売会社の代表取締役について、商法266条ノ3の損害賠償責任が認められた事例
単行本出版と他社による文庫本化との関係 先行出版社の契約が単なる出版の許諾にすぎない場合であっても、他の出版社は先行出版社の立場を尊重して3年程度は同一著作物の出版を差し控えることが望ましいとされ、当該著作物を出版するときには先行出版社の了解ないし見返りの提供を前提とする一応の慣行が出版界にあることは認められるものの、慣習法又は事実たる慣習として定立していないとして、単行本による先行出版社から他社による文庫本化出版が出版権侵害に当たるとして提起された他社及び原著作権者を相手方とする差止請求、損害賠償の訴えが却けられた事例