最も長い歴史をもつ判例実務誌
遺留分減殺請求に基づく特定物の返還請求訴訟において、受遺者から価額弁償の抗弁が提出された場合、それが弁償すべき価額の確定をも求める趣旨であるときは、受遺者に現物の返還を命ずる一方、その価額を支払うときは受遺者が右返還義務を免れることを判決主文で明らかにしておくのを相当とするとされた事例
高等裁判所がした不動産禁止仮処分命令の執行に対する第三者異議の訴えの第一審管轄権は地方裁判所にあり、この場合、不動産の所在地を管轄する地方裁判所が専属的に土地管轄権を有すると解すべきである
1 借地権の無断譲受人は、譲受建物に競売申立登記がなされた後でも借地法10条の建物買取請求権を行使できるか(積極)
2 競売手続中の建物にかかる借地法10条の買取請求権行使に対し、賃貸人は競売申立の取下又は競売手続の完結まで代金支払を拒絶できるか(積極)
3 競売手続中の建物にかかる借地法10条の買取請求権行使に対し、代金支払拒絶権が行使された場合に、買取請求権者の代金供託請求にもかかわらず賃貸人が右供託をしないときは、賃貸人は代金支払拒絶権を失うか(積極)
4 賃貸人が、競売手続中の建物にかかる借地法10条の買取代金の支払を拒絶しながら、代金供託請求に応じなかったため代金支払拒絶権を失った場合でも、買取請求権者は、建物の明渡等の請求に対して、代金の支払ではなく代金の供託との引換えにするとの同時履行
会社の社屋の屋根の雪降し作業中足を滑らせて地上に転落して負傷した会社員の事故につき、会社側の安全配慮義務違反がないとされた事例
都立高専の一般教養科助教授が、教授選の対立候補である助教授の教授昇任を妨害し、自己の教授昇任を図るために不明瞭な工作をしているかの如き印象を与える文書が、教職員で構成する一般教養科会議に配布された場合に、当該文書が公共の利害に関し、公益を図ることを目的として作成、配布されたものであって、記事の内容は真実であることなどから、当該文書の作成配布行為の違法性は阻却されるとした事例
一筆の土地の一部を建物所有の目的で返還の期限を定めず無償で貸与し、他の部分の一部に建物が建築されるに際しても、ことさら異議を述べることもしなかった、貸主(兄)から借主(弟)に対する建物建築後10年以上経過した後における土地明渡請求等を、権利の濫用にあたるとして排斥した事例
宅地が、自家用自動車を乗り入れるに十分な経路によっては公道に接しておらず、宅地の所有者(居住者)が自家用自動車で通勤しており、そのための車庫を宅地内に保有している場合に、宅地の購入時の買主(所有者)の意識(自動車乗入の必要性を感じていなかった)、所在地の地域性(新宿副都心付近)等を総合的に判断して、当該宅地を袋地にあたらないと判示した一事例
いわゆるテレホンショッピング・システムにおいて、顧客からの受注により商品をメーカーや問屋に発注し、倉庫(配送センター)に受納しておく者(原告)と、原告の指示に従い配送センターから顧客に配達し、配達料金及び商品代金を受領する者(被告)との間の契約関係及び右両者の取引終了時における精算について判示した一事例
農林漁業団体職員共済組合の組合員が、退職一時金の支給の申請に際し、通算退職年金の財源の控除を行わないで欲しい旨の申しでを、組合員資格喪失の日から71日目にした場合について、申しいでを有効として取り扱い、通算退職年金を控除しないで退職一時金を支給した農林漁業団体職員共済組合の処分に明白かつ重大な瑕疵はなしとした事例
商店街にある印刷作業場から発する振動、臭気、騒音が受忍限度を超えるものではないとして、その損害賠償責任が否定された事例
無効な農地買収処分がその26年後に取消されたが、その間に第三者がこれを占有し、時効取得したため、被買収者がその所有権を喪失した場合において、被買収者の相続人の損害賠償請求が認容された事例
釘を抜くため金属製釘抜きの頭部を金槌で打ちつけた際、金槌の頭部に亀裂が入り剥離した破片が眼球に入って失明した事故につき、金槌の製造・販売業者らに対する損害賠償請求が認められなかった事例
農業協同組合の総代の選挙、総代会の議決に無効事由がある場合、組合員の提起する総代選挙無効確認訴訟、議決無効確認訴訟は許されるか(積極)
市が租税収入の増大、職員の福利厚生などの行政的政治的配慮のもとにゴルフクラブ会員権を取得した行為につき、それが地方自治法149条6号の財産権の取得にあたり違法とはいえないとされた事例
距離制限規定の適用を受けない特殊浴場としてなされた公衆浴場営業許可処分につき、当該浴場が特殊浴場には該当しないものとされた結果、公衆浴場法及びこれに基づく大阪府公衆浴場法施行条例に定める距離制限の規制に違反する違法な処分であるとして、既存の公衆浴場業者の提起した本訴請求を認容し、右営業許可処分を取消した事例
供託官の供託金払渡請求を認可した処分が、添付書類を供託官が読み違ったことによる違法なものであるとして、再度調査の結果右処分の誤りに気づいてこれを取り消した供託官の処分が適法であると認められた事例
(イ)1年間を限った私立高校の非常勤講師の雇傭契約が、過去に3回更新された事実があっても、期間の定めのない契約とはいえず更新継続を期待する客観的状況もなかったとして、その更新拒絶(傭止め)を有効とした事例
(ロ)3ヶ月を限った前大学長である69歳の専任嘱託教授の雇傭契約が、過去数回の反覆更新と70歳までは更新継続する大学の慣例に照らし、期間の定めのない契約であって、更新継続を期待する客観的状況があったとして、その更新拒絶(傭止め)を無効とした事例
脱肛痔の手術の際の輸血により血清肝炎に罹患せしめ、この潜伏期に不要な乳癌の手術やコバルト照射を行ったため、右肝炎が劇症化して死亡した等とする主張が排斥された事例
1 虫垂摘出手術を担当した医師において、患者又は家族に対する手術の経過と内容を説明する義務ないし再手術の必要を説明し且つ指導する義務に違反した債務不履行があるとされた事例
2 消滅時効の起算点につき、「権利ヲ行使スルコトヲ得ル時」とは債権を行使するについて厳密に法律上の障害がなくなった時を指称するものではなく、権利者の職業、地位、教育及び権利の性質、内容等諸般の事情からその権利行使を現実に期待ないし要求できる時を意味する
1 交差点内における自動車の衝突による交通事故につき、衝突車の信号無視が決定的原因であるが、他方、見とおしの悪い街中の交差点に酒気を帯び、制限速度を超える時速60キロメートルのスピードで進入した被衝突車にも過失があるとして、被衝突車に同乗していて下半身完全麻痺、知覚脱失等の傷害を負った女性に対し共同不法行為責任を肯定した事例
2 住居改造費500万円を右損害に算入した事例
3 民法711条による固有の慰藉料を同女の母親については肯認したが、妹についてはこれを否定した事例
過去の婚姻費用分担の支払義務は、権利者から請求を受けたときからではなく、義務者において権利者が分担に関する支払を受けるべき状態にあることを知り、又は知ることを得べかりしときから発生するとした事例
1 建物賃貸を目的とする会社の株式の評価にあたり、その前提となる会社所有の不動産の評価につき収益価額を基礎として算出するのが相当であるとした事例
2 相続人のうち抗告人のみが現住居を奪われる結果となる等を理由に原審判が定めた具体的分割方法が相当でないとした事例
中小企業等協同組合法による事業協同組合の設立が企画されたが同協組が成立しなかった場合において、その発起人の1人が右協組の発起人代表・理事長名でなした設立に関しない行為につき、各発起人は均一の割合で責任を負担すべきものとされた事例
親会社の取締役を子会社の取締役として選任する株主総会決議が取締役の忠実義務及び競業避止義務に違反せず無効なものでないとされた事例
会社が商号・本店所在地・代表取締役変更の登記をした後旧商号・旧代表取締役及び右本店所在地と異なる肩書地を表示して振り出された手形については会社は責任を負わないとされた事例
株主総会においてなされた取締役の退職慰労金の支給を取締役会に一任する旨の決議が、退職金支給に関する申し合せにもとづき相当な金額の決定を黙示したものであり、商法269条に違反するものとはいえないとされた事例
取締役の退職慰労金の支給を取締役会に一任する旨の株主総会の決議が、株主らの知り得べき退職金支給に関する申し合せ(一定の基準)にしたがい合理的に相当な範囲での金額の決定を取締役会に委ねたものとして有効であり、したがってその決議にもとづいてなされた退職慰労金支給の取締役会の決定も適法であるとされた事例
拒絶査定に対する審判請求後の一発明増加につき出願手数料と審判請求料が不納付で、納付を命ずる補正指令書の期間内にも納付がなかった場合には、一発明時に拒絶理由通知が発せられるなど審判としての実体審理が始まっていても、一発明増加により補正された出願全体を新たに一体として特許要件の有無について改めて審理の対象としなければならないこと、また出願手続の一環としての審判手続の特則、その手続間の一体性などを考慮すると、手数料納付に関する処理は中間手続とはいえず、その不納付を方式的審査の対象として特許法133条2項の規定に基づき審判長の権限で審判請求
1 原商標出願について、審決取消訴訟中であることにより未確定の時点で連合商標登録出願に変更された以上、商標法11条2項、3項に規定する変更出願手続の要件を満たしているので、原出願時に遡って手続が開始・進行され、これと同時に原出願の手続は取下げたものとみなされ、その効力を失い、その間の拒絶査定はもとより審決も当然その効力を失い、確定の問題も生じない
2 右のような場合には原出願についての審決の取消を求める訴は法律上の利益を欠き不適法である
破産宣告後、破産会社に課せられた法人税、事業税、府・市民税及び過少申告加算税が、いずれも破産法47条2号但書の財団債権に当るとされた事例