最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
第1 事案の概要
1 本件は,水俣病被害の発生拡大についての国及び熊本県の責任が争われた水俣病関西訴訟の最高裁判決である。
2 水俣病に関しては多数の訴訟が提起され,論点も多岐にわたったが,国及び県の責任に関しては,本件を含め,6件の地裁判決が下された(新潟水俣病に関するも...
《解 説》
本件は,X(被控訴人,附帯控訴人,一審原告)がY(控訴人,附帯被控訴人,一審被告)に在職中にした青色発光ダイオードに使用する窒化ガリウム半導体結晶膜の製法に関する職務発明の特許を受ける権利(平成2年10月25日出願,発明の名称「窒化化合物半導体結晶膜の成長方法」,特許番号第26...
《解 説》
1 ①,②事件は,いずれも,いわゆる停止条件付集合債権譲渡担保契約につき,破産法上の否認の可否が争われた事案であり,それぞれ第二小法廷と第三小法廷で相次いで判決されたものであるが,ほぼ同趣旨の判断を示し,破産法72条2号に基づく危機否認の成立を認めた。
2 停止条件付集合債権...
《解 説》
1 本件は,石川県最大の地方銀行(以下,単に「銀行」という。)の頭取であった被告人が,石川県信用保証協会(以下,単に「協会」という。)の役員と共謀して協会に対する背任罪を犯したとして,いわゆる身分なき共犯としての刑事責任が追及された事件である。本件では,協会の銀行に対する800...
《解 説》
1 本件事案の概要は次のとおりである。Xらは,いわゆる国公労連に所属する非現業の国家公務員139名である。国(Y)は,平成14年度の国家公務員の給与について,同年度の人事院勧告(以下「本件人事院勧告」という。)に基づき,一般職の職員の給与に関する法律改正法(以下「本件改正法」と...
《解 説》
1 富山県新湊市の市民であるXが,老人福祉施設内で負傷し(本判文中の「本件事故」がこれに当たる。),その治療のために入院した市民病院で死亡した実母の死因(死亡の経緯を含む広義の死因)を知りたいとして,同病院の実母のカルテ等診療記録(本件診療記録)について,新湊市情報公開条例(本...
《解 説》
1 本件は,1審で死刑判決を受けた被告人が,国選弁護人によって判決当日に申し立てられた控訴を20日後に取り下げたが,6年半経過の後に,控訴取下げが無効であるとして,高裁に対し期日指定の申立てをした事案である。その理由として,(1)弁護人不在の状態でした控訴取下げは憲法37条3項...
《解 説》
1 本件の事実関係の概要は,次のとおりである。
Xは,群馬県立の工業高等学校の工業(染色化学,染色デザイン実習)の教科を担当する教諭であった。
Xは,平成8年3月31日に,同校を定年で退職したが,退職前に同校の生徒会誌(以下「本件生徒会誌」という。)に,回想文(以下「本件回...
《解 説》
1 本件は,Y信用金庫の代表理事(専務理事)であったXが,Yの理事会において,代表理事から解任され,更に,総代会において,理事から解任されたことにつき,それらの決議の効力等を争って提訴した事案である。
2 信用金庫法(以下「法」という。)38条は,信用金庫の役員の解任の請求は...
《解 説》
1 本件は,信号機の設置された交差点で右折する乗用車と直進する自動二輪車が衝突し,乗用車の運転者の過失が問われた事件である。事案の概要は判示に要約されているが,衝突の態様は,被告人が幹線道路の中央寄り車線を走行し,右折予定の交差点の手前で対面信号が青から黄色に変わったが,信号の...
《解 説》
1 本件は,被告会社が虚偽過少申告をして法人税をほ脱したという法人税法違反の事案であり,売上原価の年度帰属が問題となった。被告会社は,宅地開発の許可申請をした際,地元のA市から,都市計画法上の同意権を背景として,開発区域外にある雨水排水路の改修工事を行うよう行政指導され,これを...
《解 説》
1 事案の概要
医師であるXが,Y県の知事に対し,医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)7条1項に基づく病院開設許可申請をしたところ,知事及び担当職員らが,①同申請に係る申請書を受理せずに6回にわたって返戻を繰り返して審査及び許可を遅延させたこと,②法律上添付が必...
《解 説》
1 事案の概要
本件は,いわゆるストックオプションの権利行使益が給与所得か一時所得かが争われた事案である。Xは,半導体の製造等を業とする米国法人Aの100%子会社である日本法人Bに取締役として勤務し,A社からストックオプションを付与され平成8年から10年にかけてこれを行使して...
《解 説》
1 本件の事案は次のとおりである。
被告(県)の機関である漁港事務所は,臨港道路等の開設を計画し,それに必要な原告ら所有の土地を買収(売買契約の締結)することとして,原告らの同意も得,補償金額(売買代金額)の提示等も行ったが,その後社会情勢の変動によって公共事業を見直すことに...
《解 説》
1 事案の概要
本件は,平成11年5月22日に事実上破綻して金融整理管財人の管理下に置かれた第二地銀である株式会社幸福銀行(脱退原告)から損害賠償請求権等を譲り受けた原告が,幸福銀行の元代表取締役社長及び副社長である被告らに対して,善管注意義務違反及び忠実義務違反があったとし...
《解 説》
1 本件は,Aが生命保険会社Yとの間で締結した,Aを被保険者,Xを保険金受取人とする2件の生命保険契約(本件保険契約)につき,XがYに対し,①Aがフェリー乗船中に行方不明となってその7年後に失踪宣告を受けたことを理由として,同保険契約に基づく保険金の支払を請求し(第1事件),ま...
《解 説》
1 事案の概要
本件は,荷送人の運送人に対する海上物品運送契約の債務不履行を理由とする損害賠償請求について,1年の除斥期間が経過して許されないかが問題となった事案である。
本件の原告(なお,原告は,X1,X2の2名であり,そのいずれかが運送契約の当事者であるとして,併合請求...
《解 説》
1 X1は,パネライの商標を付した特徴的なデザインの腕時計(X時計)を製造,販売し,X2は,X1が製造するX時計についての日本における総代理店として,X時計を販売している。Yらは,時計の輸入販売をする会社であり,共同して,X時計に似た腕時計(Y時計)を販売していた。
Xらは,...
《解 説》
本件の2つの判決は,いずれも直接国税のほ脱犯に対し東京地裁租税部(刑事第8部)が言い渡したもので,1つは懲役刑の実刑,もう1つはその執行猶予という量刑判断がそれぞれ示された。すなわち,①事件は,風俗店を営む被告人が,代表取締役を務める会社の法人税と自己の所得税との合計約2億26...
《解 説》
1 事案の概要
当初,フィリピン国籍のBと名乗った外国人女性が,旅券を携帯していなかったとして検挙された。アパート内の所持品中から同国政府発行にかかるB名義のパスポート写しが発見されたが,その後,女性は,「真実は,Bは年長の知人であり,自分はAである,B名義のパスポートは,数...