最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本判決は,未就労の女子年少者の逸失利益の算定に当たって,男子労働者を含む全労働者の平均賃金を基礎収入としたものである。従来の実務では,年少者の属性に従って男子には男子労働者の,女子には女子労働者の平均賃金を用いるのが当然である,といった感があったが,奈良地葛城支判平12・5...
《解 説》
一 事案の概要
1 本件は、コンピュータ用ゲームソフトとして人気を博した「ときめきメモリアル」(本件ゲームソフト)の同一性保持権侵害が争われた事件である。
2 原告(控訴人、被上告人)が著作者人格権を有する本件ゲームソフトは、ゲームを行う主人公(プレイヤー)が架空の高校の生...
《解 説》
一 事案の概要
1 抗告人は、衣料品の製造販売を目的とする非上場株式会社である。本件の基本事件は、抗告人の株主である相手方(原告)が抗告人の取締役である被告らに対し,提起した株主代表訴訟(商法二六七条)である。原告は,被告らが取締役としての忠実義務に違反し、抗告人の第四八期及...
《解 説》
本件は、平成一〇年三月二九日に施行された東京都第四区の衆議院小選挙区選出議員の補欠選挙(以下「本件選挙」という。)について、本件選挙の候補者又は選挙人であった原告らが、東京都選挙管理委員会を被告として、公職選挙法の小選挙区選挙における選挙運動に関する規定が、候補者届出政党に所属...
《解 説》
一 本件は、暴力団組員である被告人が、使用貸借の目的とされていた土地を所有者に無断で賃借りし、同土地上の簡易施設を改造して本格的店舗を構築したことが、不動産侵奪罪に問われた事案である。
二 本件の事実関係は、次のようなものである。
1 本件土地は、A不動産が所有するアスファ...
《解 説》
一 本件は、不動産侵奪と恐喝の事案であるが、判示事項と関係があるのは、不動産侵奪の点であり、東京都の公園予定地の一部に、無権原で、簡易建物を構築するなどした被告人の行為が、同罪に問われたものである。
一審判決(本誌一〇二三号二七八頁)は、不動産侵奪罪の成立を肯定したが、原判決...
《解 説》
本件は、Xが、その所有地から公道(浦和市道)に通じる本件私道について、浦和市長がいわゆる一括指定方式により道路位置指定した建築基準法四二条二項に規定するみなし道路(「二項道路」)であることをY(浦和市)が争うので、二項道路であることの確認を求めた事案である。
浦和市においては...
《解 説》
一 本件は、被告が訴外会社に対して産業廃棄物処分業(産廃処分業)の許可をしたところ、訴外会社の事業の用に供する中間処分(焼却)施設の周辺の茶畑で農作業を営む原告が右の産廃処分業許可には適法な処理施設を有しないのにされた違法がある等として、その取消しを求めた事案である。
二 本...
《解 説》
一 X(エジプト・アラブ共和国国籍)は、恐喝被告事件により懲役一年一〇月の実刑判決を受けたが、東京拘置所に未決勾留されていた時期に、刑務官らから度々違法行為を加えられたと主張して、Y(国)に対して、国家賠償請求をした。
Xが主張した刑務官の違法行為は、(A)①Xが何もしていな...
《解 説》
一 X1、X2(以下「本件児童ら」という。)は、平成八年四月から平成九年三月までの間、大阪市Yが設置したS小学校に在籍していた児童である。X3及びX4(以下「本件両親」という。)は、本件児童らの実父母であり、共同親権者である。本件は、知的障害を有する本件児童らが、Yの職員である...
《解 説》
一 本件は、A町がA町所有の公衆用道路である本件土地を第三者所有土地と交換した後、右交換により第三者名義となった本件土地を八五八万円で買収したことに関し、A町の住民である原告らが、右買収費用の支出は違法であるとして、右買収の当時A町町長であった被告に対し、買収費用相当額である八...
《解 説》
本件は、被控訴人が従事していたタイヤ販売会社における業務等に起因して、右上肢ジストニア(以下「本件疾病」という。)に罹患し、右疾病が悪化したとして、控訴人の被控訴人に対する労災保険法に基づく療養補償給付を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めた抗告訴訟であ...
《解 説》
一 事案の概要
A会社は、岡山県英田郡においてゴルフクラブを開設し経営していたが(以下「旧ゴルフクラブ」という。)、経営に行き詰まった結果、A会社に融資をしていたB(個人)がA会社の全株式及び旧ゴルフクラブの営業に使用されていたA会社所有の土地・建物の所有権を取得し、Bは右土...
《解 説》
一 ①及び②の事件はいずれも、建物根抵当権に基づく物上代位として、賃貸人兼所有者Aの賃借人Yに対する賃料債権を差し押さえたXが、Yに対し差押命令到達後に弁済期が到来する賃料の支払を求めたのに対し、Yが差押え前のAとの間の相殺予約に基づく相殺を主張した事案である。
二 ①事件で...
《解 説》
本件は、X名義でY(信用金庫)に寄託されていた本件定期預金について、Xの妻Aが、Yの訴外会社(Aが役員をし、経理責任者として勤務していた。)に対する融資の根担保として差し入れていたところ、訴外会社が融資の返済をしないまま倒産したため、Yが本件定期預金について融資金と相殺処理する...
《解 説》
一 XはY従業員Aとの間でカーナビゲイションシステム(以下「カーナビ」という)三〇台を一四〇〇万円余りで売買し、代金全額を支払ったが、二台の一部しか納入されなかったので、契約を解除した。Xは、このように主張して、Yに対して、①不当利得に基づく代金返還請求、又は②Aが売買を装って...
《解 説》
一 Xは、Y会社経営のガソリンスタンドの近くに事務所を構える暴力団の幹部であり、このガソリンスタンドをしばしば給油、洗車等で利用していた。Xの組員であるAはX所有のメルセデスベンツを本件スタンド内に鍵をつけたまま置き、「何もしなくていいから、置いといてくれ」と告げて立ち去った。...
《解 説》
一 Xらは、多数の金融会社等から多額の債務を負い、その返済に苦しんでいた、いわゆる多重債務者であるが、いわゆる紹介業者から、「債務を整理するのに、いい弁護士を紹介する」として、弁護士であるYを紹介され、Yに対して多重債務の整理を委任して、相談料、着手金、成功報酬等を支払った。
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《解 説》
一 Y1は、Y2の設置する大学の学生であるが、同大学の管理下にあるコンピューターシステム内に開設したホームページに「三月一四日入学手続日の混乱の詳細」と題する、Y1らと対立する学生グループであるXらが傷害事件を起こし刑事事件になったという印象を与える文書を掲載した(後に同ページ...
《解 説》
一 Xは、癌検診を受けるため、平成八年一〇月一日、同月二二日、同年一一月二六日の三回Yの経営する医院を訪れ、超音波断層撮影法、CA一二五精密測定、生化学検査等を受け、自己負担の診療報酬を支払ったが、Yのした診療報酬請求には不正・不当な請求があると主張し、Yに対し、不法行為に基づ...
《解 説》
一 本件は、Xが、その所有する自動二輪車(本件二輪車)を運転して、進路前方に停止するY1の運転するY2所有のタクシー(本件タクシー)の左側を通過しようとした際、Y1が乗客を降ろすために本件タクシーの後部ドアを開いたところに衝突して負傷した交通事故を原因として、Yらに損害賠償を求...
《解 説》
一 Xは、幼少時より「レックリングハウゼン病」に罹患していたが、次第に腫瘍が増大し、圧痛、難聴、耳鳴りなどの症状が出てきたため、昭和五七年八月、Yの設置する「北里大学病院」に入院して、耳介前部付近の腫瘍の摘出手術を受け、また、平成二年三月、Yの設置する同病院に入院して、耳下腺部...
《解 説》
一 X(洋品店経営)はAに洋服等の売買代金債権を有していたところ、Aは死亡し、Aの母である相続人Yは相続放棄の申述をし、家裁で受理された。しかし、Yは、その後Aの遺品である洋服等を持ち帰った。そこで、Xは、これは民法九二一条三号にいう「隠匿し」又は「私に消費」したこと(法定単純...
《解 説》
一 X2は、高校時代の友人Aが中心となって設立した電気通信サービス等の加入手続に関する代理店業務等を目的とするY会社の設立に参加した。設立当時の株式総数は二〇株であり、Aは九株、X2は三株、その母親X1は一株保有した(X2は取締役にもなった)。
Xらは、「(1)Yは、第三者割...
《解 説》
一 Xは、本件マンションの区分所有者で組織されているA管理組合の理事長であり、区分所有法上の管理者であり、Y1はマンション建築販売業者、Y2は同建設業者である。本件は、Xが、Yらに対して、①A管理組合とYらとの間で、本件マンション屋上の防水層工事をやり直す合意をしたとして、合意...
《解 説》
一 X(原告・相手方)は、訴外A会社(補助参加申立人・抗告人)の株主であるが、A会社の取締役であるY(被告)らが、取締役としての忠実義務に違反し、①A会社の第四八期及び第四九期の各決算においていわゆる粉飾決算を指示し又は粉飾の存在を見逃し、②税引前利益を粉務したことにより法人税...
《解 説》
本件は、競売不動産の所有者であるX(抗告人、原執行抗告抗告人)が、最低売却価額の基となった評価人の評価が著しく低額で客観的価額に比して著しく不当であり、社会通念に照らして容認することができないから、これに基づく最低売却価額の決定に重大な誤りがある(民事執行法七一条六号)などと主...
《解 説》
一 本件は、経済革命倶楽部(通称KKC)幹部らが共謀の上、組織的に、会長が考案したという、ゴールドコース等の会員になれば、拠出した申込金の返済が保証されるほか、短期間のうちに高額配当が確実に得られるなどと虚偽の事実をうたい文句にした宣伝活動を行い、申込金名下に、起訴分だけでも、...
《解 説》
一 本件は、(1)小牧市長として同市を統轄代表し、同市の事務を管理執行するとともに、同市が発注する土木建築工事の設計、監理業務委託に関し、委託業者を選定し、請負契約を締結する等の職務権限を有していた被告人Aが、①平成三年八月九日午前七時ころ、自宅において、建築等の設計・監理等を...
《解 説》
本件は、被告人が共犯者と共謀の上、路上に停車中の普通乗用自動車内において、大麻の乾燥植物細片約九五グラムを所持したという事案である。本判決によると、大麻が発見された経緯は次のとおりである。被告人は、自らが運転し、共犯者を助手席に乗せた自動車を警視庁上野警察署公園前交番付近路上に...