国有地売却に関する決裁文書の改ざんを指示したことを理由とする公務員個人の不法行為に基づく損害賠償責任を否定した事例
1 地方自治法138条の4第3項にいう附属機関とはどのようなものかについて検討した上で,本件各委員会は附属機関に該当するから,その設置は附属機関条例主義に反するもので違法であり,本件知事はその組織編成権を逸脱したもので,本件各委員会の運営のためにされた本件各支出は違法であるとした事例
2 附属機関条例主義の解釈については相互に異なる理解をする判例,学説が入り乱れていたこと,近年においてもほぼ全ての地方自治体において法律又は条例に根拠を有しないと考えられる附属機関が設置されているという調査結果があること,本件芸術祭の来場者等に生命身体の危険が及ぶことが予想され,事態の収集に向けて対処するため附属機関該当性及びその設置根拠について熟考する時間的余裕がなかったこと等に照らせば,本件知事及び本件職員が本件各委員会は附属機関に当たらないものと解して本件各支出をしたこと等に故意,過失等があったとは認められないとしてその損害賠償責任をいずれも否定した事例
振替株式の名義株主でない原告が有価証券報告書等に虚偽記載があったことを理由に会社に対して提起した損害賠償請求訴訟において,振替株式の名義株主でない原告は,有価証券を「取得した者」(金融商品取引法21条の2第1項〔平成26年法律第44号改正前〕)に該当せず,また,不法行為に基づく損害賠償請求権(有価証券報告書等の虚偽記載等により振替株式を高値で取得させられた損害ないし取得した株式の株価が下落した損害の賠償請求権)を有しないとされた事例
宮古島市断水訴訟差戻審判決
災害によらない水道施設の損傷に起因する断水につき,水道法所定の給水義務が否定されないとして,債務不履行による損害賠償請求を認めた事例
有限責任事業組合の債権者は,債務者を当該組合とする債務名義に基づき,組合員の固有財産に対して強制執行をすることができないとされた事例
1 外国為替及び外国貿易法違反の罪により逮捕,勾留,公訴提起され,その後,検察官から公訴取消しの申立てを受け公訴が棄却された者らが,警察による逮捕並びに検察官による勾留請求及び公訴提起などが違法であるとして求めた国家賠償請求訴訟について,警察による逮捕並び検察官による勾留請求及び公訴提起はそれぞれ合理的な根拠が欠け国家賠償法上の違法があるとされた事例
2 警察官による取調べについても,不当な誘導や弁解録取書作成の過程で求められた訂正をしたかのように装った行為があったと認められ国家賠償法上の違法が認められた事例
発信者が著作物にリンクするURLを送信した行為が,情報の流通によって原告の著作権の侵害を直接的にもたらしているものと認めることはできず,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律5条1項にいう権利の侵害に当たらないとされた事例
相続開始直後に取引相場のない株式が財産評価基本通達の定める方法により評価した価額より著しく高額で売却されたものの,納税者側において相続税の負担が軽減されるような効果を持つ行為を何らしていないなど判示の事情の下では,相続税の課税価格に算入される同株式の価額を国税庁長官の指示を受けて別途評価した価額によるものとすることは平等原則に違反するとされた事例
1 昭和48年に建築されたマンションにおける区分所有者全員による管理者選任合意が認められた事例
2 建物の区分所有等に関する法律25条2項に基づくマンション管理者解任請求が認容された事例
指定国において国内移行手続が行われずに取下擬制がされた国際特許出願に係る発明について,原告が特許を受ける権利を有することの確認を求める訴えが,確認の利益を欠くものとして却下された事例
1 控訴人は,ミャンマーのラカイン州で出生したイスラム教を信仰するロヒンギャで,幼少時にヤンゴンへ移住して生活していたところ,民主化運動のデモに参加して禁固刑に処せられ,その際にロヒンギャであることを理由に暴力を受け,出所時に今後は政治活動に一切関わらない旨の誓約書に署名したが,その後も政治活動を行い,不正な手続で出国した後,日本においてロヒンギャ団体の会員となり,ミャンマー大使館前のデモに参加し,その写真が新聞に掲載されるなどしており,ミャンマーにおいてロヒンギャが迫害されている状況を踏まえると,控訴人には看過できないような人種,宗教及び政治的意見に関する事情が積み重なっており,ミャンマーに帰国すれば,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす程度の迫害を受けるおそれがある客観的・現実的な危険があったと認められ,控訴人は難民に該当するとして,平成28年6月の法務大臣の難民不認定処分を取り消した事例
2 裁判所が弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して事実についての判断をするに当たっては,難民認定申請者が客観的資料を提出しなかったり提出までに一定の期間を要したりしたからといって,直ちに難民であることを否定すべきではなく,本人の供述するところを主たる資料として,恐怖や国家機関ないし公務員に対する不信感等による供述への逡巡,時間の経過に伴う記憶の変容,希薄化の可能性,民俗,宗教,置かれてきた環境等の背景事情の違いなども考慮した上で,基本的な内容が首尾一貫しているか,変遷に合理的理由があるか,不合理な内容を含んでいないか等を吟味し,難民であることを基礎付ける根幹的な主張が肯認できるか否かを検討して行うべきであり,国連難民高等弁務官駐日事務所作成の「難民認定基準ハンドブック」に記載されている難民申請者が置かれている状況や難民申請者が感じる恐怖などは,重要な経験則を示すものとして,尊重すべきである
3 行政処分庁がロヒンギャに対する根強い偏見を持っている場合が多いミャンマー人を控訴人の難民認定申請時の通訳に充てたことなどから,通訳の正確性について適正に担保されていたとは認められないなどとし,このことをも考慮した上で,控訴人の供述等の変遷による信用性の減殺を認めなかった事例
4 口頭弁論終結時においても,ミャンマーでは,国家機関による民族浄化が行われるなど,ラカイン州外のロヒンギャであっても,迫害の恐怖を抱く客観的事情が存在し,前記1のような状況にある控訴人が難民に該当することは明らかで,法務大臣は難民の認定をしなければならず,裁量の余地はないとして,出入国管理及び難民認定法61条の2第1項の規定による難民の認定を命じた事例
旅券法13条1項1号に該当することを理由としてされた外務大臣の一般旅券の発給拒否処分が,外務大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものとして違法であるとされた事例
1 落語家である師匠の弟子に対する複数の行為が,社会的に許容される範囲を逸脱した態様のパワーハラスメントに当たるものであるとして,不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容した事例
2 弟子の情報提供行為と報道機関の記事掲載との間には,相当因果関係が認められないとして,弟子の情報提供行為についての不法行為責任を否定した事例
特定少年である少年が,交際相手に対する恋愛感情等を充たす目的で,同人の同居の親族に対し,メッセージの送信を繰り返したというストーカー行為等の規制等に関する法律違反保護事件において,収容期間を3年間として第1種少年院に送致した原決定について,処分が著しく不当であるとはいえないとして,抗告を棄却した事例
建物の所有者から借地借家法38条1項所定の定期建物賃貸借契約締結の媒介を委託された宅地建物取引業者が,賃借人に対する同条3項所定の事前の書面交付及び説明をしなかったことなどにつき,媒介契約の善管注意義務及び業務上の一般的注意義務違反が認められた事例
甲船と乙船が衝突した事故に係る海難につき小型船舶操縦士である甲船の船長に職務上の過失があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
1 コンピュータシステム開発の業務委託契約におけるシステムの瑕疵を理由とする注文者による契約の解除が,解除の原因となるバグの存在を認めることができないとして,認められなかった事例
2 コンピュータシステム開発の業務委託契約において,業務が完成していなくても出来高分の報酬支払を請求できるとして,6割の限度で請負人の報酬請求が認められた事例