最も長い歴史をもつ判例実務誌
[解 説]
1 事案の概要
(1)事案の骨子
本件は,平成21年8月30日に施行された衆議院議員総選挙(本件総選挙。以下,本判決の略語表に従った略語を用いる。)につき,いわゆる投票価値の不平等(一票の較差)が違憲であるとして,当該選挙を無効とすることを求めた事案である。
(2)選挙制度...
[解 説]
1 本件は,軽油の製造をしてこれを他の者に譲渡したとして,旧地方税法700条の4(現144条の3)第1項5号(本件規定)に基づき,Yから軽油引取税に係る課税標準量,税額及び不申告加算金額を決定する処分(本件処分)を受けたXが,その取消しを求めている事案である。
2 Xは,石油類...
[解 説]
1 函館市では,地方自治法100条14項(本件当時は13項)の規定を受けた市の条例に基づき,政務調査費を,毎年,議会の会派に対して交付している。本件は,同市の議会の会派による平成16年度の政務調査費の支出が違法であるとして,同市の住民が提起した住民訴訟である。同市の議会の会派によ...
[解 説]
甲事件は,Z社が,自らが建築主となったマンションについて,A一級建築士が構造計算書上の耐震強度を故意に偽装したために法定の耐震強度を有しないマンションが建築されたことに関して,建築基準法所定の確認に関する事務をつかさどる建築主事が置かれた地方公共団体である各自治体を被告として,違...
[解 説]
1 事案の概要
名古屋市においては,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(以下「本件条例」という。)を定め,会派は,政務調査費として月額55万円に所属議員の数を乗じて得た額の交付を受け,前年度の交付に係る政務調査費についての収支報告書を毎年4月末日までに市議会議長に提出し,議...
[解 説]
1 事案の概要
信用金庫であるYの従業員であるXらは,以前,権限なく,Y管理に係る顧客の信用情報が記載された文書を取得し,外部者に提供したこと等を理由として,Yから懲戒解雇(本件各解雇)されたものの,YのXらに対する本件各解雇の無効を確認する判決が確定したことから,Yに本件各解...
[解 説]
本件第1事件は,衣料品小売り等を目的とする株式会社であるX社の提起した中央労働委員会命令の取消訴訟であり,本件第2事件は,Xのパート従業員であるAが加入したZ組合の提起した同命令の取消訴訟であって,これらの事案の概要は以下のとおりである。
Xにおいては,パート従業員は休暇取得の...
[解 説]
1 本件は,インターネット専業の証券会社であるXが,多額の損失が発生した株式信用取引(以下,「本件取引」という。)が行われた株式信用取引口座(以下「本件口座」という。)の名義人であるYに対して差損金1億8401万1982円の支払を請求したところ,Yが,本件口座の開設や本件取引はY...
[解 説]
1 Xは,高齢者向け弁当宅配業の分野で,フランチャイズ事業を展開している事業者である。Y1は,Xとの間で,弁当宅配のフランチャイズ契約を締結していた者であり,Y2は,その連帯保証人である。
Xは,Y1がフランチャイズ契約所定の契約終了後3年間の競業避止義務に違反したと主張し,同...
[解 説]
1 本件事案の概要は,概ね次のとおりである(なお,以下では,本訴原告ら,反訴被告らをまとめて,「原告ら」といい,本訴被告証券会社ら,反訴原告証券会社らをまとめて「被告会社ら」という。)。
原告らは,仕事上等のつき合いのあったAから,弁護士である被告Bに,企業防衛のため,信用取引...
[解 説]
1 訴外A(昭和44年生)は,平成15年3月当時,医師であり鳥取大学の大学院生であったが,3月8日,緊急入院した患者の手術に参加した後,アルバイト先の鳥取県倉吉市の病院に向かうため,自動車を運転して走行中,大型貨物自動車と正面衝突し,脳挫傷により死亡した。
そこで,Aの両親であ...
[解 説]
1 本件は,弁護士法人であるXが,①Xが弁護士法人化する前に,当時の代表者A(現在のXの代表社員)が,社会保険労務士Y1に対し,中小企業基盤人材確保助成金(以下「本件助成金」という。)の給付に係る事務処理等を委任したところ,Y1はXに対し上記支給要件の正確な説明をしなかったり,支...
[解 説]
1 本件は,甲病院(公立病院)において,後縦靭帯骨化症除去前方除圧術を受けた後に死亡したAの相続人Xが,手術を担当した医師に注意義務違反があり,それによりAに後遺障害が生じて死亡したと主張して,甲病院を設置運営している地方公共団体(Y)に対し,損害賠償を請求した事案である。
2...
[解 説]
1 事案の概要
(1) 本件は,被告の開設する病院において出生したX1に脳性麻痺による後遺障害が残ったことについて,原告らが,分娩監視義務違反及びその結果としての分娩措置の義務違反を主張し,不法行為または債務不履行に基づき,損害賠償を求めた事案である。
(2)診療経過
X1...
[解 説]
1 本件は,Xら及びYの亡父A(大正2年生,平成17年5月に91歳で死亡)作成名義の平成13年3月1日付け自筆証書遺言(本件遺言。遺言時87歳)があるところ,Xらが,それぞれ,Yに対し,本件遺言が無効であるとして,その無効確認を求めた事案(原告の1名は他の原告が提起した訴訟に共同...
[解 説]
1 本件は,原告が,無効審判請求の請求人である被告に対し,原告の有する指定商品を米国カリフォルニア州製のギターとする本判決別紙本件商標のとおりの登録商標につき,商標法4条1項10号に該当するとしてその登録を無効とした審決の取消しを求めた事案である。
審決は,本件商標は,その査定...
[解 説]
1 本件は,原告らが,自動車の輸入・販売等を業とする被告に対し,製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案である。
CDやDVDのレンタル・販売等を業とする株式会社ゲオの創業者であったAは,平成16年5月24日,ダイムラー・クライスラー株式会社が製造し,被告が輸入した本件車両(メ...
[解 説]
1 X(日本法人)は,Y1(英国領ヴァージン諸島において設立された外国法人)及びC(日本法人)との間で,廃石膏ボードのリサイクル事業を行うための契約交渉を続けていたが,Xの主張によれば,採算が取れる見込みがなかったことから,契約締結に至らなかった。ところが,Y1とCは,上記事業を...
[解 説]
1 本件は,原告が,銀行である被告の原告名義の普通預金口座に15億円の振込みをしたところ,被告がそのうちの一部を原告に対する貸付債権の利息の弁済に充当し,原告に対する貸付債権をもって,その余の払戻請求権とその対当額において相殺をしたが,被告の弁済充当及び相殺は民事再生法93条1項...
[解 説]
1 本件は,被疑者の現行犯逮捕に至る過程に重大な違法があるとして,その後になされた勾留請求を逮捕手続の違法を理由に却下した原裁判を準抗告審が維持した事例である。被疑者の勾留に先行する逮捕は適法であることが要求され,逮捕手続に重大な違法がある場合には,これに引き続く勾留請求も違法で...