1 派遣先の役員らが派遣労働者の肩に手を回した行為及び役員と共に食事に行くことなどを内容とするくじ引きを派遣労働者にさせた行為はそれぞれ人格権を侵害する違法行為であるとして役員らの不法行為責任を肯定した一方で,派遣先及び派遣元の就業環境配慮,整備義務違反は認められないとして不法行為責任を否定した事例
2 派遣先による労働者派遣契約の不更新は不当労働行為意思に基づくものと認められないとして,派遣先の派遣労働者に対する不法行為責任を否定した事例
暴力団対策法31条の2本文が定める「威力利用資金獲得行為」における「威力を利用」する行為について,資金の獲得のために威力を利用するものであれば足り,被害者に対して威力が示されることは必要ではないとして,いわゆるオレオレ詐欺行為を行う特殊詐欺グループに加担した指定暴力団員の行為が「威力利用資金獲得行為」に該当するとされ,指定暴力団の会長の責任が認められた事例
未成年者らの父である相手方が,母である抗告人に対し,離婚の際の合意により定められた未成年者らの養育費の支払義務の免除を求めた事案において,相手方の養育費支払義務については,支払義務がないものと変更することが相当であるとした上で,既に支払われて費消された過去の養育費につきその法的根拠を失わせて多額の返還義務を生じさせることは,抗告人らに不測の損害を被らせるものであるといわざるを得ない一方,相手方は,養子縁組の成立時期等に重きを置いていたわけではなく,実際に本件調停を申し立てるまでは未成年者らの福祉の充実の観点から合意した養育費を支払い続けたものと評価できるとして,養育費の免除の始期については,本件調停申立月とすることが相当であるとして,原審を変更した事例
1 外国為替及び外国貿易法48条1項に基づき経済産業大臣の許可を要する貨物として定められた重合体繊維から他の繊維を製造する装置の「部分品若しくは附属品」は,当該「装置」の部分品ないし附属品としての用途以外の用途に用いられるものに該当しないこと(専用性)を要する
2 当該貨物である不融化炉及び炭化炉の各炉殻が,前記装置の部分品として用いられることを前提に特に設計・製作され,これが他の用途に転用される可能性が具体的,現実的なものとはいえないなどの本件事実関係(判文参照)の下では,当該貨物は前記装置の「部分品」に該当し,これらを経済産業大臣の許可を受けないで輸出した行為につき平成29年法律第38号による改正前の外国為替及び外国貿易法69条の6第2項2号の罪が成立する
児童相談所長である申立人が,児童福祉法28条1項に基づき,児童に対する児童心理治療施設への入所措置または同施設が定員で入所できない場合に対応するために選択的に児童養護施設への入所措置の承認を求めた事案において,保護者らの,児童の特性に配慮しない暴力等の不適切な行為や児童相談所等による指導への対応等からすると,保護者らに児童を監護させることは,同条同項の「保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」に該当するとした上で,児童に対しては,早期にトラウマ治療や心理教育など,その特性に合わせた専門的な心理治療を行いながら,生活の安定が図られることが必要であるとして,本件申立てを認容し,併せて都道府県に対し,保護者らに対する指導措置を採るよう勧告した事例
中間省略登記の方法による不動産の所有権移転登記の申請の委任を受けた司法書士に,当該登記の中間者との関係において,当該司法書士に正当に期待されていた役割の内容等について十分に審理することなく,直ちに注意義務違反があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
事件本人の養子から後見開始の審判の申立て(甲事件)がされた後,事件本人と任意後見契約を締結した弁護士から任意後見監督人選任の申立て(乙事件)がされた事案において,乙事件申立人が任意後見人となることにより権限が濫用される具体的なおそれまでは認められないものの,公平らしさという点で問題が残ることや,同意権・取消権のない任意後見制度では事件本人の保護の万全を期することができるかについて問題があることなどから,任意後見契約が登記されている場合における後見開始の審判の要件である「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」(任意後見契約に関する法律10条1項)に該当するとして,甲事件の申立てを認容し,乙事件の申立てを却下した事例
強制わいせつ罪等を非親告罪とした「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)の経過措置を定めた同法附則2条2項と憲法39条
国営諫早湾土地改良事業による諫早湾干拓地潮受堤防の締切りと諫早湾内の漁場環境の悪化との間に因果関係が認められないとして,諫早湾内で漁業を営む漁業協同組合の組合員らの漁業行使権に基づく潮受堤防の排水門の開門請求が棄却された事例
法人格を有しないケイマン諸島の特例有限責任パートナーシップの持分を対象資産として行われた,内国法人からその海外子会社への現物出資の適格現物出資該当性を認めた事例
娩出された胎児が巨大児として出生し右上肢肩肘機能全廃の後遺障害が残った事故について,出産を担当した産婦人科医に,帝王切開をすべき注意義務,帝王切開へと分娩術を変更できるような態勢を構築すべき注意義務があったとはいえないとされた事例
1 県議会議員選挙の選挙長は,立候補の届出を受理するに当たり,公職選挙法上の住所要件を充足するか否かにつき実質的審査を行う義務を負うものではないと判断された事例
2 県議会議員選挙に立候補をした者につき,当該県内の同一市町村内に3か月以上住所を有し又は有していた事実が認められない場合には,公職選挙法上の住所要件を満たさないとして,県が供託金を徴収・没収したことにつき法律上の原因があると判断された事例
非監護親が,監護親に対して非監護親と子とを面会交流させることを命ずる決定に基づき,間接強制の申立てをした事案について,同決定に基づく監護親の給付債務は債務者(監護親)の意思のみによって履行することのできない債務になっているとして,申立てを却下した原決定の結論を維持した事例
1 いわゆるデビットカードについて,その会員規約(判文参照)によれば,同カードを利用した取引は,即時的に支払の決済がなされる取引であって,クレジットカードによる取引のように与信が伴う性質の取引ではなく,このような即時的な支払決済に用いられるデビットカードの会員番号等の情報は,平成28年法律第99号による改正前の割賦販売法35条の16第1項に規定された「クレジットカード番号等」に当たらないとして,その提供について同法49条の2の罪の成立を否定した事例
2 上記デビットカードのカード種別,会員番号,セキュリティーコード,有効期限,名義人の氏名の情報は,デビットカードの会員と利用者との同一性を識別するための情報であって,デビットカードの利用料金の引き落とし口座である預金口座の特定や当該口座の名義金と利用者との同一性を識別するための情報ではなく,同カード情報を用いて当該口座内の資金を直接移動させるといったこともできず,犯罪による収益の移転防止に関する法律28条にいう「預貯金の引出し又は振込みに必要な情報」に当たらないとされた事例
人身傷害補償保険会社が,被害者の同意を得て加害者の加入する自賠責保険金を回収した場合において,これを加害者の被害者に対する弁済に当たるとして,損益相殺を認めた事例
固定資産評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合における各筆の宅地の評点数の算出方法
アメリカ合衆国籍を有し日本に居住する原告が,アメリカ合衆国籍を有し同国で死亡した亡夫と原告との間の離婚が,方式の違法ないし離婚意思の欠缺により無効であると主張してその確認を求める事案において,原告及び亡夫にとっては,カリフォルニア州法が本件離婚及び離婚の方式の準拠法となるとした上で,同法によれば協議離婚の方式による離婚は認められていないこと等から,本件離婚は,原告の離婚意思の欠缺について判断するまでもなくその方式において違法であり無効であるとして,原告の請求を認容した事例
偽造した委任状によって住民票の写し等を取得した後,当該住民票の写し等について没収の言渡しがなかった場合であっても,その還付を求めることは許されないとされた事例
夫婦の一方が,夫婦の他方が所有する財産について,協議あるいは審判等によって財産分与請求権の具体的内容が形成される前の段階において,財産分与対象財産であることの確認を求める訴えは,確認の利益を欠き,不適法である
1 検察官等から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書等又はその写しは民訴法220条4号ホに定める刑事事件に係る訴訟に関する書類又は刑事事件において押収されている文書に該当するか(①事件)
2 鑑定のために必要な処分としてされた死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例(②事件)