最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、大阪市及びその周辺地域において一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営んでいたXらが、平成元年四月一日の消費税法の適用の際に消費税を転嫁するための運賃変更の認可申請をせず、その約二年後の平成三年三月に同業他社に対して平均一一・一パーセントの値上げを内容とする運...
《解 説》
一 本件は、鋼管くいをクレーン車の装置により荷下ろしする際、好意で玉掛け作業を手伝い、鋼管くいの落下事故で死亡した者が、自賠法三条の「他人」性を否定されるクレーン車の「運転補助者」に当たるか否かが問題となった事案である。
二 本件事故の概要は、クレーン車のリースやくい打等の基...
《解 説》
一 事案の概要
Xら(被控訴人ら)は、大阪市公文書公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき、同市財政局財務部財政課による食糧費支出に関する一切の書類の公開を請求した。これに対し、Y(控訴人)は、請求に係る公文書を支出決議書、支出命令書及び歳出予算差引簿(以下「本件文書」と...
《解 説》
Xは、平成三年六月、二二名の者の共同墓地経営に関する同意書を添付した上、N県知事から墓地、埋葬等に関する法律一〇条に基づく墓地経営許可の権限の委任を受けているY市長に対し、墓地経営の許可申請をしたところ、受理されず、調停を経た後、同年一一月に同申請は受理された。しかしYは、同四...
《解 説》
一 原告は、会計事務担当者として勤務していた漁業組合において発生した横領事件の被疑者として在宅のまま取調べを受け、その後、業務上横領罪で起訴された。一審の千葉地方裁判所八日市場支部は、原告に対し、懲役二年の有罪判決を言い渡したが、控訴審の東京高等裁判所は、原判決には多くの疑問点...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、三重県住民が三重県知事に対し、三重県情報公開条例に基づき、議会及び公安委員会の食糧費等の予算執行文書の開示を請求したところ、同知事は、当該文書は同知事が管理していないとして、開示請求書を請求者に返却した。そこで、開示請求者である原告は、同知事を被告とし...
《解 説》
一 本件は、製本会社で断裁工として勤務していた被災者(死亡当時五三歳)が勤務時間中にくも膜下出血を発症して死亡した事案について、被災者の妻である原告が被告中央労働基準監督署長に対し、遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したが、同被告が被災者の死亡は業務に起因するものとは認められな...
《解 説》
一 本件は、Xが、Yらの所有名義となっている本件土地について、時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求める事案であり、その概要は、次のようなものである。
本件土地は、Xが所有する土地(X土地)の南側に位置するが、両土地の間は道路で分断されている。本件土地の南側にはYが所有す...
《解 説》
Yは、電子機器等の販売を主たる業とするX株式会社に勤め、その営業所長であったが、取引先であるAに対し、XにおけるAに対する与信限度額である七〇〇〇万円を超え、かつ、会社の規定による上司の決裁を受けず、合計二億九八八六万円余相当のパソコン等を売り渡し、その後A社が倒産したため、X...
《解 説》
Xは明治三九年三月生まれの女性であり、平成四年五月家庭裁判所により禁治産宣告を受けた者である。これより先、Xの夫Aは昭和五五年一二月死亡し、相続人間の遺産分割協議によりXが本件土地(一)を、二男Y1が本件土地(二)を各取得し、両地上に立っている本件建物をXとY1が共有持分二分の...
《解 説》
一 本件事案の概要は次のとおりである。A(会社)は、かねてY(農協)から営業資金の融資を受けていたが、Yから新規融資を受けるに際し追加担保の提供を求められたため、Aの経営者Bは妹のXに所有不動産の担保提供を依頼した。その際、Xは、Bから八〇〇万円の融資を受けるにつき担保提供して...
《解 説》
Xは労働者の派遣を主たる業務とする会社であり、Yはコンピューターソフトの開発等を主たる業務とする会社であるところ、Xは平成六年七月五日にYとの間で締結した労働者派遣契約に基づき、同月一一日以降、YのもとにAを派遣した。Xは、Yから同年九月分の派遣料の支払いを受けていないとして五...
《解 説》
一 本件のXYは、いずれも弁護士である。Xは、別訴①事件の原告の訴訟代理人であり、別訴②事件の原告ら訴訟代理人である。Yは、①事件の被告訴訟代理人であり、②事件の被告本人である。
Xは、(1)Yは①事件の弁論兼和解期日において担当裁判官の面前で、準備書面の形をした文書を示して...
《解 説》
一 本件は、いずれもパソコン通信網PC―VANの会員であるXとYとが、平成六年三月、PC―VANのオンライン会話サービス(チャット)を利用し、Xが、平成四年六月ころ、A社の所有するユーザID(PC―VANの会員番号)をその承諾を得ずに不正に使用していたのではないかという疑惑に関...
《解 説》
一 本件は、大手建設会社Y1の子会社Y2の営業所における一連のセクシュアル・ハラスメントについて、被害者である女性従業員Xの供述の信用性を認め、その主張に沿った事実を認定した上、わいせつ行為の事実を認めなかった原判決を取り消し、セクシュアル・ハラスメントの加害者である営業所長Y...
《解 説》
一 X(原告・控訴人)は、山梨県北巨摩郡高根町清里にリゾートマンションの建築を計画し、建築基準法所定の確認を受けたので、平成四年二月、簡易水道事業者であるY(被告・被控訴人)に対し、右マンションに係る給水契約の申込みをしたが、水道加入金を納付しないことを理由に給水を拒否された。...
《解 説》
一 本件は、暴力団関係者を装って債権回収を容易にするという動機、目的のもとに、医師に対して自らの小指の切断を依頼した者が、右依頼に応じて指の切断(指詰め)を行った医師に対し、不法行為に基づく損害賠償(手術費用、逸失利益、慰謝料、弁護士費用)を請求したという事案であり、原判決は五...
《解 説》
一 原告は京阪電車の線路脇の二階家屋に居住しているが、その電車線路の向かい側に被告が一〇階建てのマンションを建築した。原告は通過する電車の騒音がこのマンションに反射することにより原告宅における騒音が受忍限度を超えて増加したと主張して損害賠償を求めた。第一審大津地裁は、原告方の線...
《解 説》
一 本件は、Yが設置運営している「静岡市立静岡病院」において、左右の肩のそれぞれの人工腱板による腱板断裂の再建術(以下「本件手術」という。)を受けたXが、本件手術により両肩の症状がむしろ悪化したと主張し、診療契約の債務不履行に基づき、Yに対して損害賠償を請求した事案である。
...
《解 説》
一 Xは、Y県立高校の一年生(当時)であり、部活動として野球部に属していた。事故当日、同野球部では、監督である同高校教諭の指導のもとで、ピッチングマシン二台を並べてフリーバッティングの練習をしており、Xは、一台のピッチングマシンにボールを入れる係を担当し、そのピッチングマシンの...
《解 説》
Aは、昭和四五年一月以降、Yから本件土地を期間二〇年、建物所有の目的で賃借していたが、同五五年四月死亡した。Aは、本件土地上の本件建物を三男(事実上長男)Bに遺贈する旨遺言していたので、これによりBが本件建物の所有権とともに本件土地賃借権を承継した。長女Y、五男C及び次女Dは右...
《解 説》
一 被控訴人らの先代は、個人で小売業を営む商人であったところ、その従業員で代理人であった甥に殺害されたが、甥は、その犯行を隠匿するため、先代の死後も対外的には先代が生存しているように装って、先代の代理人として、控訴人らから、商品の仕入れをし、債務を負担したが、先代の死が発覚した...
《解 説》
一 本件は、Xらが印判制作販売を目的とする株式会社Yに対して株主権の確認等を求めた訴訟である。Xらの先代A(Xらの父)が個人事業(家業)として行ってきた印判制作販売業を、昭和三七年に法人化し(株式発行総数五〇〇株、発行株式総数五〇〇株、資本金五〇万円)、X1(Aの長男)が七〇株...
《解 説》
一 本件は、従前より被告及び本件手形の裏書人であるBとの間に介在し相互に融通手形の振出、交換することを仲介していたAが、被告に対し、見せ手形として一三〇〇万円の手形を振り出してほしいと懇請したのに対し、被告は、Aの面前で本件手形の金額、振出日、支払期日欄にのみ記入し、振出人欄に...
《解 説》
本件の事実関係の概要は次のとおりである。農業協同組合である被控訴人(被告)の代表理事である甲が、自己の債務の返済資金に窮し、乙に対して融資のための処理を委ねて、白地の約束手形四通及び甲の記名印と実印を預けた。乙は、預かった記名印と実印及び偽造した被控訴人の記名印と代表理事印を利...
《解 説》
一 訴外Aは、平成九年六月一二日早朝、鹿児島市内の国道を、軽四輪乗用自動車を運転して走行中、対向車線を走行してきた訴外B運転の大型貨物自動車と正面衝突し、即死した。
Aが代表取締役をしているX1会社とAは、Y1~Y3保険会社との間において、Aを被保険者とし、X1とX2・X3を...
《解 説》
一 訴外Aは、愛知県西尾市で織物生産を業としていたものであるが、平成八年二月、普通貨物自動車を運転して、和歌山県熊野川町内の道路上を走行中、ガードレールのない場所から北山川右岸斜面に滑落し、右斜面上で凍死した。
西尾商工会議所では、平成七年六月、Y(保険会社)との間で、Aを被...
《解 説》
一 Xは、平成元年末頃から、内縁の夫Aとともに、熊本県阿蘇郡阿蘇町に所在する本件建物において旅館を経営していたが、平成三年九月、Y(保険会社)との間で、本件建物と什器・備品について、店舗総合保険契約を締結した。
本件建物は、平成四年六月、その内部から発生した火災(以下「本件火...
《解 説》
一 事案の概要は次のとおりである。
XとYは等価交換方式で一〇階建のビル(以下「本件ビル」という。)を建築し、一階の一部と二、三階及び四階の一部をXの所有とし(一階から三階までのX専有部分については一個の区分建物としての表示登記と所有権保存登記を行った。)、一階の一部と四階の...
《解 説》
本件は、旧民訴法三一条(損害又は遅滞を避けるための移送)に基づく移送命令を抗告審において取り消し、同申立てを却下した事例である。
XはYに対し、貸金債権八〇万円とこれに対する遅延損害金の支払を求め、平成八年、Yの住所地を管轄する木津簡裁に支払命令を申し立てたところ、同簡裁は、...
《解 説》
一 事案の概要
本判決は、Y森林組合の組合員であるXが、平成五年度のY森林組合の計算書類についての承認を諮った通常総会における決議(本件(一)決議)は不存在であり、また、平成六年度のY森林組合の解散を諮った通常総会における決議(本件(二)決議)は、一部組合員への通知を欠いてお...
《解 説》
一 本件は、産業廃棄物の最終処分場を譲り受けた株式会社Y(債務者)が、右処分場用地に接する私道(本件通路)を右処分場への産業廃棄物の搬入路等として利用する予定であったところ、右私道敷地を含む各土地の所有者、共有者であるX1ないしX8(債権者ら)が、右各土地の所有権又は共有持分権...
《解 説》
一 本件は、破産会社の破産管財人である原告が、破産会社が被告に売り渡した商品の売買代金の支払を請求したのに対し、被告が、破産会社との間には売主が倒産した場合には売買契約を解除できる旨の特約があり、被告は右特約に基づいて売買契約を解除したので代金支払義務はない旨を主張した事案であ...
《解 説》
本件は、破産管財人が、破産者の入会していたゴルフクラブを経営する被告会社に対し、破産法五九条に基づき、入会契約を解除して預託金の返還を求めた事案である。
破産法五九条は、双務契約が双方未履行の場合、破産管財人に対し、債務の履行を選択して対価関係を実現する方法と解除を選択して原...
《解 説》
本件は、密売のために約一六リットル入りの缶に入ったトルエンを多数の約一〇〇ミリリットル入りのドリンク瓶に詰め替えて小分けしたという事案であり、このような行為が毒物及び劇物取締法三条一項にいう劇物の「製造」に当たるか否かが争われた。
関係法令をみると、薬事法一二条一項は、医薬品...
《解 説》
一 本件は、中小企業相談協会会長と名乗る被告人Aが、税理士事務所に勤務する被告人Bらを使って、プロ野球選手、プロサッカー選手、プロ競輪選手などから所得税の脱税を請け負い、架空の顧問料を計上するなどの方法により、合計三一件、総額約三億五〇〇〇万円の所得税を免れたという脱税請負の事...
《解 説》
一 本件は、衆議院議員であった被告人が、①平成八年一〇月に施行された衆議院議員総選挙に際し、比例代表選出議員(北関東選挙区)の選挙において自由民主党の届出に係る衆議院名簿の登載者となって当選したが、名簿登載者となる前後二回にわたり、自己の当選を得る目的で、自己の選挙運動者らに対...