最も長い歴史をもつ判例実務誌
挨拶 古屋忠彦/近藤崇晴/埴原一也
報告 那須弘平/西口元/高橋宏志/秋武憲一/石川善一/中西健市
司会 椎橋邦雄/小野寺規夫
《解 説》
一 事案の概要
本件の事実関係については、直接判決文を参照されたい。要するに、Xが、Aに対する債権の担保のために同人所有の土地建物に根抵当権の設定を受け、その実行としての競売を申し立てたところ、Yらがその約四か月前から係争建物を権原なく占有していたことから、「買受けを希望する...
《解 説》
一 Y商工信用組合は、A社との間で信用組合取引に関する取引契約を締結し、A社に対して右契約に基づく貸付けを原因とする貸付金債権を有し、右取引契約から生ずる債権を担保するために合計一七の土地・建物について、極度額一億五〇〇〇万円とする根抵当権(本件根抵当権)を有している(残元本一...
《解 説》
一 本件は、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律(以下「法」という。)七七四条二項に規定する除権判決に対する不服の訴えである。除権判決に対しては、上訴をすることができず(同条一項)、同条二項の各号の場合に限り不服を申し立てることができる。そのため、除権判決に対する不服の訴えは、...
《解 説》
一 本件は、土地についての一定の利用権を有する者が大量の廃棄物を堆積させ、容易に原状回復をすることができないようにした行為が、土地所有者の占有を侵奪したものとして、不動産侵奪罪の成否が争われた事案である。本件土地の所有者であるA社は、資金繰りに窮した結果、振り出した小切手が不渡...
《解 説》
一 本件は、関税法一〇九条の禁制品輸入罪の、実行の着手の有無が問題とされた事案である。
事案の概要は、原判決の認定によれば、ドイツ人である被告人が、二重底にした二つのスーツケースに大麻樹脂を隠して、シンガポールから航空機で新東京国際空港に到着したものである。被告人は、黒色スー...
《解 説》
一 本件は、両親を殺害して金品を強取するなどした強盗殺人、死体遺棄、有印私文書偽造、同行使、詐欺被告事件について、一審、控訴審で無期懲役の量刑判断が示されたのに対して、それを不服とした検察官が上告し、上告審の判断が示されたものである。
本件は次のとおりの事案である。すなわち、...
《解 説》
一 本件は、無期懲役刑を科した(あるいはその旨の第一審判決を維持した)控訴審判決に対して検察官が量刑不当等を理由として上告した一連の事件のうちの一件である。被告人は、同棲していた女性Aと共謀の上、Aの両親を殺害して金品を強取したなどという強盗殺人、死体遺棄、有印私文書偽造、同行...
《解 説》
一 本件は、県営特殊農地保全整備事業において、被告県知事が原告所有地についてした換地処分には、境界・地積確定手続の違法、照応原則違反、換地処分通知書の送付遅延といった瑕疵のほか、県から清算金の徴収交付事務を受託した土地改良区が、換地計画とは異なった内容の清算(別途清算)を行い、...
《解 説》
一 原告は、昭和二〇年八月一四日、朝鮮人男性と日本人(内地人)女性との間の非嫡出子として出生し、昭和二五年九月八日、朝鮮人である父から認知(本件認知)を受けた。本件は、原告がサンフランシスコ平和条約の発効に伴う日本国籍の喪失を争い、日本国籍を有することの確認を求めた事件である。...
《解 説》
一 本件は、A市住民であるXが、A市が締結した工事の請負契約について、①A市長であるY1は、右請負代金支払資金について工事完成後に起債すべきところ、工事完成前に起債及び支出命令をしたことから、代金支払時期までの利息分の損害を被ったとして、Y1に対し、A市を代位して、右利息相当額...
《解 説》
一 Xは、平成七年二月から平成一〇年七月までの間に、訴外A会社に対し、一〇回にわたって合計一七九三万円を貸し付けたが、平成一〇年六月、Yが、Xに対し、既にA会社がXに対して負担する債務及び五年間に発生する債務につき、一五〇〇万円を限度として連帯保証する旨約した(以下「本件契約」...
《解 説》
一 訴外Aは、飲食店を経営する会社であるところ、平成九年二月、Xから、A会社の代表取締役Bらを限度額三〇〇万円の根保証の連帯保証人として融資を受けたが、右の保証人だけでは一〇〇万円の融資しか受けられなかった。しかし、他に保証人がいれば五〇〇万円で融資できるとのことであったため、...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、大韓民国の国籍を有する控訴人の父金順吉が、第二次世界大戦中、国民徴用令に基づき、警察官らによって朝鮮半島から長崎県に強制的に連行され、旧三菱重工業株式会社の寮に軟禁され、強制的に労働に従事させられ、さらに、原爆に被爆したにもかかわらず放置され、自力で帰...
《解 説》
一 被告は、平成元年七月、本件土地が自分の所有であると主張して、登記名義人の原告を相手方として、処分禁止の仮処分を得た。ところが、その本案の所有権移転登記訴訟では被告は敗訴し、平成八年六月に仮処分登記が抹消された。それで原告は仮処分により土地を売却できず、その間に地価が下落して...
《解 説》
一 本件は、詐欺罪及び宅地建物取引業法違反の容疑で告訴を受け、書類送検されたX(原告・被控訴人)が、これを宮城県版及び埼玉県版の各新聞記事にして掲載した新聞社Y(被告・控訴人)に対し、名誉毀損に基づく損害賠償を求めた事案であるが、Yは、①本件の記事にはXの実名の記載はなく、名誉...
《解 説》
一 アメリカ合衆国カリフォルニア州で、出張中の日本人の運転するレンタカーが居眠り運転のため道路脇の電柱に衝突し、同乗させて貰っていた日本人が傷害を受けた。原告は大阪地方裁判所に運転者とその雇主を被告として損害賠償訴訟を提起した。
二 本判決は、この事故による損害賠償については...
《解 説》
一 本件は、伊王島鉱業所(長崎市沖)・北松鉱業所(長崎県北松浦郡)・嘉穂鉱業所(福岡県嘉穂郡)の各炭鉱の元従業員らが、じん肺に罹患したとして、炭鉱を経営していた会社に対し損害賠償を求めた事案である。
伊王島鉱業所及び北松鉱業所に関する訴訟としては、いわゆる長崎北松じん肺訴訟や...
《解 説》
一 本件の事案の概要は次のとおりである。
X(相手方・原審申立人)は、Aとの間に内縁関係が成立していたとして、Aが死亡したことにより内縁関係が解消した場合も、法律上の離婚に伴う財産分与の規定を類推適用すべきであると主張して、Aの相続人であるY1(抗告人・原審相手方)、Y2(抗...
《解 説》
Aは、沖縄へ旅行し、借上げタクシーで観光中、中部沖縄の名所である万座毛(まんざもう。海岸から垂直に切り立った石灰岩の崖の上に、天然の芝生が広がっている)の崖から落下して死亡した。
Aは、従前、自身を被保険者ないし被共済者として、①Y1(生命保険会社)との間で、不慮の事故による...
《解 説》
一 本件は、Yによる家庭用かび取り剤「カビキラー」の製造販売行為が、Xが有する「芳香性液体漂白剤組成物」の特許権を侵害するかどうかが争われた事案につき、特許権の侵害を認め、二億七〇〇〇万円余りという比較的高額の損害賠償を認容した事例である。
二 Xの特許権は、特許請求の範囲に...
《解 説》
一 本件は、建物の売買等を指定役務とする登録商標に類似する標章を建物(分譲マンション)という商品に使用する行為につき、指定役務と商品とが類似することを理由に、商標権に基づく差止め及び損害賠償請求を認容した事例である。
Xは、「土地の売買、建物の売買」を指定役務とする登録商標「...
《解 説》
一 第一事件は、我が国において有名であるいわゆる「キューピー」について、今日も我が国において著作権が存続しているとして提訴された事件である。「キューピー」を社名にも採用している著名な食品会社が長年にわたり広告等に使用してきた「キューピー」のイラスト等(Yイラスト等)が問題とされ...
《解 説》
一 Yらは、カラオケボックス店舗を経営し、店舗内のカラオケ歌唱用個室では、レーザーディスクカラオケ、CDカラオケ又は通信カラオケの装置により、顧客が主として自らカラオケ装置を操作し、再生された伴奏音楽に合わせてカラオケ歌唱を行っている。
Xは、(1)伴奏音楽の再生による演奏権...
《解 説》
一 事案の概要
原告は、被告との間で、原告が被告社員食堂の改革についてのコンペで優勝することを停止条件として、平成一〇年四月一日以降の被告社員食堂運営委託契約(本件契約)を締結したところ、原告はコンペで優勝したので右停止条件が成就したと主張して、被告に対し、原告と被告との間で...
《解 説》
一 本件①は、移送申立却下決定に対する抗告事件、②は、移送申立事件である。いずれも、信販会社の消費者に対する訴えであり、①は貸金返還請求、②は建物についての根抵当権設定仮登記に基づく根抵当権設定本登記請求であり、申立人(抗告人)は、被告である。
①の原決定は、東京簡易裁判所か...
《解 説》
一 本件事案の概要は以下の通りである。被告人Aと暴力沙汰を伴う対立関係にあった被害者が、アパートの二階の被告人Aの留守宅に侵入し、帰宅した被告人Aに、催涙スプレーを吹きかけ、特殊警棒で殴打してきた。これに対し、被告人Aは被害者の攻撃を予期して購入していたナイフで応戦しながら階下...