最も長い歴史をもつ判例実務誌
女性労働者につき妊娠中の軽易な業務への転換 を契機として降格させる事業主の措置の,「雇 用の分野における男女の均等な機会及び待遇の 確保等に関する法律」9 条 3 項の禁止する取扱 いの該当性
1 確定判決により干拓地の潮受堤防の排水門 を開放すべき義務を負った者が第三者の申立て に基づく仮処分決定により上記排水門を開放し てはならない旨の義務を負ったという事情があ る場合における上記確定判決に基づく間接強制 決定の許否(①事件)
2 仮処分決定により干拓地の潮受堤防の排水 門を開放してはならない旨の義務を負った者が 第三者の提起した訴訟の確定判決により上記排 水門を開放すべき義務を負っているという事情 がある場合における上記仮処分決定に基づく間 接強制決定の許否(②事件)
共同企業体を請負人とする請負契約における請 負人「乙」に対する公正取引委員会の排除措置 命令等が確定した場合「乙」は注文者「甲」に 約定の賠償金を支払うとの約款の条項の解釈
共同相続された委託者指図型投資信託の受益権 につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配 金が発生し預り金として上記受益権の販売会社 における被相続人名義の口座に入金された場合 に,共同相続人の 1 人が自己の相続分に相当する金員の支払を請求することの可否
公序良俗に反する無効な出資と配当に関する契 約により給付を受けた金銭の返還につき,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として 拒むことは信義則上許されないとされた事例
1 刑法 175 条 1 項後段にいう「頒布」の意義
2 顧客のダウンロード操作に応じて自動的に データを送信する機能を備えた配信サイトを利 用してわいせつな動画等のデータファイルを同 人の記録媒体上に記録,保存させる行為と刑法 175 条 1 項後段にいうわいせつな電磁的記録の頒布
傷害致死の事案につき,懲役 10 年の求刑を超えて懲役 15 年に処した第 1 審判決及びこれを是 認した原判決が量刑不当として破棄された事例
大規模な金融機関である第三債務者の具体的な 店舗を特定することなく,債務者が第三債務者 に対して差押命令送達の日の 7 日後に有する預 金債権のうち,複数の店舗に預金債権があると きは,差押命令送達の時点で預金債権額合計の 最も大きな店舗の預金債権を対象とする債権差 押命令の申立てが,差押債権の特定を欠き不適 法であるとされた事例
いわゆる悪質商法の主体である法人の代表者が 整理屋グループと組み詐害目的での資産移転行 為をしたものの事後的に破産管財人の調査に協 力した場合における裁量免責の可否
1 民法 880 条にいう「事情に変更を生じたとき」に該当するとした事例
2 抗告人(原審申立人)が高額所得者であり, 同人や相手方(原審相手方,抗告人の元妻)の 再婚,養子縁組や新たな子の出生等の事情があ る場合において,いわゆる標準算定方式による 算定を行った上で,諸般の事情を総合考慮し て,未成年者一人当たりの養育費を減額した事 例
婚姻費用の分担金の算定に当たり,相手方(原 審相手方)の収入に海外駐在給与を加算するの が相当であるとして,婚姻費用の分担金の増額 を認めた事例
非公開会社の株式について,同会社は典型的な 同族会社であり,その経営規模からすれば,経 営の安定のためには,株主の分散を避けること が望ましいという事情があり,このような事情 は,民法 906 条所定の「遺産に属する物又は権 利の種類及び性質」「その他一切の事情」に当 たるとして,相続人の一人に同株式を単独取得 させるとともに,他の相続人らに対して代償金 を支払わせることとした事例
特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人が その申立て後に死亡し,相続人のあることが明 らかでないとして相続財産法人が成立した場合 には,当該相続財産法人が申立人の地位を承継 したものというべきであるとして,申立人の死 亡により上記申立て事件が終了したと判断した 原審判を取り消し,原審に差し戻した事例
認知症の高齢者を養親とする養子縁組につい て,縁組当時,同人の意思能力又は縁組意思が なかったと認めることは困難であるなどとし て,養子縁組無効確認請求を認容した原判決を 取り消し,請求を棄却した事例
原告らの代理人である弁理士らにされた拒絶査 定の謄本のオンライン送達が,代理人弁理士の 意思能力の欠如等により無効であるとして,請求期間経過を理由に拒絶査定不服審判請求を却 下した審決が取り消された事例
被告標章(後掲)とカタカナの標準文字で「ナーナニーナ」と一連に横書きしてなる本件 商標とが類似する等として,被控訴人(被告) による商標権侵害を肯定し,これを否定した原 判決の一部が変更された事例
商品の名称や構成,販売時の広告態様,当該商 品及びこれと同種の商品についての使用状況や これから推認される取引者及び需要者の認識等 に照らし,装飾品の鎖部分などに付ける飾り「ロゴチャーム」について,おしゃれを目的と して使用される装飾品である「身飾品」にも該 当するとされた事例
発明の名称を「レーザーによつて材料を加工す る装置」とする特許権に基づく製造販売禁止等 請求控訴事件について,構成要件該当性が肯定 され,かつ,特許法 104 条の 3 の抗弁について, 訂正による対抗主張が認められるとして,構成 要件該当性を否定した原判決が変更された事例
固形潤滑剤等を指定商品とし,「SUBARIST」 及び「スバリスト」の文字を上下二段に横書き して構成された商標は,自動車等を指定商品と し,自動車のブランド名でもある「スバル」の 文字から構成された商標等との関係で,混同を 生ずるおそれがある商標(商標法 4 条 1 項 15 号)に該当する
刑法 20 条の適用については,同法 19 条により 犯罪行為ごとに没収事由の有無が検討された上 で,その罪について同法 20 条が適用されると 解するのが条文の文言上も素直な解釈であり, その適用を受ける罪については,同条が適用さ れない罪と科刑上一罪の関係にある場合にも同 条が適用されると解するのが相当である
抵当権設定時には対象建物が建物としての独立 性を有していなかったことが担保不動産競売手 続中に判明した場合に民事執行法 53 条を類推 適用して対象建物に対する競売手続を取り消し た事例
1 ウレタン性断熱材が吹き付けられた鉄骨を 切断するために行ったアセチレンガス溶断作業 により火災が発生したことにつき作業者の重過 失を認めた事例
2 震災により被災した倉庫の時価につき算定した事例
建築現場において電気工事に従事していた作業 員が,悪性胸膜中皮腫に罹患し,死亡した場合 において,被告には,上記作業員を従業員又は 下請業者として作業させるに当たり,石綿等の 粉じんの曝露による健康被害防止措置を講じな かったことにつき,安全配慮義務違反が認めら れるとして,損害賠償責任を認めた事例
1 一過性脳虚血性発作(TIA)を看過し適切 な処置を講じなかったことについて,開業医の 注意義務違反が認められた事例
2 上記の注意義務違反と後遺障害との間の因 果関係を否定したが,後遺障害が残らなかった 相当程度の可能性の侵害があったとして,慰謝 料が認められた事例
依頼者から訴訟代理を受任した弁護士の善管注 意義務,忠実義務及び誠実義務違反を理由とす る委任契約の債務不履行に基づく損害賠償責任 が否定された事例
1 出産の約2時間後に児に生じた呼吸停止の 原因が,出産直後から実施されたカンガルーケ ア(早期母子接触)に起因する低体温によるも のであるとする原告らの主張が排斥された事例
2 出産の約2時間後に児に生じた呼吸停止の 原因につき,母親の乳房により窒息した可能性 があるとしながら,病院側に授乳の際における 児の鼻腔の閉塞による窒息を防止すべき義務が あるとはいえないとされた事例
3 被告病院において,1人の母親に1人の助産 師等の付添いを義務化することは現実に不可能 であったこと,分娩後助産師は分娩室におり, 約1時間の間児に格別の異常が見られなかったことから,授乳を開始した上で,分娩の約 1 時 間半後に夜勤への引継ぎのために分娩室から離 室したことなど判示の事情の下では,その後も なお医療者による経過観察をすべき義務があっ たとはいえないとされた事例
1 弁護士法及び弁護士の報酬に関する規程上 弁護士に依頼者との間での委任契約書の作成義 務が存するとしても,認定された事実関係の下 では契約書が作成されていないことが委任契約 の成立自体には影響を与えないとされた事例
2 弁論準備手続終了後の新たな攻撃防御方法 の提出が,認定された事実関係及び具体的な訴 訟経過の下では時機に後れた攻撃防御方法とし て却下すべきとまでは認められないとされた事 例
1 厚生年金基金から私募不動産ファンド特化型 の単独運用指定金銭信託を受託した運用受託機 関につき,当該厚生年金基金の基金資産全体に 対する分散投資についての助言義務及びそれに 基づく受託拒絶義務がいずれも否定された事例
2 厚生年金基金から私募不動産ファンド特化 型の単独運用指定金銭信託を受託した運用受託 機関につき,当該厚生年金基金に対する私募不 動産ファンドに関するレバレッジリスクの説明 義務が否定された事例
馬券購入行為から生じた所得は,原則として, 一時所得に該当するが,本件の馬券購入行為に ついては,回数,金額が極めて多数,多額に達 しており,その態様も機械的,網羅的なもので あること等から,これにより生じた所得は雑所 得に該当し,外れ馬券を含めた全馬券の購入費 用等が必要経費に当たるとした事例
最後に親権を行う者が遺言により未成年者後見 人の指定を行っている場合であっても,生存親 は,最後に親権を行う者から自身への親権者変 更を求めることができるとして,親権者を生存 親である申立人に変更した事例
道路交通法違反保護事件により保護観察決定を 受けた少年について,身代わり犯人であったこ とが判明したため,当該決定を取り消すととも に,同事件につき不処分とした事例