保釈された者が実刑判決確定後に約3か月間逃亡したとして保釈保証金の全部没取が請求され,保釈保証金の実質的納付者が高齢で無職の年金生活者であること,被請求人の逃亡について保釈保証金の実質的納付者に帰責事由がうかがわれないこと,被請求人について原決定段階で刑の執行が開始されていることなどを指摘して保釈保証金250万円のうち180万円を没取した原決定について,本件は,刑事訴訟法96条3項に定める没取事由の中でも刑の執行への影響がより大きい「逃亡したとき」に該当し,その期間も相応に長く,特に事情がない限り保釈保証金は全額没取すべきであり,原決定が考慮した事情は,没取額を減額する方向で考慮すべき事情ではなく,又は,一部没取が相当な理由が示されているとはいえないとして,これを取り消し,異議審において被請求人らに意見照会を行った結果も踏まえて保釈保証金の全額を没取した事例
引きこもりの状態にある者に自立支援サービスを受けさせるため,原告をその意に反して連れ出すなどした当該サービスの事業者の従業員らと,当該事業者との間で業務委託契約を結んだ原告の母に共同不法行為責任を認めた事例
相手方(妻)が抗告人(夫)に対し,婚姻費用の分担金の支払を求めた事案において,婚姻費用分担額の算定にあたっては生活保護費を収入と評価することはできないとし,相手方の病歴や障害等級,就労実績,医師の見解,現在の状況等に鑑みて,現時点においては,相手方に潜在的稼働能力があるとは認められないとして,抗告人に婚姻費用の分担金の支払を命じることは相当であるとした事例
第三者割当方式による新株発行が①有利発行,②著しく不公正な方法によるものと認められないとして株主による新株発行の差止めを求める仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告が棄却された事例
準強制わいせつ被告事件について,公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に,審理不尽の違法があるとされた事例
内閣が憲法53条後段に基づく国会議員の臨時会召集要求を受けたのに直ちに臨時会の召集を決定しなかったという事実関係の下において,上記臨時会召集要求をした国会議員による,内閣が次に臨時会召集要求がなされた場合に臨時会を召集できるように召集決定をする義務を負っていることなどの確認を求める訴えは不適法であり,また,上記内閣の行為が違法であるとして慰謝料の支払を求める請求は理由がないとされた事例
1 優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の憲法13条,14条適合性
2 国会議員による優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の立法行為と国家賠償法1条1項
3 優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)4条ないし13条の立法行為に係る国家賠償法1項1項に基づく損害賠償請求権について民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の規定の適用が否定された事例
一般財団法人日本ボクシングコミッションによる,プロボクシングジムの会長等に対するライセンスの更新に関する処分が違法であり,同ジムに所属するプロボクサーらに対する不法行為が成立するとして,上記一般財団法人やその理事長らに対する損害賠償請求が認容された事例
別居中の夫婦間において,妻である原審申立人が,夫で開業医である原審相手方に対して婚姻費用分担金の支払を求めた事案において,義務者である原審相手方の収入が標準算定方式の上限を超えることから,原審が,同方式によらず,同居時の生活水準や生活費支出状況,別居後の家計収支及び生活状況等の諸般の事情を踏まえて婚姻費用の分担額を定めたのに対し,抗告審においては,同方式を維持した上で,高額所得者である原審相手方の基礎収入について,同人の総収入から控除する税金や社会保険料,職業費及び特別経費について,事業収入の特殊性を踏まえた数値を用い,更に一定の貯蓄分を控除して婚姻費用分担額を算定した事例
被相続人を保険契約者兼被保険者とし,共同相続人の1人を死亡保険金の受取人とする生命保険契約に基づく死亡保険金請求権について,民法903条の類推適用による特別受益に準じた持戻しを否定した事例
同族会社における代表取締役会長による代表取締役社長に対するパワーハラスメントの不法行為があり,同代表取締役会長が退任した同代表取締役社長に対する退職慰労金の支給に関する株主総会の議案等を取締役会に上程しなかったことは任務懈怠に該当するなどとして,同代表取締役社長の損害賠償請求を一部認容した事例
映画製作会社がした文化芸術振興費補助金による助成金の交付申請に対し,申請対象の劇映画には麻薬及び向精神薬取締法違反の罪による有罪判決が確定した俳優が出演しており,同劇映画に助成金を交付することは公益性の観点から適当ではないとの理由でされた助成金の不交付処分が,処分行政庁である独立行政法人日本芸術文化振興会理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとはいえず適法であるとされた事例
固定資産課税台帳に登録されたゴルフ場用地の価格が固定資産評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
1 地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか
2 地方交付税法15条2項に基づく総務大臣による特別交付税の額の決定を受けた地方団体は,当該決定の取消しを求める訴えの利益を有するか
3 特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)の各規定の法適合性