最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 警官の大学構内立入の場所及び目的について警官の証言を信用した原審判決に対し、積極的認定を前提とする限り自然で矛盾が少ないとしながらも、合理的な疑問を容れる余地があるとして、くわしい理由を説明した事例 2 事件後18年経過したことを理由に過剰防衛の刑の免除をした事例
1 異常に重い医療業務に起因する慢性的過労状態が重要因子となって冠状動脈硬化症により急性心臓死をとげた国立病院医師の死に公務起因性を認めた事例 2 厚生大臣の国家公務員災害補償法にもとづく「公務上の死亡ではない」との認定、および人事院の同法による同旨の判定が行政事件訴訟法にいう行政庁の処分にあたらないとした事例 3 右各措置の処分性を検討するに当り、それが関係者の実体上及び手続上の権利に及ぼす影響を考慮した事例 4 右人事院判定取消しの訴えが、国に対する災害補償請求の訴えの提起によりその訴えの利益を欠くに至ったと認められた事例 5 会計法31条の消滅時効期間は、国家公務員災害補償法のそれが適応されないときにも適用をみるものであるとした事例 6 人事院に対する不適法な審査申立てであっても同法24条により時効中断の効力を生ずると判定した事例
労働者を北九州市所在の工場から干葉県所在の工場に配置転換する旨の命令が労働契約違反ないし権利の濫用として無効とされた事例
1 不法の原因により贈与した未登記建物の引渡は民法708条にいう「給付」に当るか 2 建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付に当たる場合における右建物の所有権の帰すう 3 前項の場合における受贈者の贈与者に対する登記手続請求の許否
不実の所有権移転登記が所有者の承認のもとに存続せしめられていたものとして民法94条2項を類推適用すべきものとされた事例
1 控訴審における反訴の提起につき相手方の同意を要しないとされた事例 2 組合員の一方が土地(敷地)の使用権を出資し、他方が建物を出資してマーケット式貸店舗経営の共同事業を営む民法上の2人組合において、組合員の一方が脱退した場合における建物敷地使用権の帰趨
1 見習社員と使用者との雇傭契約の法的性質につき判断した事例 2 右契約解釈の要件につき判断した事例 3 見習期間中の労働者の解雇が権利濫用とされた事件
1 国鉄労働者の職務外の非行による有罪判決確定にもとづく懲戒免職が無効と判断された事例 2 国鉄総裁のなす懲戒処分が行政処分でないとされた事例
1 「人間としての基本的なモラルを弁えぬ人物云々」と記載した印刷物を配布した行為により、名誉毀損不法行為の成立を肯定した事例 2 名誉毀損の原状回復処分として謝罪文の交付を命じた事例
不法行為にもとづく損害賠償請求訴訟において、特に一部請求であることが明示されない場合は、審理中拡張された請求部分についても訴提起時に時効中断の効力が生ずる
1 治療費・休業損害につき、遅延損害金起算日と現実発生日の間の中間利息を控除した額が損害とされた事例 2 弁護士費用につき遅延損害金が否認された事例
1 広路優先規定違反車と黄信号無視車との出合頭衝突事故における過失割合 2 事故による長期入院のため1年留年した高校生に対する慰謝料額 3 子の傷害事故に関し親の治療費賠償請求権に対する弁済のうち過払分を子の慰謝料請求権に対する弁済とみることの可否(積極)
1 統制処分たる権利停止処分の効力が司法審査の対象となると判定した事例 2 右処分の無効確認の訴えが権利停止期間徒過のため利益なしとして却下された例 3 違法な統制処分をしたことが不法行為になる として慰藉料1万円の支払を労組に命じた事例
1 日本の会社の委任を受けてニューヨークで業務を遂行したニューヨーク弁護士の報酬請求権に関する消滅時効ないし訴提起期間の性質及びその準拠法 2 弁護士の報酬請求権の訴提起期間を6年とするニューヨーク州法の規定はわが国の公序良俗に反するか(消極)
1 昭和25年神奈川県条例69号、昭和25年東京都条例44号各5条と憲法31条 2 本件条例3条にもとづき公安委員会の付した許可条件中に一部違憲無効のものが混在する場合、許可条件全体の効力
1 不動産侵奪罪の成立した事例 2 封印破棄罪において「その他の方法を以って差押の標示を無効たらしめた」場合にあたらないとされた事例
1 道路交通法2条1号にいわゆる「一般交通の用に供するその他の場所」にあたるとされた事例 2 交通整理の行なわれていない見とおしのきかない交差点に広路から進入する自動車運転者に対し徐行、一時停止義務を認めた事例
1 承継的共同正犯において、後行者に承継前における先行者の行為について認識・認容がなかったとして後行者については承継後におけるもののみについて刑責を認めた事例 2 軽い上皮剥脱は強姦致傷の致傷にはあたらないとして強姦罪のみを認めた事例
1 現在行われている競売公告の方法の適法性 2 競売公告に前年度の公租公課を公告した場合に適法な公告となるか 3 利害関係人に対する競売通知書に記載すべき事項
1 眼の角膜障害を受けた子の両親の慰藉料請求が認められなかった事例 2 仮差押の本案判決で被保全権利の存在が否定されたが不当仮差押による損害賠償請求が認められなかった事例
建造中の船舶に対し抵当権設定仮登記手続をするにつき建造者の証明書の添付がなかつたとしても、登記抹消の事由とはならないとされた事例
囲碁家元の跡目相続に関し、家元の相続人または未亡人が跡目を指定したり、あるいはその同意がなければ名跡を継ぐことができないとする慣習は認められないとされた事例
交通事故の被害者となったダンス教師につき、治療を怠り、その主宰するダンス学院の経営不振を防止する措置を怠り、損害を増大させたとの加害者側の主張を、そのような事実はない旨認定したうえ斥けた事例
1 先行の貨物自動車が減速したのを停車措置と軽信し、これを追抜こうとして、その左後方にて、予想に反し左折し始めた先行車と衝突するに至った原付自転車運転の被害者の過失を20%とみた事例 2 職業をもつ近親者が付添看護した場合の損害を休業したことによる逸失利益損害としつつ、これを被害者自身の損害として請求しうることを肯定したが、その損害は職業付添人の付添料を標準とすると判示した事例 3 既払の自賠責保険金は過失相殺を考慮せず支給されているから、これにより填補されている損害である治療費・看護料・休業補償費については過失相殺はできない旨の原告の主張を斥けた事例 4 弁護士費用の遅延損害金を事故日より認容した事例
1 車の前方に犬が飛び出し、急ブレーキをかけたところ、乗客が運転席後部の防犯ガラスに顔面をぶつつけむち打ち症となった事件において、運転手が無過失であったとは認められないとし、運行供用者に賠償を命じた事例 2 被害者に空洞ある肺結核があることを考慮し、事故による労働能力喪失期間を復職後5年とした事例
1 事故時の車の運行は所有者の予想できないところではなかったとし、所有者の従業員の慰安旅行の帰途、当初使用が予定されていなかった所有者の車による事故につき、運行供用者責任を肯定した事例 2 運転者が酩酊しているのを知りながら同乗した被害者の過失を20%とみた事例
従前より夫の営む材木商の手伝をなし、夫が手形不渡をだし経営に行き詰りをみせたときは一時営業名義人にもなったことのある妻名義の右事業のための車の事故につき、妻に運行供用者責任を認めた事例
1 交差点における、明らかな広路進行車と、狭路を進行して、右折しようとした車の衝突事故につき、広路進行車側の免責の主張を斥け、過失割合を40%とした事例 2 事故時酒類等の販売店経営名義者ではあったが、事実上経営は娘婿らにまかせていた被害者につき、労働能力喪失による逸失利益損害はないとした事例
1 増改築許可に伴う付随処分として、更地価格の3%にあたる金銭の支払いを命じた事例 2 右認容の裁判と借地法7条の異議権
1 取締役九州支社長が商法42条の使用人に当るとされた事例 2 旧手形を併合して振出された書替手形と旧手形間の法律関係
「ゴルフクラブヘッド」に関する実用新案登録願について、拒絶理由とされた引例のものと構造も作用効果も異なるとして、拒絶相当とした審決を取り消した事例
「空気調整方法」に関する特許出願について、引用例には、進入空気の熱含量によって空気速度を制御する技術思想が示されていないとして、拒絶を相当とする審決を取り消した事例
「ゴルフ練習用球台」に関する登録実用新案について、その構成の各要件のそれぞれについても、またその組合わせについても格別の作用効果なし、として登録を無効とするのを相当とした事例
1 不正競争防止法による保護を受けるためには、商標として登録を受けうべきものであることを要しない 2 「長崎タンメン」という即席ラーメン発売ののちに他人から発売された「ゴールド長崎タンメン」という商品は前者の商品と混同を生じないとの主張が排斥された事例
「コンベヤー用計量機」に関する特許出願について、計量上の誤差を少なくするための公知の装置を設けたものであり、それ以上に特段の作用効果なしとして拒絶相当とする結論を是認した事例
「クロムメッキ方法」に関する特許出願につき、拒絶理由である引用例におけるクロム酸と全触媒濃度比の認定を誤まったとして審決を取り消した事例
「堅向自動溶接法」という特許発明につき、その無効理由として、引用例に挙げられた金属製のブロックとは物自体としては相違しても、当業者にとっていずれを使用するかにさしたる困難もないとして無効相当の結論を是認した事例
「手鏡」に関する登録実用新案の無効審判の請求審判の請求を排斥した審決が、引例から容易に実施できるとした無効理由についてその判断を誤ったとして取り消された事例
「船舶建造の方法」に関する特許出願について、引例のものが出来上った船体を横方向に移動させるのに対し、本願のものが船体を縦方向へ移動させるものとの相違点を認め、引例から容易に考えられるとした審決を取り消した事例
「GOLF」という商標が特定の商品について永年使用による特別顕著性を取得したとしても包括的な商品を指定して登録を求めている以上、登録は拒絶されるべきである
「編物機及びメリヤス編機における針筒釜及びリップニードル釜の調整のための調節ねじ」に関する特許出願について、相付属する2つの調節ねじの4つの目盛を一覧できる方向に位置するよう設けることは公知技術を参酌すると設計上の事項であるとして拒絶相当とした審決の結論を是認した事例
「編物機械及びメリヤス編機における糸の供給装置」に関する特許出願について、周知技術を参酌し、回転子が固定子を壷状に包むようにし、回転子をロールとすることは当業者の容易に考えうる程度のものとし、拒絶相当とした審決の結論を是認した事例
運動具について「プリンスチャンピオン」という商標登録出願に関し、既登録商標「チャンピオン」をもって登録を拒絶するのを相当とした事例
「アミノ酸の製造法」に関する特許出願について、引用文献に示された見解には有力な反論があっても決定的なものではないとして、右見解が本願発明の内容を示唆するものではないとの主張が排斥された事例
旧特許法下における「非水溶性モノアゾ染料の製法」に関する特許出願について、出願人が訂正命令を発することを求めたのに対し、その必要なしと判断したことが裁量権の行使を誤ったものではないとした事例
「継電器」に関する実用登録出願に関し、その拒絶査定不服審判の手続において、審判請求前にした補正の却下決定を違法として取り消した事例
「模造又は人造真珠色特殊塗料の製造法」に関する特許出願について拒絶査定不服抗告審判の審決に対する出訴期間中にされた再審請求が不適法として却下するのを相当とした事例
「オレフィン類の酸化法」に関する特許出願について、引例のものの収率が55~65%であるのに対し、本願のものが64.5~67%であるとすれば、直ちに容易に実施しうるものと断じえないとし、拒絶相当との審決を取り消した事例
1 妻子のあることを知りながらその男性と不倫な関係を深め、その妻子に影響を及ぼさずには措かない非嫡出子を分娩することは、その男性が妻に、対し負っている守操義務・健全な家庭生活の育成に努むべき義務の違反に加担した権利侵害であって、相手方の妻に与えた精神上の苦痛に対し慰藉料を支払うべき義務がある 2 女性が一旦懐妊すれば正当な事由のないかぎり堕胎することは法の許さないところであるが、妊娠するかどうかは母親の責任において支配できるところであるから、非嫡出子の母が父に対し認知を求めることは、父の妻に対する不法行為の原因となりうる
1 協議又は審判によって定められた婚姻費用分担義務は、継続的法律関係であり、しかも夫婦間の、またこれらの者と一般社会経済との相関関係において定められたものであるから、事情変更があった場合には右協議又は審判を取消又は変更する審判をすることができる 2 婚姻費用分担に関する協議又は審判の事情変更に基づく取消・変更は、協議又は審判のあった後に、その基準とされた事情に変更が生じ、従来の協議又は審判の内容が実情に適合せず不公平なものになった場合にかぎられ、右額決定に際し当事者においてすでに判明していた事情ないし、予見し得た事情を理由としてその変更を主張することはできない
婚外子の氏を父の氏へ変更するにつき、本妻の異議の如きは、その許否の唯一絶対の要件とすべきではなく、正当婚家庭成立の事情、家族構成、その破綻の事情、また婚外子の家庭の家族構成、父との結合関係、生活状況などとともに、一事情として斟酌すれば足りるものであって、婚外子(25歳)の父の正当婚家庭においてその嫡出子らはすでに独立してそれぞれの生活を営むに到っており、婚外子が父の戸籍に入ったからといって社会生活上特段の不利益を蒙ることは考えられず、又婚外子の父の本妻との婚姻関係は既に崩壊に瀕している状況であるなど判示事情のもとにおいては、申立人の氏を父の氏へ変更することの許可するのが相当である
1 配偶者の一方に著しい非行がある場合、被相続人たる配偶者が相手方の非行を請求理由に離婚するか、または推定相続人の廃除を請求するかは当該配偶者の自由であり、むしろ、夫婦関係は継続しながら、相手方の相続権のみを剥奪しておこうとするところに配偶者たる推定相続人に対する廃除を認めた法の趣旨があるというべきである 2 配偶者に対する推定相続人廃除の請求につき、廃除の原因として主張された事実が、たまたま離婚原因にも当るとしても、被相続人たる配偶者が離婚を請求せず、相続人の廃除を求めて裁判所にその申立てをしたときは、裁判所は夫婦間における離婚原因の有無にかかわることなく、当該廃除の申立についてその当否を審理判断すべきである
土地および建物につき、原審判時より約1年前になされた鑑定評価額を基準とした遺産分割審判を、鑑定時と原審判時の間で少なからぬ価格の変動があったものと認められるとして取消し、宅地につき、10パーセントの増額、建物につき残存耐用年数1年減、減価率2パーセント増の修正を加えたうえ自判した事例
遺留分放棄の許可は、その理由とした事情が明らかに変更したため実情に適しなくなり、かつ申立人が放棄意思をひるがえしている場合においては、相続開始前であればこれを取消すことができる
特別縁故者への相続財産分与事件において、「相続財産全部を付与する趣旨であるのに客観的にはその一部を与える審判がなされ、残余財産の存在することを裁判所において認識していなかった場合には、右残余財産は未だ国庫に帰属しておらないで、民訴法195条1項を類推し、その財産につき、更に追加して分与の審判をすることができる
オランダ法上の養子決定も日本法上の許可審判も未成年者の福祉および実体法上の縁組要件を審査する機能を営む点において手続法類似性をもつから、オランダ法の要求する養子決定はわが国家庭裁判所の許可審判をもって代用しうる
特定の寺の住職として寺を管理・運営するのではなく、いわゆる在家出家と称され、僧侶となっても日常生活・社会生活上何ら具体的な変動はない等判示事情のもとでは、戸籍法107条にいう正当な事由があるとは認められない
離婚後親権者たる韓国人父が服役中のため、その子(韓国人)に対し親権を行使できない場合、未成年者に他の直系血族がないときは、母は再先順位の法定後見人となるから、裁判所による後見人選任の必要はない
1 人訴法1条1項は称氏者の住所が通常夫婦の共同生活体の本拠であるとの立場を前提としたものと解されるから、称氏者のない場合でも夫婦共同生活体の本拠が存すると認められるときは、その地をもって土地管轄決定の基準とすべきである 2 カナダ、ブリテッシュ・コロンビア州で行なわれている国際私法の原則によれば、離婚の準拠法は夫の住所の存する法廷地法とされているところ、夫婦の共同生活地は日本にあるが、永住する確定的意思を有するか否か明らかでない等判示認定事実のもとでは、夫の本国法上の選択住所は日本にないとして、反致を認めず夫の本国法により離婚判決した事例 3 離婚の際の子の親権監護者指定に関する法律関係は、離婚を契機として生じた新たな親子間の法律関係と解しうるから、法例20条により父の本国法を適用すべきである