最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、宗教法人(仏教寺院)の責任役員で、代表役員の委任を受け、宗教法人所有の不動産等を管理していた被告人が、その経営する会社の資金等に充てるため、前後六回にわたり、寺有地七筆をほしいままに売却したという業務上横領の事案である。
そのうち、二回にわたって売却した二筆の土地...
《解 説》
一 本件は、大手鉄鋼メーカーであるY社(新日鐵)が、合理化のための構内輸送業務委託化に伴って行った、Y社に籍を置いたまま業務委託先の協力会社(日鐵運輸)に労働者を出向させるいわゆる在籍出向について、出向対象者であるXらが、出向命令等の有効性を争っている事案である。
鉄鋼業は、...
《解 説》
一 本件は、X1(会社)から債務整理事務を委任された弁護士であるX2が、債務整理事務遂行のためにX1から受領した五〇〇万円をもって銀行にX2名義の普通預金口座(本件口座)を開設し、その通帳及び届出印を管理して預金の出し入れを行っていたところ、口座開設から五か月余り後に、入出金に...
《解 説》
一 本件は、郵便局に所属する保険外務員が簡易保険の契約者に加えた損害が民法七一五条一項にいう「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」に当たるか否かが争点となった事案である。
二 Aは、S郵便局保険課に所属する保険外務員であり、簡易保険の勧誘や保険料の集金等を通じて、...
《解 説》
一 本件は、Yが経営するホテル内において宝飾品が入ったバックの盗難に遭ったXが、当該盗難に関して上記ホテルの従業員に過失があったとして、Yに対し、民法七一五条一項に基づき、損害賠償請求をする事案である。
二 本件の事実関係は、次のとおりである。
Xは、宝石、貴金属の販売を業...
《解 説》
一 本件は、支払保証委託契約を締結する方法によって強制執行停止の担保を立てることを命じられた担保提供者が銀行との間で同契約を締結するに当たって預け入れた定期預金の払戻請求権について、担保権利者が転付命令を得た上で担保取消しの申立てをした事案である。
二 本件の事実経過は、次の...
《解 説》
一 本件は、国外移送略取と器物損壊の事案であるが、判示事項と関係があるのは、国外移送略取の点であり、日本人である妻と別居中のオランダ国籍の被告人が、妻が監護養育していた二歳四か月の子を自分の母国であるオランダに連れ去るため入院中の病院から連れ出した行為が、同罪に問われたものであ...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、覚せい剤の自己使用及びホテル客室における覚せい剤所持の事案である。
本件摘発の発端は、ラブホテルに単身で投宿した被告人が、翌日チェックアウトの時刻になっても一向にその手続をしなかったため、無銭宿泊などの疑いを生じたことにある。ホテル側からの一一〇番通...
《解 説》
一 原告(X)の父であるAは、B会社から代金一二〇〇万円で取得したゴルフクラブ会員権(本件会員権)をXに贈与したところ、Xは、その際、B会社に名義書換手数料八二万四〇〇〇円(本件手数料)を支払い、ゴルフクラブの正会員となった。その後、Xは、Cに本件会員権を代金一〇〇万円で譲渡し...
《解 説》
一 本件は、竹原市の住民である原告が、竹原市長であった被告が竹原市立たけはら美術館の所蔵する美術品に対する盗難防止のための管理体制の整備について必要な措置を怠ったために、美術品が盗まれ、これによって竹原市が損害を被ったとして、地方自治法二四二条の二第一項四号前段に基づき損害賠償...
《解 説》
一 大分県教育委員会は、住民監査請求により、旅費や食糧費の予算執行に不正があると指摘され、内部調査でも不適正な部分があることがわかり、その実態を調査し、原因の把握と改善策を立案することを目的に調査検討委員会を設置した。同委員会は、所属長を通じ、所属職員に対し、調査リストが公表さ...
《解 説》
一 原告は、平成二年一月五日、年俸制の給与で被告に雇用され、平成一二年五月九日、定年により退職した。被告の就業規則は、従業員の退職に関する事項は退職金規定によると定めており、原告が雇用された当時の退職金規定(旧退職金規定)及びこれを受けた退職金算定に関する内規(旧内規)には、①...
《解 説》
一 事案の概要
本件の事実関係の概要は、次のとおりである。Xは、高額の担保価値(価格は九三〇〇万円で担保掛け目を乗じると担保価値は六〇〇〇万円前後ある。)のある不動産を所有し、それには住宅金融会社による住宅ローンの抵当権(残存債務額約二四〇〇万円)がついていた。そして、その返...
《解 説》
一 本件事案は複雑であるので、判旨との関係で、簡略化して述べると次のとおりである。Xは、コンピュータによるシステム開発を行っている会社であるが、石材加工・販売会社であるYから、平成七年七月、同社の販売管理、製造、会計、給与等をコンピュータにより処理することが出来るシステム開発(...
《解 説》
一 本件の事実関係は次のとおりである。
Xは、平成一二年一〇月二四日、単身赴任先のマンションで、住居侵入・窃盗の被害に遭い預金通帳を盗まれた。なお、Xは預金通帳の届出印鑑は携帯しており、同印鑑は盗まれなかった。Xの預金通帳を所持した者が、平成一二年一〇月二四日午後一時五〇分頃...
《解 説》
一 本件は、Xが、Y(東証一部上場の大手企業)との間で広告掲載及び出版物販売契約(本件契約)が成立し、本件契約に基づきXが発行する週刊新聞等にYの広告を掲載し、Xが発行する書籍をYに販売したと主張して、各代金の支払を求めた事案である。Xは、その主張の根拠となる証拠として「広告予...
《解 説》
一Xの両親は、Yとその代理人の弁護士Zを相手として、昭和四一年以降平成九年三月に至るまでの間、X家とY家の墓地を巡る紛争について、YがZを訴訟代理人として、仮処分の申請、民事訴訟の提起をしたこと及び墓地の紛争に伴う行為を、いずれも不法行為を構成するとして、慰謝料等の損害賠償を求...
《解 説》
一 本件は、鼻腔ないし副鼻腔原発の横紋筋肉腫と診断された患者Aが、約一か月半にわたって、合計三〇回にわたる放射線治療を受けたのちに、脳幹部に病変が発生して死亡したことについて、Aの相続人である原告らが、脳幹部の病変は不適切な放射線の照射によるものであるとして、被告病院に対し、診...
《解 説》
一 本件は、インフルエンザワクチンの予防接種の副反応によりXが重度の心身障害者となったなどとして、X及びその両親が、Y(国)に対し、国家賠償法一条一項に基づく損害賠償等を請求した事案である。
二 Xは、昭和五八年一一月八日および同月一八日の計二回、在学するA小学校において、B...
《解 説》
一 Xは、パチンコ型スロットマシン(以下「パチスロ機」という。)の製造販売を業とする会社であり、パチスロ機に関する特許権を有するものであるが、パチスロ機製造業者であるYが製造販売するパチスロ機がXの特許権(本件特許権)を侵害すると主張して損害賠償を求めた。
本判決は、Yの製造...
《解 説》
一 本件は、生花の下葉取装置に係る実用新案権を共有する原告らが、被告の製造販売する生花の下葉取装置が原告らの考案の技術的範囲に属すると主張して、被告に対し、実用新案権に基づき侵害行為の差止め等を求めたのに対し、その一部を認容した事案である。
菊などの生花を出荷する際には、生花...
《解 説》
山口組の最高幹部の一人であるTが、その側近組員が拳銃を所持していたことに関して共謀による所持罪の嫌疑を受け、逮捕状が出されていたところ、同幹部組員は身を隠して逃走生活をしていたが、被告人の配下組員Sらが被告人所有の山荘で同幹部をかくまっていたことが判明した。本件は、被告人が配下...
《解 説》
一 本件は、死刑判決が確定している申立人からされた再審請求事件について、請求棄却の原決定に対する即時抗告を、抗告審が棄却する決定をした事案である。本決定に至る経緯は、次のとおりである。
申立人は、①夫を殺害したという事実と、②その四年後に知人の男性を殺害してその死体を遺棄した...
《解 説》
一 本件は、東京都千代田区の宅地二筆(本件各土地)の固定資産税の納税義務者であるXが、東京都知事によって決定され、東京都千代田都税事務所長によって土地課税台帳に登録されたその平成六年度の価格について、Y(東京都固定資産評価審査委員会)に対して審査の申出をしたところ、Yから、価格...
《解 説》
一 本件は、いわゆる「戦後補償裁判」の一つである。もっとも、戦後補償裁判といっても、事案は多種多様であって、簡単に類型化し得るものではない。本判決は、日中戦争当時、中国に侵攻した大日本帝国陸軍の兵士ら(日本兵)から性暴力被害を受けたという中国人女性ないしその相続人が国家賠償のほ...