最も長い歴史をもつ判例実務誌
[解 説]
1 本判決の意義
本件は高等海難審判庁の裁決の取消訴訟である(平成20年法律第26号による海難審判法の改正により海難審判庁は海難審判所に改組されたが,本件には改正前の規定が適用される。)。その内容は判決要旨に示されているとおりであり,船長である海技士を戒告とした裁決を適法とする...
[解 説]
1 本件は,構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保権,いわゆる流動動産譲渡担保権の担保権者であるXが,譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,担保の目的である養殖魚の滅失により譲渡担保権設定者であるYが取得した共済金請求権の差押えを申し立てた事案である。
すなわち,魚...
[解 説]
1 本件は,電気通信事業者であるXが,光ファイバ設備を用いた戸建て住宅向けの通信サービス(以下「FTTHサービス」という。)の提供に際し,平成14年6月から同16年3月までの間(以下「本件行為期間」という。),自前の光ファイバ設備を保有せずに他社の設備を利用して電気通信事業を行う...
[解 説]
1 本件は,行政書士でない被告人が,行政書士である共犯者らと共謀の上,合計6名からの依頼に応じて,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」である家系図合計6通を,報酬を得て作成し,業として行政書士の業務を行ったものとして,行政書士法違反に問われた事案である。
事実...
[解 説]
1 本件は,検察官が,控訴棄却判決の言渡しを受けて保釈が失効した被告人(被請求人)が判決確定前の時期(上告中の時期)にのみ逃亡していたことを理由として,刑訴法96条3項を根拠に,その当時事件記録を保管していた最高裁に保釈保証金の没取を請求した事案である。
本件の経過は以下のとお...
[解 説]
1 事案の概要
本件(東京高裁平22(行ケ)第15号,第16号選挙無効請求事件)は,東京都選挙区及び神奈川県選挙区の選挙人である原告らにおいて,平成18年法律第52号によって改正された公職選挙法(昭和25年法律第100号)14条,別表第三及び同法附則による選挙区及び議員定数の規...
[解 説]
1 Xは,昭和45年4月に司法修習を終えた後,日弁連の弁護士名簿に登録され,大阪弁護士会に弁護士として入会したが,平成10年12月に自ら行った登録取消請求によって弁護士名簿の登録を取り消され,その後,破産宣告を受けた元弁護士である。
Xは,平成15年12月に破産廃止決定(いわゆ...
[解 説]
1 Xは,平成20年6月当時,町立中学校の教諭であり,同校の陸上部の顧問を務めていた者であるが,同月11 日,同校陸上部に所属する女子生徒に対して,本件セクハラ行為を行ったとして,本件懲戒免職処分を受けた。
そこで,Xは,本件懲戒免職処分には事実誤認の違法があるとし,Y(県)に...
[解 説]
1 本件の概要
Aは,自己所有の土地上に賃貸マンションを2棟建築するよう,Y(建物設計企画業者)に依頼し,Aを注文者・Yを請負人とする建築工事請負契約を締結した。Yは,工務店Xとの間で,Yを注文者・Xを請負人とする建築工事請負契約を締結した。AYの間では,建築確認を取得した後こ...
[解 説]
1 本件は,コンビニエンスストアーのフランチャイジーである原告が,フランチャイザーである被告に対し,フランチャイズ契約締結時における説明義務違反を理由とした債務不履行に基づく損害賠償及び契約書中の条項(解除による損害賠償額を定めたもの)に基づく損害賠償として約2100万円及びその...
[解 説]
1 Xらは税理士であるが,通信機器の販売会社Aの従業員らを通じてリース業者であるYとの間で,X1について平成17年9月13日に電話機(X1契約)の,X2について平成15年9月25日に電話機(X2第1契約)及び同年11月6日にファックス(X2第2契約)の,リース契約をそれぞれ締結し...
[解 説]
1 本件事案の概要は次のとおりである。(なお,略称は,本判決の例による。)
控訴人は,貸金業者であったA及びAから債権譲渡を受けた被控訴人から継続的に金銭の借入れ及び返済(本件取引)を繰り返してきたが,本件取引を利息制限法所定の制限利率に引き直し計算をすると過払になっているとし...
[解 説]
1 事案の概要
本件は,Xが,Yの発行する週刊誌に記事及び写真を掲載されたことによりプライバシー権及び肖像権を侵害されたと主張し,Yに対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
Xは,いわゆる「ロス疑惑」(昭和56年11月18日に米国ロサンゼルス市内で起きた銃撃殺人事...
[解 説]
1 Yは,菓子の製造,販売等を業とする株式会社であるところ,平成17年2月から,平成20年6月まで京都市南区A町所在の工場において,操業を行ってきたが,その近隣に居住する住民Xらが,前記操業による騒音及び悪臭によって,精神的損害又は財産的損害を被ったとし,不法行為に基づき,Yに対...
[解 説]
1 訴外Z(昭和50年生)は,平成15年7月から,Y1法人の設置するA病院に通院して治療を受け,同年8月27日にA病院に入院し,同月30日,開腹手術を受けたが,同年10月18日,死亡した。
そこで,Zの遺族であるXらは,A病院の勤務医であったY2は,必要な検査を実施したり,転科...
[解 説]
1 本件は,A(当時84歳)の成年後見人Xが,Aを養親とし,Aの孫であるY(当時23歳)を養子としてなされた養子縁組(以下「本件養子縁組」という。)について,Aの縁組意思はなかったと主張して,本件縁組の無効確認を求めた事案である。
2 本判決の認定した事実は,次のとおりである。...
[解 説]
1 原告会社と被告大学は,原告A,被告B,被告Cらを研究員として,抗体開発に係る共同研究を行っていたところ,その過程で得られた有望な抗体について,原告会社は,原告Aら(被告B・Cを含まない)を発明者として,単独で特許出願を行い(原告会社出願),被告大学は,被告B・Cを発明者として...
[解 説]
1 事案の概要
原告は,「弾性ラミネート構造体とその製造方法」との名称の発明(本願発明)に係る原告の特許出願に対する拒絶査定を不服として審判請求をしたが,特許庁は,同請求は成り立たないとの審決をした。
本件特許出願においては特許請求の範囲の記載について補正されていたため,本件...
[解 説]
1 本件は,抗告人(申立人)が,第三債務者に対して有する複数の保険契約に基づく配当金請求権,解約返戻金請求権,満期金請求権(以下,これらの請求権を「配当金等請求権」という。)につき,抽象的に契約日順等での特定をし,順位付けをした上で(その詳細は決定文及び同添付の差押債権目録を参照...
[解 説]
本件は,併合罪中の自動車運転過失致死の事件において犯人性が争われた事案である。
本件の概要は次のとおりであるが,判文の第3の3「本件の概要」においても簡潔にまとめられているので参照されたい。
被告人は,長女の春子(当時15歳),二女の夏子(当時12歳)及び三女の秋子(当時2歳...
権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が、当該社団の構成員全員に総有的に帰属し、当該社団のために第三者がその登記名義人とされている不動産に対して強制執行しようとする場合における申立ての方法
不動産引渡命令の申立てに弁護士法72条及び民事執行法13条を潜脱する違法があるとして、不動産引渡命令を取り消した事例
担保不動産収益執行手続が開始されている不動産について担保不動産競売の開始決定前の保全処分の申立てがされた場合に、担保不動産収益執行事件の管理人に使用を許すことを命ずることはできないとして、当該部分に対応する申立てを一部却下した原決定が維持された事例
無剰余であることを理由に強制競売手続が取り消されても、抗告審において優先債権者の同意を得たことが証明されるに至った場合には、強制競売手続を取り消す必要がないとして、原決定が取り消された事例
現況調査報告書及び評価書に目的不動産がシロアリ被害を受けている旨の記載がない場合において、当該損傷が軽微であるといえるかどうかを判断するために、売却許可決定取消申立てを却下した原決定を取り消して、事件を原審に差し戻した事例
買受けの申出をする前に不動産が損傷した場合に民事執行法75条1項が類推適用されるのは、買受人が買受けの申出前に損傷の存在を知り得なかった場合に限られ、評価書における記載から、買受人は当該事実を知り得たものとされた事例
物件明細書中の「買受人が負担することとなる他人の権利」の欄において、賃借人として記載された法人と同一商号の法人が複数存在していたとしても、本件における物件明細書の記載のほか、評価書の記載も合わせれば、当該売却物件の権利関係に影響を及ぼす情報の提供としては十分であり、本件物件明細書の記載に重大な誤りがあるとはいえないと判断された事例
建物所有者に対する底地所有者の建物収去土地明渡請求が第1審で認容され、当該訴訟が控訴審に係属中である場合に、これを踏まえたものとして、当該建物の強制競売事件における物件明細書の記載や売却基準価額決定の基礎となった評価額の算定に誤りはないとして、売却許可決定に対する執行抗告が棄却された事例
同一申立てに係る担保不動産競売事件において、対象物件を二つの売却単位に分けて売却を実施したことについて売却の手続に重大な誤りがあるとはいえないとして、売却許可決定の取消しが認められなかった事例
民法395条2項所定の使用対価を元所有者又はその管理者に支払ったとしても、対象建物の引渡猶予を受けることはできないとされた事例
不動産競売開始決定を原因とする差押登記後に抵当建物を賃借して占有を開始した者は、基本事件に関わる事情を知らない善意の第三者であったとしても、建物明渡猶予制度による保護を受けることはできないとされた事例
平成15年法律第134号の附則第5条が定める経過措置の適用を受ける賃貸借が、改正法施行後に開始された不動産競売開始決定を原因とする差押登記後に期間満了により更新されたことから、賃借人が、当該更新を抵当権者に対抗できず、抵当権者に対抗できない賃貸借により抵当建物を使用することになったとしても、現在の民法395条が規定する建物明渡猶予制度の適用を受けることはないとされた事例
1 担保不動産収益執行開始決定の効力により管理人が取得する権限
2 担保不動産収益執行開始決定の効力発生後における担保不動産の賃借人による抵当権設定登記前に取得した賃貸人に対する債権と賃料債務との相殺の可否(積極)
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律95条所定の船舶先取特権に基づき貨物船の船舶競売が申し立てられた事案において、船舶先取特権の存在を証する文書の提出がないとして当該申立てを却下した原決定が維持された事例
承継執行文付与の要件である承継事由の欠缺や差押債権の不存在又は消滅は、債務名義に基づく債権差押命令及び転付命令に対する執行抗告の理由とはならないとされた事例
債権に対する仮差押えがされても、当該仮差押債務者は、被仮差押債権を請求債権として、その債務者である仮差押えの第三債務者が有する債権につき差押命令を申し立てることができるとされた事例
いわゆる定額給付金の給付を受ける権利を差押債権とする債権差押命令申立事件につき、同債権は性質上差押えができない債権であるとして申立てが却下された事例
動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使としての債権差押命令の申立てに当たり、担保権(動産売買の先取特権)の存在を証する文書が提出されたとは認められなかった事例
雇用関係の先取特権に基づく債権差押命令の発令において、被担保債権及び請求債権から所得税等の税金や社会保険料を控除する必要はないとされた事例
喪主として葬儀社と葬儀に関する契約をした抗告人が、葬儀社に支払った費用につき、死者又はその相続人に対し葬式費用の先取特権を有しているということはできないとされた事例
地方公務員が給与債権の差押えを受けた場合において、差押額を引いた残額から償還金(共済組合からの借入金返済金)が控除されていることは、差押禁止の範囲の変更に係る民事執行法153条1項の「債務者の生活の状況その他の事情」として考慮できないとされた事例
債権者が債務者の預金債権を差し押さえ、債務者から差押範囲の変更が申し立てられた場合において、当該預金債権はそのほとんどが国民年金及び老齢年金の給付を原資としていたものの、差押範囲の変更が否定された事例