公立病院の職員が上司のパワーハラスメント等によって精神疾患を発症したことを理由とする国家賠償法及び債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償請求が,一部認容された事例
公立高校に教員として勤務していたAが,先輩教員であるBから度重なる注意を受けたことにより心理的負荷等を過度に蓄積させてうつ状態となり自殺したことについて,校長及び教頭においてAのうつ状態を認識しながらBによる度重なる注意を防止する措置を講じなかったことが安全配慮義務に違反するとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が一部認容された事例
制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が確定した場合において当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算方法と一般に公正妥当と認められる会計処理の基準
1 道路交通法施行令別表第2でいう「酒気帯び運転(0.25未満)」とは,運転時に呼気検査をすれば呼気1lにつき0.15mg以上のアルコールが検出される状態であることをいい,身体に血液に吸収される前のアルコールが保有されているだけでは足りない
2 運転時の呼気中アルコール濃度が道路交通法施行令44条の3で定める程度以上であったとは認められないとして,免許取消処分が取り消された事例
先天性の脳性まひにより身体障害者福祉法別表第1級の認定を受け,特別支援学校に在籍していた生徒が,給食介助中の誤嚥により窒息状態に陥り,低酸素脳症に由来する重篤な脳障害を後遺した事故について,既存障害と新たに生じた障害とが,日本スポーツ振興センターが行う災害共済給付制度における「同一部位についての障害」に該当し,かつ,同一の障害等級となることを理由として,障害見舞金の支払請求を棄却した事例
市立中学校の柔道部の顧問である教諭が部員間のいじめにより受傷した被害生徒に対し受診に際して医師に自招事故による旨の虚偽の説明をするよう指示したこと等を理由とする停職6月の懲戒処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例
法例の一部を改正する法律(平成元年法律第27号)の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立の準拠法
1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益は定期金による賠償の対象となるか
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることの要否
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益が定期金による賠償の対象となるとされた事例
1 控訴審において無罪判決が言い渡された者からの刑事補償請求について,請求人は,当時の交際相手に覚醒剤を注射して使用したという虚偽の自白を積極的にして第1審において有罪判決を受けた後,控訴審においてその自白を翻すなどしており,捜査又は審判を誤らせる目的で虚偽の自白をしたものであって,刑事補償法3条1号に該当し,補償の全部をしないことが相当であるとされた事例(①事件)
2 控訴審において無罪判決が言い渡された者からの費用補償請求について,請求人は,当時の交際相手に覚醒剤を注射して使用したという虚偽の自白を積極的にして第1審において有罪判決を受けた後,控訴審においてその自白を翻すなどしており,捜査又は審判を誤らせる目的で虚偽の自白をしたものであって,刑事訴訟法188条の2第2項に該当し,補償の全部をしないことが相当であるとされた事例(②事件)
少年が,共犯少年らと共謀の上,深夜に一般民家に侵入し,現金等を強取するなどした強盗致傷等保護事件において,短期の処遇勧告を付すことは相当でないとした上で少年を第1種少年院送致とした原決定につき,抗告を棄却した上で,少年には保護処分歴がないこと,少年の素行の乱れが比較的最近のものにとどまること,少年と両親の関係が良好であり,少年に両親の指導に従おうとする意欲が認められ,両親も指導への意欲を高めていることなどを指摘して,一般短期の処遇が相当と説示した事例
使用者が,性同一性障害の労働者(生物学的性別が男性,性自認が女性)に対し,化粧を施して業務に従事していることを理由に就労を拒否したことが,使用者の責めに帰すべき労務提供の不能にあたると判断された事例
中央卸売市場の移転先用地を取得するため複数筆の土地を正常価格の目安となる価格の約1.37倍から約1.41倍の価格で買い取る各売買契約を締結した都の財務局長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法であるとはいえないとされた事例
1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要するか
2 インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記画像が,著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合に,上記閲覧者が当該表示された画像をクリックすれば,上記著作者名の表示がある元の画像を見ることができるとしても,上記投稿をした者が著作者名を表示したことにはならないとされた事例
3 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求をする者が,インターネット上の情報ネットワークにおいてされた同人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記写真に係る氏名表示権を侵害された場合に,上記投稿をした者が,同項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」上記開示請求をする者の権利を侵害したものといえるとされた事例
週刊誌の記事により名誉が毀損されたとして,NPO法人及びその理事長が損害賠償等を請求した事案で,理事長の請求を一部認容した原判決を取り消し,摘示した事実の重要な部分について真実性が認められ,仮にそうでない部分があるとしても,それが事実であると信じるには相当な理由があったとして,請求を全部棄却した事例
患者が医師の説明義務違反を根拠とした損害賠償を請求した事案において,医師の説明義務違反があったとしても,治療行為と因果関係のある悪しき結果が発生したとは認められない場合には,説明義務違反に基づく損害賠償は認められないとした事例
ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの)2条1項1号にいう「住居等の付近において見張り」をする行為の意義
介護施設の入所者が食事介助中に意識を消失したが,その際の機序が窒息による機序と整合的でなく,意識喪失から死亡に至る原因を窒息とみるには疑問があるほか,余命が1年程度である疾患を有し,その状態が深刻になっていて,呼吸停止,心停止に至るおそれがあったことからすれば,当該入所者の死因が食事中の窒息にあったとはいえないから,仮に食事介助の際に目を離さず少しずつ食べさせて様子を見る注意義務等の違反があったとしても,こうした過失行為と当該入所者の死亡に因果関係を認めることはできないとされた事例
財産の分与に関する処分の審判において当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき当該他方当事者に分与しないものと判断した場合に家事事件手続法154条2項4号に基づきその明渡しを命ずることの許否
1 大阪市が,認可保育所を運営する社会福祉法人に対し,委託した保育に要する費用として支弁した運営費・委託費のうち支弁の要件に欠ける部分の不当利得返還請求をした事案において,同法人が悪意の受益者であると判断された事例
2 上記運営費の不当利得返還請求権及び大阪市補助金等交付規則・各補助金交付要綱に基づき交付した保育所の人件費等に係る各補助金の返還を求める不当利得返還請求権は,私法上の金銭債権であり,消滅時効期間は10年である(平成29年法律第44号による改正前の民法167条1項)