最も長い歴史をもつ判例実務誌
被告人と犯行とを結びつけるべき客観的証拠等及び被告人の捜査段階における自白の信憑性に疑問がある旨の詳細な職権判断が示され、被告人を真犯人と断定するについては合理的な疑いを容れる余地があるとして一審の有罪判決を破棄し無罪の言渡をした控訴審判決が維持された事例
高校入試の際作成提出された中学校長の調査書(内申書)の記載が生徒の学習権、思想・信条の自由を侵害するものではなく、校長の教育評価権の裁量の範囲内に属する正当な権限の行使とされた事例
青色申告書による法人税の確定申告につき青色申告承認の取消処分後に法人税法57条(昭和43年法律第22号による改正前のもの)の規定による繰越欠損金の損金算入を否認して更正処分がされ次いで青色申告承認の取消処分が取り消された場合に右更正処分の無効確認訴訟において繰越欠損金の損金不算入を無効事由として主張することの可否
所有権移転請求権保全の仮登記の名義人が仮登記と無関係に所有権移転登記を経由した場合と仮登記の本登記請求権及び第三者の右本登記承諾義務の帰すう
非堅固建物の所有を目的とする借地契約において20年に1日足りない期間が定められた場合に借地法2条2項の適用が肯定された事例
1 本邦に不法に入った外国人に対し外国人登録法3条1項、18条1項の適用を認めることと憲法38条1項
2 旅券に代わるべき書面として提出を求める陳述書等に不法入国に関する具体的事実の記載を示唆する等の取扱いのもとにおいて不法入国外国人に対し外国人登録法3条1項違反の罪の成立を認めることと憲法38条1項
映画フィルム貸出業者の居住家屋から出火して隣家を延焼した火災事故につき、出火原因が不明であるとして右居住者の損害賠償責任が否定された事例
共有者を相手として境界確定訴訟を提起した者が相手方共有者のひとりから持分22分の2を譲受けた場合において、自己以外の他の共有者全員が共同訴訟人になっている限り当事者適格及び訴の利益につき欠けるところがないとした事例
当事者が昭和15年10月30日と主張する時効取得の基礎となる占有の開始日を裁判所が同年11月7日と認定しても弁論主義に違反しないとされた事例
真正権利者の真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求の訴については、原告が登記義務者であるとする者に被告適格がある
検察官が告訴事件を不起訴処分にしたため告訴人の起訴への期待が失われたとしても、告訴人は、何ら私法人の権利ないし利益を侵害されるものではないから、不法行為を理由として損害賠償を請求することができないとされた事例
譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴によって一般債権者がした強制執行の排除を求めることができるとされた事例
衆議院議員1人当りの選挙人数の比率が3.88対1となった場合において、これを是正するための法案を提出発議しなかったとしても、内閣の構成員又は国会議員に故意又は過失があったとはいえないとされた事例
公正証書記載の金銭消費貸借が実質上物上保証人に対する事前の求償債務を目的とする準消費貸借であって両者の間に同一性があるとして右公正証書を有効とした事例
建物の短期賃貸借が抵当権者を害することを目的とした詐害的賃貸借であるとして民法395条但書による解除が認められた事例
銀行が預金者の預金残高等を正当な理由がなくして第三者に漏洩することが銀行の守秘義務違反として債務不履行又は不法行為を構成するか(積極)
借地上の建物の増改築、大修繕禁止の特約違反が賃貸人に対する信頼関係を破壊するものでないとして右特約に基づく解除権の行使が許されないとした事例
1 婚姻費用分担義務不存在確認の請求を一部認容した事例
2 夫婦双方からの離婚申立を各認容する一審判決後における婚姻費用分担義務の存否(積極)
指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達した場合における右二重譲受人相互間においては、二重譲受人の一方は他方に対し、互いに平等の割合で譲受債権に対する権利を主張することができるものと解するのが相当であるとされた事例
隣家の旧建物を取壊して新建物を建築した工事により、もともと建て替え時期の到来していた建物が損傷を受け、建て替えの時期を早められたことによる財産的損害を受けた場合において、右損害の算定が極めて困難であって算定不能に等しいとして、これを慰藉料に加えて賠償を命じた事例
偽造文書による登記申請がなされた場合において、事前に、真実の権利者の娘や、別件の詐欺等事件を捜査中の警察官から、登記記入をさし控えて欲しい旨の要請を受けたにも拘らず、登記記入をした登記官に過失がないとして、国家賠償請求が排斥された事例
被保全権利たる土地の所有権を交換契約によってすでに喪失していたにもかかわらず、あえて仮処分申請に及んだとして、故意による不法行為責任が認められた事例
1 鉄筋コンクリート造の高層ビル建築工事により生じた隣接ビルの沈下・傾斜等による損害につき、右工事の下請人の責任を認め、元請人、注文者の責任を否定した事例
2 右損害の算定に際し、当面の具体的被害である雨漏り等の除去に要する費用の賠償は認めたが、ビルの沈下・傾斜自体を回復するのに要する費用の賠償は同程度のビル新築費用を大幅に上廻ること等を理由に認めず、この間の事情を慰藉料で斟酌した事例
酒に酔ってスナックの女経営者に乱暴したため1000万円の損害賠償を支払う旨約した示談契約が強迫によるものとは認められないとされた事例
建物収去、土地明渡を命ずる確定判決に対する請求異議訴訟の提起等が不法行為に該るとして、右訴訟の応訴に要した弁護士費用を損害として賠償を命じた事例
甲地の所有者が甲地と相接する乙地との境界附近にブロック塀を建設した場合につき、ブロック塀が甲地内に存在するとしても乙地の利用が著しく阻害されるなど判示の事情があるときは、右ブロック塀の設置が権利の濫用に当るとされた事例
借地上に存在する賃貸人所有建物についての借地人の使用関係が、土地の賃貸借と不可分一体をなすものであって独立した賃貸借ではないとされた事例
一審裁判所において、被告人の現行犯逮捕手続が現行犯逮捕の要件を欠くという重大な違法があったとして、逮捕によって得られた証拠の排除がなされ、被告人に無罪の言渡しがなされた事件につき、控訴審において、現行犯逮捕の要件が存在したと認定された事件
1 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律1条にいう「飛行場」とは、航空機の離着陸の用に供する目的をもって設置された施設で、現に航空機の離着陸の用に供されているものをいい、航空法の定めるところにより飛行場として供用されているか否かを問わない
2 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律1条の罪は、具体的危険犯であるが、事故発生の可能性ある状態を生じさせれば足り、事故発生の必然性や蓋然性まで必要としない
競売予納金及び競売申立ての嘱託登記につき納める登録免許税の納付による支出は雑所得の金額の計算上これらを納付した日の属する年分の必要経費として算入すべきであるとの主張が排斥された事例
1 刑訴規則62条1項による住居等の届出の意義
2 控訴申立後に所在不明となった被告人に対し、刑訴規則62条1項による届出がなされていたものであると認定し、刑訴法54条、刑訴規則62条1項、民訴法172条を根拠になされた付郵便送達が適法になされたものであると認めた事例
1 刑訴法6条にいう関連事件として移送決定がなされた後、被告人が少年であることが判明して公訴棄却判決がなされても、右移送決定は適法であり、関連管轄は否定されない
2 刑訴法6条の管轄が成立するためには、関連事件について同時審判の可能性があれば足りる
公判手続の更新が行われた旨の記載が公判調書の記載の正確性についての異議申立期間経過後になされた場合には、当該記載については、刑訴法52条の証明力は排斥されるとし、他に公判手続の更新が行われたことを認めるに足る証拠はないとして、右手続違背を理由に原判決を破棄した事例
襲撃計画メモにつき、要証事実との関係から伝聞証拠であるが、表意者の表現時における精神状態に関する供述であるので、反対尋問の方法による正確性のテストを受けなくても、伝聞法則の適用を受けない書面として証拠能力が容認された事例
優生保護法上の指定医師として人工妊娠中絶を行うことを認められている医師につき、業務上堕胎の罪の成立を認めた上、堕胎手術の結果出産した生育可能性を有する未熟児について、保護責任のあることを認め、保護責任者遺棄致死罪及びその後の死体の処置につき死体遺棄罪の成立を認めた事例