最も長い歴史をもつ判例実務誌
執行抗告の抗告状が原裁判所以外の裁判所に提出された場合には、これを受理した裁判所は、民訴法30条を類推適用して事件を原裁判所に移送すべきではなく、執行抗告を不適法として却下すべきである
請求異議事件において、債務者が出稼ぎのため所有する畑を他に賃貸して単身上京し、約17年間同一場所に居住し同一勤務先で稼働していて、引続き同所に居住し稼働する意思を有し、毎年正月と8月に年間を通じて40日程度妻の居住する出身地に帰省する場合には出稼先を住所と認めるべきであるとした事例
旧法下の不動産強制競売における競買申し出が債務者の計算によりなされた場合につき、競落の許否は具体的事情を勘案して決する趣旨であるとされた事例
競売不動産の最低入札価額が不相当であることを理由として入札期日の取消を求める旨の執行方法に関する異議申立があった場合、競売裁判所がこれにつき判断を示さないまま入札期日を実施して競落許可決定を言渡したとしても、違法とはいえないとされた事例
任意競売事件において仮登記担保法施行前の仮登記担保権が届出られた場合、仮登記担保権の被担保債権は目的不動産の適正な評価額と同額の範囲で優先して配当を受ける
訴訟上の陳述が、時機に後れ訴訟の完結を遅延させる攻撃防禦方法であっても、右陳述に関する事実が自ら関与したものでなくあらかじめ十分な調査をなしえない等の事情がある場合には、時機に後れたことにつき故意又は重大な過失があるとはいえないとした事例
1 民訴法187条3項に基づく再尋問の申出の採否に当っては、その当事者に有利な認定判断を導き得る可能性があるか否かにより必要性の有無を判断すべきである
2 忌避申立権が濫用であって当該裁判官による簡易却下が違法でないとされた事例
宅地建物取引業者が、取引物件たる土地が売買時の現状で住宅等の建築用敷地に供しうるものでなければならないのに、宅地造成等規制法及び建築基準法上の制限事項を確認せず漫然と現地の案内をし、物件説明書でも右制限事頂が付いていないとして売買契約の媒介をしたものと認め、右媒介に過失があり不法行為責任を負うとした事例
不法行為による損害賠償請求訴訟の途中で原告が過失の内容に関する主張を変更した場合において当初の訴え提起による時効中断の効力が新主張に基く損害賠償請求権に及ぶものとされた事例
1 ファイナンス・リース契約について利息制限法1条の適用を否定した事例
2 機械のリース契約において、借主がリース料の支払を1回でも遅滞したときは貸主は通知催告を要しないで
(A)リース料残額全部の即時弁済の請求、
(B)物件返還の請求、
(C)契約の解除と損害賠償の請求、
の全部又は一部ができるとの条項があっても、貸主が右(A)のみを選択して請求している場合は、右条項は公序良俗違反、権利濫用等の一般原則に牴触しない
中小企業等協同組合法(中協法)18条1項に基づく組合員の脱退届(脱退の予告)は、これにより脱退の効力が生ずる以前の段階においては、信義に反すると認められる特段の事情がないかぎり原則として自由に撤回しうるとされた事例
「Y合名会社の社員はA、B、Cの3名であった」旨陳述し、相手方がこれを認めた場合、右陳述は権利自白であるとして、事実自白の撤回の要件の充足を必要としないで、その撤回を許容した事例
文書の一部を抜粋して書証として提出したことが文書の全部を提出したことになるとして残余の部分の提出命令申立てを却下した事例
寄託者発行にかかる荷渡指図書が被指図人から受寄者に交付されても、当然には指図による占有移転があったと認めることはできないとされた事例
店舗の賃貸借契約が期間の中途で合意解約された場合につき、借主は貸主に対し、交付した礼金(権利金)中残期間に相当する部分を不当利得として返還請求ができるとされた事例
染色廃水処理装置建設工事の際発生した排気ガスにより近隣住民に対し急性薬物中毒の傷害を負わせた事故につき、注文者の損害賠償責任が認められた事例
信用保証協会法に基づいて設立された信用保証協会のなす保証については、予め信用保証協会と金融機関との間で定型的な約定書が取り交わされるが、個々の保証契約はこれに基づいて信用保証書が交付されることによって成立するとされた事例
7階建マンションの居住者が隣地の木造家屋取毀し、店舗付マンション新築工事に伴う微塵・騒音・振動による身体的・生活利益の侵害を理由に1人につき10万円の損害賠償を請求したのに対し、身体的被害については因果関係を否定し、生活被害については期間・工法のほか、準商業地域に求められる比較的高い水準の受忍限度を超えていないと判断された事例
盗取された預金通帳と届出印の持参者に対する銀行の預金払戻しが、氏名の誤記と、預入店以外での本支店での払戻額を50万円に限るとする総合口座取引規定に反して50万円以上払い戻した場合であっても、窓ロにおける通常の事務処理の状況に照らし、債権の準占有者に対する弁済として有効とされた事例
合意管轄地と異なる被告の住所地の簡易裁判所に支払命令を申立て、その異議により地方裁判所に訴提起が擬制された場合と管轄違による移送申立の可否(消極)
ニンニクの販売業者が仕入代金を不払したことに関する新聞記事の「クサイ大阪の貿易会社」の見出が不良会社であることを印象づけるとして名誉毀損が成立するとされた事例
公共下水道の排水区域内の土地所有者等を都市計画法75条1項にいう「事業によって著しく利益を受ける者」としてその施設建設費用の一部を負担させる旨の条例を制定し、右所有者等に対し受益者負担金を賦課徴収することが違法とはいえないとされた事例
1 地方自治法179条の専決処分の領域は、議会の議決によらなければ意味がない事項を除き、その議決事項のすべてに及び、給与・報酬の改定を内容とする条例改正にも及びうるとされた事例
2 単に予算が議決されただけで、条例改正がなされていない段階で給与・報酬改定による差額支給を行うことは、地方自治法204条の2、232条の4第2項の規定に違反する違法な支出といわざるをえないが、条例に代わる専決処分の成立によってそれ以降の違法は治ゆされ、残る違法についても改正条例の附則中に遡及適用の定めがあるときは、当然遡って報酬等の受給権が取得され、右公金支出によって地方自治体には具体的な損害はなかったものというべきである
1 人身保護請求事件の手続における被拘束者の代理人の選任権者
2 子の監護に関する審判前の保全処分(子の引渡の仮処分)の新設と人身保護請求
職場外の私的行為(政治活動)としてデモに参加し、その際逮捕、勾留され刑事裁判に付され有罪となったこと等を理由とする通常解雇が有効と認められた事例
急性盲腸炎切除手術に際して実施された全身麻酔の結果、悪性過高熱症に起因する急性心不全により患児が死亡した場合に、右担当医らにつき診療上の過失がないとされた事例
乗合バスがカーブの多い急坂の道路を走行中乗客が乗車ロステップに転落して負傷した事故につき、民法709条、自賠法3条の損害賠償責任が否定された事例
橋の幅員が道路の幅員より狭くなっているため、橋にさしかかる車両が川に転落しないようその誘導を兼ねて設置されたガードレールに、夜間走行中の自動車が衝突した事故につき、自動車の運転者は当時道路管理者が設置していた安全施設、道路標識等をすべて看過して運転したものであるから、橋のかかり口附近に照明等の設備がなかったとしても、道路の管理に瑕疵があるとはいえないとされた事例
裁判上の和解によって形成された面接交渉権の行使が、その後の事情変更により未成年者の福祉を著しく害するに至ったとして、審判で右面接交渉条項を取り消した事例
株式会社の取締役に任務懈怠行為があって取引先の自動車販売会社に対し商法266条ノ3による損害賠償責任を負う場合に、右自動車販売会社が取締役に提起した損害賠償請求訴訟において同社が負担することとなった弁護士費用を右任務懈怠行為と相当因果関係がある損害と認めなかった事例
商品取引員が雇用関係がないにもかかわらず自己の外務員として登録した者の登録を同人に無断で抹消した行為が違法であるとして同人の商品取引員に対する慰藉料請求が認容された事例
有限会社において代表取締役が定められている場合、代表取締役の業務執行に対する他の取締役の監視監督の義務は代表取締役が定められていない場合の取締役に比して原則として大巾に軽減されていることなどから、平取締役の第三者に対する有限会社法30条ノ3第1項の責任を認めなかった事例
約束手形を裏書によって取得した者が、取得の際その手形が強迫により振出されたものであることを知っていたと推認し、振出人の右振出行為の取消を認めた事例
1 国鉄プラットホームでの有価証券在中の小荷物盗難事故につき運送人たる国鉄に重大な過失があるとされた事例
2 有価証券盗難により運送人が賠償すべき損害は、証券に表章された権利の帰属者がこれを確実に回復できるなど特段の事情のない限り権利を喪失したものとして算定すべきとされた事例
3 有価証券の包括運送保険契約が有効に成立したと認められた事例
会社の工場跡地をショッピングセンターとして利用する計画実施が取締役の忠実義務に違反するとして株主からなされた差止請求の仮処分申請が排斥された事例
強姦未遂、殺人被告事件につき、殺人に関し、証明不十分として無罪とした原判決を、被告人両名の捜査段階における自白の信用性に疑いありとして、維持した事例
1 校長の発言が組合をひぼうするものであるなどとして、十数名で校長室に押しかけ、15時間余りにわたって、確認書の署名押印、謝罪文の作成を要求するなどした行為が監禁罪、強要未遂罪に当たるとされた事例
2 校長の発言について教組員らが校長に抗議することが、地公法55条に基づく適法な交渉とはいえず、自救行為にも当たらないとされた事例
仮睡者を狙った窃盗事件が多発している状況下において、警察官が仮睡者を装って横臥中、同警察官のポケットから財布を抜き取ったところ現行犯逮捕された事件について、窃盗既遂罪の成立を認めた事例
密航ブローカーが外国人を不法入国させた際、被告人がその情を知りながら自己所有の船舶を操船するなどして右犯行を幇助した事案について、右船舶に第三者の抵当権が設定されていても出入国管理及び難民認定法78条により右船舶を没収するとされた事例